アヤネはとあるマンションのセリカが住んでいる部屋の前に来ていた。
アヤネはセリカの部屋のベルを鳴らす。
「セリカちゃん? セリカちゃん、いる?」
再びベルを数度鳴らす。
「セリカちゃーん? どうしたんだろう、電話にも出ないし…。」
アヤネはアビドスの面々から渡されていたそれぞれの部屋のスペアキーを探す。
セリカの部屋の鍵を見つけると、アヤネは一言断りを入れて部屋に入った。
「セリカちゃん…? まだ帰ってないのかな? こんなこと、今まで一度もなかったのに。」
アヤネの脳裏に嫌な予感が走る。
「ま、まさか…!!」
アヤネはアビドスの面々そして先生に電話をかけ、そして最後にセリカに電話を何度もかけながらアビドス高校へ走る。
「アロナ。」
『はい! 話は聞いています! セリカさんの居場所をセントラルネットワークにアクセスし、追跡してみた所。どうやらアビドス郊外…砂漠化がするんでいる廃墟となった地域を進んでいるようです!
それにこの地域周辺はアビドスにおけるカタカタヘルメット団らしき集団の主戦力が集まっているそうです!』
「ありがとう。さて…」
藤丸は、セリカ以外のアビドスの面々に電話をかけ、セリカの居場所が分かったので、車の中で説明すると言い、アビドス高校に急いだ。
アビドス高校の前には、アビドスの面々が乗る車が停まっており、アヤネは先生を車の中へ出迎えると車は発車した。
「先生! セリカちゃんの場所は何処ですか!?」
「アビドスにおけるヘルメット団の主戦力が集まる場所へと搬送しているそうだ。」
藤丸は、車の中で皆にシッテムの箱を見せるのと同時に車に搭載されているアヤネが見ているカーナビをハッキングし、目的地を指し示した。
シッテムの箱の中にはセリカのスマホが車と同じ速度で、ヘルメット団のアビドス主要基地へと向かって行っているのがわかる。
「ということはやはりシロコ先輩の考えている通りヘルメット団の仕業ですか…!」
「なるほどねー、帰宅途中のセリカちゃんを拉致して、自分達のアジトに連れて行ったってことかー。」
「学校を襲うくらいじゃ物足りなくて、人質を取って脅迫しようってことかな。」
車は目的地へと走る。
セリカは目を覚ます。
辺りは暗く車に揺れる音がこの空間内に響く。
「ここは!? へ!? 私、攫われた!?」
セリカは後頭部を殴られた痛みが走り、頭を押さえる。
「あ、う…頭が…
ここ…トラックの荷台?」
車の音、そしてその音を床から響く金属由来の反射音で、今いる場所がトラックの荷台だと認識する。
「ヘルメット団め…私を何処へ連れていくつもりなの?」
セリカは周囲を見渡すと、トラックを覆うテントの隙間から外の光が漏れ出している。
「暗い…けど、隙間から少し光が漏れている。」
セリカは隙間へと近付く。
「外…見えるかな…」
セリカは隙間を覗くと――
「…砂漠…線路!?
線路がある場所って…ま、まさかここ、アビドス郊外の砂漠!?」
セリカの視界に広がっていたのはアビドスに敷かれた線路。そして周囲に広がる砂漠だった。
「…そ、そんな。ここからじゃ、何処にも連絡が取れない!
もし脱出できたとしても、対策委員会のみんなにどうやって知らせれば…。
どうしよう、みんな心配しているだろうな…
……
このままどこかへ埋められちゃうのかな。
誰にも気付かれない様に…」
セリカは、砂漠の真ん中で朽ち果て、埋められ、埋めた痕跡も砂嵐によって消されていく自分を想像する。
「連絡も途絶えて…私も他の子たちみたいに、街を去ったって思われるんだろうな。」
セリカは、アビドスを去った人達の中に自分がいる光景を思い浮かべる。
「裏切ったって思われるかな…
誤解されたまま、皆に会えないまま死ぬなんて…
そんなのヤダよ。」
セリカは、蹲り、涙を流し始める。
「う…うぐぅ…。
う、ううっ…」
涙が床に落ちそうになった次の瞬間――
外で大きな爆発音が鳴った。
「う、うわあああっ!?」
トラックは横転し、セリカは外へ弾き出される。
更に追撃として周囲のヘルメット団の車両は先ほどよりも大きな爆発に襲われる。
「カハッ…ケホッ…ケホッ…」
セリカはせき込み、周囲を見渡すとヘルメット団の車両が爆散し、ヘルメット団の団員のヘイローは消え、気を失っていた。
「な、何っ!? トラックが爆発した!?
