青春記録都市キヴォトス   作:とある厨病の異聞観測

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第10話 (アウトロー)が抱く憧憬

覆面水着団は、追ってくるマーケットガードの戦力を全滅させながら封鎖地点を突破し、突破したのを確認すると全員は覆面を脱いだ。

 

「やった! 大成功!」

「本当にブラックマーケットの闇銀行を襲っちゃうなんて…ふう…」

「いやぁ~適当に勝ってしまうなんてね。」

 

ホシノは双眼鏡で、封鎖地点を過ぎた先の遠くから機能停止したマーケットガードが保有する戦力の山を見てそう言いながら体を伸ばす。

 

「ん、それにさっきの受けた戦車砲のダメージがなくなってる。

いや、それ以前に戦車砲の威力が大分軽減されてる。」

 

シロコは先ほどマーケットガードの軍勢からの戦車砲を正面から受けたが、吹き飛ばずただ銃弾で撃たれた程度のダメージしか受けなかった。

 

「そんな事よりシロコちゃん。集金記録の書類はちゃんと持ってるよね?」

「う、うん…バッグの中に。」

 

シロコはそう言ってバッグを地面に置き、中身を開くとそこには大量の金塊と札束そして目的の物である書類が入っていた。

 

「へ? なんじゃこりゃ!? カバンの中に…札束と金塊が…!?」

「うえええええええっ!? シロコ先輩、現金を盗んじゃったの!?」

「ち、違う…目当ての書類はちゃんとある。」

 

シロコはそう言って鞄の中から集金記録を取り出す。

 

「このお金は、銀行の人が勝手に勘違いして入れただけで。」

「どれどれ…うへ、軽く1億はあるね…金塊も合わせるともっと行くんじゃないかな? 本当に5分で1億稼いじゃったよー。」

 

ホシノはそう言って札束の山を見ながら鞄の中に入っていた金塊の質感を手で確かめる。

 

「やったあ!! 何ぼーっとしてるの! 運ぶわよ!」

 

セリカは、鞄の中身に歓喜し、鞄を運ぼうと手を伸ばす。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! そのお金、使うつもりですか!?」

 

アヤネは、セリカが鞄に手を伸ばそうとしているのを止める。

 

「アヤネちゃん、なんで? 借金を返さなきゃ!」

「そんなことしたら…本当に犯罪だよ、セリカちゃん!!」

「は、犯罪だから何!? このお金はそもそも、

私達が汗水流して稼いだお金なんだよ!

それがあの闇銀行に流れてったんだよ!

それに、そのままにしておいたら、犯罪者の武器や兵器に変えられてたかもしれない!

悪人のお金を盗んで何が悪いの!?」

 

セリカは思い返し、想像する。

自分達が血と汗を流して稼いだ日々を

そしてそのお金が犯罪者の手に渡り、犯罪者の私腹を肥やしている光景を。

 

「私はセリカちゃんの意見に賛成です。

犯罪者の資金ですし、私たちが正しい使い方をした方がいいと思います。」

「ほらね! これさえあれば、学校の借金をかなり減らせるんだよ!?」

 

ノノミが自分の意見に賛成した事にセリカは、勢いづき、アヤネたちを説得する。

 

「んむ…それはそうなんだけど…シロコちゃんと先生はどう思う?」

 

ホシノはそう言ってシロコと藤丸の方を見る。

 

「…自分の意見を述べるまでもない、ホシノ先輩が反対するだろうから。」

「私も同意見だ。ホシノのことをわかったつもりじゃないけど、ホシノ自身はこういったやり方は嫌なんじゃないかな?」

「へ?」

 

セリカは藤丸とシロコの意見に驚く。

 

「さすがシロコちゃん。私のことわかってるねー

先生もこの短期間ながらも大人として私のことを見てくれてるわけだ。

私達に必要なのは書類だけ。お金じゃない。

今回のは悪人の犯罪資金だからいいとして、次はどうする? その次は?」

 

セリカはその言葉を聞いて沈黙する。

 

「こんな方法でなれちゃうと…

ゆくゆくは、きっと平気で同じことをするようになるよ。

そしたら、この先またピンチになった時…

「仕方ないよね」とか言いながら、やっちゃいけないことに手を出すと思う。

うへ~、このおじさんとしては、可愛い後輩がそうなっちゃうのはイヤだなー。」

 

ホシノは、そう言って頬を軽く掻く。

 

「そうやって学校を守ったって、何の意味があるのさ。

こんな方法を使うくらいなら、最初からノノミちゃんが持ってる燦然と輝くゴールドカードか、今なら先生の我が儘に頼ってたはずー。」

「…私もそう提案しましたが、ホシノ先輩に反対されて…

先輩の気持ちわかります。いくら頑張ったって、きちんとした方法で返済をしない限り、アビドスはアビドスじゃなくなってしまう…。」

「うへ、そういうこと。

だからこのバッグは置いていくよ。頂くのは書類だけね。これは委員長としての命令だよー。」

「うわああ!! もどかしい! 意味わかんない! こんな大金を捨ててく!? 先生の時もそうだけど変なところで真面目なんだから!!」

「うん、委員長としての命令なら。」

「私はアビドスさんの事情をよく知りませんがこのお金を持っていると、何か他のトラブルに巻き込まれるかもしれません。

災いの種、みたいなものでしょうから。」

「じゃあこのカバンは責任者の私が処分するよ。」

 

藤丸は札束と金塊の入った鞄を持つ。

 

「ほい、頼んだよー。」

「待ってください! 何者かがそちらに接近しています!」

「追手のマーケットガード!?」

「い、いえ。敵意はない様子です。

調べますね。」

 

アヤネは空中に飛ばしたドローンのカメラを拡大させ、接近してくる存在を調べる。

 

「あれは…」

 

カメラに写っていたのは便利屋のアルだった。

 

「べ、便利屋のアルさん!?」

 

アルはこちらへとヒーローに出会った子供の様に目を輝かせながら近づいていた。

 

「はあ、ふう…ま、待って!」

 

アルの声にアビドスとヒフミは覆面を被り、藤丸は仮面をつける。

 

「あ、落ち着いて。私は敵じゃないから。」

 

(何であいつが?)

