転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます   作:苦闘点

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なんか予想外に伸びて驚いてます。

感想を貰うと嬉しくなって執筆スピードが上がります。
お願いしまぁす!!


【第2話】皆を招待しました

「……落ち着いたか?」

「へぇ……お見苦しいとこをお見せしやした……」

 

 

 グリモの黒閃砲によりできたクレーターの横で、シィズは胡座をかき、ガリレアは対面して正座をしていた。

 風が舞い起こる程の土下座を辞めさせ、今に至るわけだ。

 

 申し訳なさそうにするガリレアに、シィズは苦笑してポリポリと頭を搔く。

 

 

「……まあ、オレも少し巫山戯すぎた。すまなかったな」

「ふざける?ふざけてましたか?」

 

 

 シィズの言葉に疑問を投げたのは、ガリレアの後ろに立っていたバビロンだ。

 シィズがその問いに答えるより前に、ロイドがシィズの頭に顎を乗せる。

 

 

「かなり凄かったぞ?俺でもビリビリきてたし」

「悪いな。 試そうとした訳ではないんだが……」

「一体何してたって言うんですかい?」

「気になるのか?グリモワール。いや、グリモか」

「……俺の事まで知ってんなんて、ナニモンなんだ?」

「そこはおいおい、な」

 

 

 シィズは頭に乗ったロイドの頬を掴み、そのまま立ち上がって肩車をした。

 

 

「オレの研究室まで案内するよ。そっちなら色々もてなせるからな。ガリレア達も来い、歓迎するよ」

「そ、それはありがたいんですが……どこから行くので?」

「え? 見てただろ? そこからだよ」

 

 

 そう言って指差したのは、依然として割れた空の奥に広がる真っ暗闇。シィズが出てきたところだ。

 予想通りではあったが、ロイド以外全員が白目を剥いた。

 

 

「やっぱりか……」

「ここまでなのね……」

「だ、大丈夫だよ!ロイドのお兄さんだし……ロイドの、かぁ……」

「やっぱり、無理かもね……」

 

「……えっとぉ……シィズ、様? そこ入ったらどうなるんですかい?」

 

 

 死期を悟った元ギルドの様子を見て、一応確認を取るグリモ。それを聞いてシィズは………

 

 

 

「え?普通に入ったら死ぬぞ?」

 

「やぁぁっぱダメなんじゃねえかあああ!!!」

 

 

 

 平然とそう宣うシィズに、グリモは「やっぱ兄弟だな!」と思いながらいつものようにツッこんだ。

 

 

「ああ、グリモは大丈夫だぞ。魔力体だし。けど人間が普通に入ったら、『次元の壁』に阻まれて入った瞬間体がバラバラになって死ぬ」

「駄目じゃん!バラバラになるなら駄目じゃん!!」

 

「普通に入ったらな。今ちゃんと準備するから安心しろ」

 

 

 シィズは5人に手のひらを向け、魔術を唱える。

 

 

───空間系統魔術───

絶界(ぜっかい)

 

 

 5人の体を覆うように光が足先から頭頂まで駆け抜ける。

 魔術をかけられた感触はあったが、比較的に何も変わってないので不安と安心は半々であった。

 

 

「よし、これで問題ない」

「何したの?見た目変わらないけど……」

「外界と隔絶された結界を体表面に纏わせたんだ。これで『次元の壁』に触れても安全だ」

「何言ってるのかさっぱりね……」

「その、『次元の壁』というのは?」

「そうだな……説明すると長くなるから、気になるなら今度個人的に教えよう」

 

 

 『次元の壁』とは、本来は人間界と天使が住まう天界を隔てるもの。魔人や天使や霊体など、肉体を持たない者のみが通過できる(ふるい)のようなものだ。

 

 しかし、これから行く場所は天界ではない。なら何故『次元の壁』が存在するのか……今説明するのは面倒だからと、バビロンの疑問を一度保留した。

 

 その中、一人魔術を掛けられていないロイドが首を傾げる。

 

 

