転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます   作:苦闘点

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時系列を説明しときます。

パンケーキを食べた日の午後、バビロンとシィズが謎神父と交戦。
  ↓ 
その次の日はバビロンもシィズも起きない。
  ↓
そのまた次の日の昼、シィズ目を覚ます。
  ↓
そしてパンケーキから三日後、今回の話。

多分色々おかしいとこがあるかもしれません。ご了承ください。


【第13話】気術を習います

 

 

 イーシャが寝てしばらくすると、ロイドが転移してきた。シスター達を王城に避難させる為の説明は終わったらしい。ちなみにイーシャと神父様は、ロードストで匿っている。

 

 

「さて、じゃあ兄さん。早速教会であったことについて教えてくれ。バビロンが服に残した血文字もあるが、それは本人が起きてから教えてもらおう」

「分かった」

 

 

 そこから、シィズは一昨日ロイド達と別れてからの経緯を話した。

 話し終わった後、ジリエルは体をワナワナと震わせていた。

 

 

「身体を魔物のように変化させ……『光武』を使った……だと!?」

「お前、なんて奴に神聖魔術授けてんだよ。魔物と人間の区別もつかねえのか」

「んなわけあるかぁ!!私が授けた者は皆敬虔な信徒だ!化け物などいるはずがない!」

「いたんだろ実際……」

 

 

 ジリエルとグリモはそう言い争っているが、ロイドは顎に手を当てて笑っている。どうやら別の部分に興味津々のようだ。

 

 

「空間を入れ替えるノロワレか……レン達は知ってるか?」

「入れ替えはボクは知らないな……ガリレア達は?」

「入れ替えかどうかは分かんねえけど、昔ジェイドが話してなかったか?東の島国から、何でも消し飛ばしちまうノロワレが来たって」

「あぁ、いたわね。結局探し出す前に、ジェイドはロードストに行っちゃったけど……」

「俺も聞いた。あちこちで色んな物が消えたって」

 

「多分そいつだな。けど、オレが戦ってた時、アイツは能力を完璧に制御していた」

「俺達が下水道で遭遇した『反射のノロワレ』と同じく、死体にレイスが入っていたか……はたまた別の要因か……。いずれにせよ、俺が聞いた『主様』と兄さんが聞いた『主殿』は同じと見ていいだろうな」

 

 

 パンケーキの後、ロイド一行は下水道にてグール討伐を行った。その最中、明らかに別格と思われるグールと遭遇した。

 『反射のノロワレ』のミイラにレイスが入り込んでいたらしいソレは、浄化系神聖魔術『極聖光』により塵になった。

 

 

「ロイド様、本当にその『主様』と『主殿』は同じなんですか?」

「十中八九間違いない。『極聖光』は使う者が限られる上位魔術。さらに……その謎神父は兄さんの『光武』を破壊したって言うんだ。兄さんの結界が織り込まれた『光武』をだ」

「……そりゃあ、これ以上ねえ信憑性だわな」

 

 

 『廻天陸道』は攻撃面に特化させている為、耐久力は『非天六道』より少しばかり劣る。

 ただ、それでも普通の神官が使う『光武』はおろか、ジリエルの『光武』さえ凌ぐ硬さを持つ。

 

 ソレを塵にまで破壊できる者など、そうそういるはずもない。シィズの結界の硬さを知っている者からすれば、尚更分かることだ。

 

 

「何で謎神父は兄さんとバビロンを殺さなかったんだろうな……兄さんなんて、心臓を一突きだけだし」

「『急いでる』とは言っていたが、それだけの理由だけで逃がしたなんて事はないだろう。最初から殺す気が無かったにしては、何か違和感がある」

 

 

 そもそも、あの時シィズは冷静さを欠いていたり、『廻天陸道』や『界白・三門』の維持で頭がよく回っていなかったりで、教会での状況を上手く把握できていなかった。

 

 これ以上の事はバビロンが起きてから、という事になり、説明は終わった。

 

 

「じゃあ、レンはシルファに説明を頼む」

「うん、任せて!」

「ガリレア達は、引き続きバビロンとイーシャ達を見ててくれ」

「あぁ!目が覚めたら、すぐに連絡しますんで!」

 

 

 レンを『影狼』で送り、ロイドとシィズは手持ち無沙汰となった。

 すると、何やらロイドがソワソワした様子でシィズのことを見ていた。

 

 何でそんななのかは……シィズには分かっている。

 

 

