メカメカ廻戦〜もう役立たずなんて言わせない〜   作:ポケットの中の四次元

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メカ丸を操る呪術師・与幸吉は装甲傀儡究極メカ丸試作0号に乗り、真人と夏油と戦った。だが、この世界の幸吉は戦いの途中で逃げ出してしまう。

逃げ出したことを後悔している幸吉だったが、そんなことお構いなしに時は流れていく。未曾有の呪術テロ・渋谷事変が終わり、死滅回游が始まった。

贖罪のために人助けをしようと、幸吉は大阪コロニーに向うこととなる。

大阪コロニーで幸吉は折口という過去の術師に襲われピンチに陥るが、アインシュタインという過去の術師の協力もあり、逃げることができた。

助けてくれたアインシュタインはあの偉大な科学者アインシュタインだった。

そして、アインシュタインの力の秘密が今明かされる...!!




三.大阪コロニーにてーなんばグランド花月ー

 大阪の商店街は蜘蛛の巣のように縦横無尽に広がっている。

 

 死角の多い商店街は幸いにも逃げるのに適していた。お祭り男・折口が操る獅子舞を倒した幸吉達は一時避難場所として”なんばグランド花月”にいた。

 

 コロニーの縁まではかなりの距離がある。一旦、休憩しようという腹づもりだった。

 

 なんばグランド花月のロビーにはチケット売り場や売店がある。だが、死滅回遊で人がほとんど居ないため、普段なら賑わっている場所でもシーンとしていた。恐怖ではないが、不気味な感じがした。

 

 アインシュタインは真っ赤なソファーに足を組んで座っていた。幸吉はそんなアインシュタインを見つけ、隣に腰を落とした。

 

 道頓堀での戦いの後、色々と聞きたいことがあったが、敵が彷徨いている可能性があるため避難を優先したのだ。幸吉は胸に好奇心をいっぱいにしながらアインシュタインに言葉を投げる。

 

「アインシュタイン。聞きたいことがある。」

 

「アインでいいぞ。それでなんじゃ。」

 

「アイン。まず、どうして獅子舞の弱点が分かった?」

 

 獅子舞の弱点を看破するのは容易ではなかったはずだ。実際に幸吉は弱点に気付かなかった。恐らく見破るには年単位の呪術の修行と多くの実践が必要になるだろう。であるすると、必然的にアインシュタインは手練れであると推測できるだろう。一級術師レベルの強さはあるはずだ。

 

 だが、アインシュタインは他の非術師と一緒にお祭り男・折口から逃げていた。どうして戦わなかったのだろう。獅子舞の弱点を見破るほどの実力者であるはずなのに。

 

「口が構造的に弱いのは明らかだったじゃろ。」

 

「構造...?」

 

 人が食事をすること、人が睡眠を取ること、そんな明らかな事実を告げるかのようにアインは言った。

 

 その態度に幸吉はポカンとしていた。幸吉は呪力を練れるがそんな呪物の構造などが見えるわけではない。ほとんどの術師がそう言うだろう。高層ビルを見ただけで中の部屋割りやどんなテナントが入っているか当てられる者はいないだろう。呪霊や呪物においても同様だ。繋がりの弱い部分や呪いの薄い部分は分からない。

 

 そこで幸吉は感覚の話をしていては埒が明かないと思い、手のひらに呪力を込めてみた。

 

「これは見えるか?」

 

「おお。それは体に纏うこともできるのか。お前さん、器用じゃのう。」

 

 アインは驚いたように言い、続けた。

 

「手の付け根の辺りから流れでて、指を一本一本巻き付けるようにエネルギーが回っているな。というか、体からエネルギーを出しておるのか?」

 

「ああ、もちろんだ。呪いの力・呪力だ。アイン、お前は呪力が使えないのか?呪力をみることはできるのに。」

 

「その力...呪力というのか。使えるわけがないではないか。悪霊のエネルギーであろう。」

 

「悪霊...?あっ、そうか!」

 

 このやりとりを経て、やっとアインの能力に気がつく。そして、簡単な実験と対話を繰り返し、アインの特殊体質についての理解が深まっていく。

 

 アインの能力はどうやらこういうことらしい。

 

 アインことアインシュタインはあらゆるものの構造を粒子レベルで観察することができる。だから、電気の流れも見えるし、音の波だって見えるらしい。そして、呪力もみることができる。それもかなりの解像度で見ることができた。獅子舞の弱点を看破することができのもこの能力のおかげだ。

 

 恐らく、科学者として成功したのもこの能力のおかげだろう。幸吉はアインのこの能力に”脱構築(だつこうちく)”と名づけた。

 

 しかし、"脱構築”には弱点というか、デメリットという、ハンディがあった。大いなる能力はどこかで帳尻が合うようにできているのだ。

 

 ”脱構築”の弱点とは、天与呪縛(てんよじゅばく)であるということだ。天与呪縛というのは先天的な弱点がある代わりに莫大な力が授けられる現象のことだ。

 

 幸吉も天与呪縛で、生まれた時から体が悪く、全身の毛穴を針で刺すような痛みを感じていた。幸吉はその代わりに莫大な呪力を手にしていた。

 

 アインの場合は呪力が練れない代わりに"脱構築”という類まれなる才能を手にしていたのだ。

 

 呪霊の発生は何故か日本に多いらしく、アインの生まれたヨーロッパには術師はほとんどいなかったらしい。ただ少ないだけでいないわけではない。悪霊という名で悪戯をするらしく、アインは悪霊が見える奴、霊感がある奴だと思われていたようだ。アイン自身も成長するにつれ、みんなが見れないものが見えることに慣れていった。だが、その成長にもそれなりに苦労があったらしいが、それは別の話である。

