昔、再会の約束をした少女が知らないうちに自分の国の皇帝になっていて、最終的に気づかぬうちに王室の中で人形みたいに愛されるだけになってしまう話くれよ 作:やゆゆゆゆ
今から何年前のことだろう、思い出せないほど前のこと。王城で働く父さんが僕の十歳の記念に職場の同僚に僕のことを紹介したいと言った。僕の住んでいたのは王城から3里は離れたバビロン(帝国の首都のこと)の外れの方だったから、遠くに見える白銀に輝く美しい城は昔からの憧れで僕は一も二もなく頷いたのを覚えている。
「城の中ではあまりあちこちに行ってはいけないぞ」
そう父さんからあらかじめ注意されていた僕だったが、父さんが仕事の用事とやらで僕の近くから離れると子供っぽい好奇心がむくむくと湧き出して耐え切れず、恐る恐る城の中の探検を始めた。憧れていた白銀の城、美しい調度品の数々。目を輝かせて歩いていた僕の足は知らず知らずのうちに早まり気づいた時には僕はバカでかい城の中で一人ぼっちの迷子になっていた。とぼとぼと大きな扉と古びたレンガの壁の間を歩く。そうしてどうしようどうしようと涙がこぼれかかっていた時、不意に目の端に美しい銀色のきらめきが引っ掛かった。なんだ、どうしたと目を凝らしてみればそこにはまるで天使のような、田舎住みの僕なんかでは見たことが銀髪の少女。いや、正確にはレンガの壁を何とかよじ登ろうとし、綺麗な顔を真っ赤に染めた少女がいたのだ。
「な、なにしてるの、こんなとこで」
恐る恐る声をかけた僕に少女の方がびくりと震えた。
「わ、われはこの城を抜け出して外を見るのじゃ。うぬは何者ぞ?」
「ぼくは■■。知り合いにはみーちゃんって言われてる。ここからちょっと離れたシャンロンの町から来たんだ。というか、そんなことより、外に出たいってなんでなの?」
「そ、それは・・・・・・城の中には子供はおらぬし、いかめつい大人しかおらぬのでな・・・。遊ぶ相手が欲しいのじゃ」
涙を浮かべながらこちらを見つめる銀髪の少女。思い返せばこの時の僕はやはり随分と子供だから、思ったことと言えばこの可愛い子の願いを叶えてあげたいということと、寂しくて不安だったこの城の中の冒険もこの子に案内してもらえば何とかなるのではないかということだった。
「じゃあ、ちょうどいいよ。今日は僕と一緒に遊ぼう!ここら辺の地理?は何にも知らないけどさ、友達といつも遊んでるゲームなら一緒にやってあげるよ!」
「ほんとうか!本当に我と遊んでくりゃるのか?」
「当たり前だろ?さぁ、一緒に行こう!広いお城の中だからなんでだって遊べちゃうよ!」
女の子の白くて柔らかい手を握って走り出す僕。胸には不思議な高揚感と安心感が広がっていた。朝に城に来た僕はそれから空が真っ暗になるまで女の子を引っ張りまわした。女の子は言葉自体は「うぬ」だの「我」だの変な感じだったが、僕が遊びなれた遊びでもなんだか初めてやるようにいいリアクションを取ってくれて、ヒーローごっこにままごと、冒険ごっこ、どの遊びをやるにしても僕らは夢中に時間を過ごした。外がついに真っ暗になり、そろそろ流石に父さんのもとに帰らねばと思った僕は女の子に帰宅の意思を伝える。その言葉に何度も「いやじゃいやじゃ、この城にずっとおればいいのじゃ」と嫌がった女の子だったが、どこからか現れた黒ずくめの女の人がこそこそと何かを女の子に伝えると悲しそうにぐっと涙をのみ込んだようだった。
「うぐっ・・・ふぐっ・・・・・・。こ、こんなに楽しかったのは初めてじゃ、うれしかった。本当にうれしかったのじゃ。また、また遊んでくれるか。我と・・・我と・・・一緒に」
綺麗な瞳を涙で濡らした女の子が夕日の中でじっと僕に問いかける。
「当たり前だよ。また、一緒に遊ぼう。約束だよ」
伝えた言葉に女の子はぱっと花が咲くように微笑んだ。帰り際、黒い女の人に案内されて父さんの職場に向かう僕の背中に」「絶対じゃぞ、次は、次も・・・絶対一緒に遊ぼうなぁ・・・」という彼女の泣き声が響く。名残惜しさと寂しさを抱えながら僕は大きな声で何度も「約束だよ」と返事をした。
父さんの職場につき、やはりしっかりと叱られ涙目で帰る僕。帰り際、今日あったことを父さんに話していると父さんはなぜだかみるみるうちに顔色を病気のように青くしていった。
「今日あったことは誰にも言ってはいけない、その女の子と会ったことは母さんにも友達にも秘密だ。絶対だぞ、絶対に秘密だぞ」
震える父さんの僕の肩を掴む手が痛い。僕は何だかよく分からないままそういえばあの子に名前聞くの忘れてた、なんてのんきなことを考えていた。
ヤンデレ回は最後のほうになるぞ!
土台を築いてぶっ壊すのがヤンデレのスパイスだと思っています!