転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます 作:苦闘点
こればっかりは無くそうと思っても無くならないのですよねぇ。今後もご指摘待ってます。
あととても図々しいですが、ファンアートという物を貰ってみたい今日この頃です。私は書けても描けないので。
感想もめちゃ待ってます!!めちゃめちゃ!!
カァー カァー カァー
キメラの大群が暴れ回る街中、住民を避難させながらバビロンはその鴉の鳴き声を聞いた。
(「カァー」が3回……って事は、ボス達の読み通り黒幕は教皇か……ククッ、最悪の最悪のケースを引いたな……けど、それでも
クロウの鴉による、ロイド組だけで決められた緊急時の伝令。教会の側に待機していた鴉により、バビロン以外にも護衛に着いていた他の暗殺者ギルドも事態を把握出来た。
実は、2日前の教会での作戦会議でのロイドとシィズの胡散臭い話の後……
『お前らには話しておく。……要はオレ達は『教皇』が黒幕で、聖誕祭で大規模な暴動が起こる可能性が高い、って考えてる』
『なっ……!?』
『色々情報はあったし、最初から怪しいと思ってはいたんだ。……さっきの情報でほぼ確信したな』
『ろ、ロイド様!それは、何を根拠に……』
『初歩的な事だよ。ジリエル君……
だって教皇って一番 暇そう だし! 暇とか金とかないとあんなデカイもん作れないだろ!』
(ホントに初歩的な事だった!)
同じ『王』であるチャールズも実は会いに行く時の手間が少し面倒くさいだけで、割と暇だったりする。
アルベルトから聞いた話だが、教皇は体がチャールズより弱く、仕事を他の十二神官に任せているらしい。ならばきっとチャールズより暇だろう。
『そうだ、キメラ作ろう!』なんて気軽な理由では絶対ないだろうが、実際にできるほどの暇と金はあるかもしれない。
『大規模な暴動っていうのは?』
『それも同じ理由だ。時間と金があるなら、デーン支部以外にも研究所があっておかしくない。……それに、アイツは「バビロンの肉体」を「持って帰らなかった」だろ?こんなビックリ人間だ、キメラ作るような奴なら絶対持ち帰るだろ?』
『誰がビックリ人間ですか』
『因みに俺なら絶対持ち帰る』
『オレも同じく』
『……光栄、です?』
そうなると、バビロンを持ち帰らなかった理由は二つ。
まず『もう戦力は十分であるため、わざわざ持ち帰る必要は無い』この場合は暴動の線が濃厚。
次に『研究所がバレそうであるため、他に持ち帰る先がない』この場合は研究所はデーン支部の一つのみ。暴動の線は薄い。
先日シィズが駆けつけた時に「そろそろ帰らないと」と言っていたので、少なくとも後一つは拠点があると見ていい。
『ちょっと待ってロイド!それ、シルファさん達に話した方がいいんじゃ……』
『そうしたら、俺と兄さんがデーン支部に居られなくなる。一番危険なココには居ときたい』
『今は不安を煽るような事も言いたくないしな。それに、アルベルト兄さん達もこの可能性を考えていない訳じゃない』
ただ、それを考えたとしても大した対策は取れないのが現状。低い可能性を考慮するなら、ある程度は割り切った方がいいと考えるだろう。
『そういう訳だから、聖誕祭まではお前達はゆっくり休め。俺達もそうする』
これが、皆に伝えた当日の対応。
……そして、これはシィズがロイドと使い魔ズにだけ伝えた可能性だ。
『───ロイド。可能性は低いかもしれないが、謎神父がもう1人いるかもしれない』
『…………『複製』、研究所にあったテーマの一つか。自分を複製したって事か?』
『……そこまでしてるってか?』
『あくまで可能性だ。確証はない』
シィズがこう考え付いた理由は、これもまた初歩的な理由だ。
教皇が暇と言えど、長く教会を離れれば不都合が生じる。その時用の影武者……それだけなら適当な肉人形でも置いておけばいいが、あの研究資料を見るにそれ以上の事をしていてもおかしくない。
『当日、教皇はデーン支部で事を起こす可能性が高い。そことは別の場所で、あのレベルの化け物が出たら対処出来るのはオレかロイドだけだ』
