メカメカ廻戦〜もう役立たずなんて言わせない〜 作:ポケットの中の四次元
虎杖に五条が死んだことが伝わらない。京都校の生徒が予定よりも早く渋谷に着いてしまう。
様々なことが想定できる。
そして、逃げ出したメカ丸こと与幸吉はそんな渋谷事変を観て何を思うのだろうか。
気がつくと、目の前の景色がガラリと変わっていた。東京メトロ渋谷駅・地下5階の副都心線のホームだった。
ダルそうに携帯をイジるナース服を着た女性や必死にナンパするドラキュラの姿の男性etc...。駅のホームでさえも仮装をした若者達でごった返していた。
幸吉はハッとする。この場所は....
呪術総監部の渋谷事変レポートを盗み見た時のことを思い出す。あの頃はみんなはどうしているのだろうかと心配で必死に読みまくっていた。そのおかげでここがどこか分かる。何があった場所か分かる。
幸吉の手は震える。渋谷の呪霊・
地下鉄の線路の方に目をやると、
副都心線のホームは吹き抜けになっているのだが、その吹き抜けから呪術界最強の男・五条悟がスーッと降りてくる。
やっぱりだ。嫌な予感が当たる。幸吉は唇を噛む。
五条は線路に降り立ち、挑発するように
それが戦いの始まりの合図だった。
呪霊達は無差別に若者達を殺し、隙をみては五条に攻撃を加える。
呪霊達は五条の
それだけではない。ホームと線路に溢れる非術師達。五条は非術師に危害を加えぬように戦わなければならない。つまり、領域展開を含む派手な術を使うことができないのである。五条の戦闘スタイルは周りを巻き込む性質のものが多い。そのため、基本的な呪術操作と体術のみで戦わなければならなかった。
呪霊全盛の時代を再び手に入れるため戦いであるのにも関わらず、呪霊達の作戦は非常に知的で、皮肉にも人間味を帯びていたと言えるだろう。
現代最強の術師・五条悟はそんな作戦に屈する男ではなかった。
生得術式(
その様子をみた
その刹那、五条は
このタイミングを待っていたのだ。五条は
「
目から生えた角は尾を引いて、糸のように伸びる。テレパシーで会話をする
ーーー「やっぱり....」幸吉の足が震える。手で抑えても止まらない。
煙は濃くなり、深い霧のように視界を悪くする。煙が充満して一般人は更にパニックになる。しかし、それでも戦いは続く。呪霊達は非術師を殺しながら、隙をみて五条に攻撃を仕掛ける。
留まることを知らない
視界の悪い煙の中でも、六眼を使って敵の位置を正確に把握している。だが、体が思うように動かないという印象だった。時間が経つほど、呪霊達の拳が五条へ当たるようになってきた。煙の効果だろう。
ーーー「幸吉、みちゃいけない。渋谷の呪霊・
煙の正体は”
”
①対呪効果により、呪いそのものである呪霊は動きが鈍くなる。
②対呪効果により、呪術師は煙の中で呪力を練ることができない。
”
製作者の幸吉は死線に身を置く京都校の仲間の生存率を上げる為に開発した。誰でも使えるように嘱託式にして、緊急脱出装置のような役割だった。西宮達、京都校のメンツはプロトタイプを使ったことがあった。とても便利なものだった。
ーーー「でも、どうして奴らが....」西宮の感情のない声で呟く。「奪われたんだ....俺が逃げ出したから。」
真人と戦う為に開発した装甲傀儡究極メカ丸試作0号には念の為実用段階の”
”
だが、目の前では戦いの為の道具、即ち兵器と化している。人間はサルとの生存競争において、”道具”を使うことで決定的な差を生み出した。
その道具は全て諸刃の剣である。優れてものであるほど、使い方を誤れば取り返しのつかないことになってしまう。
人間的な思考で作戦を組み立てた呪霊は賢明だった。道具の裏の面を使い、攻撃を仕掛けてきたのだ。
呪霊達が”
しかし、現に
反対に、五条悟はどうだろうか。相手の攻撃は予想できているようだ。体質としての六眼は耐呪の効果を受けないからだろう。しかし、無下限呪術と基本的な呪術操作による身体強化が行えていない。それが何を意味するかのか。呪力を練れない五条悟はその時点でただの非術師と変わらないのだ。
ーーー
幸吉は自分が開発した道具が兵器として利用される現実を目の当たりにして、呪霊の底知れない悪意に鳥肌が立つ。
「メカ丸、絶対にお前は悪くない。あれはあたし達を守る為に作ったものだろう。奴らの使い方が悪いんだ。」
西宮は慰めの言葉を何度も繰り返すが、幸吉は思う。本来の意図とはなんだ。そんなの関係ない。俺が作った物が悪意を振り撒いている。それは許されることではない。
「五条悟が封印されたのは俺のせいだ。俺が渋谷をめちゃくちゃにしたんだ。」
怒鳴り散らす。その瞬間、幸吉は背中を切り裂さかれた。服は破け、真っ赤な血が辺りに飛び散る。だが、辺りには誰もいなかった。一体どうやって?
背中にできた傷は大きなバツ印だった。幸吉の罪を断罪するような象徴的な傷だった。
あまりの痛さに幸吉は倒れ込み、西宮は支えるように駆け寄った。
取り乱した幸吉の姿を見て、西宮は少しだけ冷静になった。すっかり忘れていたが、ここは渋谷の呪霊の領域の中だ。切り裂き攻撃は必中効果なのか。だけど、何故このタイミングで....トリガーは?
ーーー
その後の展開はドミノのように崩れていく。
五条が水中から顔を出すように天井から上の階へ上がると、上で待ち構えていた
それは罠だったのだ。普段の冷静な五条なら絶対にこの程度の罠は看破していただろう。ここまで追い詰めた時点で
「開門!!」
不意を突かれた五条は
幸吉の視界は再びグルグル回り始める。