青春記録都市キヴォトス   作:とある厨病の異聞観測

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第3話 土地問題

アビドスにある便利屋の事務所。

便利屋のメンバーは引っ越しの前準備を始めていた。

 

「引っ越しそうとう嫌なんだね。」

 

カヨコは、ため息をつくアルを見てダンボールを運ぶ。

 

「気持ちはわかるけど風紀委員会に場所知られちゃったし、アビドスに鞍替えった事でカイザーに狙われるだろうし。しょうがないでしょー?」

 

ムツキはそう言って養生テープとダンボール箱を持って荷物を纏める。

 

「そう、先生がこの一件を終え、アビドスから去れば風紀委員会は私達が依頼を終えたと察するはず。

私達と先生との契約は先生がアビドスに滞在している期間のみ。

となればすぐさまこの事務所に風紀委員会が突撃してくる。」

 

数刻前、風紀委員会との戦闘後の一時間後、藤丸は便利屋の事務所に来ていた。

 

「ごめんね。便利屋の皆。」

 

藤丸は、便利屋にヒナからの伝言を伝え、アルとカヨコに頭を下げる。

 

「頭を上げて先生。大丈夫よ。いつものことだから。」

「そうだよ。先生…まぁ、となればこの事務所を手放す事になるね。」

「…まぁ、そうなるわよね。ハァ…気に入ってたのに。」

「……引っ越し代やその他諸々、便利屋の移転費用について追加報酬として足しておくよ。」

「いやいやいや、別にいいわよ! 先生! これ以上、先生の懇意に甘えるのは、アウトローじゃないわ! 便利屋移転については大丈夫よ!」

 

アルは、アウトローとしての矜持として藤丸からの実質的な慰謝料を断る。

 

「……本心のようだね。わかった。じゃあ正規報酬で支払うよ。私がアビドスにいる間、今後ともよろしくね。」

 

藤丸は、そう言って便利屋を立ち去って行った。

そして現在時刻に戻る。

便利屋は余裕を持っていつでも出られるようにしているのだ。

 

(また捕まってるよ…彼女も懲りないね。)

 

カヨコは、引っ越しの休憩で、スマホに表示されているネットニュースを見る。

オリエがまたヒナに逮捕されるという旨の記事が小さく掲載されている。

オリエはイオリなどのゲヘナ上位戦力に対しては全戦全勝だが、ヒナを始めとするゲヘナ最上位戦力との戦いにおいては全戦全敗。

この世界のキヴォトスでは日常茶飯事の出来事。

敗北を繰り返しており、めげず諦めない様をヒナは呆れている。

釈放される度にヒナ、妖精騎士、ジャンヌへの挑戦を企てているが、毎度の如く返り討ち。

返り討ちにされる度、取り調べでは自らを打ち破った者を讃える賛辞を述べている。

反省の色は見られずさりとて彼女の存在は結果的に見れば彼女が被害をもたらしているのは決まってゲヘナの規則違反者、犯罪者に対してのみであり、犯罪抑止に貢献している側面もある為、やむを得ず普通の規則違反者と同じ刑期で釈放されている。

 

(全く彼女は何をしたいのやら…)

 

カヨコは、そう思い、小休憩を終え、引っ越し準備を作業を続ける。

その時、便利屋の事務所の扉をたたく音がした。

 

「はい。」

 

アルの声に反応して、扉が開かれるとそこにはシロコがいた。

 

「ん、近くを通ったからお礼を言いに来た。」

「えっと、砂狼シロコちゃんだよね? 別に私達に礼を言う動機なんてないと思うけど…」

「ん、あのバッグを置いたの貴方達でしょ? そのお礼。ありがとう。」

 

シロコは回想する。

かつて紫関ラーメンの店だった廃墟にシロコ自身が盗んだ現金入りのバッグが置かれているのを。

 

「な、何を言っているのかしら? お金の入ったバッグなんて全然知らないけど!? そんなもの見た事も聞いたこともないんですけど!?」

 

アルは、慌てながら照れ隠しをする。

 

「アルちゃん。お金の入ったって言っちゃってる時点で語るに落ちてるって。」

「あ、あれは貴方達が銀行強盗で奪ったお金でしょ? それを拾ったからって自分のモノにするほど落ちぶれていないわ。

アウトローにもけじめってものがあるの!」

「あっ、開き直った。」

「あのバッグ。大将に届けておいたから」

「そっか。ありがとね。」

「ん、じゃあ…引っ越しする時はまた見送るからまた…」

 

