転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます   作:苦闘点

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たまに設定とか話すかもですが、大体はこちらでも話すものです。初期設定とか進捗とかも話すかもです。ぶっちゃけ作っただけです。まだ何も決めてません。

※なんかリンク飛べなくなってたので貼り直しました


【第17話】大聖誕祭の準備をします

 

 

「中止だ……大聖誕祭」

 

 

 なんか色々あって疲れたのか、アルベルトは膝の上のロイドを撫で回しながらそう告げた。

 

 現在教会にいるのは、ロイド、シィズ、シルファ、アルベルト、暗殺者ギルド5人、サリア、イーシャ、タオ、カタリナ、神父様、ラミィ、シロ(の中のグリモとジリエル)。……あぁ、あと良い奴コンビ。

 

 気づけば勢揃いの総動員だ。

 2日後に迫る大聖誕祭のため、皆で作戦会議をしていた。それの開口一番が最初のアルベルトの言葉である。

 

 

「アルベルト兄様、中止は駄目!絶対!」

「いやだってなぁサリア……僕もそうしたいのはやまやまなんだけどなぁ……例の謎神父は教会や神を憎んでいたって、ラミィさんが言ってたし……」

(アルベルトさんの名前は間違えないんだな……)「サリアさん、マカロン食べます?」

「ん、ありがとうパピヨンさ「バビロンです」ん」

 

 

 可愛い妹の言うことを聞いてやりたい気持ちもあるが、万が一を考えると胃がキリキリするアルベルトは、今にも血を吐きそうである。シィズは労いの意味を込めてマカロンを口に突っ込んだ。

 そこで、カタリナがいきなり声を上げた。

 

 

「皆さん!大変です!」

「! 何かありましたか、カタリナ!」

「シロに首輪付けたらなんか面白かった!」

「わん!」

「「本当だ!あはははは!!」」

「やべぇ取れなくなった!」

「「あはははははは!!」」

 

 

 馬鹿3人(カタリナ、タオ、タリア)はシルファの鉄拳によって沈められた。タリアの自傷共有により酔いを共有されたため、より馬鹿になっている。もうすぐイーシャも餌食になりそうだ。

 因みに首輪を付けられたシロはそのままである。デカい綿毛がくっついたような見た目である。

 

 

「イーシャさんの歌を嫌っていたという点からも、そこは間違いないでしょう。……問題は、そんな男があのような研究所を作って何を企んでいたかです」

 

「タオちゃんなら大聖誕祭で大暴れするあるかな〜」

「私なら教皇殺して大聖誕祭で暴れるかな〜」

 

「ゴフッ」

「兄さんティッシュいる?」

 

 タオとタリアの容赦ない言葉にアルベルトがとうとう血を吐いた。

 ただこれは目を背けていた現実を見たことに対する血反吐である。

 

 

「ありうる、てゆーかそれしか考えられない……でもコレどうやって報告する?中止にしなきゃだけど、どう報告したって波風立つよコレぇ……」

「しかも事はそう単純ではありません。問題はラミィさんが持っていたロザリオ……あれ?ロザリオは?」

「あ、それならココですよ」

「カタリナ?」

 

 

 カタリナが指し示すのはシロの首。さっき首輪と言ってシロに付けてたのはその例のロザリオだった。

 シルファはひとまずカタリナをシバき、シロの首からロザリオをもぎ取った。

 

 

「コレがもし例の謎神父の物ならば、かなり厄介な状況です」

「……何で?」

「私も銀のロザリオ持ってましゅよ〜、バビロンしゃんとお揃いです」

「タリア!能力でこれ以上酔っ払いを増やすな!」

 

「そう、普通は銀製のロザリオなんです。……ですが、このロザリオは『純金』」

 

 

 そこまで言い、シルファは神父へ視線を送る。

 その意図を汲むように、神父はロザリオが示す意味を説明した。

 

 

「純金のロザリオ……それを持つことが許されるのはたった12人……教会本部を統括する、()()()()()()()()()()()』のロザリオだ」

 

「ゴヴフッ」

「アルベルト様ああああ!!」

 

 

 アルベルトの口から血飛沫が舞う。そろそろ輸血の準備が必要かもしれない。

 

