転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます 作:苦闘点
二次創作日間ランキングで23位、
しかも二次創作日間ルーキーで1位!!??
ロイドの魔術を見たグリモみたいな顔になりました。
皆飢えてたのかな、第七の二次創作。
書き溜めないけど期待に応えられるよう頑張るぞい!
【第3話】兄達に会いに来ました
シィズとロイド一行の対面から数日。
「へぇ、ガリレアが領主か。ロイドも人の動かし方を分かってきたじゃないか」
「そう言ってくれるのはありがてぇんですが……何で、シィズ様がここに?」
「暇だったから」
「んな平然と王族が……」
なんて事無いようにお茶を啜るシィズに、ガリレアが頭を抱える。別に来るのはいいのだが、『門』が急に開くと心臓に悪いのだ。
シィズが我が家のように寛いでいると、そこにタリアとクロウが入ってきた。
「あら?シィズ君来てたの?」
「あぁ、邪魔してるぞ。 レンとバビロンはいないのか?」
「レンは、何日か前からロイド様のメイド。バビロンは、今はロイド様と一緒にいる」
「レンは分かるが……バビロンは何で?」
「説明しますとですね……」
事のあらましをガリレアが説明してくれた。
晴れて(?)ガリレアがロードストの領主になったわけだが、今後またギザルムのような事が起きないとも限らない。ギザルムの時も、魔人に太刀打ち出来なかったのを気にしていたらしい。
その打開策としてグリモが提案したのが、神聖魔術。魔人や魔族、
「確かに、魔人対策としてはこれ以上ないだろうな」
「それで、教会に入信しようかと思ったんですが、ロードストは今領主交代で荒れてるってんで、俺たちが残ってる訳です」
「バビロンは実働部隊か。まあ安牌だな」
バビロンの性格と能力なら、諜報活動は大の得意だろう。
そこは理解した。ロイドが3人で行ったのも、「数打ちゃ神の恩恵が当たるだろ?」なんて罰当たりな考えだろう。
シィズが気になったのは、それ以前の事だ。
「…………ロイドが、教会に行ったか……」
「それなんですが……何やったんですかい?」
「教会を出禁って聞いて爆笑したわよ私」
「ナイスって言っておいた」
「事後報告で何があったか聞いているが……正直アレはロイドが悪い」
「マジで何やったんだ……」
「教会で悪魔っぽい化け物を暴れさせて、神父が大切にしてた美術品や家具を片っ端からぶっ壊した」
「そりゃ出禁にもなりますね」
さもありなんとガリレアは納得する。タリアとクロウは腹を抱えて爆笑していた。
「さすがwww……!ロイド君www」
「グッジョブwww」
「大丈夫ですかね、ロイド様……」
「レンとバビロンもいるから大丈夫だと思うが……仕方ない。オレも行ってくるよ」
お茶を飲み終えたシィズが椅子を立つ。
(教会とレンとバビロンの)心配もあるが、神聖魔術に関しても少し興味があった。これを機に手に入れるのもいいだろう。
『門』を王城の自室に繋げると、思い出したようにガリレア達に振り向いた。
「そうそう。これを渡しておくよ」
「おっと……これは?」
シィズが投げ渡したのは、ロイドが前に持っていた銀色の小さなベル。
「それを鳴らせば、どこに居ようとオレに伝わる。何かあればそれで連絡しろ。じゃあな、頑張れよ領主様」
「……おうとも!任せてくだせえ!」
「じゃあね〜」
「またね」
3人に見送られながら、シィズは『門』を潜る。
行先は……
(……ついでに、王城にも顔を出しておくか……)
『無間界廊』内の無数の扉は、シィズが登録した場所に繋がっている。サルーム国内はもちろん、バートラム等にも。
その中の扉の一つは、サルーム王城内にあるシィズの自室行きの扉だ。
シィズは基本的に『無間界廊』で結界魔術の研究に勤しんでいる。王城に戻る事なんて殆ど無い……訳でもない。
「……まずはアルベルト兄さんかな」
メイドすら部屋に入れないようにしていた為、埃まみれの部屋を急いで出る。
そこから数分、アルベルトを探してテクテク歩く。数年ぶりでも変わらない王城を眺めていると、掃除中のメイドに出会した。
「あっ……」
(ヤベッ)
「?……その髪……もしかして、シィズ様!?」
「あ、あぁ……。その、アルベルト兄さんはどこに……」
「ついに!ついにお部屋から出てきてくれたのですね!!メイド一同来る日も来る日も心配していたのですよ!!」
「あ〜〜〜……すまんすまん。それは悪かったから。悪かったから一旦離れろ!顔に胸を押し付けるな!」
