福城聖の幼馴染み   作:ふみどり

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聖視点


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 子どもの頃からの単なる知り合い。幼馴染みなんてそれだけのもののはずだった。

 同い年で実家が近所だったから確かに昔はよく一緒に遊んだ。まだ使命も何も知らなかった頃、近所の空き地で泥だらけになるまで走り回っては笑い合い、時には喧嘩をし、すぐに仲直りをした。

 大口を開けて笑うこと。笑いすぎたら涙が出るということ。

 ひとを叩いたら痛い思いをさせてしまうこと。そのときは自分の手も痛いということ。

 仲直りをしたかったらちゃんと謝らないといけないこと。許し許されると友だちのままでいられるということ。

 幼い頃に学ぶ多くのことを、僕は彼とともに学んだと思う。ただ毎日を自分のために生きていたあの頃のことは、ずっと大切な思い出として心に残っていた。勉強や居合いに打ち込みはじめ、彼との距離が少しずつ開いていったとしても、それは変わらない。

 けれど、彼が僕にとって特別な存在かと言われれば、たぶんそうでもなかった。

 進路がわかれても顔を合わせれば立ち話くらいはしたし、頼み込まれて勉強を教えたことをもある。父が病気を患ってすぐの頃に家事や買い物を手伝ってくれたのも本当にありがたかった。

 でも、僕は彼に何も話さなかった。

 父たちがずっと探しているもの、その意義、僕が継がなくてはならない使命、――僕が居合いの腕を磨く理由。

 もちろん、彼だけでなく誰にも話したことはない。話す気もない。話す必要だってなかった。病床の父にもしものことがあったとしても、僕ならひとりで使命を果たせる。果たしてみせる。誰の理解も、協力も必要ない。多くのひとのために、僕がやるべきこと。――それで良かったのに。

 結果として、僕は何を成し遂げたとも言えないまま罪を負った。何をしてでも果たすべきと思っていた使命はこの時代において古くさい骨董品以上の価値を持たず、僕はただ多くのひとを傷つけ、恐怖を振りまいただけだった。

 長年の夢を捨てた結果が、これか。もはや自嘲の笑みすら出てこない。

 父はもう長くない。重ねた罪を考えても生きているうちに外に出ることはないだろう。僕はこれから、文字通りひとりで生きていかなければならない。きみはまだ若いからやり直せるという言葉を幾度となく聞かされたが、少しも僕の心には響かなかった。

 若かろうが何だろうが、僕は自分以外のすべてを失った。おそらく父と僕のことは気の狂ったテロリストのように報じられたことだろう。そんな人間(あく)は排斥されて当然、普通の暮らしなどできるはずもない。

 そう、いるはずがないのだ、僕に普通に笑いかける人間なんて。

 信じられない思いで、目の前に立つ彼を見据える。なぜだか少し面白そうな、悪戯が成功したときのようなその表情。

 幼い頃から少しも変わらない笑い方で、慣れ親しんだ声が鼓膜を揺らした。

 

「――いや、セスナの上で斬り合いはねえだろお前。ハリウッドでも目指してんの?」

 

 罪も使命も知ったことかと言わんばかりの幼馴染みが、昔と同じ軽口を叩く。




何かわりと気に入ったのでオマケです。
もうちょい書ける気もする。
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