「……ロイド。『非天六道』を見せるのはオレの魔力線が回復した後だ。それまでは我慢」

「うっ!……俺の魔力あげれば爆速で回復したりしないかな」

「んな事したら、二度と治らなくなりますぜ」

 

 

 ロイドはシィズが派手僧侶の話をしている時、あからさまに目を輝かせていた。

 あのキラキラした目は「世界を断つ斬撃……見たい!受けたい!」と言っている気がしてならない。

 

 一刻も早く見たいロイドはウンウンと頭を唸らせ、なにか閃いたように手を打った。

 

 

「そうだ!兄さんこの前『気』のこと聞いただろ?で、『気』も上手くやれば回復に転用できるんだ!」

「あー、それで気の呼吸を習得して回復を早めようって事か」

「ロイド様が教えるのですか?」

 

「いや………もっと適任がいるよ。兄さんは会った事ないけど」

 

 

 

 

□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 シィズが目を覚ました日の翌日。

 

 中庭より半分だけが更地と化したそこでは、やけに目がキラキラした若者二人が笑いながらその修復を行っていた。

 

 それを若干冷ややかな目で見ているのは、ガゼボの上で胡座をかく異国の服(チャイナ服)と黒ポンチョを着た全体的にピンク色の少女、タオ=ユイファだ。

 

 

「……よく働くあるなぁ、お前ら」

「「仕事ですんで!ハハ!!✨」」

「コレでイケメンなら文句なしだったある」

「「世知辛ぇ!けどまぁいっか!!ハハ!!✨」」

「あと暑苦しいある」

 

 

 タオは現在、またあの謎神父が現れた時の為に、見張りを行っている。『気配探知』により、周囲の警戒ならば右に出る者はいないからだ。あと一番行動の自由がきく。

 

 そのタオは、むさ苦しい男二人を見てため息をつく。少女はかなりの面食いだった。

 

 

「あーあ、ロイドとか来ないあるかな〜。そうすりゃ暇も紛れるってもんある」

 

「ロイドじゃなくてすまんな」

 

「うぉわわわわわだだだだ誰あるかぁ!!??」

 

「そんなに驚く?」

「(タオたんには『気配察知』ありますから。それで余計驚いたんでしょう。それにしてもタオたんは今日も麗しい。ハァハァ)」

「(お前は何で来た?)」

 

 

 瞬間転移で現れたシィズに、面白いほど反応するタオ。普段『気配察知』を展開している分、こうした完全な不意打ちに弱いらしい。

 幾分か落ち着いたタオは、改めて背後に突然現れた者を見た。

 

 第一印象は………まず、

 

 

 

(───い、イケメンある!!)

 

 

 

 まず顔である。こればかりは如何に武術家と言えど、タオには譲れない。イケメンハンターとして。

 

 自分より一回りほど年下であろうが、滲み出るオーラは隠せない。というか成長過程なら伸び代の塊である。

 ロイドを少し儚げにしてちょっと成長させたような目の前の少年に、タオはしっかり色めきだっていた。

 

 

「で、えっと〜君は誰あるか?」

「第六王子のシィズだ。今日はロイドの紹介で来たんだ。よろしくタオ」

「シィズ……あぁ!教会にいたっていうロイドの兄ちゃんあるか!もう大丈夫あるか?ちょっと怪我したって聞いたあるけど」

「怪我の方は心配ないよ。もう治ってる」

 

 

 そのタオの反応に、シィズはちょっと引っかかった。なので何故か着いてきてるジリエルに聞いた。ちなみにロイドとグリモは『バビロンの強制覚醒実験』なる危ない響きのする物の為に欠席である。

 

 

「(なぁ、オレの事ってどんな風に知らされてるんだ?)」

「(教会でバビロンに逃がされたけど、少しだけ怪我をした、という風に。流石に王子が心臓を貫かれたとあっては大ニュースになりますから)」

「(あ〜、それでやけにアルベルト兄さんが大人しかったのか。ありのまま伝えてたら兄さんも寝込んでたろ)」

 

 

 現状、殆どの者には負傷したのはバビロンのみだと伝えている。シィズまで重傷だったのを知ってるのは、ロイドとロードスト組だけだ。

 

 タオは一度居住まいを正し、シィズに名乗った。

 

 

「ロイドの紹介なら知ってると思うあるが、タオある!冒険者で武術家やってるね!よろしくある!」

 

 

 お互い紹介をして握手する。タオも王子に会うのはこれで四回目であるため、その事はあまり気にしていない。

 

 

