少女たちの無限夢路_Summer&Cosmos 作:十二の子
空、海、森、島、街の中と至る所でその姿を見ることができる。
人は、時にその脅威にさらされ、時に彼らを終生のパートナーとし、文明を築いてきた。
長き歴史を誇る名家フロックス家の令嬢アオバに憑依した転生者蒼玻は、仮死状態となったアオバの代わりにユキコシ地方を旅し、巨悪を倒した。
自分を救い多くのものを託し消えた蒼玻、彼に恋したアオバは、その魂を取り戻すため命を賭け、ついに2人は結ばれ1つの身体を共有することになった。
アオバ、カグヤの姉妹が向かう先は、広大な世界の裏、パルデア地方の沖合。
夢物語は、常夏の島から萌芽する...!
ー*ー
グランデ・コンティネント。
「大陸のおっきい方」を名乗る不遜な島が、パルデア地方の南西の沖合に浮かんでいる。
高い山脈、美しい海、石畳石造りで情緒ある街並み…古代パルデア帝国が大穴に手を出しすぎて破綻して以降、独立した諸島の中核として2000年ほど穏やかな時を過ごし、海のただ中でパルデアやカロスをはじめ古今東西の文物が行き交うことと豊かな自然から「大陸のようにすべてが揃う島」としてその名を付けられた島。歴史の中で多様なポケモンが連れてこられ住まうようになったグランデ・コンティネントに、近代に入って目をつけた組織があった。
その組織の名を、フロックス・ホールディングスという。
パルデア本土にある2つの名門ポケモンスクール。それらは博士やチャンピオンを近年も輩出してきた超エリート校で、生徒に高い自由を与えて旅をさせつつもポケモントレーナーとして大事なことをすべて教えてくれる素晴らしい学校だ。しかしあまりにも続きすぎて硬直や校内問題(いじめ、そして教員大入れ替えなど)も発生し、そもそも名門ポケモンスクールがパルデアという限定された1地方をフィールドとするたった2つというのも不足している…が、今さらポケモンスクールを新設しても名門の権威には勝てず落ちこぼれ校となるため、パルデア・カロス・ガラルには誰も新たな名門校を作れずにいた。
しかしフロックス家ならどうだろう?カントー・ジョウト・ホウエン・シンオウに強いコネクションを持ち、根拠ユキコシではやんごとなき一族として高い権威を誇るかの名家がバックにつけば?遠き列島からの生徒を、どこの地方でもない文化の交差点にして多様なポケモンのたまり場たる孤島に集め研鑽させることができるのではないか?
尊き名家の試みはおそろしいほど成功し、島全域が学園の教材となる「学園島」の様相を呈した。伊達に1000年を越える歴史を生き延び知恵を高めてはいなかったということだろう…ただ惜しむらくは、星のほぼ裏の孤島で多くのトレーナー育成に成功する一方で、フロックス家本体は育てるべき人材も少ないままに壟断者クワズによって内から腐り始めていたことか。
当主夫妻の変死、そしてグランデ・コンティネント学園島計画の発案者たる先代当主の老フロックス翁も急死し、幼き後継者姉妹を傀儡とする副会長クワズは、この世界的な大財閥を事実上乗っ取り、裏ではユキコシを破壊するおそろしい計画を進めていた。
クワズの手から逃れ、旅の末にクワズを打ち倒しユキコシを救った令嬢姉妹は、クワズがもたらした「ワカナエシティ中心市街壊滅」という大被害の補償のための在外資産処分と、フロックスグループ再編、その2つの手続きの中で、主要在外資産の1つであり、学園・研究拠点としてグループ各社の中でも特殊すぎる位置づけにある学園島グランデ・コンティネントに気になる点を見つけ、懸案「消えた憑依転生者、蒼玻」を二重魂魄という手段で解決し、ユキコシの旅路を一時中断、専用機にてかの島にやってきたのだった。
ー*ー
「忙しいですわね…/そりゃそうだよアオバちゃん」
「私とお姉ちゃんでやらなきゃいけないことも確かめなきゃいけないことも多いもんね…
…なんで決裁事項がこんなにたまってるのさ…」
