青春記録都市キヴォトス   作:とある厨病の異聞観測

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第4話 委員会の議論

深夜十二時の時が過ぎる。

キヴォトスの霊脈から汲み上げられた魔力によって自身の令呪に失った一画が刻まれる。

藤丸は補填された令呪を見る。

 

(あの時はセリカの為に感情的になって使ってしまったが…次からは気を付けよう。)

 

そして懐から大人のカードを取り出し、眺める。

 

(先生)の武器として与えられたもの。これは(マスター)にとっての武器にもなる。本来『支払うべきもの』の代わりに相応の魔力を消費すればその対価としてカルデアの時みたいに英霊を召喚して戦える。そして本来支払べきものと魔力を同時に消費すれば英霊召喚はどうなるのだろう?)

 

藤丸は、疑問を抱く。

大人のカード…シャーレ就任時にいつのまにか自分の懐に入っていた謎のカード。

藤丸は、マスターとしての勘を鈍らせないために人知れず『本来支払うべきもの』の代わりに魔力を消費し、サーヴァントの影を使役している。

『本来支払うべきもの』。

彼はそれを大まか理解し、その支払った対価についても大まか理解している。

魔力を対価に使用しているのは正規の使い方ではないと彼は理解している。

だが、同時に使用した場合どうなるか。

どちらか一方が強化されるのか或いは両立するのか。

 

(まぁ、いいか。その時が来ればその時考えればいい。

それに『本来支払うべきもの』…それを払うのは生徒が私と俺ではどうしようもない時。

よほどの危機であるならば、大人のカードを魔力で消費して英霊召喚に頼ればいいよね。)

 

藤丸は試す事をやめた。

『本来支払うべきもの』それは補填される魔力と違って替えの効かないものだ。

 

(さて、アロナは時間がかかりそうだし、そろそろセリカの様子を見に行くか。)

 

藤丸は大人のカードをしまい、立ち上がろうとすると――

 

『先生! 調査結果をPDF方式で纏めましたので後ほどご確認をお願い致します!』

 

シッテムの箱が起動し、資料を山の様に積んだ机を背にアロナが腕を組み、自慢げに笑う。

 

「ありがとう。頑張ったね。」

 

藤丸は、肉体を一時的に霊子変換し、シッテムの箱の中に入り、アロナの頭を撫でた。

 

「それでご褒美は何がいい?」

 

藤丸は、アロナの頭を撫でながら資料集めの報酬を聞く。

 

「いいんですか?」

 

アロナは撫でられながら藤丸の言葉に疑問を抱く。

 

「うん、いいよ。こんな深夜にいきなり作業させたからお詫び的な感じで」

 

藤丸は、自分の私情、独断とも言える作業を押し付けた事をアロナに詫びるつもりだ。

 

「でしたら、この仕事が終わりましたら前にバラエティー番組でやっていました高級カステラが食べてみたいです!」

 

アロナは、冗談半分、願望半分の気持ちで一万円以上のカステラを食べたいと言う。

 

「あの百鬼夜行学区のか。」

 

藤丸は思い出す。

クロノスの記者がバラエティー番組にて紹介していた老舗和菓子店の高級カステラ。

そしてアロナが夢に見る程甘いもの…特にカステラとイチゴミルクが好きだという事を思い出す。

 

「いいね。その日の当番のこの分も買って一緒に食べようか。」

「冗談のつもりで行ったんですがいいんですか!?」

 

アロナは、目をキラキラさせながら冗談を真に受けた先生に驚く。

 

「いいんだよ。先生の為に頑張る生徒にはお返しをしないとね。」

「でも、ユウカさんに怒られるかも…」

 

その言葉に藤丸は想像する。

魅力的な臀部が特徴的な青髪の少女。

ミレニアムにおける生徒会『セミナー』の重要人物である早瀬ユウカから領収証について詰められている光景を

 

「違いない。

でもその時は私が怒られればいいだけの話だよ。

そもそもアビドスの借金を私、いや、俺がどうこうしようとした時点でユウカに怒られるのはほぼ確定しているようなものだ。」

 