 それはさておき、『十二神官』は教会の幹部級。そんなのが犯人かもしれないとなれば、立つ波風は津波と嵐にまで膨れる。

 金のロザリオが謎神父の物というのは、バビロンとラミィの証言から間違いない。これで容疑者は12人に絞れたワケだ。

 

 

「しかし!教皇様は勿論の事、偉大な神官様達がそんな悪漢であるはずがない!大体、皆顔が違うだろう!」

「そーだそーだぁ……」

「いえ、残念ですがヤツは身体を魔物のように変えても、街で目撃情報はありません。恐らく、自由に見た目を変えることが出来る筈。見た目は当てになりません」

「アルベルト様……」

 

 

 一縷の望みに賭け神父に同調したアルベルトだったが、シルファに一刀両断され再び地に手をついた。気の毒になったガリレアが背中を摩ってやっている。

 

 神父はまだ可能性を否定したいのか、ロザリオは偽物か盗んだ物かもと言っているが、バビロンが聞いた話だと謎神父は「長年仕えてる」と言っていたらしい。真実かは怪しいが、本当なら少なくとも偽物では無いだろう。

 

 真面目組が考えている最中、酔っ払い組は何故か泣いてるイーシャを慰めていた。

 

 

「わぁ……ぁ……(泣)」

「泣いちゃったある!」

「あーバビロンが泣かせたー。女の子に怒鳴るとかアンタ最低ね……」

「お前に怒鳴ったんだよ酔っ払いが!」

「そういえばロイドの浄化でドブ鼠がハムスターになったある。イーシャ歌ってみるネ」

「ヘケッてしてるバビロン見たいしやってみるか」

「誰がドブ鼠だ!あとアンタもノッてこないでいいですか、ら……」

 

 

 指先に『微光』を灯らせたシィズを見て、バビロンは何かに気付いたように固まった。

 

 

「どうした?バビロン」

「そうだ忘れてた……!アイツ、神聖魔術の発動に『儀式』を経由してなかった……『()()()』だった!」

「……へぇ」

 

 

 シィズが逆虚無僧を倒して教会に戻ってきた時点で、謎神父は既に『光武』を発動させていた。

 だから、謎神父はあのバビロンとの戦いの中で、何かしらの『儀式』を済ませていたものだとシィズは考えていた。

 

 ロイドとシィズ、あと暗殺者ギルドの者たちは当たり前に使っているから、忘れがちな事だが。

 神聖魔術とは、本来歌や舞踊などの儀式が必要な、かなり面倒な魔術である。

 本来そもそも戦闘向きじゃない魔術をどう発動させたのか、シィズは少し引っかかっていたが、まさか自分達と同じ顔パスだとは思わなかった。

 

 その新たな証言に、神父はとうとう諦めたように言った。

 

 

「……もう間違いない。神聖魔術を顔パス、儀式無しで使えるのは……十二神官様達だけだ」

 

 

 どうやらビンゴみたいだ。

 これで、完全に容疑者が十二神官に絞れた。

 

 シィズがこっそりジリエルに聞いた話では、ジリエルが顔パスを認めたのは教皇ギタンのみ。他の11人の神官は、ロイドで言う暗殺者ギルドの5人の関係と同じらしい。

 

 

「(オレもロイドも男だけど……このジリエルが認めるくらいの人なのか、教皇は……)」

「(珍しい事もあるもんだな)」

「(ギタンはそれ程の男なのだよ! だからそんな奇特な目を向けるなグリモ!)」

 

「ば、バビロン君の証言にもシズの意見にも聞く耳を持たない教会本部に、いくらこの情報を伝えた所で聖誕祭を中止してくれるとは思えない……」

「仮に聖誕祭を中止にしたとしても、教会内部のしかも十二神官の中に犯人がいるなら、どっちにしたって教皇の命が危ねぇって事ですか」

「アルベルト様とガリレアの言う通りかと。何より聖誕祭まであと3日しかありません」

 

 

 そう、いくら犯人候補を絞った所で、もう止まることが出来ない所まで来ている。デーン支部の研究所を潰したことで敵方の戦力を削れたが、それでも聖誕祭で何が起こるかは分からない。

 

 

「謎神父が『11人』の中にいるのなら、当日は神官らと教皇には別行動を取ってもらい、且つ我々も分散して護衛という形で()()()()。そうすれば、少なくとも相手は迂闊に動く事は出来なくなります」

「……そう割り切って進めるしかない、か……」

 

 

 そしてその後、誰がどの神官に張り付くかを決め、当日の計画を練った。

 シィズがその様子をマカロン片手に眺めていると、ロイドがちょいちょいと肩を突く。

 

 

「(兄さん兄さん)」

「(ん?どうしたロイド)」

「(ゴニョニョ)」

「(……分かった。やっぱりロイドもそう思うよな。あとオレからもゴニョニョ……)」

「(……フフ、成程な)」

(この人らはまた何を企んでるんだ……?)