これほどの砲撃…一体どこから…」
自身を輸送していたヘルメット団が半壊する程の威力を持った存在が何処かにいると周囲を見渡すと、セリカの通信機に連絡が入る。
『セリカちゃん発見! 生存確認しました!』
「あっ、アヤネちゃん?!」
「こちらも確認した。半泣きのセリカ発見!」
「!?」
セリカは咄嗟に自分が泣いてないと言わんばかりに涙を拭う。
「なにぃー!? うちの可愛いセリカちゃんが泣いてただと!
そんなに寂しかったの?
ママが悪かったわ、ごめんねー!!」
ホシノは子供をあやす様にセリカに話しかける。
「う、うわあああ!? うるさいっ!! 泣いてなんか!!」
「嘘! この目でしっかり見た!」
「泣かないでください、セリカちゃん! 私たちが、その涙を拭いて差し上げますから!」
「あーもう、うるさいってば!! 違うったら違うの!! 黙れーっ!!」
「やぁ、セリカ。強化された爆発に巻き込まれなかったかい?」
「な、何で先生まで!? どうやってここまで来たの!?」
「攫われたお姫様を助けるのは勇者一行の役目!」
「ば…ばっ…!
バッカじゃないの!?
誰がお姫様よ!! 冗談はやめて!! ぶ、ぶん殴られたいの!?」
「うへ、元気そうじゃーん? 無事確保完了ー。」
「よかった…セリカちゃん…私、セリカちゃんに何かあったんじゃないかって…」
「アヤネちゃん…」
「まだ油断は禁物。」
シロコがそう言うと残り半分の敵勢力が怒りながらシロコ達を取り囲む。
「戦術サポートシステムと先生のよくわからない力を使って敵を半壊させたけど、
まだ奴らに戦意がある。」
「だねー。人質を乗せた車両が破壊されて敵さんも怒り狂っているよー。」
『前方にカタカタヘルメット団の増援を多数確認!!
さらに巨大な重火器も多数確認しました!
徐々に包囲網を構築しています!』
「敵ながら天晴…それじゃー、せっかくだから包囲網を突破して帰りますかねー。」
「…気を付けて。奴ら、改造した重戦車を持ってるわよ。」
「知ってる。Flak改良型。」
「それじゃ…。」
アビドスの面々は装備を整え、藤丸は魔術回路を加速させる。
「行こうか?」
アビドスの面々は戦場を駆けると、藤丸は令呪を掲げ、赤く光らせる。
「令呪を以て、我らの戦いに誓う! アビドスの生徒達よ! 敵陣営を制圧しろ!」
藤丸は、生前の金時にやった時の様に令呪を魔力リソースとして消費し、アビドスの面々は決戦強化を行った時の身体能力向上を戦闘終了まで維持できるようになった。
アビドスの面々は、縦横無尽に暴れまわり、ヘルメット団は一分もしない内に全滅した。
アビドスの面々はヘルメット団が全滅したのを確認すると車に乗り、その場を去っていった。
「皆さん、お疲れ様です。」
アヤネは、車の中で皆を労う。
運転は大型消防車の免許を持つ藤丸が行っている。
「セリカちゃん、ケガはない?」
「うん、大丈夫。見てよ。ピンピンして…」
セリカはその続きを言おうとすると糸が切れる様に気を失った。
「セリカちゃん!」
「帰ったら私が保健室に連れていく。」
シロコはセリカをいつでも運べるように気を失ったセリカを自身に寄せた。
「安心して気を失ったのかもね。ゆっくり休ませてあげよー。」
「大変なことになるところでした。先生がいなかったら…。」
「うんうん。先生のおかげでセリカちゃんの居場所を逃さず追跡できました。やっぱりすごいです☆」
「それと、皆さん。これを見てください。」
アヤネは、鞄から何かが入った袋を複数個見せる。
