「…そんなの、銀行が犯罪を煽っているようなものじゃないですか。」
「その通りです。まさに銀行も犯罪組織なのです。」
ヒフミは闇銀行の仕組みについて話す。
「ひどい! 連邦生徒会は一体何やってんの?」
「理由はいろいろあるんだろうけどねー、どこもそれなりの事情があるだろうからさ。」
「現実は、思った以上に汚れているんだね。
私たちはアビドスばかりに気を取られすぎて、外のことをあまりにも知らな過ぎたかも…。」
アビドスはブラックマーケットと闇銀行の関係性を知り、絶句すると遠くから装甲車の様な重い音が聞こえてくる。
『お取込み中失礼します! そちらに武装した集団が接近中!』
アヤネは無線通信で武装勢力がこちらに近付いてきている事を知らせる。
『気付かれた様子はありませんが…
まずは身を潜めた方がいいと思います。』
アヤネがそう言うと、武装勢力は目視できる距離にまで藤丸達に近付いていく。
武装勢力の戦車には黒い装甲の戦闘用ロボットが乗っている。
「う、うわあっ!? あれは、マーケットガードです!」
ヒフミは、声を荒げ、マーケットガードの存在に怯える。
「マーケットガード?」
「先ほどお話しした、ここの治安組織でも最上位の組織です!
急ぎましょう!」
ヒフミは、ノノミの手を掴み、その場から離れ、藤丸達はヒフミの後に続き、マーケットガードを偵察できる位置に隠れた。
「パトロール? 護衛中のようですが…」
「トラックを護送してる…現金輸送車だね。」
マーケットガードは現金輸送車を守るように取り囲んでおり、その警戒度を窺い知れる。
(マーケットガード…つまり大人…いざとなれば大人のカードを使うか…)
藤丸は、大人のカードをいつでも起動できるように意識し、魔力を消費し、サポート系サーヴァントを召喚しようと準備をする。
「あれ…あっちは…」
マーケットガードと現金輸送車は闇銀行の中へと入った。
「闇銀行に入りましたね?」
現金輸送車の中から先ほどアビドスから借金を取り立てたカイザーローンのロボットが降り、現金の入ったケースが積まれた荷台を押す。
「今月の集金です。」
「ご苦労様、早かったな。では、こちらの集金確認書類にサインを。」
闇銀行に勤めるロボットはケースが積まれた荷台を受け取り、カイザーローンのロボットは「はい」と言って書類を受け取り、サインをする。
「いいでしょう。」
闇銀行に勤めるロボットは、サインを確認した。
「では、失礼します。」
カイザーローンのロボットは、そう言って再び現金輸送車に乗り込み、去っていった。
「さっきの人…。」
「やっぱりそうだったのね! カイザーは何か裏でやっていたのよ!」
セリカはカイザーローンのロボットを見て、真の意味で確信する。
カイザーは何かをしでかしていると
「えっ!? ええっ…?」
「ほ、本当ですね! 車もカイザーローンのものです!
今日の午前中に、利息を支払ったあの車と同じようですが…
先生の言っていた通り本当に…!?」
「か、カイザーローンですか!?」
「ヒフミちゃん知ってるの?」
「カイザーローンと言えば…かの有名な
カイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です…。」
「有名な…? マズいところなの?」
「あ、いえ…カイザーグループ自体は犯罪を起こしていません。
しかし合法と違法の間のグレーゾーンで上手く振る舞っている多角化企業で…。
カイザーは私達トリニティの区域にもかなり進出しているのですが、生徒たちへの悪影響を考慮し、「ティーパーティー」でも目を光らせています。」
「「ティーパーティー」…あのトリニティの生徒会が、ね。」
「ところで皆さんの借金とはもしかして…アビドスはカイザーローンから融資を…?」
「借りたのは私達じゃないんですけどね。」
「話すと長くなるんだよねー。アヤネちゃん、さっき入ってった現金輸送車の走行ルート、調べられる?」
ホシノがそう言うと通信先のアヤネは、現金輸送車のルートを調べ始める。
「少々お待ちください。」
アヤネは、該当する情報を全て調べ上げるが、データはオフラインで管理されている事がわかった。
「…ダメですね。すべてのデータをオフラインで管理しているようです、
全然ヒットしません。」
「だろうねー。」
ホシノはそう言ってため息をついた。
「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり…」
「私たちの支払ったお金が先生の予想通りブラックマーケットに流れていた…?」
「私達はブラックマーケットに、犯罪資金を提供していたってこと!?」
セリカの言葉に一同は声を詰まらせる。
