昔、再会の約束をした少女が知らないうちに自分の国の皇帝になっていて、最終的に気づかぬうちに王室の中で人形みたいに愛されるだけになってしまう話くれよ   作:やゆゆゆゆ

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ヤンデレ大好き


薔薇園

 侍従として働き始めてから三年、警備に調理、食事の配膳に「歓迎任務」と多種多様にわたる王城での仕事にもこれだけ時間を掛ければ馴染んでくるというものだった。不思議なことを挙げるとすればこれは本当に謎なのだが他の侍従と比べて出世のペースが速いということだろうか。そもそも侍従学校の卒業にしたって他の王城勤務のエリートたちと比べれば能力的に足りなかった部類の僕であるし、王城での仕事にしてもそこまで抜きんでているものもないと思うのだが、現在の僕の役職は王城の中でも最深部、姫様のご尊顔を拝謁する侍従長の立場では流石にないが、その近辺での傍仕えである。出世する分には給料も上がるし、自由も増えるしで結構なのだが、理由の分からない昇進というのは逆にどこが評価されているのか分からな過ぎて不気味というものである。と、そういえば他にも謎なことがあるとすればかつてこの王城を訪れた際に訪れた際に見かけたあの少女と一度も会えていないということだろうか。入った当初はこの城にいたこともあるし城仕えの侍従の家族なのかと思っていたのだが、もしかしたらあの銀髪を見るに(銀髪というのは皇国においては女王様に象徴されるように貴種の象徴)貴族のお偉方の娘さんであったのだろうか。そう思えば父さんがなぜあれだけ震えていたというのも頷ける。自分の娘が貴族の娘に迷惑をかけていたなどとなれば余裕で一家の首が飛ぶのだから。

 

「■■!おい、■■。でくのぼうめ!ぼうっとするんじゃない、この城には役立たずなんて一人だっていらないんだ。さっさと陛下のもとへデザートを運べ。今日のメニューは「金華蝶のサッテコバン」と「竜嘆の果実」、陛下に口上するメニューの説明はそこに置いてあるから馬鹿なりに役目を果たせ!」

 

 口の悪い、しかし、腕だけは皇国一と有名なシェフの罵詈雑言を本日も右から左に聞き流して僕は厨房から陛下の住まう「薔薇園」へと続く長い長い廊下を歩く。あの性悪コックはいつだってあんな感じで攻撃的。かつて皇国随一の料亭の料理長をしていただか何だかという話を聞いたことはあったが、未だにその癖が抜けないのか侍従であれ近衛であれ、城に住まうものは自分の雇う下っ端のように扱った。料亭にかつて訪れた姫様に惚れて王城に入ったという噂もその時聞いたのだが、あの頑固爺が惚れた腫れたで人生を変えるとは。全くうちの陛下は恐ろしいお方である。

 長い長い廊下の先、ふつふつと下らない愚痴を頭の中で募らせているうちに僕は突き当り、僕の背丈の何倍もあるほど大きい、美しいランドリア調の装飾が施された扉へとたどり着いた。両開きの扉の右扉に描かれた銀色の薔薇と左扉に描かれた口を開けた荘厳な蛇。かつてグスマン帝によって送られたというその扉は莫大な帝国の財宝の半分もをふんだんに使われた代物らしく、歴史的に見ても芸術品としても価値は計り知れぬ、田舎出の僕なんかでは目の前に立つだけで畏怖される風格を放っていた。

 

「陛下、本日のデザート。「金華蝶のサッテコバン」と「竜嘆の果実」でございます。」

 

 扉中央に作られた銀製の蝶番を二度たたく。美しさだけでなく機能性の部分でも何十人のカラクリ職人が手掛けたという精緻な装置に従って、からからという歯車が回る音と共に左扉の龍の口が大きく開いた。学のない僕にはどんな作りになっているのか全く想像がつかない開いた龍の口内は王室の中に繋がっているはずだが誰もいないかのように真っ暗で、内部の様子は伺い知れない。

 

 陛下は普段従者や近衛の前に姿は現されない。執務のすべて、国権のすべては重い扉の中に隔たれた王室の中で行われ、家臣との連絡は文通か侍従長越しに、また国民の前に姿を見せられることはほとんどなかった。これは代々、陛下の美しさを衆目に晒さない王家の神秘性を保つという施策らしく、そのいわば徹底されたブランディングが「銀の薔薇」の魅力を高めていた。

 

 料理長に渡された口上を一しきり述べ終わり龍の口内へとデザートを運び終えた僕はもう一度蝶番も二度叩き、薔薇園を後にする。毎度毎度ここに来るたびに感じることだがどうもここに来た帰り、配膳が終わった後には自分が何かに見られているような、僕のつま先から頭のてっぺんまで分析されているような、そんな気持ち悪さを感じるのだ。王室にはこの国の機密情報に朱印、何よりも一番の宝である銀の薔薇があるということなのだ、暗部の何人かが見張っていても不思議ではないだろう。背中に刺さる視線に身震いしつつ、僕は長い長い廊下を歩き始めた。

 

 





昨日ふと思いついたんだが、売れない芸人の主人公が超実力のある相方の関西弁美人芸人とコンビを組むことになり、ある程度成功するも「私がいなきゃ生きていけないくせにタレなんて作ってるんや?」と脅されるストーリー読みたくない?

俺は読みたい。

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