IS×ヘルシング~ヴェアヴォルフの闘争~   作:心太マグナム

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アムロの方を書きたかったのですが、導入部分を思いつかなかったので聖☆おにいさんin HELLSINGを投稿しました。あっちの方は基本ギャグです。


31話

大尉がアリーナを去ってからアリーナの光景をじっと見つめている者たちがいた。更識楯無と布仏虚のふたりである。大尉が闘った二戦、この闘いを見ていたのはシュレディンガーとドクだけではなかったのだ。二つの出来事が終わって虚は目の前で人が食われて血と臓物がまき散らされる光景を見て口元を抑えて吐きそうになるのを必死に堪え、楯無は額に冷や汗をかきながら口元を理解不能と書かれた扇子で隠していた。楯無は戦闘の跡を見ながら重い口を開く。

 

「なんなのかしらアレ……織斑一夏くんのISの能力……?」

 

「……それは無いかと…あの時織斑一夏の白狼は待機形態になっていました。それに……人を喰らうISなんて聞いたことがありません」

 

「それじゃあ生身でISを破壊したという事?それこそ聞いたことがないわ。」

 

二人はゴーレムの残骸とまき散らされた不審者の血を見て背筋にゾクリと悪寒が走る。二人が理解したのはIS学園最強を表す生徒会の称号を持ち、ロシア代表の更識楯無でさえあの時の織斑一夏には歯がたたないという事実だ。虚は気分が落ち着いたのか闘いの跡を見ないように注意して口元を隠すのを辞め、楯無に提案をする。

 

「今すぐ更識の本部に連絡した方が良いかと。彼が何者なのか突き止めなければ。……本当に彼が人間なのかという事に。生徒会室に呼び出して尋問しますか?」

 

「NO.更識に連絡してどうするのよ。彼は何も喋らないわ。最悪、この事を見た私達を口封じするかもしれないわ。見張りを送り、監視する?」

 

 

「NO.直ぐに気付かれて最悪殺されてしまいます。調査?」

 

「NO.入学する前の調査では特に目立った情報はなかったわ。あるとすれば彼が一度誘拐されて織斑先生に助けられたという情報だけ。集団で綿密な計画のもとに暗殺?」

 

「NO.論外です。彼はミサイルとレーザーの弾幕を受けて何をしたかはわからないけど無傷でした。逆に殺されて終わりです。最悪の場合、たった一人の家族に相当な愛情を注いでるブリュンヒルデを敵に回しかねません。となると出来る事は学校生活の中で彼を眺める事だけです。彼を敵に回すようなマネは出来るだけ避けたいです。」

 

二人が今まで言った提案は全て大尉に敵意を持たれかねないものばかり、大尉と協調しようという案が一切ない。そういった提案しかできないほどに二人は彼を危険とみなし、動揺していた。楯無は扇子で顔を仰ぎながらため息をつく。

 

 

「とりあえず、しばらくしたら彼に接触を図ってみるわ。出来るだけ自然に。教師たちにはこのことはまだ内密にしておいて、確証や対策が無い今、下手に動いたり、動かれたりするのは最善とはいえないもの」

 

「ええ、そうしましょう。どうかお気を付けて」

 

「わかってるわ」

 

楯無と虚は緊張した面持ちの中、IS学園本部に連絡をしてアリーナを去って行った。

 

______

 

「アハハハ、やっぱり直ぐに廃棄になっちゃったあのゴミ。もう少し抵抗すると思ったんだけどなぁ、いっくんが強すぎて話にもならなかったかぁ」

 

先程から大尉の事をモニター越しに眺めていた女性、ISの生みの親であり現在各国から追われる存在である女性篠ノ之束は大尉の闘いを何度もリプレイし、大尉を見て頬を赤く染めて妖艷に笑う。

 

「はぁ……ほんといっくんは最高だよ……特にゴミを無慈悲に殺しにいく様子なんてたまらないよ……昂ってきちゃう」

 

節制14を圧倒する大尉の闘いを見て篠ノ之束は自身の身体が昂っているのがわかる。誰かが自分のこの様子を異常だと言っていたがそんなものどうでもいいのだ。

 

「もう束さんの最初の夢は叶いそうにないや。だから次の夢は絶対に手に入れるよ。束さんは知ってるよ?いっくんは闘いの中でしか生きれないんだよね?闘いでしか生きれないいっくんに束さんはいくらでも戦場をあげる。だから…」

 

束は大尉を見て昂る自分の本能を抑えようとせず本能のままに行動する。

 

「いっくんの心ぜ〜んぶ束さんに頂戴?アハハハ!!」

 

暗い部屋に束の笑い声がひびいた。

 

______

 

時間は数時間経ちIS学園の地下、限られた者しか入れないこの部屋に千冬と麻耶が回収したゴーレムの残骸を眺めていた。

 

「織斑先生、コアが貫かれて識別に苦労しましたがわかりました。このISに搭載されたコアは登録をされてないコアです。」

 

「やはりな」

 

千冬はタバコをふかしてゴーレムを見る。

 

「山田先生、このISは無人機なのだな?」

 

「はいそうです。織斑先生も疑問に思っているのですね。アリーナにまき散らされた異常な量の血が」

 

「ああ、あの血の量なら普通の人間なら死んでいる。しかし死体は一向に見つからない。一夏は血については知らないと言っていたがな……」

 