 

 

 コソコソ話をしていた2人は、今度は一緒にサリアの方へトコトコと歩いていく。

 そして、純真無垢な瞳で言い放った。

 

 

「サリア姉さん、俺たちを2人の演奏会の前座に使ってくれませんか?」

「オレ達も歌とピアノお披露目したいんですよ!」

 

 

 真面目な雰囲気だったその場が一瞬で静まり返った。

 

 

「…………ほぉ」

「ろ、ロイド、シズ?今とても大事な会議をしてたんだが、なぜ急にそんなほっこりすることを……?」

 

「大丈夫ですよアルベルト兄さん。どうせ暴動も暗殺もありませんよ!だったらオレ達は当日来る父上をお祭で楽しませる事に徹したいんです!な、ロイド」

「そうですそうです!どうせ俺達は護衛についても大した戦力になりませんし!ね、シズ兄さん」

 

((!??))

 

 

 ロードスト組と使い魔2人から(何言ってんだこの人ら)という視線が突き刺さる。更にイーシャからはキラキラとした、サリアからは歓喜とやる気に漲った視線を送られる。

 結局、デーン支部にいるのが1番安全だと予想される事もあり、ロイドとシィズの意見は認められた。

 

 

「(ちょっ、2人とも。何なんスか今の胡散臭過ぎる会話は)」

「あぁ、お前らには話しておく。ロードスト組もな」

 

 

 そうして、2人は推理した事件の犯人と当日の各自の動きについて話した。

 考えうる限りでは最悪の事態、それを止めるために動くということでそこでの話は終わり……。

 

 ロイドとシィズは、めちゃくちゃ張り切った様子のサリアとイーシャに連れて行かれた。

 

 

 

 

□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 ……教会本部。

 明日に迫った大聖誕祭に向け、街では忙しなく準備が進められている。

 

 曇天の下、教会内を1人のシスターが駆けていた。

 何やら手紙を抱えたそのシスターを、呼び止める声が1つ。

 

 

「そこの貴方、待ちなさい」

「あ!大神官様!」

 

 

 呼び止めたのは、白い目隠しをした神官……『十二神官』の1人、『月皇』アナスタシアだ。

 

 

「なんです、その手紙は」

「これは、その……第二王子アルベルト様からの……」

「見せなさい」

「え、いやでも……」

 

 

 渋るシスターから手紙を取り、アナスタシアはその内容に目を通す。

 本来は教皇に直接見せるように言われたそれだが、内気なシスターであったためそれは言い出せなかった。

 

 手紙に書かれていたのは、明日の大聖誕祭での行動だ。それにアナスタシアはバレない程度の笑みを浮かべ、手紙を持ったまま何も言わず立ち去っていった。

 

 

「あ、大神官様……行っちゃいました……でも少し喋っちゃいました……えへへ」

 

 

 

 つかつかと歩くアナスタシアが向かった場所は、本部の奥まった場所。人の気配はなく、不気味な程静かな場所である。

 正方形のタイルになった床の、ある箇所を爪先で1回、かかとで2回叩く。

 

 すると、内側から大きな魔物の手が床を持ち上げ、隠し階段に繋がる扉を開けた。

 死臭のする階段を、気にした様子もなくアナスタシアは降りていく。

 

 そして、その下にいた『主達』に一礼した。

 

 

「何かありましたか?アナスタシア」

「第二王子から、教皇宛に伝令が届きました」

『ほぉ?何と?』

「聖誕祭当日は、神官達と教皇は別行動で教会を視察して貰うと」

 

 

 その男は、手に持つ人らしき手と足を弄りながら少し考え、そうなった経緯を理解した。

 恐らく、自分が放棄した研究所にいた人工ラミアからの情報だろうと。まだ自我が残っているのは、正直驚きだった。

 

 

