夜が明ける。
アビドス校舎の前にアビドスが借金をしているカイザーローンの車両が停まっている。
「お待たせしました。変動金利等を諸々適応し、利息は788万3250円ですね。
全て現金でお支払いいただきました。以上となります。」
カイザーローンに配備されているロボットは、藤丸が見守る中、アビドスの面々から現金を受け取った。
「カイザーローンとお取引いただき、毎度ありがとうございます。来月もよろしくお願いします。」
銀行員ロボはそう言って、一礼し、車に乗って走り去る。
「はぁ、今月も何とか乗り切ったねー。」
ホシノはそう言って深く息を吐く。
「完済まであとどれくらい?」
シロコはアヤネに尋ねる。
「309年返済なので…今までの分を含めると…。」
「309年!?」
藤丸は、アヤネの口から出た309年という言葉に驚く。
「言わなくていいわよ、正確な数字で言われるとさらにストレス溜まりそう…。
どうせ死ぬまで完済できないんだし! 計算してもムダでしょ!!」
「やっぱり『俺の我が儘』を使っちゃった方がいいんじゃない?」
藤丸は、断られる前提で冗談めいた口調で言う。
「先生も懲りないね~。」
ホシノはそう言って藤丸の冗談を流す。
「ところで、カイザーローンはなぜ現金でしか受け付けないのでしょうね?
わざわざ現金輸送車まで手配して…。
先生の言う通りの事を起こす為にしているのでしょうか?」
「きっとそうよ!」
セリカは、ノノミの予想を肯定する。
「…」
シロコは、目を輝かせて現金輸送車に向けて銃を向ける。
「シロコ先輩、あの車は襲っちゃダメだよ。」
「うん、わかってる。」
シロコは、セリカの静止を聞き入れ、銃を下ろし、そして何かを考え始める。
「計画もしちゃダメ!」
「うん…。」
セリカの第二の静止にシロコは獣の耳を垂れさせる。
「ところでシロコちゃん。その包帯は何かな? どしたの? 大丈夫?」
ホシノはシロコが右手に包帯を巻いているのに気付く。
「う、うん。ちょっと怪我しちゃって。
でも、行動に支障はない。」
シロコはまるで何かを隠すかのように自身の右手を庇うと全員がシロコの右手に注目する。
(でも、先生も右手の甲に同じような痣があった様な…)
包帯の隙間からアヌビスが正面を向いたかのような令呪を覗かせる。
「…」
ホシノは、シロコが嘘をついている事を見抜くが…。
「ま、いいや。とりあえず先に解決するべきは、問題の方でしょ。」
ホシノは、それ以上触れるのは何か良くないと思い、この場では流す。
「とにかく教室に戻ろうー。」
ホシノは、シロコに気遣い、会議室へと戻るように促した。
対策委員会の面々は、会議室で話し合った結果、部品の出どころを探るべくブラックマーケットへ向かう事となった。
ブラックマーケットは一見するとただのビジネス街のように見えるが、そこに陳列されている商品を見るとキヴォトスの表社会では見られない商品の数々が売られている。
(悪性魔境ほどとはいかないか。)
悪性魔境。
悪の皇帝であるジェームズ・モリアーティとソロモン七十二柱における序列一位である魔神バアルが1999年の新宿にて生み出した特異点。
人類最後のマスター藤丸立香と世界最高の名探偵シャーロック・ホームズに復讐する為、
藤丸はアビドスの面々とブラックマーケットについて話しながら街を練り歩く。
しばらく歩いていると銃声が聞こえた。
「銃声だ。」
シロコと藤丸は銃声が聞こえたほうを向くと気品のある白を基調とした制服を着た生徒が不良生徒に追われていた。
「うわああああ!! まずっ、まずいですー!! つ、ついてこないでくださいー!!」
「そうはいくか!」
気品のある制服を着た生徒は、藤丸達がいる方向へ逃げる。
「あれ…あの制服は…」
アヤネは気品のある制服を着た生徒の制服を思い出そうとする。
「わわわっ、そこどいてくださいー!」
「シロコ! ノノミ!」
藤丸は、二人に指示を出すと
「わかってる。」
「はい!」
二人は応え、気品のある制服を着た生徒を追いかける不良生徒二人を一撃のもと気絶させる。
「あ…えっ? えっ?」