「ホールディングスが解散して再編してるから混乱してるんだな…/もっと自分で考えられるようになりませんといけませんわよ。/そうは言っても上意下達のグループのトップが抜けていきなり『横のつながりで連携を』は難しかったんだろ。」
「探しましたぞアオバさん!」
(俺、外面したほうがいい?/口調にボロがありますし切り替えの時に危ういですわ。/わかった、俺は黙っとく。)
「学園長さん、例の件、わかりましたかしら?」
「これですな。言われた通り、来学者名簿をひっくり返して見たところ、ありましたぞ。
パルデア新チャンピオンがこの島を訪れた直後、フロックス・ホールディングスの
「フロックス本社から来た人のリーダー、コンフリーって名前だったりしない?」
「ですな。ドンピシャですぞ。」
「…はぁ~」
「腑には落ちましたわね。
テラパゴスのカケラなどというものがあるわけですわ。」
(時期的にも一致するか…
「…謎はだいたい解決したね…ただ、結局なんでテラパゴスのBREAKオーラなんてものがあるのかまだわかんないけど…」
「おおよその想像はつきますわ。イーブイ、やっぱり感じるのですわよね?BREAK力場《フィールド》。」
(クワズの奴、伝説の三神がユキコシ地方の概念的欠落を補うために作った力場を、性懲りもなく何かで「代替」してやがったかな…?)
「ラスト団の無駄に高い技術力については、この際考えても無意味ですわ。解析は難航しているようですが、散逸してゴフク屋に掠め取られなかっただけでも良しとしましょう。」
(欲を言えばステラーシステムの複製が欲しい気もするけどな…グンジョウ発電所危なかったから…)
「疑問は解決したし事務処理も疲れたけどかなり終わったね。お姉ちゃん、休んできたら?」
「あら?わたくしに蒼玻くんとのデートの機会をくれるのかしら?」
(うーん、言葉に表せない複雑な表情をするなぁ…カグヤ、俺のこと自体は大事に思ってくれても、まだアオバとの恋仲については思うところあるんだな…)
「デート?お相手がおられるのですぞな?でしたらおひとりにしましょうぞ。」
「ああいえ、言葉の綾ですわ。無粋ではなくって?
けれどわたくし一人にしてくださるのは心が落ち着きますわね。ありがたく御厚意お受けしますわ。」
ー*ー
学園長、根っからの善人で、根っからの教育者だな…
蒼玻はそう思ったし、アオバにしても少しの悔しさと多くの感動を覚えていた。
学園本部構内から少し離れた岬。西日が沈み夕焼けに染まる海はあまりにも美しい。遠くで跳ねるマンタインが太陽に小さく影をなしているさまなど、思わず一句詠みたくなるほどだ。
そんな岬には、何人も先客がいた。女子生徒2人が「お姉様…!」などと熱烈な
てっきり、賓客中の賓客たるフロックスの令嬢当主にわざわざ勧めるのなら人払いとはいかなくても羽目を外しすぎないよう見張りの教師でもいるかなと思っていた蒼玻とアオバだったが、予想は外れ、カップルたちはそこに令嬢がいることにすら気づいていないであろうくらいおのおの好き勝手に語らい楽しんでいた。
自主性を重視して生徒をしばらず、それでいて失礼がないだろうと信じそしてそうなるよう教育してきた…学園のレベルの高さが伺えた。おかげで、恋人たちの穏やかな夕暮れは誰にも邪魔されず穏やかなまま保たれている。
蒼玻/アオバもまた、そっと袴を折って腰を草地に下ろす。もちろん純白の袴と着物が汚れないようにシートを敷くことも忘れない。
「思えばわたくしたち、いろいろありましたわね…
…トキトビで仮死状態になって
/転生してアオバちゃんの代役を求められて、仲間を集めておみやを巡って、あの大乱に辿り着いて
/目が覚めればたくさんのものを託したままにたいせつな貴方が消えていて、オカルトとサイエンスを訪れて、ホープ団に襲われて
/アオバちゃんが俺を求めて、そして2人で蘇って、カロスの伝説ポケモンを退けて。
本当に、短いようで長い旅だったな…
/それで貴方に出会い、こうしてともに同じ時を過ごせるのですわ。幸せなことではなくって?
