青春記録都市キヴォトス   作:とある厨病の異聞観測

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総力戦:ケセド
ケセド:慈悲深き苦痛をもって断罪する裁定者(1)


藤丸は、一人廃墟へと立ち寄っていた。

とある男に呼び出されたからだ。

 

「クックックッ…お待ちしておりました。先生…さて、今回の実験はここで行います。」

「なるほどね…廃墟。確かにここに巨大な魔力反応があった…そして今、ここはビナーの時の様な特異点と化している。」

 

その男の名は黒服。

ホシノの代わりに藤丸と取引したゲマトリアの研究者だ。

 

「「廃墟」と呼ばれるこの空間は、私たちにとっても大変興味深い空間です。

ゲマトリアの何人かはこの場所を、強い関心を持って見守っています。」

 

黒服は歩き始め、藤丸は黒服の後をついていく。

 

「現在は稼働していない、閉鎖された軍需工場。

かつてこの工場をコントロールし、無限の軍隊を生み出していた、ディビジョンという名のAIに、デカグラマトンが接触しました。

「この軍需工場はこれから、デカグラマトンの新しい預言者として、自らの道を照らすでしょう。」

 

黒服は藤丸の手を取り、工場への道を進む。

 

「──ケセド(Chesed)

そのパス(Path)は、権力を通じて動作する慈悲。

その異名は「慈悲深き苦痛をもって断罪する裁定者」。」

 

ケセドが支配する工場へと近付いていく。

その工場は巨大でそれは稼働し、機械に表現していいものだろうか…その工場は機械的な生命力に満ち、そしてシッテムの箱は工場内から無数の巨大な魔力反応を捉えていた。

 

「堅牢な王国と、忠誠を誓う民に、彼の者の権威を奪う事ができるだろうか。

これもまた、興味深い問題です。」

 

そう言って黒服はデカグラマトン「ケセド」の工場の前にしてそう言うと藤丸は数日前の巌窟王の言葉を思い出す。

 

「本来の使い道での大人のカードの代償だが、お前にかかる代償は総合的に活性アンプルを一度に複数本使ったのと同等の代償を支払う事になる。」

 

バーゲストとの戦いで足元に散らばる数本のアンプル。

首に残る薬物中毒者の様な青ざめた無数の注射痕。

戦闘による魔力枯渇をアンプルのオーバードーズを以て支払い、魔力を獲得していた。

大人のカードを手に入れた今に比べれば非効率極まりない行為だが、それしか魔力を活性化させる手段はなく。

生きる為、世界を取り戻す為なら仕方がなかった。

 

「一度の使用ならば俺も咎めはせん。

だが一度に二重三重に使うのならば俺はお前に問いかけねばならん。

その力がたとえ絶大なものだったとしてもだ。」

 

巌窟王の言葉を思い出し、黒服がケセドの占拠している工場のゲートを開くスイッチの前に立つと藤丸は大人のカードを取り出す。

黒服が大人のカードを取り出すのを見ると、笑顔から真剣な表情へと変わる。

 

「…先生、エドモンからの忠告を聞いたはずです。

活性アンプルの代用として使うつもりなのですか?」

「あぁ、使うつもりだ。

油断できないから使う。

どうせここから生き延びるなら一度のアンプル程度の代償は安いものだよ。」

 

藤丸は大人のカードと魔術回路を接続する。

 

「接続完了──カード限定起動。

発生事象設定:魔術回路の神代回帰。

魔術回路活性アンプルを参考に生と時間を魔術回路崇高化へと変換開始。」

 

魔術回路が神代へと回帰する。

キヴォトスの地脈から吸い上げた魔力は藤丸の肉体を通して神代の魔力「真エーテル」へと変換される。

活性アンプル程度の代償で一時的に英霊の域へと至る反則。

 

「俺は大人のカードをアンプルの様に使う。

これまでもそうしてアンプルを使って戦ってきたんだ。」

 

藤丸はそう言って黒服に見送られながら工場内に入った。

 

「…なるほどそうですか…貴方はやはりそうするのですか。」

 

黒服は大人のカードの代償を知っているからこそ藤丸を敵ながら命に危険を及ぼす契約をしておきながら心配し、ケセドが支配する工場内の監視カメラから藤丸の戦いの様子を観察し始める。

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