「それで、シィズ……様?は、ここに用あるか?」

「シィズでいい。今日はタオに頼み事があってな」

「私にあるか!何でも言って欲しいね!ちょうど暇してたある!」

「それならちょうど良かった。実は、気の呼吸を教えて欲しくてな」

「シィズも気に興味あるあるか。ロイドと似た者兄弟あるな。なんにせよ、そういう事ならこのタオちゃんにお任せある!」

 

 

 そう胸を張って応えるタオ。ジリエルが「ふおおおタオたん今胸がプr(ギュムッ)ブッ!!」とか言ってたので、拳を握りしめておいた。

 シィズはタオにバレないよう、『念話』でジリエルに話しかけた。

 

 

(ずっと思ってたが、何しに来たんだお前。まさかタオ目当てか?)

(………………そんな事はございません!このジリエル、シィズ様が無理をせぬよう見に来たのです!)

(本気で思ってるなら即答したらどうだ?)

(本気ですとも!どっちも!)

(タオ目当ては否定しろ)

 

 

 グリモが魔人だということも偶に忘れるが、このジリエルが神の御使いだということを覚えてる奴はもういないんじゃなかろうか。それほどまでに煩悩まみれである。

 

 そんなジリエルだが、少し真面目な雰囲気になって再度シィズに話す。

 

 

(グリモワールの主はロイド様だけですが、私の今の主はロイド様だけではありませんから。くれぐれも、無理はしないでくださいよ)

(……急に真面目になるよな、お前は)

 

 

 ジリエルもジリエルで、昨日のシィズの様子を心配していたらしい。

 

 

(心配せずとも、そんな無理はしないよ)

(それでもです!私はシィズ様とタオたんの様子を見てますから!ですのでシィズ様ァ!手を開いてください!タオたんの可愛い体が見えません!)

(ヤダ)

 

 

 ちょっと見直そうと思ったシィズだったが、やっぱりジリエルはジリエルだった。

 

 そんなこんなで、タオによる気術授業が始まった。下はいい奴コンビが忙しなく働いてるため、ガゼボの上でである。

 

 

「ここでいいあるか?」

「問題ない。ところで、あの二人は誰だ?」

「ロイドがロードストから寄越したいい奴コンビある。やかましいけど悪い奴らじゃないね」

「「よろしくお願いしやす!ボスの兄貴!!✨」」

「……あぁ、よろしく」

(よく見ればこの二人、この前教会で見たゴロツキか。……大方、ロイドの『微光』でも食らったんだな。すごいな浄化系神聖魔術)

(いや、ここまでなるのはロイド様だけです)

 

 

 以前を知っていると凄さより嘘臭さの方が際立つレベルだ。

 

 ふと、シィズは教会での謎神父との戦いを思い出した。

 あの場では頭に血が上っていてしなかったが、もしアイツに浄化を放っていたら、どうなっていただろうか。

 一撃で善人とはいかずとも、少しは動揺しただろうか。

 

 ……この事は、バビロンが起きてから聞くことにした。

 

 

「さて、じゃあ『気』について教えるあるね。シィズはどのくらい知ってるあるか?」

「魔術で言う魔力みたいな物っていう事。あと、それを呼吸により生み出すこと、くらいだな」

 

「大体はそれで合ってるね!気の修行は呼吸に始まり呼吸に終わるね。まずは体内の『気』を感じ取るところから始めてみるある!」

「了解した」

 

 

 シィズは早速タオの呼吸を真似して実践してみる。

 

 普通は、体内の『気』を認識するだけでもかなりの鍛錬が必要だ。タオも分かってはいるが、「ロイドの兄貴だしワンチャン……?」ということで無茶振りしたのだ。

 

 そして、その勘は正しかった。

 

 

「……ふーっ…ふーっ……」

「お?」

「ふ───っ」

 

ドン!

 

「グッ……」

「……マジで出来るとは思わなかったあるが、流石ロイドの兄貴あるね。もう気を練れたあるか」

「みたい、だな。この痛みも正常なものか?」

「そうある。始めの頃は肺に焼けるような痛みが走るあるが、こんだけ上達スピードが早けりゃすぐ無くなるあるよ」

 

 

 普段は体の内を薄く巡る力、『気』。これを急に集中して増幅したために、体が慣れるまでは肺にダメージが入る。

 

 シィズがここまで上達スピードが早いのは、その前世から継続する多才も理由の一つだが、別に理由もある。

 シィズは、この感覚を()()()()()()()

 

 

(『流動結界』を開発した時と同じだな。体内を普段意識しない物が流れる感覚。『気』を巡らせる感覚も、『流動結界』とほぼ同じだ)