『分かった。兄さんは『気配感知』で探っててくれ。見つけたら俺が『影狼』で飛ばすよ』
『あぁ、ありがとうロイド』
そう言って『門』の奥に行ったシィズを思い出しながら、ジリエルとグリモは爆発する教会から離れる。
「行くぞジリエル! 早くキメラ共を倒して、ロイド様の所に戻るんだ!」
「え!? あんな鬼のようなロイド様に、我々の助けなんかいるか!?」
ロイドは戦闘が始まった瞬間、術式を展開。『炎烈波動』による牽制の後、気術でボコボコにして怯んだ所を光武『七弁天』で串刺しにするという、正に鬼の如き猛攻を行った。
その並々ならない様子に、グリモはギザルムの時とは違うものを感じていた。
「あの人にとって、人は魔術の可能性だ……その人の縄張りでこんな事仕出かしたんだ……そりゃ怒るさ!」
「だったら、尚更心配など……」
「だからだろうが!」
ギタンとギザルムの、決定的な違い。
それは、ギタンも『魔術の可能性』の一つであるということ。
だから、今回の勝利条件はただ倒す事じゃない。
「とにかく、キメラぶっ倒して帰ってくんぞ!」
「……それは分かった。しかし、シィズ様の方は大丈夫なのか?」
ロイドがギタンと相対する直前、シィズは『影狼』で飛んでいってしまった。
ということは、読み通りギタンレベルの怪物が出たということ。
シィズは一度、ギタンに敗れている。それを懸念するジリエルだったが……グリモはそれを否定した。
「大丈夫だよ。あっちはロイド様と条件が違う。……それに、アイツなら絶対に
「……信じるしかない、か……。てゆーかお前、その姿で援軍に加わる気か?」
「え?」
そうして、街の方に飛んでいく2人を背に、ロイドは目の前の男を見る。
全身を光武で刺し貫いたが、空から飛来した光武によりそれは断ち切られ、傷は全て塞がっていた。
「ハハハ……貴方の何処がただの王子なものですか……今の攻防で確信しましたよ……」
(俺の光武でも簡単に断つか……いや、コレは別の要因か?それにコイツの魔力、やっぱり……)
「キミが何と言おうと、キミこそが……」
ギタンは側に無数に浮かんだ光武を構える。
その光武の柄の部分の丸いシンボルは、形をグニャリと変え、『Ⅶ』と描かれたシンボルへとなる。
「キミを討つことで……我が深淵は完結する……」
「……うん、もうどうとでも思え」
街の事は周りがどうにかしてくれるし、
ならば、ロイドは目の前のコイツに集中出来る。
「─── 来い、第一ラウンドだ」
サルーム城から離れた上空。
シィズと共に飛んでいるのは、顔が縫い目だらけの例の謎神父だ。
城門から吹っ飛ばした先であり、雲の上までは行っていない。故に、地上から見えないように『隠遁者』と『界』を複合した『隠形雲界』を展開している。
ギタンがデーン支部に到着した頃より、シィズはロイドと協力してある準備を行っていた。
『流動結界』により強化した肺により、街全域を効果範囲とした『気配察知』。これによりシィズは一つの異質な気配を感知した。
魔力が多いわけでも、特に歪な波長をしている訳でもない。
ただ、その街の中の魔力が、教会にいる魔力と
「オレの事より、お前の方こそ何なんだ? クローンか?」
そうシィズは問うが、クローンでもないだろうと判断していた。
仮にクローンだとしたら、オリジナルと全く同じ魔力になる事はないと、
となると、ドッペルゲンガーのような魔物のキメラとかが思い浮かぶ。目の前のギタン(?)から臭うキメラ化したグール特有の腐臭から、その線が濃厚だと考えていた。
『……クローンとは少し違いますね……『アイソトープ』とでも言いますかね。オリジナルはあちらですから……』
(『アイソトープ』……ね)
同位体……この場合は『同位相体』と呼ぶ方が正しいか。そんな言葉、実際にはないのだが。
オリジナルと同じ位相、同じ次元にいる同一存在。
ドッペルゲンガーは視認した対象を高い再現度で
研究所に『複製』というテーマがあったから考えてはいたが、魂レベルでここまでオリジナルと似たものを作るのは……ロイドでギリって所だ。