涙と鼻水をダラダラ流しながら縋り付くメイドに、シィズは顔を引き攣らせながらも謝罪する。
こんな事になっているのは、全てシィズのせいである。
シィズは3年程ロイドと会ってないと言ったが、それ以上に王城に顔を出していない。王城の廊下を歩いたのは5年ぶりくらいか。
その間はずっと研究していたのだが、それをどうやって誤魔化してきたのか……。
それは、『引きこもっていた』。以上である。
その一つの理由だけで5年も粘っていた。他に理由を考えるのが面倒だったのだ。いつご飯を食べているのか、そもそも生きてるのか、約5年間の間不明だったのだ。
そりゃあメイドのような反応にもなるだろう。
メイドの話を聞くと、今まで誤魔化せていたのはロイドの口利きもあったおかげらしい。後で沢山褒めてやろう。
引っ付くメイドを何とか引き剥がし、アルベルトの居場所も聞いておいた。
その後も何人かのメイドに同じように捕まり、疲れた様子でアルベルトがいる部屋へと辿り着いた。
ドアをノックすると、中から「どうぞ」と声が聞こえた。
アルベルトはメイドと似たような事にはならない、と思いつつも、少々覚悟して扉を開けた。
「し、失礼しまーす……」
「どうぞ。誰か……な……」
部屋の中で優雅に紅茶を飲んでいた金髪の好青年は、サルーム王国第二王子、アルベルト・ディ・サルーム。
そのアルベルトは来訪者の顔を見た瞬間、目を見開いて手に持っていたティーカップを落とした。
幸か不幸か、部屋には丁度アルベルトしかいなかったため、暫しの間静寂が部屋を包む。
シィズはその沈黙に耐え兼ね、恐る恐る口を開いた。
「そのー、アルベルト兄さん?」
「………………」
シィズの言葉に反応せず、ボーッとした様子のまま、アルベルトは何も言わずに歩いてきた。
やっべ怒られると思ったシィズは咄嗟に目を瞑る。
やがてシィズが感じたのは、頭の上に置かれた手のひらの感触だった。
「……?」
「……背が伸びたね。声も、少し変わったかな?」
驚くほどに穏やかな声音でシィズの頭を撫でるアルベルト。メイドと全く違う反応に、シィズは面食らってしまった。
5年前、『無間界廊』が完成してから、1年は内部の整備、もう1年は扉の接続、そして先日までの3年間は研究に没頭していた。
その間ずっと引きこもってる設定であったが、それでも毎週1回は様子を見に来てくれていたのが、アルベルトだ。
最初のうちは、なんとか部屋まで行って中から応対していた。しかし、それもいつしか忘れるようになった。
(……忘れてない、はずだったんだけどな)
思えば前世でも、月に一度の親からの手紙が、『青年』の心を支えていた。
顔を見せていない年月なら、アルベルトと同じくらいであろうが、何年も連絡一つ無いというのは、耐え難い事だろう。
無論、何かあれば直ぐに分かるようにしていた。シィズの方からは、定期的に『窓』で確認していたから。
それでも……何で、忘れていたんだろうか。
(反省しないとな)
シィズはシィズとして生まれて、まず一つを極めると決意した。
しかしそれは、何も他の事を、家族の事を蔑ろにすると決めた訳じゃない。
むしろ、その家族を守れるように。
もう、あの
今度こそ、極めた
シィズはやけにソワソワしているアルベルトに気付かず、頭にあるアルベルトの手に自分のを重ねた。
「シ、シズ?その、何か言ってくれると……」
「……申し訳ありませんでした、兄さん。心配をおかけしました」
「……そうだね。心配したよ。これからはもう、しないようにね。次からは僕も怒るよ?」
「ふふ……はい。肝に銘じておきます」
そう言ってシィズは、俯いていた顔をアルベルトに向け、とびきりの笑顔を見せる。
それにより、ただでさえ5年も姿を見せなかった弟が急に現れて内心狂乱していたアルベルトの理性は、完全に崩壊した。
「シィズウウゥゥゥ!!!本っ当に心配したんだからなああぁぁぁ!!」
「ちょ、兄さん!それは悪かったですけど、色々飛び散ってます!一旦離れてください!」
「いいやダメだ!今度こそ引きこもらせたりしないからな!!」
「もう大丈夫ですから!もう引きこもったりしませんから! というか兄さんそんなキャラじゃないでしょう!」
「少し見ない間にキャラどころかキャラデザまで変わったシズに言われたくない!」
「何の話ですか!」
それから数十分、アルベルトが落ち着くまでシィズは涙と鼻水でグチャグチャの抱擁を甘んじて受け入れた。