「あれ?俺そんなのやってもらったことないぞ?何でだ?なあなあ」

「……今度教えてやるよ。とにかくロイドは問題ないから」

 

 

 ロイドのアホみたいな魔力密度では、勢いをつければ『次元の壁』を突き破ってしまうから、『絶界』など必要ないのだ。

 というか普通に通過するだけで『門』がひび割れるから、『絶界』で補強しようものなら本格的に壊れかねない。

 

 普通に入れば体がバラバラになると説明された後なので、それが必要ないロイドのヤバさを再認識する6人。

 さらには、それに対し諦観を含んだ苦笑を浮かべ、肩車されているロイドにポニーテールをペシペシされるシィズを見て、親近感を覚えていた。

 

 

「……さ、今度こそ行くぞ」

 

 

 シィズに続き、恐る恐る入る6人。

 

 目の前に広がる闇。その中で一瞬何かが通過し、すぐに正方形の光が差し込んだ。

 いきなり上がった光度に目を覆っていると、開けた場所へ出た。目を開いた6人が見たのは……巨大な縦穴。

 

 上も下も、底も天井も見えない、正方形の穴。壁には無数の本棚や、数個の扉が取り付けられている。その外周に取り囲むように付けられた廊下に出たのだ。

 

 

「「「……おおっ………!」」」

 

 

 そのなんとも奇妙な光景に、6人は驚嘆の声を上げ、ロイドはシィズの肩から離れて意気揚々と本棚へと飛びたつ。

 

 そんな弟を穏やかな顔で見送り、シィズは周囲を見回している6人へと振り向く。

 

 

「改めて……『禁書の魔人』に、元暗殺者ギルドの諸君。ようこそ、オレの研究拠点へ。 第六王子の名において、お前らを歓迎しよう」

 

 

 得意げな笑いを浮かべ、シィズは少しわざとらしい、恭しい礼をした。

 

 

 

 

□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 エレベーターのように上昇した廊下が、王城の客間のような広いスペースに止まる。

 

 

「何からツッコめばいいんだろう……」

「慣れるしかないでしょ……ロイド君の兄上よ?」

「でもアルベルト様はふつ……いや、あの人もあの人だったわ」

「……王族は、みんなこうなのかな……」

「マトモな人もいる……と思いたいがな……」

「適当に掛けててくれ」

 

 

 有り得ない光景を立て続けに見せられ、もうギルドの5人は早々にシィズをロイド枠に入れようとしていた。

 シィズに言われた通り、客間の四角いテーブルの周りに置かれた、これまた四角い椅子に腰掛ける。

 

 視覚的にカチコチそうだったが、見た目より柔らかくクッション性も良かった。タリアなんかは普通に欲しいと思っていた。

 

 シィズは全員分の紅茶と茶菓子を用意し終え、ふと手持ち無沙汰そうにしているグリモを見た。

 

 

「あーグリモ。 ロイドは下にある魔術書を粗方かっさらったら戻ると思うから、心配しなくていいぞ」

「……やりづれぇ」

 

 

 相手から一方的に知られている感覚に違和感を感じながら、グリモもテーブルへと着いた。 

 レン、タリア、クロウは茶菓子を美味い美味いと頬張っていたが、ガリレアとバビロンは「王族に給仕させてしまった……」と、これからロイドに仕える身として、縮こまっていた。

 

 

「あ、あのシィズ様? こんなもてなして貰わなくても……」

「いいさいいさ。オレが好きでやってるんだから」

「一応王族では?」

「王族と言っても、オレはほぼずっとここに篭ってる、なんちゃって王族みたいなものだ。気にしなくていい」

「バビロン!このお菓子すごく美味しい!」

「それは良かった。こちらも作った甲斐がある」

「王族ぅ……」

 

(基本マトモそうなんだが……)

(ロイド様とは別ベクトルで胃をやられそうだな……)

 

 

 キラキラと目を輝かせてお菓子を食べるレン達を見て、ガリレアとバビロンも諦めて茶菓子を食べた。

 一口食べた後、バビロンは後でレシピを教えてもらおうと決意した。

 