/欲を言えばもう少し穏やかに出会っても良かった気もするけどな。
/今、こうして2人、穏やかな時を過ごせているではありませんの。これ以上は高望みというものですわよ?」
お嬢様なんだからもっと欲張りに幸せを求めてもいいんじゃないか、蒼玻がそう言えば、そうできないのは悔しくはありますけれど、皆様の恋路を阻まないのもまた
「…
…蒼玻くん、後悔、してませんこと?
/後悔?
/蒼玻くんがわたくしに必要とされてうれしかったのはわかっていますし感じていますわ。けれど…
…もう少しいい出会い方があったように思うのです。もっと穏やかで、ロマンチックな…
/争いのない、普通の男女みたいな出会い?
/きっとわたくしは、これからも巻き込んでしまいますし、同じ身体を共有している限り、できないこともありますわ。それは、貴方にとって、パーフェクトな人生ではないのでは、と...
/逆にさ、アオバちゃんは、後悔してるわけ?」
息を吐くかのように自然になされた問い返しに、アオバの答えは決まっていた。
「わたくしの辞書に、反省の文字はあっても、後悔の文字はありませんわ。
/俺もだよ。俺はこの、たった一度のもう一度の人生、生き尽くすって決めたんだ。何があろうと、今度こそ…今度は、大切な人と、大切な
それに、後悔なんてない。アオバちゃんも、俺と/ええ、一度きりの人生、いっしょに生きていきましょう。よろしくですわ/ああ、よろしくな。」
夕焼けがかすれ、海と空が赤から黒へ変わっていく。
一番星を細腕であおぎ、そのままぐぐーっと伸びをして、蒼玻/アオバは立ち上がった。
岬から学園へ戻るため、来た道へと振り返る…途中で、目が合った。
(視線...誰?/覗き見だよな…?)
道のわき。森があるあたり…ポケモンの視線とは違った、どこか重たい視線。
「…イーブイ、念のため備えてくれ。」
油断はしないながらも、そっと森へ分け入る。
木の根元で、女の子が一人、すっかり暗くなった岬の先の海をぼーっと眺めていた。
丹念に手入れされていることがわかる、流れるようなボブカット。
地味だがしかしかわいさを感じさせる垢抜けた服装。
ーだが、アオバはそれらの美しさに目を止めなかった。止められなかった。
色が抜けた...アオバの純白でもないし白髪でもないしましてアッシュグレーや銀髪でもない、本当に白い、無色としかいいようがない髪色。
本当は可憐なのだろう顔は、虚ろな目と抜け落ちたような表情...まるで生気がない。
現実味を感じさせないその風貌に、アオバは思わず手を差し伸べていた。
「どなたかしら?」
少女が、ふらりと立ち上がる。
「あたし…?あたしは…
あたしは...誰だっけ?」
「シャンデラ、ディアンシー。」
受け答えの異常さを感じたアオバは、魂を視れるゴーストポケモンとテレパシーが使えるまぼろしポケモンを出した。
シャンデラが、ふるふると左右に揺れる。
”「テレパシーは通じますが思考が薄弱です。シャンデラは『魂が薄い』と言っています。」”
ディアンシーが、テレパシーでアオバに結果を伝える。案の定の異常に、アオバは目を細めた。
「ということは、嘘や演技ではなく、記憶喪失のような状態になっている…ように思えますけれど、魂にも異常があるというのなら一筋縄ではいきそうにありませんわね。
けれど貴女は僥倖ですわ。なにしろこのわたくしがの目に留まり、扶けを…
…あら?」
そこで始めて、アオバは気付いた…自分と同じ身体に宿り、そして目の前の少女と同じく魂にまつわるトラブルに巻き込まれた経験を持つパートナーが、何も言わないことに。
口にしない、ということではない。二重魂魄というカタチで脳内で繋がる最愛のパートナーは、言葉を使わずとも彼女と言葉を交わせるのだから…ところが、その「心の声」すらもない。
(蒼玻くん、どうしましたの?