ひとまず、このギタン(同)は魔力量もギタン(真)と遜色なく、技量も然程変わらないという事は確かだ。
「……まぁいい。オリジナルのギタンの方はロイドがやってくれる。お前に興味はあるが、それはオリジナルに聞けばいい」
『……正直、神が遣わしたかもしれない貴方を前に、もうチャールズも王族もどうでもいいと感じているのは確かです……』
「オレはロイドより加減が出来ないし、実はロイドより根に持つタイプなんだ」
『あちらの私も好きにしている様ですし、貴方があの『神』の関係者であるなら尚更ですね……』
「───それじゃあ……」
『───では……』
─── 『光武』 ───
空で頂上の戦いが始まる頃、地獄の釜より這い出た者達も、各地で進軍を始めた。
それを止めようとする者達もまた、邂逅を始めていた。
街の東。シルファの護衛する支部。
街の轟音による民衆の騒ぎの中、不意を突いた長剣の一閃がシルファを襲った。
それを身を屈め避け、斬られた燭台を武器として持つ。
「やれやれ……混乱のどさくさに紛れて首を刎ねるつもりでしたが……流石は『銀の剣姫』ですね」
「なっ!? コレはどういう事ですかアナスタシア様!」
「……やはりと言いますか……貴方でしたか」
「フフ……気付いてましたよね」
アルベルトの勘により、一対一で配置されたシルファとアナスタシア。狙い通り、最悪のケースの一つであるアナスタシアの敵対。
シルファの剣は、教会に入る時に武器の持ち込み禁止を理由に奪われた。
「『
「ええ、そうですね。じゃあ神官辞めます」
vs.
『月皇 アナスタシア』
街の南東。タオの護衛する支部の周辺。
「「浄化!!」」
十二神官の二人であるスキンヘッドの双子、アカマキ、アオマキは、教会に攻めてくるキメラ達を息のあった浄化で消し去っていた。
その護衛をしているタオはと言うと、屋根の上で座ってその様子を眺めていた。
「おー、キメラと言えど浄化は効くあるね。それより浄化の時その変なポーズいるあるか?」
「お前も手伝え! 護衛だろう!」
「私魔力少ないね」
「なら我々の事はいいから、民を守れ民を!」
「言われなくてもするあるよ」
2人がこの様子なら、タオは1人で大物を取っても問題ないと判断した。
背後から近づく大きい『気』。
普通の有象無象とは明らかに練度の違うそれは、少し神官には荷が重い。
カラン、と下駄が地を踏む音と共に、その異形は現れた。六腕六眼、一見少女にも見える花柄の羽織を着たキメラ。
「─── さっきからウザったいのぉ、その『気配察知』。殺すぞ?小娘」
「……釣れたあるな、今日は引きがいいある」
vs.
『落華拳のシャクラ』
街の西。ガリレアとタリアの護衛する支部。
二人は護衛対象の神官二人と共に、キメラの群れと対峙していた。
その群れの最前に群れを率いるように立つ、山羊の頭蓋を持つキメラ。
「ガリレア、あの真ん中のヤツ、ヤバいわよ」
「あぁ、明らかに魔力量が段違いな上に、動きも他のゾンビ共より知的だ」
「……我が名は、『禁書のグリモワール』……!」
………………
「「なっ!?」」
「「…………ん?」」
その名乗りに神官二人は驚き固まり、ガリレアとタリアも困惑で固まった。
いやだって、グリモワールって…………グリモの事じゃ……?
「……え、グリモワール……? あれ?」
「馬鹿もん知らんのか! これだから若い衆は!」
老年の神官が困惑する二人に説明する。
『禁書の魔人』グリモワールとは、昔昔サルームを滅亡寸前まで追いやり、数多の魔術師により封印された大魔人である、と。
悪さをするとグリモワールがやってくると子供に言い聞かせられるような魔人である、と。
(悪さをすると……)
(グリモワールがやってくる?)
((んん〜〜〜???))
パンケーキ片手に遊びに来る、よく主に振り回されてる苦労人のマスコットしか二人には思い付かないのだが。
何はともあれ……
「今こそ! 我を封印したこの国に復讐を果たす時が来たのだ!
「「GREYYYYY!?」」
vs.