 シィズは紅茶を一口飲み、改めて頬杖をついた。

 

 

「さて……どこから説明しようか」

「まず、私たちのこと、それとグリモの事を知っている訳を教えてほしい」

 

 

 手を挙げたバビロンが問う。

 シィズはロードストでの出来事で、アルベルトらと一緒に参戦していない。その後の墓作りも茶会にも来ていない。

 ならばどうやって暗殺者ギルドの事、あまつさえグリモの事を知っているのか。

 

 

「ロイド様の色々も知ってるみたいだし……アンタ、何もんなんだ?」

「別に前々から知ってた訳じゃないさ。最近はロイドの事も見てなかったしな」

「最近ん? ロイド様と会うのは2、3年ぶりとか言ってなかったですかい?」

「会うのはな。たまに『窓』からこうやって……」

 

 

 そう言うとシィズは、顔の横でブラインドシャッターを開けるように指を動かした。

 すると、空間に裂け目が出来、その奥にサルームの王城が見える。

 

 

「盗み見みたいなものだ。ロイドは気付いてるがな」

「き、気付かなかった……」

「そりゃあな。あっちからは見えんし。気付くロイドがおかしいんだよ」

「……終わった後、って事は……」

「流石に風呂を覗くようなマネはしないぞ、レン」

「そそそそそんな事考えてないから!」

 

 

 面白いほど狼狽えるレン。シィズはその様子を見て楽しそうに笑っていた。

 

 

「それで、納得したか?」

「まあ盗み見はアレだが……納得はした」

「それは良かった。他には?」

「それじゃあ……ここどこ?」

 

 

 もっともなダリアの疑問に、全員がシィズの方を向く。

 

 そもそもここに入るまでの『門』だの、今見せた『窓』だの、不可解な事が多過ぎていた。

 

 シィズはその問いに待ってましたとばかりに口を開いた。

 

 

「ここはオレの部屋。そして()()()()の研究所だ」

「結界魔術?空間系統魔術とは違うんですかい?」

「厳密には同じだ。ただ、オレが扱うそれを、結界魔術と呼んでいるに過ぎん」

 

 

 そこまで言うと、シィズは右手をパチンと鳴らす。

 すると、指先に仄かに青白く光る立方体が構成された。

 

 

「これが『(かい)』。1番初歩的な結界魔術だ」

「普通の『魔力障壁』とは違うの?」

「構成してる術式をアレンジしたんだ。『魔力障壁』は基本球体だろ?」

「あれ?ボクが見た『空天蓋(くうてんがい)』は、丸じゃなかったよ?」

「『空天蓋』は空間系統魔術ではなく、風系統魔術だからな。けどコイツはそれを参考にした事もあったから、良い目の付け所だな、レン」

「え、えへへ……」

 

 

 照れて頭を搔くレンを穏やかに見つめたあと、1度咳払いをして話を戻した。

 

 

「で、この結界魔術と空間系統魔術の『虚天蓋(きょてんがい)』と『領域干渉』。これらの三重詠唱により完成したのがここ…………」

 

 

───『無間界廊(むけんかいろう)』───

 

 

「物理的不可侵領域を作る『虚天蓋』、それを『領域干渉』により物理的に干渉出来るようにする。これだけなら、ただオレの部屋が広大になるだけだ」

 

 

 結界魔術を織り交ぜなかった場合、本来は『虚空渺茫堂(きょくうびょうぼうどう)』という空間系統合成魔術になる。

 これだけでは自室を開けられた時に大変な事になるし、何より強度が心許ない。

 

 それを解消するために結界魔術を混ぜた結果……

 

 

「結界魔術を織り交ぜた事で、()()()()()()が外界と隔絶された、擬似的な天界のようなものが出来上がってしまった」

 

 

 結界魔術の影響だろうか、本来は真っさらな更地になる筈だったのが、このような巨大な縦穴になってしまった。

 

 

「正直予想外だったなー。お陰でここまで整備するのだけで1年かかったし」

 

 