「……間違っても、もう絶対に引きこもらないようにしないとな」
ようやくアルベルトから解放されたシィズは、その後の会話で出てきた人物の所へ向かおうとしていた。
王城の離れにある、レンガ造りの建物。
第四王子、ディアン=ディ=サルームの鍛治工房だ。
工房は扉が開けっ放しであるため、若干気温が上がった気がする。
その入口からヒョコっと顔を出し、中の様子を確認すると、浅黒い肌にバンダナを巻いた青年がトンカチで赤熱した鉄を叩いていた。
「失礼しまーす。ディアン兄さんいますか?」
「ん?……おぉっ!シズじゃねえか!久しぶりだなぁ!」
「……ああ、良かった。普通の反応だ」
「引きこもってるって聞いてたけど、元気そうで安心したぜ!」
「ディアン兄さんも、お元気そうで何よりです」
ディアンはこの間まで、鍛治技術を勉強しにバートラムへと7年間留学していた。
旅立った時にはまだシィズも引きこもりを始めていなかったから、アルベルトよりも普通の反応になっているわけだ。
ワシャワシャとアルベルトよりも少し激しめに頭を撫でられながら、シィズは気になっていた事を聞いた。
「久しぶりに挨拶に来た次第です。それで、最近ロイドと一緒に凄い魔剣を作ったと聞いたのですが……」
「おっ!シズも魔剣に興味があんのか?それとも付与魔術の方か?シズも昔は本の虫だったからなぁ」
「オレはどっちにもですかね。剣も多少振れますし」
「そうだったのか?そんじゃ、早速射撃場まで行くか!」
そういう事で、2人は一振の剣を持って魔術訓練用の射撃場へと赴いた。
その途中、後をつけていたらしいアルベルトも合流した。
「いや〜、こうやって兄弟集まるのも久しぶりだね。教会から帰ってきたら、ロイドも引っ張ってきて食事でもしようか!」
「いいなそれ!ついでにゼロ兄も引っ張り出そうぜ!」
「あの人は厳しいんじゃないかな……」
第三王子のゼロフ=ディ=サルーム。彼はシィズ以上の研究の虫だ。錬金術の研究に明け暮れており、シィズのように顔を見せないまででは無いにせよ、引きこもり年数で言えばシィズをも上回る。
シィズも今回の挨拶回りの候補には除外していた。研究の邪魔をしたくないし。
「それで、魔剣というのは?」
「おう!こいつが俺とロイドが作った魔剣『ディロード』だ!」
刀身に複雑な術式がビッシリと書き込まれた、流麗な両刃の片手剣。
振ると炎烈火球が出る魔剣『ディロード』。
「なるほど……ロイドが魔術を付与し、ディアン兄さんが鍛えた剣ですか。そりゃあ凄まじいでしょうね。しかも炎烈火球が出るとか……」
「一目でそこまで分かるなんて……。弟達が優秀で僕は嬉しいよ……」
「本番はこっからだぜ!見てろよ……!」
ディアンはそう言って魔剣を的に向かって構える。
少し汗を垂らしながら、「弱め……弱め……」と呟いていたのが気掛かりであったが、気のせいだろうとシィズは無視した。
そして剣を振り下ろすと、剣先から頭サイズの大きさの魔力球が飛び出す。
魔力球は的に着弾し……半径十数メートルを吹き飛ばす程の大爆発を起こした。
「……いやー、いつ見ても壮観だね〜」
「はははー、そうだなぁ!これを見ると悩みとか細けえ事も消し飛んじまうよな!なあ、シズ!」
「……確かに、大事な物も消し飛んでますね」
具体的には、一般的な感覚とか。
(完全にロイドに毒されてるな、二人とも)
まあ焦熱炎牙にしなかっただけ、ロイドも自重したのだろう。
ガラス化している地面の後始末をし、三人はここで別れようとした。
「ありがとうございます。とても良い物が見れました」
「シズも、魔剣に興味があったらいつでも工房に来いよ!歓迎するぜ!」
「はい、喜んで」
「それで、シズ。今から他の兄弟の所にも行くんだろう?」
「そうですね。色々迷惑をおかけしましたから」
国王……父さんはいいだろう。行くにしても公務で忙しいだろうし。
他の兄や姉も、戦場に出ていたり留学に出ていたりと王城にいない。
あと残るのは……。
「それなら、アリーゼのところに行ってやってくれ。彼女もすごく心配してたんだからな?」
「……………………はぃ」
「あー……頑張れよ、シズ」
(やっぱり、行かなきゃダメかぁ……)
気が進まないと思いながらも、自分のせいだと割り切り、シィズはトボトボと歩き出した。
向かうは城の端にある建物、《箱庭の塔》。
それを所有するのは、第六王女アリーゼ=ディ=サルーム。
ロイドの3つ上の姉にして…………
シィズの、双子の姉である。