『昨晩未明、アビドス砂漠にて過去の観測記録を遥かに超える砂嵐が発生し、キヴォトス各地が災害に見舞われ、現在各交通機関にて復旧作業が執り行われており──』
藤丸のスマホの画面には昨日の夜、セトの憤怒が引き起こした砂嵐についてのニュースが取り上げられており、砂嵐によって被害を受けたキヴォトス各地の様子が中継で報道されている。
砂嵐が出現していた期間が短かった為か、幸いにも死者は出ておらず街の様子もすぐに復旧に取り掛かれる状態だった。
『また砂嵐が消滅する直前、アビドス砂漠にて十字の光が観測されており、この二つの事象に関連性について調査を進めております。』
(そうだよな。ブラックバレルの事は放送できない。
あれはショッキングな映像を地上波で流されるようなものだ。
砂嵐はキヴォトスの人々に直接関わる事だけどブラックバレルはキヴォトスの人々に関わる事じゃない。
クロノスには悪い事をしたな…ショッキングな映像を流さない様に編集しなきゃいけない。)
そう思い、藤丸は動画配信アプリを閉じる。
その頃、キヴォトス三大校の一つミレニアム・サイエンススクールでは──
セミナー傘下の特務組織「特異現象捜査部」
車椅子に座る儚げな白髪の少女は、キヴォトスを壊滅しうる砂嵐が消滅するきっかけとなった十字の光とブラックバレルの光が映し出された映像をモニターに映し、再生していた。
「ハァ…ハァ…ハァ…映像越しでも精神に異常をきたしますか…」
白髪の少女は、映像に映る黒き死の光。
それを見て、少女の心は疲弊し、息を切らしていた。
「部長…もうやめよう? 私も見ていてキツくなるよ。」
露出度の高すぎる服装をした少女は恐怖による冷や汗を搔きながら白髪の少女に提案した。
「そうですね。エイミ…これ以上見るのはやめましょう。レオナさんもそれでいいですね?」
白髪の少女は青いダヴィンチの星を嵌めた杖を持った幼い少女レオナにそう言った。
「うん、私はここの部外だからね。君の判断に従うよ。ヒマリ部長。
それ以前にあの光は君達にとっては有害なモノ。
黒い光については私一人で調査するよ。」
「貴方はあの光に耐性が?」
「うん、体の規格…いや、神秘の規格が違うんだ。他の生徒と違ってね。」
レオナはそう言って自らの頭の上にあるダヴィンチの星の形をしたヘイローに指差す。
「だから黒い光の件は私に任せて欲しい。」
「なら私たちはあの十字の光だね。あれだけでも観測されたエネルギー量は私達の想像を超えるエネルギー量が発生していた。」
「それにアビドス砂漠で観測されたサンクトゥム・タワーに酷似した複数の反応も気になります。」
藤丸がセトの憤怒との戦闘で使用したサンクトゥム・タワーと同質の世界を縫い留める存在。
ヒマリは、アビドスに出現し、そして消えたサンクトゥムタワーに酷似した複数の存在を気にかけていた。
「もしかしたら…アビドス砂漠で未曾有の戦闘が行われていた可能性がありますね。
そういえばシャーレの先生…でしたか…失踪した連邦生徒会長に招かれキヴォトスの外から来たレオナさんの兄にして不可解な人物…先生は確か今アビドスにいらっしゃるとか…念の為ですが、この一件に関わっていると見て調査を進めてみましょう。」
ヒマリは、シャーレの先生である藤丸立香の資料を展開し、今回の件に関わっていると推理する。
その直感は正しくまさにサンクトゥムタワーに似た反応も十字の光も黒い光も藤丸が起こしたも同然の超常現象だ。
(藤丸君…君はここでも使ってしまったんだね。
ブラックバレルを…
それもたった一人で…)
レオナは藤丸がたった一人でブラックバレルを使ってしまった事に険しい表情をしていた。
彼女の名はレオナルド・ダ・ヴィンチ。
真名は、
生徒としての名は藤丸レオナ。