「思い出しました。その制服…キヴォトス三大学園の一つ、トリニティ総合学園です! なぜこんなところに…」
トリニティ総合学園。
キヴォトス最大の財力を誇るミッション・スクール。
キヴォトス最強の抑止力を有するゲヘナとキヴォトス最高の技術力を持つミレニアムに並ぶ学校だ。
「あ、ありがとうございました。私、阿慈谷ヒフミと申します。みなさんがいなかったら、学園に迷惑をかけちゃうところでした。
それに、こっそり抜け出してきたので、何か問題を起こしたら…あうう…想像しただけでも…。」
ヒフミという少女はバレた場合の未来を想像し、頭を抱える。
「えっとー、ヒフミちゃんだっけ? それにしても、トリニティのお嬢様が何でこんな危ない場所に来たの?」
ホシノはトリニティに在籍するお嬢様であるヒフミがこの悪徳の街ブラックマーケットにいる事に違和感を抱く。
「あ、あはは…それはですね…実は探し物がありまして…。
もう販売されていないので買う事も出来ない物なのですが、ブラックマーケットでは密かに取引されているらしくて…。」
「もしかしてその可愛いマスコットについてかな?」
藤丸は、そう言ってヒフミの前身の至る所に見受けられる鳥の様なマスコットを指差す。
「そうです。ペロロ様の限定グッズを探しに来たんです。」
ヒフミはそう言って鞄の中からアイスを口に詰め込まれたようなペロロのぬいぐるみを取り出す。
「ペロロ?」
「限定グッズ?」
「はい! これです。ペロロ様とアイス屋さんがコラボした、限定のぬいぐるみ!
限定生産で100体しか作られていないグッズなんですよ。」
「ね? 可愛いでしょう?」
「…。」
シロコはペロロの奇妙なデザインに困惑する。
「わあ☆モモフレンズですね! 私も大好きです! ペロロちゃん可愛いですよねえ!
私はミスター・ニコライが好きなんです。」
「分かります! ニコライさんも哲学的なところがカッコよくて。
最近出たニコライさんの本『善悪の彼方』も買いましたよ! それも初版で!」
ノノミとヒフミはモモフレンズについての話に花を咲かせる。
ヒフミはアイス屋とコラボしたペロロを買いに来た事とブラックマーケットの実情について説明し、藤丸達はブラックマーケットにしかないものを探しに来たと説明をする。
シロコ達はヒフミを助けた礼にブラックマーケットの案内をヒフミに願う。
「あ、あうう…私なんかでお役に立てるかわかりませんが…シロコさんとノノミさんにはお世話になりましたし、喜んで引き受けます。」
「ん、それじゃあ、ちょっとだけお願いするね。」
藤丸達はヒフミの案内の元、ブラックマーケットで戦車についての情報を探し始める。
藤丸達は、ブラックマーケットで、数時間歩き、小休憩としてノノミと割り勘でたい焼きを買い、近くの休める場所に座る。
「ここまで情報がないなんてありえません…妙ですね。
お探しの戦車の情報…。
絶対どこかにある筈なのに、探しても出てきませんね。」
ヒフミは、口元についたたい焼きの餡を綺麗に拭いながらそう言う。
「販売ルート、保管記録…
すべて何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします。
いくらここを牛耳っている企業でも、
ここまで徹底してブラックマーケットを統制する事は不可能な筈…」
「そんなに異常な事なの?」
「異常というよりは…普通ここまでやりますか? という感じですね。
ここに集まっている企業は、ある意味開き直って悪さしてますから、逆に変に隠したりしないんです。
例えばあのビル。あそこがブラックマーケットに名を馳せる闇銀行です。」
ヒフミの指を指した先には如何にも悪だと理解できる黒い銀行が聳えていた。
「闇銀行?」
「ブラックマーケットで最も大きな銀行の一つです。聞いた話だと、キヴォトスにおける犯罪の15%の盗品があそこに流されているそうです。
横領、強盗、誘拐など、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に帰られてまた他の犯罪に使われる。
そんな悪循環が続いているのです。」