少女たちの無限夢路_Summer&Cosmos 作:十二の子
ー*-
ある日の、ことだった。
ー「あなたは、誰?」
孤独に次のチャレンジャーを待つユウリのもとに、1人の男が訪ねてきた。
-「私ですか?私は...
…名前など必要もない人間ですよ。『ダレデモナイ』とお呼びください。
『無敗の敗北者』さん?」
なぜだか、その人の顔があることはわかるのに、顔を認識できない…本当に彼は、いや彼か彼女かもわからない、「ダレデモナイ」かのようだった。
-「…わかった。わかったから、早く出ていって。」
ー「またまた。
お気づきのはずですよ、『ムゲン団ボス』さん。
ムゲンダイナには時空をゆがめるほどの無限のエネルギーがある。ブラックナイトで見たようにね。
けれど、ムゲンダイナによって過去を、時空を、因果を、超えることは不可能です。アレはアルセウスではない。
それでもなお、ありえるだろうという希望的観測、『夢幻の無間』に、すがりますか?」
ー「じゃあ、どうしたらいいの…?
あたしが壊しちゃったホップの夢は、もう戻ってこないとでも...!?」
「いいえ。
ムゲンダイナにも、当然人の手にも、宇宙の改変などできない…
...ならば、改変は宇宙自身にやらせればいい。」
-「え…」
-「宇宙五分間前仮説、知っていますか?
この宇宙が創世の時から誕生したとしても、五分前にあたかも過去が存在するかのように誕生したとしても、区別できない、という、まあ哲学的な仮説です。
それを、やればいいんです。
今ある世界を破壊する、セーブデータをきちんと取った上でね。その時、世界のすべての
そして、改造したセーブデータを解凍する。…それで、世界はあなたが望んだ姿で、最初から存在していたことになる。
因果律への干渉はありません。『過去』は、あくまで現在があるための『設定』として、宇宙自身が己の因果を成立させるために改変するのです。望む過去が存在するがための、過去から生まれる未来...タマゴを、ニワトリの存在から逆説的に産み出すのです。
ムゲンダイナの無限のエネルギーならば、いや、ムゲンダイナだけが、生まれ、消えゆく無限に等しい情報量を保存することができる。
全世界の『今』を、ムゲンダイナに焼き付けるんです。」
ー*-
ダレデモナイ、そう名乗る不審者が教唆したとおりに、ムゲン団は事を進め続けた。
ムゲンダイナを情報媒体化するためにラスト団の協力を得てBREAK
すべては、未来と過去、すべての因果の結実点である「今」を、改変可能なものにするため。
BREAK
…だが、ムゲンダイナの無限の出力ならばどうだろう?それは世界に存在するありとあらゆる概念と情報を…構成情報も位置情報も動作情報も意思情報も、すべてを、無限のオーラに焼き付けることができる。それはまさしく世界のセーブデータだ。
情報を抜き取られた世界は存在すらも「ある」という情報を奪われて消失することになる。そしてセーブデータに焼き付き押し込められた情報が解き放たれた時、保存されていた「そこに、そのように存在する」という情報に従って世界が再構築される。その世界の過去?それも、
ーつまり、ムゲンダイナが全世界に展開したBREAKオーラを焼き付いた情報ごと自らへと収束させたとき、世界の概念・情報はすべて、ムゲンダイナ一点に収束する。そしてその一点、「
そして今、最後のケジメが、つけられようとしている…
ー*-
「…イーブイ、お疲れ様でしたわね。
/これでお互い、最後の一体、だよな?」
チャンピオンユウリはフルパーティーをバトルに使えない。ムゲンダイナは頭上でムゲンダイマックスBREAKとなってとぐろを巻いているし、ザシアンは記憶喪失ユウリのボールの中に閉じこもっているからだ。だから、蒼玻/アオバは、最強のチャンピオンにギリギリ食いついていた。
(けど、もう
蒼玻くん。わたくしたち/ああ、俺たち、このバトル、最初からクライマックスで行くぞ。)
「準備はOK?」
「ええ/ああ。
誇り高き俺達の燦然、誰にも超えられはしないさ/直視すること能わざる高貴なる輝きに、ひれ伏すのですわ!」
ー蒼玻/アオバは、ディアンシーを くりだした!
ーディアンシーは デュアルメガシンカした!
「あたしは今まで、常に最強無敗…だからあたしは今、ここにいる。
最期のチャンピオンタイムを、始めるよ。」
ーチャンピオンユウリは ウーラオスを くりだした!