(まぁ、資産の一割はBBやダディを始めとする数学系のサーヴァントがシャーレ就任祝いで作ってくれた資産運用AIに回して増やして貰ってるんだけどね。)

 

「うーん。

先生は生徒の事をほって置けない性分である事を数日で理解しましたので、

ユウカさんの怒りの度合いはアビドスの状況次第ですね。」

 

アロナは藤丸がユウカに怒られる様をどうにか避けたいと頭を抱える。

 

「まぁね。

見ていられない状況にならなければ実行はしない。

私がユウカに怒られる事でアビドスを救えるのならそれは安い犠牲だ。

ユウカの胃腸、神経にも犠牲が出るからそこはどうにかしたいけど

じゃあ私はセリカの容態を見てから寝て、明日確認するとするよ。

お休み。」

 

「はい! おやすみなさい! 先生!」

 

藤丸はシッテムの箱の中から退出し、シッテムの箱はスリープ状態になった。

 

藤丸は、部屋から出て保健室へと向かう。

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

藤丸は保健室へセリカのお見舞いに行き、セリカから素直じゃない感謝を述べられ、藤丸は笑い、二人は保健室から去っていった。

そして時間が過ぎ、太陽が昇る。

朝の陽ざしが学校を照らす。

対策委員会の会議室で、定例会議が始まる。

 

「それではアビドス対策委員会の定例会議を始めます。

本日は先生にもお越しいただいたので、いつもよりまじめな議論ができると思うのですが…。」

 

「は~い☆」

 

「もちろん」

 

「何よ、いつもは不真面目みたいじゃない。」

 

「うへ、よろしくねー、先生。」

 

「よろしくね。」

 

「早速議題に入ります。本日は、私たちにとって非常に重要な問題…

「学校の負債をどう返済するか」について、具体的な方法を議論します。

ご意見ある方は、挙手をお願いします。」

 

アヤネがそう言うとセリカがいの一番に手を挙げた。

 

「はい! はい!」

「はい、一年の黒見さん。

お願いします。」

「あのさ、まず名字で呼ぶの、やめない? ぎこちないんだけど。」

「セ、セリカちゃん…でも、せっかくの会議だし…」

「いいじゃーん、お堅い感じで。それに今日は珍しく、先生もいるんだし。」

「珍しくというか初めて」

「ですよね! なんだが、委員会っぽくてイイと思いま~す☆」

「はぁ…ま、先輩たちが言うなら…

とにかく! 対策委員会の会計担当としては、現在我が校の財政状況は破産の寸前としか言いようがないわっ!

だからこれで一発大きく当てるわよ!」

 

セリカはそう言って怪しいチラシを見せる。

 

「これは…マルチ商法だね。やめておいた方がいいよ?」

 

藤丸は、三流魔術師としての観点で、セリカが身に着けているブレスレットを見る。

三流魔術師でもセリカが身に着けているブレスレットに神秘が何一つ宿っていない事が理解できる。

 

「証拠でもあるわけ?」

 

「どういった状況で誘われたの?」

 

「説明会に誘われてそこで買ったのよ。」

 

「なるほど、ねえ皆。どう思う?」

 

「「「「やめておいた方がいい(です)。」」」」

「そ、そんな…もう二個も買っちゃったんだけど!?」

「セリカちゃん、騙されちゃいましたね。可愛いです☆」

「まったく、セリカちゃんは世間知らずだねー。

気を付けないと、悪い大人に騙されて、人生取り返しのつかないことになっちゃうかもよー?」

「そんな風に見えなかったのに…せっかくお昼抜いて貯めたお金で買ったのに…」

「あー、うん。今回は私がそれセリカから買い取るから次からは気を付けてね。」

 

先生は、そう言って財布からブレスレット二個分のお金を取り出し、セリカからブレスレットを買い取る。

 

「そうだ。この際だから言っておくよ。」

 

藤丸はそう言って手を上げる。

 