 

 

 『体内にエネルギーを循環させ、身体能力を向上させる』。一度共通点に気付いてしまえば、後は気の呼吸を常態化させるだけだ。

 

 

(肺を広げればもっと効率的に『気』を練れそうだが、反動がキツそうだな。……いや、そこは『流動結界』で補強すればいいか。魔力、結界、気。全部併せれば能力を大幅に向上できるし、『気』を結界に転用する事も……)

 

 

 久々に新しい技術を習い、テンションが上がったシィズはタオの事も忘れて思案に耽る。

 

 そんなシィズの様子を、タオはジーッと見つめていた。

 

 

「……なんか、似てるあるな。ロベルトに」

「ん?ロベルト?」

「前に一回だけ一緒にダンジョン攻略したイケメンある。ロベルトも今のシィズみたいに一瞬で気を習得して、シィズみたいにキラキラした目してたね」

 

 

 最近はロイドの事が気になり始めているタオだが、それでも忘れられないロベルト。

 シィズはその正体を何となく察し、口許を綻ばせた。

 

 

「もしかしたら、すぐ近くにいるかもな。そのロベルト」

「え?どういう事あるか?」

「ただの独り言だよ。それじゃ、まだまだご教授お願いするよ、タオ」

「むー……そういうとこもロイドに似てるあるな」

 

 

 少しぶつくさ言いながらも、その後もタオとシィズは気の練習を続けた。

 

 その後数時間練習し、シィズの呼吸もだいぶ板に付いてきた。

 

 

(気だけなら慣れてきたが、魔力と気の混合術は練習あるのみだな。ロイドの言った通り魔力線も回復してきた。この分なら、もう少しすれば問題なく魔術も使えるだろう)

 

「いやー、ロベルトもそうだったあるが、こうまで順調過ぎると自信無くすあるなー」

「いや、タオは凄いよ。オレのはまだ付け焼き刃に過ぎん。タオの呼吸の練度にまで至るには、まだまだかかるよ」

「……そういうとこもロベルトに似てるあるなぁ……」

 

 

 タオは耳を赤くしてそっぽを向き、ピョンとガゼボから降りた。

 

 

「そこまで言うなら、出血大サービスある!タオちゃんの『百華拳』見せたるある!」

「おっ、いいのか?」

「本当は門外不出あるが、もう何度かロイドにも見せてるし問題ないね!」

 

 

 そう言うタオに、シィズは口角を上げてガゼボから降りた。

 

 

「それなら、相手はオレがしよう。拳法なら演武もあるだろうけど、オレが受けてみたい」

「えっ!?シィズまた怪我しちゃうあるよ?」

「オレも多少魔術は使えるんだ。危なそうなら防ぐさ」

 

(シィズ様、ロイド様のような事を言ってるな……)

「ほーん……そんなに言うなら、防いでみろあるっ!」

「来いっ!」

 

 

 シィズは『流動結界』を最低限に留め、気術のみで応戦する。前方から迫る拳の乱打を捌く。

 途中に挿し込まれる蹴り、掌底、バク転からのかかと落とし。パワーもそうだが、動き一つ一つの柔軟性が凄まじい。

 ここまでジャブだが、その間ジリエルはずっとやかましかった。

 

 

(ああああああああシィズ様ぁぁ!!手を、手を開いてください!今タオたんは目と鼻の先にいるのでしょう!?開脚して蹴りを放っているのでしょう!?私にも見せてください!目の前に広がる桃源郷をぉ!!)

(ジリエルうるさい)ギュムッ

(ぶえっっ!!!)

 

 

 再度拳を握り締めジリエルを黙らせ、技の構えを取ったタオを見据える。

 

 

「ちゃんと防ぐあるよっ」

「勿論」

 

 

── 百華拳 ──

───『震雷破』───

 

 

 気を練りこんだ掌底『震雷破』。それを真正面から受けたシィズは、地面を削りながらも倒れなかった。

 先程までの乱打が可愛く思える威力だ。

 

 

「「あぁーっ!!床がー!まぁいっか!!✨️」」

「すまんな。オレも後で修繕は手伝う」

「「ありがとうございます!!ハハッ!!✨️」」

「余所見あるよ!」

 

 

 笑いながらタオが放った飛び蹴りを頭を下げて避け、そのまま足を掴んでぶん投げる。

 タオは空中で体勢を整え壁に着地し、スーパーボールのような動きで再び技を放った。

 

 

── 百華拳 ──

───『萌閃脚(ほうせんきゃく)』───

 

 

 着地の反動も利用した渾身のドロップキックを、シィズは今度は真正面から受け止めた。

 

 

「なっ!!?」

(ふおおおおおおおタオたんのおみ足が手の甲にいいいい!何故手のひらで受けてくださらないのですかシィズ様あああ!!)