(撃退する?)

(どうかな。戦う気のない相手を叩くのもねえ。

それにあの子たちとの因縁は、あの一件で終わったし。)

(お知合いですか?)

(まあねー、そこそこー)

 

覆面水着団は、小声でアルに聞こえないように話す。

 

「あ、あの…た、大したことじゃないんだけど。」

 

アルは、覆面水着団の悪行について熱く語り、敬意を露にする。

 

「そ、そういうことだから…な、名前を教えて!!」

「名前…!?」

「はいっ! おっしゃることは、よーくわかりましたっ!

私達は、人呼んで覆面水着団!」

「覆面水着団!?

や、ヤバい! 超クール!! カッコよすぎるわ!!」

「うへ~本来は水着に覆面が正装なんだけどね、ちょっと緊急だったもんで、今日は覆面なんだー。」

「そうなんです!! 普段はアイドルとして活動してて、夜になると悪人を倒す正義の回答に変身するんです!

そして私はクリスティーナだお♧」

「「だお♧」!? キャラも立ってる!?」

「我が名はヴォルフガング! 己が正義の為にあまねく冒涜を省みぬ者達の守護者!

貴様らの言葉で言えばプロデューサーである!」

 

藤丸、否、ヴォルフガングは、そう言って中二病全開のポーズを決め、自己紹介をすると、アルはこれまで以上に目を輝かせる。

 

「うへ、目には目を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、

我が道の如く魔境を行く。

これが私らのモットーだよ!!」

「な、なんですってー!!」

 

アルはホシノの言葉を聞いて驚き、白目を向く。

 

「クハハハハハ!! 悪を志す者への贐としてその金は貴様にくれてやろう!! そしてその対価として必ずや我らと同じ高みへと昇ってくるがよい!!」

 

ヴォルフガングは巌窟王の真似をし、アルのアウトローとしての生き様を肯定する。

 

「だが、闇に踏み入れる時、闇もまた貴様らを蝕む。

故に闇に踏み入れる時、用心せよ。

闇を利用する時、闇もまた貴様らを利用しているのだと。

そして闇が貴様らを蝕んだ時、我か、シャーレの先生を呼ぶがいい。

汝らの嘆きに我と先生は応えよう。

故にその時、この言葉を思い出せ!

「待て、しかして希望せよ」とな!」

 

ヴォルフガングは巌窟王の言葉を残し、「クハハハハハ!!」と笑いながら覆面水着団を連れてその場を去っていく。

 

「ヴォルフガングさん。かっこいい…」

 

アルは、まるで恋する乙女になったかのようにヴォルフガングに見惚れる。

 

「よし! 我が道の如く魔境を…その言葉、魂に刻むわ! 私も頑張る!」

 

アルは、そう言って自分の頬を両手で叩き、気合を入れなおす。

 

(事実を伝えるべきなんだろうけど…いつ言おうか?)

(面白いからしばらく放置で)

 

カヨコとムツキは小声で話し、ムツキは面白うそうだからと静観を決める。

 

「あ、あの…

このバッグどうしましょう? ヴォルフガングさんが貰ってもいいと言っていましたけど…」

 

ハルカはそう言ってバッグの中身を取り出し、金塊と札束を見せる

 

「…どうしましょう…皆はどう思うかしら?」

「……一旦持ち帰って決めよう。」

 

カヨコはそう言って鞄を持って便利屋はその場を去っていく。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「という訳で、どさくさに紛れて便利屋にあげちゃったってワケ!」

「えっー!?」

「うへ~いいんじゃない? どうせ捨てるつもりだったんだし。気にしない、気にしない。」

「うん、彼女達になら任せられると思う。」

「ですよね☆悪い人たちじゃなさそうですし、きっと良い様に使ってくれるはずです☆」

「あはは…良い事をしたって思いましょう。

あの人たちがあのお金でお腹いっぱいになれると思えば…」

「うう…もったいない…どう考えても勿体なさすぎる!! まったくもう、みんなお人よしなんだから!!」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

藤丸達は、アビドスに戻り、全員で書類の確認を行っていた。

セリカは手元にある書類を確認すると、感情を露にして机を強く叩いた。

 

「先生の予想通りだったわ…カイザーの奴ら許せない!!」

「現金輸送車の集金記録にはアビドスで788万円集金したと記されてる。

私達の学校に来たトラックで間違いない。

でも、その後にカタカタヘルメット団に対して「任務補助金500万円提供」って記録がある。」

「私たちのお金を受け取った後に、ヘルメット団のアジトに直行して任務補助金を渡したってことだよね!?」

「やはりそうでしたか。

カイザーローンが背後にいるだなんて…」

「予想はしてくれてましたけど、やっぱり理解できません! 学校が破産したら、貸し付けたお金も回収できないでしょうに…

どうしてそのようなことを…?」

「ふーむ。」

「これだけのこと…きっとカイザー本社も関わっていると思う。」

「はい。そうみるのが妥当ですね。」

 

この事件は、深い所、カイザーの深部に繋がっていると見て、アビドスの面々はカイザーへの警戒心を高めた。

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