千冬はモンドクロッソ決勝戦直前の出来事を思いだす。そして自分の数少ない友人が言ってた事を思い出し、歯を噛み締める。

 

"いっくんは闘いでしか生きられないよ。いっくんは綺麗な朝の世界じゃなくて混沌とした夜の世界にいる方が幸せだし、いっくんの心は血に染まって美しくなるんだよ。"

 

友人がニコニコしながら言ったこの言葉は千冬の頭からいつになっても離れない。自身もモンドクロッソ決勝戦直前に起こった出来事の時、血を纏っている一夏を美しいと思い、一夏を責める気にはなれなかったからだ。

 

「(一夏は闘いの中でしか生きれないだと?闘いの中の姿だけが一夏の全てじゃない!ラウラを救い、幸せそうに好きなもの食べている姿も一夏の姿の1つだ!一夏が混沌とした夜の世界に行こうとするなら私は一夏を引っ張りあげてやる。闘いの中でしか生きれない生き方は悲しすぎる。私は一夏にそんな生き方はさせない!!)」

 

 

混沌とした夜の世界へと大尉を引き込もうとする束とそれをさせまいとする千冬。親友だった二人は友情だけは未だに変わらないが、このお互いの考えだけはいつも対立していた。千冬は短くなったタバコを灰皿で火を消して、ゴーレムを睨みつけると後ろにあるドアが開いて白いスーツに身を包んだ30〜40代に見える男性が入ってくる。千冬と麻耶は部屋に入ってきた男を見て緊張が走る。

 

「……理事長、お越しなるとはおもいませんでした。」

 

「あぁ、言ってないからね。それにしても参ったものだ、奴と創ったこの学園にこんな事態が起こるとは。轡木め、最近怠けているからこんな事態に迅速に対応が出来ないんだ。学園内の出来事は奴の仕事だというのに」

 

理事長と呼ばれた男性はヤレヤレと首を振りながらかけているメガネをあげる。それを見た千冬は目の前の男に無礼が無いように言葉を選びながら言葉を発する。

 

「学園長の非ではありません。対策をしなかった私にこそ非があります。」

 

千冬の発言に理事長は「ほう」とだけ言うと興味深そうに千冬を見る。千冬は男性から放たれるプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも緊張しながら言葉は発する。

 

「学園長はあの時外せ無い用があり、あの現場の指揮権を自分に委ねました。学園長にあの時現場を任されたのは自分です。指揮を任されていながら外部との連絡手段、事件の対策、処理が出来ずに生徒に事件の処理をさせてしまった自分にこそ非があるはずかと」

 

理事長は千冬の目をじっと見つめながら千冬の言葉を聞くと急に笑い始める。千冬は突然目の前で笑い出した理事長を何か自分はまずい事を言ってしまったのかと悩みながら理事長を見つめる。

 

「ハハハハ!そんな事言わなければ君に非はかからなかったのに自ら非を受けようとするとは!面白い!キミは本当に面白い存在だ!彼が気に入っている理由がわかる気がしたよ。いいだろう!このことについては私はもう何も批判しないと約束しよう」

 

理事長は笑いながらそう言うと千冬はどうやら機嫌を損ねずにすんだようだと緊張を解く。理事長は千冬のその様子を楽しそうに見るともう一度笑う。

 

「ハハハ、久々に面白い人物と話せた。もう君たちは帰りたまえ、こんな時間だ明日も授業はあるんだろう?後の事は私に任せて帰るといい。幸い私は明日久々の休日でね。予定といったら愛する妻の手料理を食べて、妻と一緒にティータイムをしてゆっくりとすごすことしかないんでね」

 

理事長がそう言うと千冬と麻耶は失礼しますとだけ言うと地下から上がるエレベーターに乗る。千冬はエレベーターの中で安堵の息をついた。IS学園理事長、学園内のことを学園長に任せ、学園外の事全てを処理する傑物。ブリュンヒルデという肩書きだけで他人よりISを扱うのが少し上手いだけの自分では永遠に敵いそうにない相手の前で気が休まる事は無かったからだ。

 

「山田先生、今日は飲みに行きましょう。」

 

「ええ、お供します。」

 

エレベーターが目的の場所に着き、千冬と麻耶は夜の街へと消えていくのだった。

 

 

 

地下に一人残っている理事長はゴーレムをつまらなそうに見つめる。理事長の顔には一切の興味は写っていなかった。

 

「まったく篠ノ之束め、無粋なモノを作る」

 

理事長は部屋にあるコーヒーメーカーでコーヒーを作るとゴーレムに語りかけるように独り言を口にする。

 

「闘いは失われる命と人間の気高い精神があるから美しいというのに、奴はまったくわかっていない。これだから子供は困るんだ」

 

独自の情報網と自身が持つ衛生映像により全てを知っている理事長は片腕がちぎれ、頭と胸に貫かれた跡があるゴーレムを見てニヤリと笑う。

 

「それにしても大尉め、派手にやり過ぎだ」

 

そう言って理事長、かつて少佐と呼ばれ、対英上陸第二次あしか作戦の首謀者はコーヒーを啜るのだった。




理事長=少佐

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とうとうみんな大好き少佐の登場。しかしここの少佐はかなり丸くなってます。
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