青春記録都市キヴォトス   作:とある厨病の異聞観測

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第2節 死の街

空には世界を焼いた光の帯を隠す様に分厚い雨雲が空を覆っている。

街には一寸先も見えない濃霧が立ち込めており、その霧は人体を蝕む死の霧だ。

藤丸、シロコ、アルトリアは、霧に包まれた特異点に降り立つ。

 

「クッ…!?」

 

シロコは霧の街に降り立つと死の霧に蝕まれ、体調を崩す。

 

「あぁ、クソッ…今思い出した! この特異点では体が蝕まれる霧が発生するって事。」

 

藤丸はこの特異点の性質を思い出し、体調を崩したシロコを連れて建物の中へと入る。

霧は屋内には入ってこない性質を有する。

建物内に入った藤丸達は、シロコに回復魔術をかける。

回復魔術を受けたシロコは、懐から先の三つの特異点で得た聖杯のうち一つを取り出して魔術回路と聖杯を接続し、体調を回復させる。

 

「ん、多分これで霧を何とかできる筈。」

「本当に大丈夫?」

 

アルトリアは、シロコの体調を気遣う。

アルトリアは、星の妖精ゆえに外に立ち込める霧に倒れる事はない。

シロコは外に出て霧を吸い込むが、聖杯の加護により霧の有害性は弾かれる。

 

三人は外に出て、霧の街を探索すると、一人の少女が現れた。

その少女の姿はキヴォトスの生徒らしきものだが、ヘイローが粉々に砕けていた。

 

「誰かいる。」

 

シロコは、そう言ってヘイローが粉々に砕けた少女を見て、警戒心を強め、銃を構える。

 

「あぁ、その判断は正しいと思う。何せここは死の霧が覆う街。

普通の人間がこんなところで歩いているわけがない。」

 

銃を向けた方向にいる少女の足元は透けていた。

 

「どうして…」

 

少女はそう、シロコに恨みを籠めたような声で話しかけると少女の後ろから三人の少女が霧の中から現れる。

 

「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして…」

 

少女達は、巨大な亡霊の姿へと変貌する。

 

「わたしたちを殺したの?」

 

亡霊の姿に変貌した死した生徒達はシロコに詰め寄る。

 

「どうしてわたしたちの学園を…友達を…殺したの?」

 

その幽霊はまるでシロコに黒いシロコを重ねているようだった。

 

「しにたくない。

わたしたちは混ざり合った。

ながされてくらくつめたい水の底と捻じれて歪んだ終わりの地。」

 

霧が見せる幻覚。

それは黒いシロコに殺されていく数多の生徒の姿。

色彩の傀儡…否、無名の司祭の傀儡となって生徒の命を奪ってしまう黒いシロコの姿があった。

 

「それはその世界の私じゃない。

…あの私と私は別人だ。

だから私にそんな恨み節をぶつけられる筋合いはない。」

 

シロコは襲い掛かる亡霊に対して発砲する。

弾丸は星光を纏った小さな投擲刀の姿へと変わり、亡霊に突き刺さり、亡霊は投擲刀によって消滅すると、周囲に無数の亡霊が現れる。

 

「どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして」

 

無数の亡霊はシロコに迫る。

 

「けど、その苦しみはキヴォトスに関わるもの。

だから私がやる。」

 

シロコは、そういい、地面に着弾した小さな投擲刀(ケペシュ)を抜き、紫の炎を纏わせる。

シロコは特異点で出会った黒いジャンヌとはまた異なる槍の霊基を持ったジャンヌ・ダルクの宝具を模した魔術を発動する。

それは『紅蓮の聖女』を極度に劣化・反転させた宝具『悲嘆せし聖母』を更に魔術として落とし込んだもの。

 

悲嘆せし狼神(トリステス・ドゥ・ラ・ルー)!!」

 

剣より解き放たれた狼の姿をした紫の炎が焼き払う。

亡霊の群れは炎に飲み込まれ、消えた。

 

「シロコ! 大丈夫!?」

「ん、大丈夫。

それよりも私を見てあの幽霊たちは襲い掛かろうとしてた。

先生、何か心当たりはない?」

「それは多分、何かと混じったジャック・ザ・リッパーだと思う。

そしてその混ざった何かというのは…あのシロコが殺した生徒の残留思念だと思う。」

「…ジャック・ザ・リッパー?」

「…水子の集合体、この時代において捨てられた子供たちの霊の集合体だよ。

そうあの子は…

いや、ここでは関係ない。

寧ろあの黒いシロコが殺した生徒(子供)達の残留思念と融合しているなら警戒すべきだ。」

 

藤丸がそう言うとシロコは頷くと、前方から足音が聞こえ始め、シロコは銃を向ける。

 

「誰!?」

 

霧の向こうから現れたのは赤い革ジャンを羽織り、青い着物を着た少女だった。

 

「人の気配があると思ってきてみれば藤丸かよ。」

「式さん。どうしてここに…」

 

藤丸がそう言うと、シロコに銃を下げるよう合図を出す。

目の前の少女の名は、両儀式。

人理の旅に協力してくれた直死の魔眼を持つ能力者だ。

 

「あぁ、いつの間にかここに来ていてな。

藤丸、おまえがいるってことはまた人理の案件って事だろ?」

 

式はそう言ってため息をついた。

 

「ということは式さんはまた俺達に協力してくれるって事でいいんだよね?」

「あぁ、といってもどうやら今回は特異点だけになりそうだがな…ってそこの人は初めましてだったな。」

 

式はそう言ってシロコに向かって挨拶をする。

 

「俺は両儀式。よろしくな。」

「ん、私は砂狼シロコ。よろしく。」

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