プロローグ
藤丸はトリニティのティーパーティーに似た夢の空間でセイアと話しをした後、後ろから足音が聞こえ始めた。
「まぁ、そういうことだ。」
聞き覚えのある声がすると、一瞬にして万魔殿の執務室へと場面が移り変わる。
声の主「青のテスカトリポカ」は、自分用にホットチョコを淹れ、藤丸には
青のテスカトリポカ。
別名、黒煙ヨウコ。
万魔殿の一人である。
「座れよ。話がある。」
藤丸は、万魔殿のソファーに座り、青のテスカトリポカからプルケとスモアを受け取る。
「もうおまえは大人を自認しているから飲めるだろう?
俺はガワがガワなだけに酒が飲めんのでな。」
藤丸はプルケを手に取り、飲む。
薄く甘い粘度のある味で、ほどよい酩酊感に浸れる。
「キヴォトスでは酒を取り扱うのは難しい…だが、ここは夢だ。夢ならどんな無法も許されるってワケ。」
テスカトリポカは、そう言い、ホットチョコを一口飲み、グラスをテーブルに置く。
「セイアも言っていた通り、あいつらにとっては辛い事が起こる。
だが、それは…予定調和、いつも通りの苦難だ。」
テスカトリポカは、結末がわかり切っているように話す。
「おまえならば乗り越えられる。
俺にとっては駄菓子にもならないただの些細な事。」
そう言ってこれから起こるエデン条約に関して安心させる。
「気にするのはそこじゃない。
そんなことでわざわざセイアの予知夢からおまえを呼び出す必要はない。
重要なのはセイアすらも見通していない更に先の未来の話だ。」
青のテスカトリポカは、そう言ってホットチョコを一口飲む。
「…未来は悍ましい形へと変わってしまった。」
青のテスカトリポカの思考にカルデアスの姿が過る。
キヴォトスを白紙へと変える異星。
そして再びキヴォトスの外、汎人類史が再び異星の手に落ちる姿を
「おまえも見た筈だ。色彩よりも悍ましい未来を。」
藤丸は思い出す。
あの時空の裂け目から見えたカルデアスとそれを空想樹の様に囲う無数の箱舟。
「これはその大いなる戦いの前の、その予兆とも言える断章。
本来ある色彩の到来する未来は白紙となる。
おまえが取り戻した未来は再度、無意味になる。」
青のテスカトリポカの声色は徐々に厳格になっていく。
「色彩の到来などおまえの実力からしてみればすぐに解決できてしまう事例だからな。
特に問題視などせん。
寧ろ世界を滅ぼすという無名の司祭の気概は歓迎し、傍観する。
俺は仮にも世界を破壊する神であり全ての戦士の味方だからな。
────今のおまえと俺は似ている。
もっとも生徒か、戦士かの違いだけどな。」
青のテスカトリポカはそう言いつつも、拳を握りしめる。
「だが、あの未来はさすがに看過できん。
俺は確かに敗者をやり直させる神でもある。
しかし、あの計画の再始動は度が過ぎている。」
テスカトリポカの握る力が強くなる。
打ち砕かれた異星の計画。
しかし再始動する。
地球生命を宇宙の恥へと貶める計画が。
「さて、試練がおまえを待っている。
最後に言っておくが、エデン条約調印式の日…おまえはプレナパテスが経験した本来のエデン条約とは違う試練が待ち受ける。
それを言葉を最後として夢からおまえを追放する…
故におまえの出番はまだまだ先なんだよ。
なぁ? ジャンヌ・ダルク。」
藤丸が後ろを振り返るとジャンヌ・オルタの影が見え、万魔殿の執務室は深い霧に包まれていった・