アンプル程度の生と時間を代償に一時的な崇高の力を手にした藤丸は工場内に入ると、藤丸の体を赤く染めるように無数のレーザーサイトが藤丸を照らす。
「これは…」
藤丸の眼に飛び込んできたのは数えるのが億劫になる程の兵士とドローンの軍勢だ。
一体一体の兵士が神殿の魔神柱のような力を有している。
その兵士が工場を埋め尽くす程に生産されており、外に放出されればキヴォトスは一夜にして落ちるだろう。
デカグラマトンの兵士たちは様子を伺っており、藤丸が何かしらの反応を示せばすぐに撃ってくるだろう。
巌窟王が影から現れようとするとデカグラマトンの兵士たちは藤丸に向かって一斉射撃を行うが、巌窟王の炎により弾丸が溶け、ミサイルは途中で爆発した。
藤丸から流れる崇高の力が巡り、魔王の如き鎧を纏った巌窟王に宿る力は世界を焼く復讐の神に相違ない力を有する。
「召喚するがいい。マスター。」
巌窟王の言葉に頷き、藤丸は四騎のサーヴァントの影を呼び出す。
マーリン、玉藻の前、レディ・アヴァロン、卑弥呼だ。
「巌窟王、大人のカードをもう一度使う。いいかな?」
「何に使うつもりだ?」
「アルトリアを召喚する。大人のカードの本来の機能と英霊召喚を掛け合わせる。」
「…それは必要なものか?」
「あぁ、必要だ。」
巌窟王は藤丸の眼を見てしばらく黙り込む。
「いいだろう。」
「ありがとう。」
藤丸は巌窟王の許諾を得ると大人のカードによる召喚と英霊召喚を同時併用する。
召喚陣が展開され、
「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、青輝の理に従うならば応えよ。
汝、
崇高の光より来たれ、天秤の守り手よ!」
召喚陣から現れたのは聖剣の如きヘイローを持つアルトリア・キャスター「月型カリハ」だ。
その魔力量と質は圧倒的で、真エーテルが流れ込んだ巌窟王を遥かに超える力を有している。
大人のカードによる代償はアルトリアに力を授ける。
「アルトリア・キャスターもとい月型カリハ。召喚に応じ参上しました。
うん、状況はわかってる。行くよ。先生!」
戦闘を開始する。
巌窟王が暴れ回り、アルトリアたちは巌窟王を支援する戦法だ。
巌窟王はアルトリアたちの支援により、次々と湧き出でる兵士たちを破壊していく。
またアルトリアはシッテムの箱そのものへの強化も務め、アロナがケセドの支配する工場の障壁へのハッキングを支援する。
アロナはハッキングにより障壁が開き、次へと進む。
それらを何度も繰り返し、工場の中心、ケセドの玉座へと到達する。
ケセドの玉座。
そこには見覚えのある球体が鎮座していた。
「あれは…プレナパテスの…」
そう、あれはナラム・シンの玉座にて現れた宇宙色の球体。
その球体に酷似していた。
黄色みがかった白色の装甲を玉座の様に纏っている。
(あの時みたケセドより目の前にあるケセドの方がエネルギー量が違う。)
その霊基は異星の
巌窟王は早速ケセドに対し、炎を纏った蹴りを喰らわせる。
「手ごたえを感じられんな。」
巌窟王が感じたケセドの装甲の感触。
それは聖杯の魔力によって極限まで防御強化された装甲。
その装甲は聖杯によってORT亜種の外殻に匹敵する。
硬く柔らかく温度耐性があるような装甲だ。
魔術強化を省いたジェリコの城壁すらも超える守り。
「巌窟王…きっと球体は周りの奴を倒していけば開くと思う。
装甲が開いた時、装甲の中にある本体を叩けば有効的だと思う。」
「あぁ、そうだな。
あの装甲は貴様を守るそれと同等だろう。」
崇高の魔力によって強化されたジェリコの障壁は人理の壁と同質のキャメロットの城壁には及ばないが、頑強なもの。
それと同等のケセドの装甲はキヴォトスにおいて真白キリエが持つ崇高に次ぐ。
藤丸と巌窟王とアルトリアは、装甲が開くのを期待し、兵士たちを破壊し続ける。
ケセド本体の製造速度が追いつかず処理落ちし、装甲が開く。
「今だ!」
巌窟王はアルトリアたちの強化を受けてケセド本体へと『
大人のカードと英霊召喚を兼ねた強化。
それは絶対的なものだった。
戦闘後、藤丸の体から崇高の力が消え、そして大人のカードを本来の力で使った反動で、膝をつき、口から血反吐を吐き、顔が青白くなる。
「ハァ…ハァ…」
その代償、魔術によって積み重なる代償よりも一気に降りかかる肉体的精神的反動に変換される。
大人のカードによる崇高の力の変換と召喚魔術を大人のカードの本来の使い道による代償でブーストした事で受ける代償は安全装置が働いていた極地消耗型・七天礼装を彷彿とさせる。
「リツカ! 大丈夫!?」
『先生! しっかりしてください!』
大人のカードで召喚されたアルトリアはそう言いつつも退去し始める。
戦闘は終わり、アルトリアは帰る時が来たのだ。
「予言の子よ。俺が送ろう。お前は安心して帰るといい。
留まるのは限界だろう。」
「…わかった。」
アルトリアはそう呟くと退去し、巌窟王は藤丸に肩を貸し、その場を去っていった。