 

 アインの天与呪縛である"脱構築”の理解が一段落つくと、アインが口を開く。

 

「そういえば、お前さん。面白い人形使っていたな。あれ見せてくれ。ずっと気になっておったんじゃ。」

 

 幸吉はメカ丸Mark.2を起動し、アインの目の前を縦横無尽に飛び回させた。

 

「ようできておるわ。それにしても、呪力というエネルギーは便利じゃの。物理的なコードを必要とせずに動けるのが、素晴らしい。」

 

 感心してアインは拍手を送る。一応自作した呪傀だったので、幸吉は鼻が高い。

 

「じゃが、ちとエネルギー効率が悪いのう。呪力をエネルギーとして捉えるのであれば、改良の余地がありそうだ。ちょっと分解してもいいかのう。」

 

 幸吉は半信半疑だったが、メカ丸Mark.2をアインに渡す。

 

 すると、ドライバーも使わずに素手だけでメカ丸Mark.2を解体していく。構造的に力を加える部分が分かっているため、何日も煮込んだ焼豚のようにホロホロと分解されていく。ある部分にたこ焼き屋から拝借した油を塗ったり、幸吉に印を書かせたりした。

 

そんな作業を続けること数十分。ついに一度バラバラになったメカ丸Mark.2が元の形を取り戻した。

 

「ほれ、呪力を流してみ?」

 

 アインは胸を張って言った。

 

 幸吉はおそるおそるメカ丸Mark.2に呪力を込めた。

 

 瞬間に、メカ丸Mark.2は吹っ飛んでいき、目の前の壁が砕けた。あっと思い、ブレーキをかけようとしたが、気づいた時には隣の隣の建物まで飛んでいた。マウスの感度を変えた時のような感覚だった。

 

 天与呪縛が解ける前の全盛期の幸吉の呪力量を持ってしても、この速度は出ないだろう。少し呪傀の内部をいじっただけでこんなに違うなんて。

 

「一体、何をしたんだ。ど、どうなってるんだ。この操作性は。」

 

「レーザーの方も撃ってごらんなさい。」

 

 アインはニヤニヤしながら言った。機械好きはこれだから嫌いになれない。

 

 幸吉はさっきの反省を踏まえて、針に穴を通すように慎重に呪力を流した。

 

 幸吉が呪力を流した途端、壁には半径1m程度の穴がポッカリと空き、数十メートル先のパチンコ屋の店内まで見えた。

 

 ドゴゴゴゴゴゴーーーン。レーザーが直撃した建物は衝撃で倒壊し始めた。轟音が難波の土地に響き渡る。

 

「アイン、これはすごい。俺の戦い方が180度変わるよ。メカ丸Mark.2ver.2.0だ。そう呼ぼう。対戦思想からしてもメカ丸Mark.2とは圧倒的に異なる。これは呪傀技術のブレイクスルーをたった数十分で突破したと言っても過言じゃないよ。」

 

 獅子舞との戦いで自身の唯一の攻撃手段であった極小大祓砲(ミクロウルトラキャノン)が全然使い物にならなくて、かなり落ち込んでいた幸吉だったが、これならなんとかなるかもしれないそう思い始めていた。ただ、スピードが格段に跳ね上がったため脳みそが着いてこない可能性がある。しっかり訓練しなければ。

 

 そして、ふと思う。アインと協力して”あれ”をもう一度使うことができれば、京都校の仲間の仇である羂索を討つことができるかもしれない。

 

「アイン、君に見てもらいたいものがあるんだ。落ち着いたら、来てほし...

 

 その男の声は幸吉の声を掻き消すように響いた。

 

「人生はお祭りや!!」

 

 3体の獅子舞が絡み合いながら壁を突き破る。そして、巻き上がる粉塵の中にハッピを着た男が立っている。

 

 その男はお祭り男・折口だった。メカ丸Mark.2の派手すぎる試し撃ちの衝撃で場所がバレてしまったのだろう。

 

「兄ちゃん、ついに見つけたで。こそこそ逃げんと、祭り楽しまなあかんで。」

 

 どこからともなく聞こえてくる祭囃子の音に合わせて、折口は小躍りしている。

 

「それにしても、わしの獅子舞を倒すなんてなかなかの手練れやね。ちょいと油断してもうたわ。堪忍な。」

 

 ハッピは先ほどの戦闘でボロボロになっていたが、背中に書かれた”祭”という字だけは綺麗に残されていた。ポケットから鉢巻を取り出して、頭に巻く。

 

 幸吉はsukimaを呼び寄せて、メカ丸Mark.2ver2.0を起動する。そして、非術師が巻き添いにならないように距離をとる。

 

「そろそろ、ホンキちゅうもん教えたるさかい、覚悟せえや。」

 

「悪いが、折口。半日前の俺と今の俺じゃ全く違うぜ。後悔しても知らねえぜ?」

 

 アインにメカ丸Mark.2ver2.0を改造してもらった。今のメカ丸なら獅子舞を弱点部以外から貫通することができるだろう。もう今までの自分とはレベルが圧倒的に違うのだ。幸吉には自信が漲っていた。

 

 折口の額には汗が滲んでテカテカしている。いつまでも暑苦しい男だった。垂れてきた汗を腕で拭い、そのまま掌印を結ぶ。そして...

 

領域展開(りょういきてんかい)常楽祭壇(じょうらくさいだん)!!」

 




日車寛見という術師がいますが、彼の術式は自身の職業を参照しています。弁護士が呪術師になったらというアプローチです。
では、今までに功績を残した人が術師だったとしたらどんな術式なのだろうか。歴史を呪術廻戦的に解釈するとどう当てはめることができるのかという実験も本作では行っています。
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