/あ、ああアオバちゃん、ちょっとね…
/ちょっと?何かしら?もしかしてこの子に浮気...
/いや...この女の子...
どこかで見おぼえがあるような...
/どこでかしら?
/...TwitterのTLで)
ついったぁ?彼氏のよくわからない言葉にアオバは首をひねる。
(あ、前世のSNSだ。確かこんな感じのイラストを見たような…
/...ポケモンが創作として存在する世界で?SNSにイラストが描かれるような?重要人物がこんな孤島で霊魂系の記憶喪失?それはもしかして、厄ネタ、というものではありませんこと?)
ー*-
学園島グランデ・コンティネントの港町の奥の山際、広大な本部構敷地を誇るパーシモン・ゼミナール、その食堂の隅で、フロックス姉妹と記憶消失の少女の3人はひっそりと夕食を取っていた。
教師たちが机1つ分離れて彼女たちを取り囲んで着席し、生徒が近づきがたいようにしている。その代わりに、生徒たちは興味深げにその中心を盗み見ながら食事をしていた。
「お姉ちゃん、調べてみたけど、この子らしき人は...
…というか、来島者名簿と照合しても行方不明者はいないみたいだよ。島民にも、もちろん生徒にも。」
「…正規ルートで来たわけではないということかしら…
/ポケモンはどうなんだ?」
「それが、一匹もいないの。」
どうやら、船や飛行機でやってきて行方不明になっているわけでも島内の人間が記憶喪失になっているわけでもなく、かと言ってライドポケモンで自ら島まで飛んできたわけでもないらしい。
「ただ...
…開かないボールが一つ。」
「開かないボール?それは、故障かしら?システム的にかしら?」
「気になって電子工作部の部室に持っていったけど、ハードもソフトも異常はなさそうだって。中のポケモンが異常な方法でボールを閉ざしている可能性が高いって言われたから、こじ開けるのは躊躇してる。」
「肝心のトレーナーが中身をわからないんじゃな…」
記憶喪失の少女は、深刻そうな少女に何事も告げることはない。
「…思い出させられればいいんだけど、魂がかかわっているとなるとね…」
「それに俺が前世で見る可能性があるような超有名人だとしたら、そんな人物が記憶喪失でこんな孤島に落ちてたわけで、迂闊にそこらの病院へ連れていくわけにもいかないだろ。
…またウスベニに行くか?
/にもかかわらず蒼玻くんは名前を思い出せないしわたくしたちは該当の行方不明者を見つけられない、これがわからないのですわよね...
ウスベニおみやで解決していただくのは確かに名案ですわ。そう何度も迷惑をかけたくはありませんが…」
今にして思えばけっこう無茶をやったーなにしろウスベニの怨霊を大暴走させたのだからーこの上また厄ネタを持ち込めるほどにはアオバは厚かましくはなかった。
「とりあえず、しばらくはわたくしたちとこの島にとどまっていただきましょう。記憶喪失のまま露天に放り出してはおけませんわ。」
「あのー...」
後ろから、声がかけられた。びくっと蒼玻が震えたが、アオバが震えをごまかす…同じ身体の共有を巧く使えているような気がするが共有していなければそもそもお嬢様らしからぬ振る舞いをごまかす必要などないので難しいところだ。
「…あら?どなたかしら?」
教師たちが囲む中を突破してわざわざ話しかけてくれたのだ。大事な話の最中とはいえ敬意を表さなければ...姉妹が向き直る。
「あの、私、料理部なんです!