「戦闘中に回収した、散らばった戦車の部品を確認したところ、キヴォトスでは使用が禁止されている違法機種と判明しました。
もう少し調べる必要がありますが…ヘルメット団は、自分達では入手できない武器まで保有しているそうです。」
「探偵の真似事なんだけどヘルメット団の裏で操っているのは…悪徳金融じゃないか?」
藤丸の発言にアビドスの面々はハッとする。
「ありえるかもね。その線で調べてみようか。」
キヴォトスにおける何処かのビル。
その最上階フロアの執務室には大柄なロボットがキヴォトスの夜景を眺めていた。
「…格下のチンピラ如きでは、あの程度が限界か。
主力戦車を送り出したというのに、この様とは。」
大柄なロボットは、便利屋68と書かれたチラシを見る。
「ふむ…となると、目には目を、生徒には生徒を…か。
専門家に依頼するとしよう。」
大柄なロボットは、便利屋の電話番号に電話をかける。
『はい、どんなことでも解決します。便利屋68です。』
「仕事を頼みたい、便利屋。」
それを後ろから見つめる紳士のような姿をした黒い靄。
影は何をするわけでもなくただロボットの行動を記録するように佇んでいる。
「誰だ!」
大柄のロボットは、ガラスから跳ね返った世界に映った後ろから自分を見つめる黒い靄に気づき、振り返るがそこには誰もいない。
「気のせいか…」
『どうかされましたか?』
「いや、何でもない。気にしないでくれ。」
巌窟王が影の中から現れる。
「どうしたの? 巌窟王?」
「……気をつけろ。
冥王の復活地に与するお前とっての敵…
唾棄すべき悪が無垢なる悪を金で以てお前達に差し向けた。
無垢なる悪は、
地獄の裁き手に追われる身であり、お前にとって守るべき四人達でもあるが、
唾棄すべき悪は、
冥王の復活地に住まう子供達が憎むべき皇帝の刃の名を騙る悪意ある機械の主。
悪はお前の目に見えるように蠢動し始める。
ここより先、お前はこの位相の闇を知る序章となる。
悪意ある機械の主は闇の先触れ。
無垢なる悪はいずれお前の力となる者達。
共犯者よ。
今更問うまでもないが、少女達の光を闇から守る覚悟はあるか?
二度の人理修復の時の様にその命を懸ける覚悟はあるか?
ここでの戦いは、お前が生きる為ではなく世界を取り戻す為ではなく少女が生きる為の戦い。
お前がこれまで戦ってきた意味を否定する戦いになりうる。」
「あるとも。」
藤丸の言葉は眼は真実を物語っている。
巌窟王はそれを見抜くと満足したかのように口を開く。
「ならばよし。
無垢なる悪を超え、唾棄すべき悪と対峙せし時、お前は我ら英霊の影を…
特に俺のような反英雄を呼ぶがいい。
悪には悪を――巨悪を以て悪を喰らおう。
少女達を星と見るならば、少女達の為に輝ける道を拓くなら、我ら英霊は少女達の為に戦うお前の声に応え、再び手を差し伸べるだろう!」
巌窟王はそう言って藤丸の影の中へ消えていった。
「…
「アロナ。」
『はい、なんでしょうか?』
「カイザーPMCについて調べてくれないか? 特に代表取締役当たりの情報を…アビドスとカイザーが繋がる情報が欲しい。」
『わかりました。少し時間がかかりますがよろしいですか?』
「うん、任せたよ。」
『はい! お任せください!』
アロナはカイザーPMCの特にアビドスと代表取締役の繋がりについて調べ始めた。
「…悪い大人が私の前で動き出すならば
藤丸は、椅子に深く腰掛け、悪い大人が自分の前で目立つように動き出したの時の事を考える。
(俺も…あの戦いを経て悪い大人になったものだ…)