「狼男の旦那、50年前のどっかの誰かさんからのお返しだ…取っときな!」
体に銀を入れられたのがわかる、俺の体は鉛玉だろうが聖水だろうとどんなに浴びせても意味はない。だが銀を体に入れられるとどんなにちっぽけな量でも俺は死ぬだからこそわかる。
”ああ、俺の負けか”
手加減したつもりはなかった、自分は相手を確実に仕留めに行ったはずだ。しかし俺は負けてしまった。だがとても満足している。いい闘争だった。50年待ったこの闘争、待つだけの甲斐はあった。このわずかな時間の闘争…このために俺は生きてきた
相手のドラキュリーナの顔を見る、俺を倒した女とその影である男お前たちに敬意を評そう。
少佐、あなたはアーカードを倒せたのだろうか、結末を知りたいのが唯一の心残りです。
ああ、楽しかった。まるでいい夢を見たような気持ちだ。少佐、先にヴァルハラへ行かせてもらいます。
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一匹の狼男は子供のような笑顔を残して青い炎の中この世界から去っていった。
狼男を倒したドラキュリーナ’セラス’は青い炎を見つめながら
「まるで…まるで楽しい夢を見た後の子供のよう…」
と思い。その場を去っていった
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意識が覚めていく、まだ目覚めきっていない眼で周りを見るとそこは光があまり届かない路地裏だ少し先に見える景色はたくさんの人が歩いている
ここはどこだ…俺は死んだはずだ…しかし息はある。心臓の鼓動も感じる。しかしどこか違和感が拭えない
見えている景色がいつも見ている世界より低い気がする、手を見るとあまりにも小さい気がする。これでは子供の手だ
・・・まさか
水たまり越しに自分を見る・・・幼い顔つきに成長しきれていない体。なんということだ・・・俺の体はおそらく4~5歳ほどになっている
だが悲観している暇はない。急いで拠点と食料を確保しなければならない。路地裏から出て街を眺める。そこには漢字や英語や平仮名で書かれた看板がならんでおり、ちらほらと日本語が聞こえてくる。どうやらここは日本のようだ。同盟中に日本語を学んでいてよかった。
ぼんやりと人ごみを眺めていると誰かが近づいてくる。近づいてきた人を見ると綺麗な黒髪をなびかせ、整った顔立ちをした中学生ほどの少女がいた
「お前どうした?親とはぐれたのか?」
おそらく俺に聞いているのだろう、俺は首を横に振る
「いないのか・・・?(この銀髪に赤眼、なぜか惹きつけられそうな不思議な魅力がある。ってなに考えているんだ私は!!)」
少女は頭をブンブンと振っている。意味がわからない
「お前、名前は?どこから来た?」
名前はいつからか忘れてしまった。居場所だった最後の大隊ももう無い。だから俺は再び首を横に振る
「見たところ何ももってなさそうだな・・・お前、一人ぼっちなのか?」
おれは首を縦に振る
「そうか、私と同じだな。私も一人ぼっちだ・・・親はいるがどこにいるのかわからない。世界がどこかずれているような感覚、まわりにおいて行かれてるような・・・そんな感じがするんだ」
少女の目をみるとその目は俺と同じような瞳をしている。森の中で月を眺めている一匹狼のような、気高くて寂しげな瞳だ。少佐と出会う前の孤独の日々を過ごしていた俺のような
俺が彼女を眺めていると彼女も俺の瞳から何かを感じたのだろうか、俺と同じ目線になるように屈んで話しかける。
「お前、行くところはあるのか?」
首を横に振る
「そうか、もし・・・もし良かったら私のところに来ないか?お前はどこか私と似ている気がするんだ」
どこか似ている・・・そうだな・・・俺と少女はどこか似ている気がする。この少女になら付いていってもいい気がする。
おれはゆっくりと確かに首を縦に振る
それをみた彼女は顔を笑顔にして
「そうか・・・これで私とお前はもう一人ぼっちじゃない・・・私とお前で二人ぼっちだな」
彼女は俺の肩に手をおいて優しい笑顔で話しかける
「お前は名前が無いんだったな、これから一緒に暮らしていくんだ。名前が無いと不自由だな、お前の名は・・・一夏・・・織斑一夏だ」
イチカ・・・俺の名前はイチカ・・・いい響きだ
「気に入ってくれたようだな。私は織斑千冬だ、お前の新しい家族、お前の姉だ。よろしくな一夏」
千冬と名乗る少女は私に手を差し出す。俺は少女の取り、ゆっくりと話す
「・・・・よろしく・・・姉さん・・・千冬姉さん」