ーウーラオスは
ピンクのダイヤと純白の衣をまといし花嫁姫ことデュアルメガディアンシーと、毒々しいマゼンダに彩られし拳の求道者こと
「…『一撃』、穿ち抜けっ!」
「悠久の時で斬り返すのですわ!」
“「はい!」”
ー
鍛え抜かれた右拳が、捻りとともに振りかぶられ、流星のごとく光を放つ。
ーデュアルメガディアンシーの ラディアント・レイピア・アクセラレーション!
花嫁の繰り出す光輝く細剣は、ダイヤを刹那のうち掌にするがごとき一瞬だけの時間の超加速によって、折れ砕けながらも最強の一撃を受け止めた。
けれどチャンピオンユウリのウーラオスともあろうもの、一撃にすべてを賭けているわけではない。
ー
両の拳が目にも止まらぬラッシュを繰り出す。
“「高速攻撃…!減速ですね!」”
ーデュアルメガディアンシーの ダイヤストーム・ディセラレーション!
花嫁を覆うダイヤの渦巻は、それがこれから経過するであろう悠久の時を一瞬の中へと現出させ、連撃を極めてゆっくりとしたスローモーションにまで減速した。ダイヤに照らされる中、デュアルメガディアンシーはひょいひょいと拳を避ける。
(…とりあえず、ジオスケールでの時間操作で受け止められるな。/問題は、デュアルメガシンカだけでも負担が大きいのに、もう何回もジオスケールを発動できないことですわ…)
「…じゃあ、これはどう?」
再び、
(来るぞ…これは/イチゲキのほうですわっ!)
脚から腰、そして腕へ、全身の捻りを使った究極の一撃が、デュアルメガディアンシーへ迫った。
“「アクセラレーションです!」”
ー*ー
「グレイシア、
「エースバーン、つるぎのまいだぞ!」
あられが降らない。無数の氷槌が、
「っ、ダイオウドウ、回避しろ!」
ーグレイシアの ダイツララ!
それがユキコシ出身ポケモン特有なのか、カグヤのグレイシア特有なのか、ローズにはわからない...が、ダイアイスを超えた未知のダイマックスワザを前に、回避を指示するしかなかった。そしてその隙を見逃すホップではなく、エースバーンがつるぎのまいを繰り返す。
「
激震と地割れが、ムゲンタワー最下階を揺さぶる。
「地面に向かってにどげり!」
エースバーンは、地面を勢いよく蹴りつけて空高く跳んだ。
地面から離れられないダイマックスグレイシアが、
「エースバーン、かえんボール!」
天井を左足で蹴ったその力を右足に伝え、全身の筋肉をバネに火球を打ち出す。
膨張する炎球は、氷槌に叩かれ続ける
圧倒的な火力で氷が昇華し、白煙がバトルのすべてを覆い隠す。
ー「1つの...今の宇宙の過去も未来もすべてを犠牲にして、ガラルを永劫に繁栄させる?正気の沙汰じゃないとよ!
あんたがユウリのためにユウリに協力するならいいけど、ユウリの想いを踏み台にしてブラックナイトの焼き直しをするってんなら…」
ー「マリィくん、考えたことはないかい?
1000年では足りない。2000年でもまだ足りない。
永遠だ。宇宙が終わるまでよりなお長い永遠が欲しい。そのための保証書が今この時でいいのなら、私はなんだって捧げてやる。麗しい少女の初恋だって、例外ではないよ。」
「私は、負けられんのだ…!」
ー
無数の鋼刃が、2体の頭上に出現する。
「グレイシア、ふぶきBREAK!」「エースバーン、かえんボールだぞ!」
とびきりの、濃密な吹雪がすぐ真上に渦巻き…業火が、吹雪を呑み込んだ。
雪の融解?いや、生ぬるい。昇華だ。エースバーン渾身の大火球は、グレイシア全力のふぶきを一瞬で水蒸気へと変え…そしてそれにより、濃密な吹雪の雪晶は一瞬にしてその体積を1700倍へと膨張させた。
水蒸気爆発ー吹き上がる爆風は、まさに降りかかる直前だった鋼刃を空高く打ち上げる。
「な…」
「今だ決めるんだぞ!テラバーストッ!」
「踏み潰せッ、ヘビーボンバー!」
「撃ち陥とすよっ、
ーエースバーンの ほのおテラバーストBREAK!
一条の炎線が、
ー
炎に包まれながらも
ーグレイシアの てんらいのへきれき!