「フフ……ちょっとギア上げるぞ」

 

 

制御系統魔術(トレース)巨鼠のバビロン

 

 

 一度だけ見たバビロンの動き。流石に超軟体体質を完全再現とはいかないが、常識的な動きの範囲内であれば魔術を使ってトレース出来る。

 魔術で関節の痛みを麻痺させ、できる限りの柔軟性をもたらす。

 

 タオは急に変わったシィズの動きに翻弄されながらも、持ち前の受け能力で攻撃を耐える。

 

 

「私よりも体柔らかいあるな!シィズ!」

「これでも全然だよ。本物はもっと凄い、さっ!」

 

 

 シィズは関節をねじ曲げるのは再現出来ても、筋肉や骨格までねじ曲げる事は出来ない。だから本来であれば、出会った時にバビロンが見せた()()()は放てない。

 

 だが、体の外側なら話は別になる。

 ごく低出力の薄い結界を、周りの空間ごとねじ曲げる。

 引き伸ばされたゴムが戻るように、捻じられた空間は強く反発する。

 

 

─── 窮鼠・(くう)を穿つ ───

 

 

 一応怪我させない程度に留めたとはいえ、常人がまともに受ければ吹き飛ぶレベルの攻撃。

 それをタオは、一層の笑顔で迎え……

 

 

「甘ぇある!!」

 

── 百華拳 ──

───『桜片流おうへんながれ』───

 

 

 シィズの攻撃は、桜の花弁が風に舞うように受け流された。流石に結界まで混ぜた攻撃を受け流されるとは思わず、シィズは目を見開く。

 その隙を逃さず、タオは大地を踏み締め止めを放つ。

 

 

── 百華拳 ──

一点突破の型

 

───『雷火崩拳』───

 

 

 体中から練り上げた気を一点に集中させ放つ大技。その衝撃波で床のタイルが吹き飛び、砂埃が舞った。

 タオは一瞬やり過ぎた!?と焦ったが、それもすぐに杞憂だと気づいた。

 

 砂埃が晴れた先には、花のように笑うシィズがいたからだ。

 

 

「───アッハハ!凄いな気術!百華拳!結界越しでも衝撃がきた!」

「結構気込めたあるが、シィズのそれ(結界)も凄いあるな……。あ!シィズ最後の攻撃『気』練れてたあるな!もう使いこなせてたある!」

「そうか。土壇場だったけど上手くいったな」

 

 

 二人はハイタッチし笑い合う。タオがよく笑うからか、シィズも普段より笑顔が多くなっていた。昨日の鬱屈とした気持ちも吹き飛んだようだ。

 

 

「ありがとな、タオ。おかげで『気』を習得出来た」

「礼には及ばないね。私も一昨日のグール戦で苦戦したあるから、良い特訓になったある!」

 

「それじゃ、オレは帰るよ。教会の見張りお願いな、タオ」

「任せろある!シィズもまたねあ……」

 

 

「「あぁー!!直した床がー!!!」」

 

 

 お開きにしようとしたその時、隅にいたいい奴コンビが悲鳴をあげた。

 

 

「「……あ」」

 

「「───でもまあいっ

 

 

「良くねえあるっ!!私が壊したんだし私もちょっとは手伝うある!」

「元はと言えばオレが壊したものだから!そういえば、手伝うって言ったな!まだ帰らないから!」

 

「「やったぜ!!ハハッ!!!✨️✨️」」

 

 

 その後、4人は協力して教会を修繕した。魔力線も回復して全快したシィズの魔術もあり、日が暮れる頃には殆ど更地だった教会も原形が見れるくらいには修復された。

 

 

「タオたん………タオたんのおみ足……」

 

 

 修繕の間、このようなうわ言が聞こえた気がするとタオから言われたが、ペットの鳥の亡霊の鳴き声だろうとシィズは話したという。




【次回予告】


「超絶美麗武術家系美少女、タオちゃん登場ある!私を狙うはイケメン魔術師ロベルトか!?不思議系美少年ロイドか!?はたまた儚げ有望イケメンシィズか!?タオちゃんどうなっちゃうあるか!?」

次回 【第14話】父上と再会します


君は魔術の深淵を目撃する



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