食べていただけませんか…?」
女生徒は、カラカラと食器の載ったカートを引いてきていた。
「…なるほど。
/あら。ではありがたくカグヤといただくことにいたしますわ。
ついでですから、話し相手になってはいただけませんこと?部長さん?」
「えっと、副部長です…部長はただいま辛みの探索のためスコヴィランに頭を突っ込んできぜつしていて...」
「「なんて?」」
さすが学園島まで海を渡ってくる生徒、わけのわからない変人がまぎれているらしいー姉妹はあまり突っ込んではいけない気配を感じて詳しくは聞かないことにした。
「それで副部長さん、どうして私とお姉ちゃんとお客さんに差し入れをしようと思ったの?」
「お客さんのことは知りませんでしたが、お二人が外の地方からやってきて、とても苦労をされたと聞いたので…
…食事は、心なんです。いい心はおいしい料理を作ります。そして、おいしい料理は心を動かすんです。
…って、これ、部長の受け売りなんですけどね。」
「…ちなみに、当の部長さんの料理は如何なのかしら?」
「えっと、あの...いつも辛いですけど、でも...」
あまりにもわかりやすく、料理部副部長の頬が赤く染まる。
「…あら、ごちそうさま、と言えばいいのかしら?」
…もっとも彼女の恋の相手はスコヴィランに頭を突っ込んで戦闘不能になる変人なのだが…
「辛いスパイスだけじゃなくて愛情のスパイスも入ってたみたいだねっ。」
「いえいえ全然そんなそんな...!」
「あらあら、幸せのおすそ分けにごちそうを持ってきたのではなくって?ふふっ。」
どうやらアオバ、自分の恋が成就したのをいいことに恋バナを楽しんだりする茶目っ気が芽生えたらしい。もっとも身体を共有している蒼玻は「女子の恋バナ」に免疫がない青年なので、白い令嬢の頬にもやや赤みがさしている。
「このカレーライスとか、辛そうだけど、部長さんの愛情だったりしない?私が食べちゃって大丈夫?」
ぶんぶん、副部長が首を振る。首がもげるのではないかと心配になるような動きだった。
「わ、私は、まだ、その、片思い、なので...
私の気持ち、料理に、恥ずかしくて、できなくて...」
ニヤニヤ、令嬢姉妹が副部長を見つめる。
-「好きな人がいるなら、言葉にして伝えなきゃ。
言わないままでいると、きっと、いつか後悔するよ。」
姉妹の客人こと記憶喪失の少女が、唐突に、そして出会ってから初めて、はっきりと言葉を告げた。
「貴女...」
(...コイツ...記憶を失う前に、恋愛で、なんかあったのか…?
/失恋で記憶喪失なんてしますのかしら…?
/物語上でのネームドキャラだとして、その失恋ってけっこうな大事件の動機になるんじゃないか?ほら女子って執念深いし…
/時代錯誤ですわよ蒼玻くん。…と言ってもわたくしは否定できませんが…)
蒼玻の魂を取り戻すために命を賭けさえした令嬢が言うと説得力がない。
「え、えっと...そうかもです…でも恥ずかしいよぅ...」
「まあまあ、貴女は貴女のスピードで無理なく恋を進めればいいと思うよ。ねえお姉ちゃん?」
「え、ええそうですわね。くれぐれもダイナミックでロマンチックな恋に命を賭けたりしてはいけませんわよ、ええ。」
(...反面教師だ...
/どうせ何かあったら貴方も命を賭けてくれるくせに腕組彼氏面してるんじゃありませんわよっ!