「さっきサインしてた集金確認の書類…見れば確たる証拠になりませんか?」
ヒフミは、書類を奪うことを提案する。
「さすが。」
「おお、そりゃナイスアイデアだねー。ヒフミちゃん。」
「あはは…でも考えてみたら、書類はもう銀行の中ですし…無理ですね。
ブラックマーケットでも最も強固なセキュリティを誇る銀行の中となると…
それにあれだけの数のマーケットガードが目を光らせてますし。
それ以外に輸送車の集金ルートを確認する方法は…」
ヒフミはそう言って頭を抱え、唸る。
「うん、他に方法ないよ。」
「え?」
「ホシノ先輩、先生。ここは例の方法しか。」
シロコは、ホシノと藤丸に「例の方法」を提案する。
「なるほど、あれかー。あれなのかなー。」
「……わかった。責任は私が取る。」
ホシノは、やれやれと言わんばかりの態度を取り、銃を装填し、藤丸は諦め、そして何かを覚悟したかのような顔をする。
「…ええっ!?」
「あ…!! そうですね、あの方法なら!」
「何? どういう事? …まさか、あれ? まさか、私が思ってるあの方法じゃないよね?」
セリカがそう言うとシロコは期待を込めた表情でセリカの方を見る。
「う、嘘っ!? 本気で!?」
「…あ、あのう。全然話が見えないんですけど…「あの方法」って何ですか?」
ヒフミは手を挙げ、シロコに質問をする。
「残された方法はたった一つ。」
そう言ってシロコは、青い覆面を取り出し、被る。
「ん、銀行を襲う。」
「はいっ!?」
ヒフミはシロコの発言に驚き、一瞬目を白くする。
「だよねー、そういう展開になるよねー。」
ホシノもまた覆面を被る。
「はいいいっ!!??」
「わあ☆そしたら悪い銀行をやっつけるとしましょう!」
ノノミもまた覆面を被り、ガトリングを装填する。
「えええっ!!?? ちょ、ちょっと待ってください!」
「はあ…マジで? マジなんだよね?
ふぅ…それなら…」
セリカは、そう言って赤い覆面を取り出し、被る。
「とことんやるしかないか!!」
「あ、うあ…? あわわ…?」
ヒフミはこの状況に混乱し、目を回す。
「責任の所在は私にある。
目的を果たしてくれ。」
藤丸は、あらかじめ用意していた悪鬼を象った黒い仮面。
丑御前から貰った黒鎧面頬を取り出し、装着する。
(銀行強盗を行うという非道。
そして顔を隠す為の面。
これほどうってつけの物はない。)
黒鎧面頬は、Bランク以下の精神攻撃を無効化する神秘を有し、慈悲なく如何なる非道も迷わず実行する為のオーパーツである。
書類目的とはいえ銀行強盗という犯罪行為。
相手がブラックマーケットという悪の巣窟にて汚れ切った金を支配する闇銀行とはいえ盗みは盗み。
悪行、非道には変わらない。
「…はぁ、了解です。こうなったら止めても聞く耳持たないでしょうし…どうにかなる、はず。」
ヒフミは常識人だと思っていたアヤネの発言に言葉を失う。
「ごめん、ヒフミ。あなたの分の覆面の準備はない。」
「うへー、ってことは、
バレたら全部先生に脅されてやらされたって言うしかないねー」
「おいおい…まぁ、実質的にそうなるけども…」
ホシノの発言にツッコミを入れながらも藤丸は肯定する。
「ええっ!? そ、そんな…覆面…何で…えっと、だから…あ、あう…」
「それは可哀想すぎます。
ヒフミちゃん、とりあえずこれでもどうぞ☆」
ノノミはそう言ってたい焼きが入っていた紙袋に二つ穴を開け、即席の覆面を作り上げた。
「たい焼きの紙袋? おお! それなら大丈夫そうー!」
「え? ちょ、ちょっと待ってください、みなさん。」
「あ、あうう。」
ノノミは、紙袋で作った覆面をヒフミに被せる。
「ん、完璧。」
シロコはそう言って親指を立てた。
「番号も降っておきました。ヒフミちゃんは5番です☆」
「見た目はラスボス級じゃない? 悪の根源だねー、親分だねー。」
「せ、先生の方が悪の親分…魔王みたいな気がしますが…」
ヒフミは藤丸の方を見る。
そこには悪魔の様な黒い鉄仮面をつけ、歴戦の悪人の様な威容を放つ藤丸が闇銀行を見据えていた。
「って、私もご一緒にするんですか? 闇銀行の襲撃に?」
「さっき約束したじゃーん? ヒフミちゃん、
今日は私たちと一緒に行動するって。」
「う、うあああ…わ、私、もう生徒会の人に合わせる顔がありません。」
「問題ないよ! 私らは悪くないし! 悪いのはあっち! だから襲うの!」
「それじゃあ先生。例のセリフを。」
シロコはそう言って藤丸の方を向く。
「銀行を襲うよ!」
「はい☆出発です!」
「あ、あうう…」
「ふぅ…では、水着覆面団。」
アヤネは無線越しに覆面を被ると。
「出撃しましょうか。」
アヤネは、出撃の合図を送る。