「はい、先生。

お願いします。」

「ありがとう。

借金返済までアビドスや私物で買い取ってものがあったら言って欲しい。

正規価格から更に過去に遡って最高クラスの付加価値を加えて私が買い取る。

例えば食用品でもいい。

今は問題なく流通しているピザ味のスナック菓子だけど一時期生産中止となってネットオークションでは正規価格の数十、数百倍の値段で取引されていた記録が残っている。

ネットにおいて価格が暴騰していた時期の最頻取引額で私は買い取るつもりだよ。

ただし今回の様に価値のないものは付加価値は付けず正規価格買い取らせてもらうよ。

逆に君達が私から何かを買いたい時は、過去最低額で君達に売り付けよう。

しかし品揃えは、君達が私に売却したもののみであり、私から買ったものはもう一度私へ売る事は出来ない。」

 

藤丸はアビドスの面々に提案をする。

 

「この提案においてアビドスの皆に求めるのは、調査力と行動力。

如何に安く仕入れ如何に高く私に売り付けるかの勝負だ。

アビドスの土地を私に過去最高額で売り付け、そして過去最低額で再び買い戻してもいい。

事実上、君達は何も手放さず金だけが手に入るって寸法だ。

ただ売買の過程、そして買い取ってほしい物を探す手間そして私の手垢が付く必要はあるけど」

 

「なるほど、先生の我儘をどうにかして行使する為に考えたってわけ?」

 

ホシノはそう言って先生が自分の我が儘を押し通す手段であると。

自分達が過去最高額の値段で、先生に物を売り、先生から過去最低額の値段で買い戻す事が真実であると。

ホシノは見抜く。

 

「そうだよ。大人はあの手、この手で交渉を迫ってくる。

特に悪い大人はね。

私の大人としての野望は、君達の居たい場所での青春を送るのを見届ける事だ。

君達はここが大切な場所なんだろう?」

 

アビドスの面々は藤丸に対して頷く。

 

「だったら君達の青春と比べれば10億の金なんて安いもの。

いいや、端金にも及ばないよ。

私の意見はここまでだよ。

次は誰かな?」

「はい! はい!」

 

藤丸が意見を言い終わるとホシノが手を挙げる。

 

「えっと…はい、3年の小鳥遊委員長。ちょっと嫌な予感がしますが…」

「うむうむ、えっへん!

我が校の一番の問題は、全校生徒がここにいる数人だけってことなんだよねー。

生徒数イコール学校の力。トリニティやゲヘナみたいに、

生徒数を桁違いに増やせば、毎月のお金でもかなりの金額になるはずー。」

「え…そ、そうなんですか?」

 

アヤネは藤丸の方を向く。

 

「まぁ、そうだね。間違ってはいない。」

「そういうこと! だからまずは生徒の数を増やさないとねー、まずはそこからかなー。

そうすれば議員も輩出できるし、連邦生徒会での発言権も得られるしね。」

「鋭いご指摘ですが…でもどうやって…。」

「簡単だよー。他校のスクールバスを拉致ればオッケー!」

「はい!?」

 

藤丸は、ホシノの発言にコーヒーを吹き出す。

 

(何を言っているんだ!?)

 

「登校中のスクールバスをジャックして、うちの学校への転入届にハンコを押さないとバスから降りられないようにするのー。

うへ~、これで生徒数がグンと増えること間違いなーし!」

 

(???????)

 

藤丸は、ホシノの唐突の謎発言に困惑する。

 

「それ、興味深いね。

ターゲットはトリニティ? ゲヘナ? ミレニアム?

狙いをどこに定めるかによって、戦略を変える必要があるかも。」

「それなら退学した生徒、或いは廃校し路頭に迷う生徒を狙えばいいと思う。各学区からの法から守られていないならアビドスの法で囲えばいいんじゃないか?