シロコは、そう言って去っていった。

 

所移り変わってアビドスの病院。

紫関の大将は、病室で窓の外を見ながら煙管を吹かす。

 

「こんにちは。」

 

アヤネは、ベッドを隔てるカーテンを開け、大将に挨拶をする。

 

「大将お見舞いに来たよー。」

「お体の具合はどうですか?」

「なぁに、ちょっと擦りむいただけさ。それよりすげぇ爆発だったのに俺以外怪我人が出なかったなんてホントよかったよ。」

「えぇ、ですが。」

「紫関ラーメンが…」

「あぁ…バイトできなくなっちゃってごめんなぁ…セリカちゃん。」

「大将! そういう問題じゃ…」

「いいんだ。そもそももうすぐ店も畳むつもりだったからなあ…」

「え?」

「なぁに…予定がちょっと早くなっただけさ。」

 

大将の発言に三人は驚く。

 

「お店をですか?」

「あぁ、ちょっと前から退去通知が来ていてね。」

「退去通知って何の話ですか!?

アビドス自治区の保有権は、アビドス高校で…」

「そうか…君達は知らなかったんだな。

何年か前…アビドス生徒会から建物と土地の保有権が移ったんだ。」

「アビドスの自治区なのにですか?」

「セリカちゃん知ってた?」

「ううん、今、初めて聞いた。私達が返済している以外にも借金があったって事?」

「私も知りませんでした。」

「じゃあ、今は誰のものなの!?」

 

ノノミは回想する。

カイザーコーポレーションの胡散臭いロボットを

 

「もしかしてカイザーコーポレーション。」

 

ノノミの発言に二人はざわつく。

 

その頃、藤丸は一人、砂漠に来ていた。

礼装の機能を稼働させ、砂漠環境に適応している。

 

(…砂漠の遠くから俺でもわかる巨大な魔力反応がある。)

 

砂漠の遠くから感じ取れる巨大な魔力反応。

三流の魔術師であっても感じ取れる程の魔力量だ。

 

(どうして今まで気づかなかったんだ?)

 

「アロナ。遠くから感じ取れる存在の魔力量を測定できる?」

 

この世界において「嘆き」と「古則」を「聖杯」と「奇跡」に置き換えてパスワードを打ち込んだ場合のアロナは、魔術的な機能が追加される。

 

『お任せください!』

 

藤丸は、魔力を感じ取れる方向に向けてシッテムの箱を向ける。

 

『わわっ! これは! すごい魔力量です! 都市一つを簡単に壊滅させられる魔力を秘めています!』

(…カイザーが狙っているのはあの魔力反応か?)

「ありがとう。アロナ…後、もう一つ頼んでもいいかな?」

『はい! どうぞ!』

「カイザーコーポレーションと砂漠の関係性について追加で調べて欲しい。アビドス砂漠で何かをしているみたいだから」

『承知いたしました!』

「ありがとうアロナ。」

 

そういって藤丸は、シッテムの箱をしまい、砂漠からアビドス校舎へ向かって行った。

藤丸が砂漠を去った後、砂漠の遠くの地にて巨大な魔力反応を秘めた機械の大蛇が咆哮を上げた。

夕暮れ時、アビドス校舎には、藤丸以外全員が揃っていた。

 

「おかえりみんな。」

 

藤丸はそう言って対策委員会の部室に入った。

 

「こんにちは先生。」

「大将の容体はどうだった?」

「はい! 心身ともにお元気でした!」

「紫関ラーメンもそのうち再開するって!」

「そっか。それはよかった。」

「はい。」

 

紫関ラーメンは再開するという知らせが入ったのにアビドスの面々は暗い表情だ。

 

「どうしたの?」

「実は別の問題が出てきまして…」

「今ちょうどその話をするところだったのよ。」

「単刀直入にいいますとこのあたり一帯の保有権はアビドス高校に無い様なんです。」

「……そうか。なんとなくそうかもしれないと思ったんだ。」

「驚かないのね。」

「あぁ、前に私との土地の売買の提案があっただろう? 私に対して過去最高額で土地を売り、そして私から過去最低額で土地を買い戻す提案。もしかしたら私より先に誰かがアビドスの地に手を付けている可能性もと考えたんだ。後で私も調べるつもりだったんだけど…やっぱり…」