『禁書のグリモワール(?)』
街の北。クロウの護衛する支部の近く。
十二神官の一人、金髪を逆立たせた青年神官バッツと共に、クロウは教会から引き剥がしたキメラ共の囮の為に走り回っていた。
「おい無口ヤロー! 俺達が囮になんのはいいがよ! どうすんだよコレ!」
「……教会、離れて大丈夫だったかな……」
「聞けや!! 教会にはメリッサのババアが居る! あのババアは浄化以外も魔術が結構使えるグレートなババアなんだ! まあこの俺、神官バッツ様ほどじゃねえがn「早く行かないと」だから聞けや!」
やたらと声の大きいバッツは放っておき、クロウは街の中央に向かっていた。
クロウは街中に伝令用の鴉を放っており、その様子は離れていてもある程度認知できる。
その内、街の中央に配置した鴉の様子がおかしいのだ。他の場所でも暴動は起きているが、それよりも尚。
クロウは身軽に家の屋根に登り、その様子を確認する。後に続き、バッツもよじ登って街の中央にいる存在を見た。
炎の上る街を這うように進む、5本の角を持つ巨大な黒竜の姿を。
vs.
『魔界竜 ブラックドラゴン・キメラ』
街の北西。バビロンの護衛する支部周辺。
キメラの進行が比較的遅いこの地区で、バビロン達は住民の避難指示を行っていた。
「お婆ちゃん危なぁぁぁい!!」
「ロゼリス様よ! 神官ロゼリス様が化け物を退治しにやって来てくれたわ!」
クロウの鴉が落とした糞からお婆ちゃんを庇った、額に教会のマークを付けた紫髪の神官、ロゼリスに住民から黄色い歓声が掛けられる。一般人からの信奉が厚いようだ。
「見ろバビロン君! 民が僕を崇めているぞ! これだから神官は辞められんのだ!」
「頭にウンコついてるけどな」
「あまり言わないでやってくれ」
マジレスするバビロンに、ガタイの良い坊主の神官、トールが遠慮がちに諌める。経験上、ロゼリスが調子に乗っている時は放っておいた方が良いのだ。
高笑いするロゼリスはさておき、トールは今回の事件の犯人に憤りを見せていた。
「それにしても誰がこんな暴動を……神をも恐れぬ不届き者め!」
(アンタらのトップだよ……もう面倒くさいし言ってやろうかな……いやダメだな、余計な混乱になる)
「───教皇かね?」
「「なっ!?」」
「へ〜。「だったらいいな〜」くらいのつもりで言ったが、バビロン君の反応を見るに正解らしいな」
頭が良いのか勘が良いのか、一発でラスボスの正体に辿り着いたロゼリスに、バビロンは取り繕うのも忘れて驚いてしまった。
「護衛というなら全員を一塊に集めた方が効率が良いはずだ。それを態々バラけさせたのは、僕らの中に犯人がいると踏んだからだろう?」
「その犯人が教皇様だと言うのか! そんな馬鹿な!」
「僕を差し置いてこんな目立ったマネをするのは癪だが……そういう事なら話は別だ! 今この瞬間、あの化物ジジイの居座る王座は空席となった! 何という好機! 降って湧いた大チャンス! 次期教皇に、僕はなる!!」
「ウンコも降ってきてたしな」
曲者なのか馬鹿なのか分からないロゼリスに辟易されたバビロンだったが、次の瞬間に緊張の糸が一気に張り詰めた。
ウンコとチャンスに続き、ロゼリスの頭上からとんでもない物が降ってきた。
バビロンは紙一重でロゼリスを抱えて助け、その降ってきたものを見た。
「ななな何だぁ!?」
「ロゼリス! お前が変な事言うからまた何か降ってきただろうが!」
「何だコレ…………豚?」
それは、体長3mはありそうな巨大な豚。しかも二足歩行で筋骨隆々。顔だけデフォルメされたような豚なので、ハッキリ言ってアンバランスな見た目だ。
落下だけで地面を大きく叩き割ったその豚は、青い瞳孔を不気味に光らせてこう言った。
「転生したら食用オークだったので、
気ままに人類滅ぼします」
((( 何言ってんだコイツ )))
『十二神官 ロゼリス & トール』
vs.
『