周囲に現れたナチス親衛隊の幻霊、そのシャドウサーヴァントはジャンヌと妖精騎士に向かって銃弾を連射する。
『消えなさい。』
モルガンは、ジャンヌたちに再度強化を付与し、そして遠隔で魔力の斬撃をシャドウサーヴァントに向かって放つ。
ジャンヌたちは、強化を受け、シャドウサーヴァントの軍勢を一瞬にして殲滅する。
『やはりこうなったか…いや、外部でも不完全ながら戦闘を行えたことが確認できただけでも十分だね。後は出力調節が必要か…
これならあの計画にも間に合う。
全く…ボスもなんであんな搾取しか脳がないクソババアの計画に肩を持つのかな? 何がヴァニタスだ。
あのババアが掲げるヴァニタスは原理から外れてるだろうが』
そう少女は、そこにいない誰かに向かって愚痴をこぼす。
その誰かとは少女のボスの同胞に当たる存在だ。
しかしボスは奴と同胞扱いされるのを嫌うであろう。
『お前は…いや、お前達グノーシスは何故今ここで仕掛けた?』
『さぁね? 私達のボスの心中を察することなんてできないよ。
それに私はあくまでも日雇いのバイト。私にこれ以上の出番はない。
無責任なことは承知だけど文句なら私の上司に行ってください。』
そう言って少女は通信を切った。
(私が仕掛けた呪詛の向きがあの生徒ではなくもっと深い所に…あの女に向いている。)
モルガンは、呪詛の向きが少女ではなく少女のいうボスに当たる存在に向いている。
少女への呪詛返しは不可能だ。
その頃、黄金都市。
黄金都市には薔薇の香りが立ち込めており、黄金都市は人間が何も感じない様な暑くも寒くもない不感温度を保っている。
黄金都市にはバビロン兵と思わしきロボットが生徒へと豪奢な食事の提供やルームサービスなどを行っている。
ある一角では人工庭園の中でワイバーンやキマイラなどの幻想種を魔術を以てゲーム感覚で追い回し、狩りを行っている生徒もいる。
ここにいる生徒はまるでオリュンポスやバビロンを思わせる様に幸福な生活を送っている。
『ふむ、よくやった。少女よ。』
さきほどバイトを終えた少女に向かって異形の女は労いの言葉をかける。
『貴様に褒美をくれてやる。』
異形の女は、指を鳴らすと少女の預金残高に屋敷が一つ買える程の金が振り込まれる。
「ありがとうございます。ボス。またよろしくお願いします。」
『貴様は当然の仕事をしたのだ。感謝などせずともよい。』
「ところで呪詛とか大丈夫ですかね?」
『問題ない。事前に説明した様に我に向かうようにしてある。モルガンが貴様に向かって何か仕掛けてくるなら我へと魔術が向かうだろう。
そこは大人の責任というものだ。貴様は気にせず今を楽しめばよい。』
異形の女は少女の頭を撫でそう諭す。
「我らの教訓──
少女はグノーシスの教訓を口ずさむ。
その教訓はヴァニタスに並ぶバロックの概念であるカルペディエム。
その日を摘めというメメントモリに通ずる言葉だ。
『然り。未来の事など大人に任せよ。今日をどのような形であれ必死に生きた者にこそ明日は訪れるのだ。』
異形の女はそう言ってその場から立ち去って行った。