「それっていつから…」

「ハッキリとは…ただ大将は何年か前にと…」

「じゃあ、今は誰が…」

「カイザーコーポレーション…」

「ここ最近のことだけじゃなかったんだ。」

「便利屋の皆さんや、ヘルメット団。それよりも前から…私達はカイザーコーポレーションの手の内で…」

「あ~マジムカついてきた!」

「ま、まだ結果が出てみないとわかりません。そうじゃないという線も…」

 

アビドスが土地問題で陰鬱な議論を続ける中、ホシノは大きなあくびをして立ち上がった。

 

「最近さ。寝ても寝ても寝た気がしないんだよね~

うへ、おじさんも歳かね~」

 

ホシノはそう言ってゆらゆらと歩きながら窓の方へと歩いていく。

 

「お? ねぇ見て見て!」

 

ホシノは、そう言って窓の外を指差す。

 

「あの雲、鯨っぽくない!?」

「あ、えと? ホシノ先輩?」

「ほらほら…あそこのおっきいの! アヤネちゃんの位置からだと見えないでしょ? こっちおいでよ~痛くしないからさ~ほれほれ~」

「ちょっと! 真剣な話をしてるのに今はそんなことしてる場合じゃ…」

「ほらほら、セリカちゃんも見てみませんか?」

「ノノミ先輩までなんなのよ~」

「あの雲ですよね? 鯨って言うよりイルカの様な…」

「えぇ~そうかな?」

「ホシノ先輩が言ってるのってその上にある奴ですよね?」

「確かに…そう考えると下にあるのはイルカっぽいかも…」

 

アビドスの生徒達は雲を眺め、雲を海洋動物に例える会話を弾ませる。

 

「じゃあせっかくだしさ。皆で水族館に行かない?」

「で、でも…」

「今は何もわからないでしょ? 暗い顔して待ってても結果は変わらないでしょ?

ならさ…せめて私は…笑顔で待っていたいな!」

 

ホシノの四人はホシノの提案に笑みを浮かべる。

 

「それにセリカちゃ~ん。水族館に行ったらクラゲもたくさんいるよ~こう、うにょうにょして綺麗だよ~」

 

ホシノはセリカに接近し、奇妙な手の動きをして水族館に誘う。

 

「おじさんと一緒に行こうよ~ちょっとでいいから~」

 

ホシノは、酔っぱらった中年男性即ち文字通りおじさんの様な絡み方でセリカを水族館に誘う。

 

「わ、わかったわよ! 行けばいいんでしょ!?」

「そうですね。たまにはいいかもしれません。」

「はい! 息抜きも大切ですから!」

「先生も行くでしょ?」

「え?」

「え? ってこないつもり?」

「先生の引率は必要だと思います。」

「そうだね。よし、皆で行こう! 勿論私の奢りでだ。」

「ありがとうございます!」

「うひひ~楽しみだな~」

 

その日の一時間後。

シロコの家。

シロコは寝る支度の為、風呂に張っていた。

シロコはのぼせる前に風呂から出て、髪を束ねる。

シロコは、鏡の曇っている部分に魚のマークを書き、そして曇っている部分を素手で拭いた。

その時、部屋の外で何か物音がした。

 

「!?」

 

シロコは、部屋の外へ聞き耳を立て、そして藤丸から護身用に渡されていたハンドガンを取り出し、部屋の外へ出た。

シロコは索敵を開始し、周囲を見渡すと、クッキーが入った缶がテーブルの下に散乱していた。

散乱したクッキーを見ると、居間の奥へと入り込み、索敵をすると白い眼をした鴉がシロコに襲い掛かる。

シロコは鴉をはねのけると、鴉は、散乱したクッキーの缶に近付き、鴉はピンクのクッキーと黒いチョコレートで中心以外をコーティングされた青いクッキーを見て、どちらにするか迷った後、青いクッキーを口に咥え、飛び去っていった。

シロコは飛び去った鴉を見送り、窓を閉め、寝室に向かうと、そこにはオブジェが床に落ち、壊されていた。

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