『あそこの研究データはもう回収は難しそうですね』

「はい。もう既に第二王子に破壊されたものと思われます。……しかし、その伝令を見るに大した情報は得られていないかと」

「でしょうね。指紋も足跡も痕跡一つ残さず『浄化』で消しましたし……。いや〜便利ですよね。浄化系神聖魔術は証拠隠滅に」

 

 

 稀に匂いに敏感な獣にはバレるんですがね、と男は続ける。あそこにいたやたらモフモフした犬を思い出しながら。

 しかし、男の発言は信心深い者が聞けば憤りそうな内容である。神聖なる神の魔術を使い罪を犯す等……と。

 それも、この男には届くことはないのだが。

 

 

「ところで……どうしてデーン支部であの鼠と少年を殺さなかったのですか?」

「ハハハ、鼠の方は完全に私のミスですね。あと1本刺してたら確実に死んでたでしょうが。……でも実際、あの状態からどうやって生き延びたのかは理解不能です」

「そうですか……それと、少年の方は第六王子との事でしたが」

「……あぁ、彼ですか」

 

 

 男はあの教会での戦いを思い出す。

 

 

 ハッキリ言ってあの少年は、『理解不能』、『凶悪無比』に尽きる。

 

 

 一瞬にして全てを斬り裂く巨大な光武に、当たれば致命は不可避の3本の光線。

 ……何より、自壊しなければ傷一つ、痕一つすら入れることが出来なかったあの『結界』。

 

 正直、かなり冷や汗をかいた。辛うじてあの捨て身前提の時間制限付き『光武』を解析出来ていなければ、厳しかったのはこちらかもしれない。

 

 一応心臓は突き刺したが、恐らく生きているだろう。

 

 

『彼と交戦した逆虚無僧は、下半身のみが見つかりました。恐らく彼の『光武』ですね。細胞すら気付かず綺麗にスッパリいかれてます』

「……末恐ろしいですね。そんなものが王族にいたとは……」

「ええ、ホント。最初に彼が飛ばしてくれて助かりましたよ」

 

 

 更に……と、男は草履の履かれた足から、ミイラのような手へと視線を移す。

 

 

「シビルウォーは、この腕だけを残して塵になっていました。こちらも駆けつけた時には手遅れでしたね……。直接の死因は私の『極聖玉』ですが、この腕が吹き飛んでいました……。いたんでしょう、彼が反射すら出来なかった『何か』が……」

 

 

 シビルウォー、逆虚無僧は、彼の『駒』の中でも上位の実力者である。

 その2名が、手も足も出ずやられた。

 

 

『逆虚無僧を一撃で両断した彼の第六王子然り、シビルウォーを一方的に蹂躙した『存在』然り……何か大きな見落としがあるのかも…………ですが……』

 

 

 そう言って、男は残された手と足に両手の平を近づける。

 否、手の平ではなく、そこに開いた口を近付けた。

 そしてその亡骸をゴキ、バキと、骨を砕く音と共に肉片一つ残さず喰らい尽くす。

 

 一度手を閉じ、ゴクンと飲み込む。再び手を開くと、そこから花が開くように脊髄の糸が広がった。

 今この瞬間、この男はその身を喰らい、『反射のノロワレ』と『悪食のノロワレ』の力を手にしたのだ。

 

 準備は既に整っている。

 

 

「今更何を画策しようと…………なんの問題もありません」

 

 

 誰が何を考えたところで、もう遅い。

 

 

『あの程度の施設を破壊して我らが悲願を潰したと思っているのなら……』

 

 

 この軍勢の足音は、もうすぐそこまで近付いているのだから。

 

 

「いや……予想出来ても、結果は同じですね……」

 

 

 地獄の(かま)が開き、この者達は(いず)る。

 

 その時は…………

 

 

 

「『時は満ち足りました』」

 

 

 

 ある者は、神への反逆を……

 ある者は、自らのアイデンティティの為に……

 ある者は、ただ自分の心の赴くままに……

 

 

『もはや誰にも……』

 

「我々を止める事は出来ない……」

 

 

 様々な思惑が錯綜し、想いがぶつかり合う……

 

 

 

 

 

 

「『さぁ……』」

 

 

 

「「始めよう……」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大 聖 誕 祭 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告


次回 【第18話】大聖誕祭、開幕


君は魔術の深淵を目撃する



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