あたかも天罰であるかのように、成層圏から電速で落下した紫電が、
地面へ叩きつけられ、煙を上げながら
「起き上がれダイオウドウゥッ!」
「にどげりを叩き込むんだエースバーンッ!」「浴びせ掛けて、
必死に起き上がろうとする
…ついにダイオウドウは、体にまとっていた赤黒いオーラと、頭上に渦巻く金色の雲を霧散させ、力なく倒れ伏した。
ー*ー
ーデュアルメガディアンシーの ラディアント・レイピア・アクセラレーション!
生物時間のうちに地質時間的事象を達成するその超加速は、ダイヤの光剣をして、ウーラオスのイチゲキを受け止め、そればかりか斬りつけ押し戻した。
もちろんアクセラレーションもディセラレーションも、ディアンシーにも、デュアルメガシンカで身体負荷が二重にかかる蒼玻/アオバにも、そんなには繰り返せない。しかし繰り返しさせすれば、ウーラオスのムゲンダイマックスの限界まで保てば…
…いちげきウーラオスならば、イチゲキではデュアルメガディアンシーに勝てないだろう。生物の範疇の彼は、地質学的な時間と規模で発生すべき事象が生物学的時間に圧縮されたディアンシーの一撃にはかなわない。
…れんげきウーラオスならば、レンゲキではデュアルメガディアンシーに勝てないだろう。生物の範疇の彼は、地質学的な時間を顕現されては二撃目までの途方もない時間までに生物学的寿命すら尽きてしまう。
ーが、ウーラオスの左の拳が、デュアルメガディアンシーの頭上に迫っていた。
無限の神の力と限界をBREAKする力を得た彼は、最強トレーナーの持つ伝説ポケモンとしての貫禄を、まぼろしポケモンへ見せつけたのだ。
ー
「ッ、ディセラ」
減速してもなお避けきれない究極の一撃が左から迫り、光のレイピアはついに叩き折られる。そして三撃目の究極の一撃が右から迫り、デュアルメガディアンシーのまとうダイヤストームの防壁が拳圧で吹き飛ぶ。
目にも止まらぬ速さの、全身全霊を込めた拳撃の、連撃ラッシュ。
ダイヤはあえなく、砕け散った。
「あたしの、勝ちだね。」
ー*ー
「この子に頼ってでも、消し去りたい過去があった」
チャンピオンのユウリは、頭上で自らへと手を伸ばすムゲンダイマックスBREAKへ、手を握ろうとするかのように、腕を伸ばした。
「あたしは、そうじゃないよ。
あたしは大事なことを忘れちゃった。だから、思い出して、過去に向き合わないといけないんだって。」
記憶喪失のユウリは、未だに開かない唯一のボールを握りしめ、諭すように言った。
「あなたが向き合わないといけないのは、過去じゃなくて、あなた自身の今だよ。
あなたはしょせん、オーラに焼き付くことができなかった、私のカゲ。
ムゲンダイナのBREAKオーラを生成するために学園島に預けた時、漏れたオーラに、私の概念が焼き付いた…だけど、一部、私の中の意思情報の、相反する部分だけは、二重人格が分かたれるように分離した…
…焼き付けたときに相反する意思情報があったのなら、強い方が勝って、主人格に引っ張られる...なんであなたの記憶は消えてたの?それは、あなたが副人格、切り離された、心が弱いってだけじゃない、思う力が弱くて、あたしにとって不要な部分だからだよ。」
相反して、要らないと切り離された…だから、主人格なら持つべき記憶もないし、彼女を一度は認めた伝説ポケモンであるザシアンも「不要部分」でしかない記憶喪失ユウリに従うことはなくボールに引きこもっている…
「あなたにはなにもない。
そして私は、これからすべてをゲットする」
「…そんなことしても、後出しで気に食わない世界を書き換えても、虚しいだけですわよ。
/お前がするべきは、満足のいかない世界を破棄することじゃなくて、身の程を知ることだよ。客観的に、他人に必要とされて、幸せを願われて、地獄への路をせめて舗装してくれた善意がある。俺は羨ましいよ。」
「…みんなには、わかんないよね。
きっと、あたしがしてることは間違ってるよね。
こんな恋のやり直しってないよね。
いつかまた、後悔するかもしれないよね。」
それでもそうしたいと、心が叫ぶからー
「でも、ひとつ言っておくよ。」
ーチャンピオンのユウリは、
「
ー飴玉サイズになった正二十面体を、口の中へ放り込んだ。
本編の裏ラスボスを唐突に外伝で初登場さすな!全世界のデータ化・改変なんて超絶ラスボスイベントを外伝でこなすな!