 懐かしいなーと目を閉じるシィズ。

 暗殺者ギルドの5人は、魔術に関しては然程明るくない。今の話も、なんとなくとんでもない事をしているなという感想くらいだ。

 

 グリモも、やってる事は第七王子と同じくらいヤバいが、正直ロイドでも似たような事はできるだろうと思っていた。

 

 ……しかし、ただ一つだけ。

 どうしても納得出来ない言葉が一つだけあった。

 

 

「…………()()()()。そう言ったか?」

「ん?ああ、そうだ」

 

「ありえねえっ!! ロイド様でも俺が手の平に入っての二重詠唱が限界だってのに、口が一つしかねえアンタが三重詠唱なんて……」

 

 

「───そこが、シズ兄さんの凄いところだよ。グリモ」

 

 

 グリモが振り返ると、そこにはやけにツヤツヤとした、喜色満面の笑みを浮かべたロイドが立っていた。

 ロイドはとたとたとシィズの所まで駆け寄り、定位置のように膝に座った。

 

 

「本はよかったのか?」

「ああ。またじっくり見るよ。それよりなんか面白い話が始まってたからさ」

「ロイドは全部知ってるだろう。……で、グリモ。三重詠唱だったか。確かに、オレも口をもう二つ作るのは物理的に不可能だ」

「じ。じゃあどうやって……」

 

「……けどな、擬似的に再現させることは可能なんだ」

 

 

 シィズは先程作った『界』の中に魔術を展開する。

 

 

 

───『火球』──『水球』──『風球』───

 

 

 赤、青、緑の球体が存在する中、『界』の体積が豆粒程の大きさになる。

 暴発してもいいように、テーブルの上に『門』を誰一人いない荒野の空へ展開。眩い光を放つ『界』をそこに向け放つ。

 

 放たれた『界』を目で追う6人。ロイドもワクワクとした表情で見入っていた。

 

 ………………刹那、

 

 

 

────三重詠唱────

 

嵐烈球(らんれつきゅう)

 

 

 

 快晴が嵐に反転する。

 球状に広がった竜巻が空を支配し、轟音と共に稲光が眩く輝く。

 

 6人はロイドが何かやった時と同じくらい、口をあんぐり開けて目を見開く。

 そのロイドはと言うと、口からヨダレを垂らしながらキラキラした目を向けていた。

 

 嵐が終息してきた頃、ゆっくりと『門』を閉めた。

 一旦静寂が部屋を包む中、グリモがポツリと呟いた。

 

 

 

「………………もぅいいや…………」

 

 

 黄昏ながら、ロイドと会った時ばりの諦観を抱き、グリモはピュ〜とふらつきながらロイドのポケットに収まった。

 

 

「いや〜、やっぱりシズ兄さんの魔法は凄いな〜!なあなあ!また新しい魔術、沢山開発したんだろ?もっと見せてくれ!」

「……ああ。いいぞ。それじゃ、実験場行こうか」

「わーい!」

 

 

 シィズはどこか懐かしい物を見るような目をした後、またロイドを肩車した。

 

 そしてその場を後にしようとし、色々あって状況についていけていないギルドの5人を思い出した。

 

 

「悪いな。そういう事だから、聞きたい事があるなら個人的に聞いてくれ。これから会う機会も増えるだろうからな」

「え?シズ兄さん引きこもりやめるのか?俺やアルベルト兄さんが何言っても引きこもってたのに」

 

「ド直球なとこも変わってないなロイド……。心境の変化だよ。これでお前の研究も少しは手伝ってやれるし、良いことだろ?」

「それは良いな!俺もこの3年で沢山練習したから、今度こそ結界割ってやるからな!」

「ほ〜?そいつは楽しみだな」

 

 

 兄弟仲睦まじく歩いていく背中を見ながら、ギルドの5人はもう考えることを辞めた。

 

 その後シィズ達が戻るまでに、客間の奥の方から凄まじい爆発音と崩壊音、そしてそれを上回るグリモの悲鳴が幾度も聞こえたそうな。




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