藤丸の内面世界『
「あのレオナさん。ユウカさんが呼んでいます。」
亜麻色の片目隠れの少女は、扉を開き、部屋の前でレオナを呼ぶ。
「うん。キリエ、今行くよ。じゃあまた後でね。」
(記憶を失ったこの子の事も何とかしなきゃいけない。)
レオナはそう思い、記憶喪失の少女キリエの元へと向かう。
(ホシノを止められなかった…
ホシノが抜けたかもしれない今、もしかしたらアビドスに生徒会としての役割はないのかもしれない。だったら…)
藤丸は、連邦生徒会に一通のFAXを送る為の文書を取り出した。
その内容は生徒会の権限をアビドス対策委員会へ付与する事だ。
保健室で身支度を整え、ホシノが抜けた事とアビドス生徒会権限について話す為、憂鬱な面持ちでアビドス対策委員会の部室へと向かい、対策委員会の扉を開ける。
そこにはホシノが残した手紙と退学届けを読み、膝から崩れ落ちたアヤネがいた。
「先生…ホシノ先輩が!」
「すまない。私が…ホシノを止められなかったんだ。」
しばらくして対策委員会の部室にホシノ以外のメンバーが集う。
アヤネたちは、ホシノが残した手紙を読む。
『先生へ。
私は大人が嫌いだった。
シロコちゃんが先生を連れてきたあの時だって何か怪しい大人が来たな~思ったくらいだし。
でも先生はどんどん皆と打ち解けて信頼し合える仲になっていった。
だから…後は先生に任せるね。
皆が信じられる先生にならきっと大丈夫だと思うから
先生みたいな大人と最後に出会えて私は…いや、もうそういう照れくさい言葉はもういいよね。
シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん。
お願い…私たちの学校を守ってほしい。
砂だらけのこんな場所だけど。
私に残された唯一意味のある場所だから。
それから私がこの先何処かで万が一敵として相対する時が来たら…
私のヘイローを壊して。
よろしくね…先生。』
手紙にはこう書かれていた。
アヤネたちはホシノが抜けた事に悲しみ、そして嘆いていた。
「皆、落ち着いてくれ。まずは…私は君達を守る為にこの文書を作ってきた。」
藤丸はアビドス対策委員会が生徒会としての権限を得るための文書をアヤネたちに提出する。
「これは…」
「あぁ、調べてみたところ。対策委員会は連邦生徒会非公認の組織だったらしい。
だからカイザーはこの機を狙って攻めてくるかもしれない。
最後の生徒会…ホシノが抜けた事で、アビドスに公的な委員会は失われてしまった。」
「はい。先生の言う通りです。対策委員会が出来た時、生徒会がありませんでした。」
「え?」
「非公認の委員会。正式な認証も書類もおりていない。だからそう…カイザーはこれを狙ってくる…私達が学校を守るもホシノを取り戻すもこういったものが必要だ。皆、私はシャーレの権限を使い、どうにかして連邦生徒会に認証を勝ち取る。
だからホシノを助けるためにもこの文書を送ってもいいかい?」
アヤネたちは藤丸の提案に頷くと藤丸は連邦生徒会に文書を送り、ホシノを助け出す為の議論を重ねる。
藤丸は連邦生徒会と話し合う為、30分間アビドス対策委員会の部屋から離れ、無事認証を見届けると、途中から対策委員会の部屋に入り、会議に参加する。
そして藤丸が会議に途中参加してから30分後校舎に警報が鳴り響く。
街中に爆発が響く。
「カイザーが街を破壊して回っていまして無差別攻撃を仕掛けるカイザーPMCと人々を守る便利屋達が交戦しています!」
「戦況は?」
「昨日の砂嵐の影響でしょうか…便利屋がカイザーコーポレーションを押していましてですが数が数なだけに…」
「どうして攻めてきているの!? 連邦生徒会から認証が下りたんじゃないの!?」