法に守られている以上、そういったバスジャックは各校の風紀委員会が動くだろうね。」

「なるほどねー。確かにでもそれだと一気に確保できないんじゃない?」

「だけどその方が安全だと思うよ? アヤネはどう思う?」

「う~ん。廃校となった生徒ならまだしも退学となった生徒はもしかしたらこのアビドスの風紀を乱す存在になってしまうかもしれませんし…難しい話ですね。」

 

アヤネは頭を抱える。

 

「いい考えがある。」

 

シロコは手を挙げる。

 

「はい…2年の砂狼シロコさん。」

 

シロコは、手帳をしまい、アヤネから発言の許可を得るといきなりアサルトライフルを構えた。

 

「銀行を襲うの。」

「はいっ!?」

「??????」

 

アヤネが驚き、藤丸はシロコの発言に困惑する。

 

「確実かつ簡単な方法。ターゲットも選定済み。

市街地にある第一中央銀行。

金庫の位置、警備員の数、輸送ルートも全て計算済み。」

「さっきから手帳を見ていたのは、それですか!?」

「5分で1億は稼げる。はい、覆面も用意しておいた。」

 

シロコはそう言って懐から複数個の覆面を取り出し、シロコは青い覆面を被る。

 

「いつのまにこんなものまで…」

「うわー、これ、シロコちゃんの手作りー?」

 

アヤネとホシノはシロコが作った覆面を触って感触を確かめる。

 

「わぁ、見てください! レスラーみたいです!」

 

ノノミはいつのまにか被っていた。

 

「銀行強盗はダメだよ。シロコ。

銀行強盗する事自体が目的なら悪徳金融であるブラックマーケットの銀行を銀行強盗の目標として紹介してあげるけどさ。

悪い手段でお金を得る目的だけなら俺の我儘を使った方が安心安全だと思うんだけどね。」

 

藤丸はそう言うとシロコは肩をすかし、獣耳は垂れる。

 

「そ、そうよ! 先生の言う通り却下却下!」

「そうですっ! 犯罪はいけません!

はあ…皆さん。もうちょっとまともな提案をしていただかないと…強いて言うなら先生の提案ぐらいですよ。」

「あのー! はい! 次は私が!」

「はい…2年の十六夜ノノミさん。犯罪と詐欺は抜きでご意見をお願いします。」

「はい! 犯罪でもマルチ商法でもない、とってもクリーンかつ確実な方法があります!

アイドルです! スクールアイドルです!」

「アイドルか。いいね。実は前職でアイドルのプロデューサーみたいなことをやった事もあるんだ。

私自身実績もあるし、君達なら輝くと思う。」

 

藤丸はかつてのグレイルライブの事を思い出し、ノノミの意見に賛成的だが…

 

「却下。」

「駄目なのかい?」

 

藤丸はホシノが却下を出した事に疑問に思う。

 

「うへーこんな貧弱な体が好きとか言っちゃう輩なんて、人間としてダメっしょー。ないわー、ないない。」

「私が対決してきた強敵にはそういったアイドルもいたのになー。」

「決めポーズも考えておいたのに…」

 

ノノミはそう言って決めポーズを取る。

 

「水着少女団のクリスティーナで~す♧」

 

⦅クリスティーヌ…クリスティーヌ…⦆

 

(なんだ? 幻聴か? ファントムの声が聞こえたぞ?)

 

「どういうことよ…。

何が「で~す♧」よ! それに水着少女団って! だっさい!

それになんで先生も乗り気なのよ!」

「え~、徹夜で考えてきたのに…」

「実績あるのに…」

 

藤丸とノノミは肩を落とし、ため息をつく。

 

「あのう…議論が中々進まないんですけど。そろそろ結論を…。」

 

アヤネを無視して騒ぐように論争をする先生とアビドスの面々。

それにアヤネは青筋を立てて、机を掴む。

 

「い…いい加減にして下さーい!!」

 

アヤネは、怒りのままに机をひっくり返した。

 

「出たー! アヤネちゃんのちゃぶ台返しー!」

「きゃあ! アヤネちゃんが怒りました! 非常事態です!」

「うへ~キレのある返しが出来る子に育ってくれたねえ。ママは嬉しいよーん。」

「誰がママですか! もうっ、ちゃんと真面目にやってください!

いつもふざけてばっかり! 銀行強盗とかマルチとかそんなことばっかり言って!」

 

アヤネの発言にセリカは動揺し、シロコは反省する。

そして皆はアヤネに説教された。

 

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