/うぐっ...いやアオバちゃん抜きに勝手に無茶やったりはしないって…)
「じゃ、じゃあ私はこれで!後で感想聞きに来ますね!ポケモンフーズは下段なので!」
照れが限界に達したらしく、料理部副部長はタッタッタと逃げていった。
「…それでは気を取り直しまして。
「いただきますわ」」
「いただきます」「いただき...ます」
別にコース料理ではないが、令嬢姉妹はなんとなく、前菜、スープ、パン、メインディッシュ、デザート、ドリンクを意識していつも食べている。なんならポケモン達もそうしつけてられていて、カグヤのグレイシアが
上品に食事を進めながら、カグヤは記憶喪失の少女に目を向けていた(アオバはと言えば、身体を共有するパートナー蒼玻にテーブルマナーを染みつかせることに夢中であった)。
(食事は育ちを教えてくれるんだよね。だから、テーブルマナーなんてものがある。
人の食べ方を見れば、どんな文化圏でどんな階層でどんな育てられ方をしたかわかる。手持ちポケモンの食事に至っては、見る人が見ればそのトレーナーが卒業したポケモンスクールやそのポケモンが預けられた育て屋まで推測できる。
だから、この女の子がどういう人なのか、情報が得られるかも...)
上品にスープをスプーンですくいながら、カグヤはそんなことを考えていた。
視線の前で、記憶喪失の少女は紅茶を飲み干す。
(...コーヒーを選ばない…イッシュやアローラ出身の可能性は低くて、ありえるとすれば...)
そして、真っ先に手を伸ばしたのは...
(...カレーライス!?
それは主菜のはず…でもキャンプ調理に向いてるカレーを好きなトレーナーは多いから、もしかして手練れのトレーナーの可能性もあるよね...!?)
記憶喪失の少女は、ぱくり、スプーンを口に運ぶ。
-そして、固まった。
ー「食事は、心なんです。」
少女の頬に、涙が垂れる。
-「おいしい料理は心を動かすんです。」
「あたし、どうして…
…この料理の味...あたし...なんで...泣いて…!」
ー*-
深夜の学園長室。
家具がカタカタと揺れ、埃が舞う。
「フロックス当主姉妹には早くユキコシにお戻りいただいた方がいいですぞな…」
ピシッー何事もなかったかのように突然止まるポルターガイスト現象。学園長は嘆息した。
「いつの間にか島に存在するBREAK
その、「善なる概念」を裏打ちし、「強さと志」を歴史を超えて受け継がせ授ける力場に、オーラ異常が発生していることまでは、気づかれていない…それでいいのだと、学園長はファイルを閉じた。
「幸い、反転暴走が起きるような波形ではない。しばらくは様子見できますぞ...亡き先々代当主様のためにも、当主姉妹に余計な心労や負担を与えるべきでは…」
島のことは島で解決する。そう学園長は自分の心を確かめ直した。
-大いなる陰謀と災厄の前では、前哨戦と言えども、ちっぽけな決意など役に立たないことを、この時の彼はまだ、気づいていなかった。
ー*-
ワールドエコノミクス紙電子版
「新生マクロコスモス相談役、ローズ氏、パルデア国際空港に到着。明日、『学園島』到着か。」
マクロコスモス広報室によれば、旧マクロコスモス社長であり新生マクロコスモスグループ相談役であるローズ氏は、先ほどパルデア地方へ到着した。今晩未明、学園島グランデ・コンティネントに到着すると見られる。
現在学園島グランデ・コンティネントにはフロックス家当主アオバ氏が滞在しており、フロックス・グループ再編・在外資産整理に於ける大陸経済への影響とガラル財界との調整についての会談を行うとされている。また関係筋は「数週間前ユキコシ地方ワカナエシティにて『ラスト団』を名乗り市街地を壊滅させた悪の組織はフロックス・グループの幹部による暗部組織であり、マクロコスモス社を経営しながらブラックナイト事変を引き起こしたローズ氏ならではの観点でアオバ氏にアドバイスをするのではないか」と語った。
@Chanpion_Yuuri
ローズさん、アオバちゃんに会うんだー。
あたしもアオバちゃんとバトルしてみたいなー。
|
@Dande
オレもだ。最強がまだいない地方ユキコシ...気になるな!
リンク機能って作品情報ページだと使えないんですね(まえがき~あとがきまで限定)。
更新は不定期になります。