「恐らく奴らは知らないのだろう。認証が下りた事について…よし、市民の皆を守る為に行こうか…皆。」
アヤネたちは頷き、戦場へと赴く。
藤丸は大人との戦闘である為、大人のカードと魔術回路を接続し、メディア、キャスタークーフーリン、エレナの影を召喚し、生徒達の強化準備に入る。
街中はカイザーPMCによって破壊され、藤丸に雇われた便利屋はカイザーを応戦し続けている。
カイザーの軍勢は、昨晩の砂嵐によって酷く摩耗しており、雷でほとんどの武装が焼け焦げ、まるで敗残兵の軍団だ。
嵐と雷によって大部分が焼失したアビドスに駐留するカイザーの戦力。
それでも街や人々を害するには十分な戦力を持っている。
「アビドス市民の皆さん! 避難してください!」
藤丸は大声で市民に呼びかけると市民は呼びかけに応じてその場から離れる。
藤丸と便利屋が接近すると三騎のキャスターの支援により、便利屋の力は増大し、カイザーPMCを圧倒する。
「クッ…飼い犬の分際でよくも…」
アルは膝をついているカイザーPMC理事に銃口を向けている。
「悪いけど私達は今、先生に雇われているの。」
(この急な力の張り…先生が来たのね。)
アルは力の感覚で藤丸が戦場に来たことを察する。
「…カイザー。お前達は何をやっている。」
藤丸は、膝をついたカイザーPMC理事に向かって怒気を籠めて話しかける。
「黙れ! 貴様、何故我々の行動の邪魔をする! アビドス生徒会のメンバーはアビドスから去った! 残されたのは非公認の組織! 何者でもない奴らだろう!」
カイザーPMC理事は藤丸に怒鳴り散らす。
「35分前に連邦生徒会から公的な生徒会として承認されたよ。貴方達の行動は侵略行為そのもの。」
「バカな!」
カイザーPMC理事は、端末を開く。
連邦生徒会のサイトを開き、アビドスの項目を確認すると「アビドス対策委員会」が生徒会として登録されていた。
「彼女達は何者か…それはホシノを取り戻そうとするアビドス対策委員会の生徒達だ。」
「クッ…退却だ。」
アルは銃口を下ろし、カイザーの軍勢は去っていく。
その様子をホシノと黒服はとある場所で映像越しに見ていた。
「何で…どうしてアビドスを!」
「どうしてと言われましても…何もおかしい事はありませんよ。
あの借金の大半はきちんと返済させていただきますとも。
それは私達の間で交わされた約束ですから。」
「ッ…」
「それはそうと…貴方の退学を以てアビドス高校の生徒会一人もいなくなった…筈なのですが…あの大人…先生によってアビドスに新たな生徒会が発足され、学校が成り立つようになってしまいました。
ふむ、中々頭の切れる御仁だ。
このアビドスの事態そのものは単なる余興に過ぎません。
ホシノさん。私達の目的は最初から貴方でした。」
黒服はそう言ってホシノへ手を差し出し、ついてくるよう歩き始めるとホシノはその後を追う。
「契約書へサインしてもらい、貴方に関する全ての権利をいただく。
その為にカイザーコーポレーションに協力していた。
ただそれだけの事です。
誤解を招いたなら謝罪します。
しかし私は最初からあんな下らない企業の所属ではありません。
貴方の様なキヴォトス最高の神秘を手に入れたというのに
兵士として使うだなんてそんな勿体ない事はしませんよ。」
黒服は扉を開くと、そこは巨大な実験室だった。
「この興味深い実験…或いは貴方を用いた崇高の特異点との取引こそが私達が渇望していたもの。
そういうことです。」
ホシノは実験室に入る
(そっか…また大人に騙されたんだ。
ごめん…皆、私のせいで全部…
シロコちゃん、ノノミちゃん、セリカちゃん、アヤネちゃん、先生、ユメ先輩…
ごめんね…)
ホシノは実験室に囚われ、黒服の実験の時を待つ。