転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます 作:苦闘点
そして総合評価1000pt突破!!
まだ投稿始めて4日目なのに、こんなに応援して貰って嬉しい限りにこざいます。
感想も大変励みとなり、また糧となっております。評価も9が近くなってきましたね!(チラッ)
誤字報告も大変助かります。あとアリーゼの髪ピンクでした!ごめんなさい!修正しときました!
教会に入ると、中には机が置かれ、多くの人で賑わっていた。
その入り口付近にロイド達はいた。するとレンがシィズの方に気がついた。
「あ、シィズさん!」
「数日ぶりだな、レン。バビロン達も」
「ご無沙汰してます。シィズさんは、なぜこちらに?」
「様子を見に来たんだよ。ロイドが2年前みたいな事しでかさないように」
「知ってたんすね……」
「ワフ?」
「あ、お前がシロか。会いたかったぞー」
グリモが埋まっている、教会には似つかわしくないずんぐりむっくりな白い毛玉。
ロイドのペットのベアウルフ、シロだ。
見た目は完全にまん丸な毛玉だが、一応イヌ。レッサーフェンリルのリルの下位種に位置する。
モチモチのモフモフをワシャワシャしてやると、気持ち良さそうに目を細める。
こんな事言うとリルは拗ねるが、撫で心地で言えばリル以上かもしれない。
「シロが警戒してないね……」
「ロイド様と似た気配を感じたんじゃないか?」
「そうだそうだ、そのロイドは?」
「あっちですぜ」
そう言ってグリモが指差した先には、ロイドと先程ゴロツキに抱えられていた女性二人が立っていた。
シスター服を着ている方に見覚えは無かったが、黒髪で眼鏡を掛けている方には目覚えがあった。
シィズは三人の方へ駆け寄って声をかけた。
「よっ、ロイド」
「あ!シズ兄さん!シズ兄さんも神聖魔術を見に来たのか?」
「まあ、そんなとこだ」
「? ロイド君のお友達ですか?」
「…………」
シスターの女性が困惑する中、黒髪の女性の方がズイっとシィズへ顔を近づける。
ジッとシィズの顔を見つめ、数秒沈黙する。
「………シ……シ?……シ〜…………シム!」
「シズです、サリア姉さん」
「そう言えばそうだった。引きこもりはやめたんだ」
「色々ありまして」
物静かそうなその少女は、サルーム王国第四王女、サリア=ディ=サルーム。
第四王女でありながら、その音楽の才はロイドの魔術の才に匹敵するほど。正に音楽の申し子と言える。
ただ、音楽に関する事以外には全く興味を示さない。シィズの名前を忘れているのも、そのいい例だ。
色んな意味で、ロイドに最も似ている姉弟と言える。ド直球なところとかな。
その様子を見ていた金髪のシスターは、驚いたような顔をして固まっていた。
「サリア姉さん……ということは、王子様ですか!?」
「ああ、紹介が遅れたな。第六王子のシィズ=ディ=サルームだ。君は?」
「あ、はい!シスターのイーシャといいます。初めまして、です」
「君がか……その、弟が色々迷惑をかけたな」
「そんな事ありませんよ!ちゃんと仕事もしてくれるし、ロイド君はすごくいい子にしてますよ!」
「……?…………???」
「諦めましょうシィズさん。イーシャはそういう娘です」
言ってる意味が分からず目が点になるシィズの肩をバビロンが叩く。
その心中で「ここまで根明なら、ロイドも調子狂うわな」と、変な納得もあった。
「ここに居るってことは、シィズ君も演奏会に来てくれたんですか?」
「演奏会?」
「今日ここで行われるそうですよ。サリア様とイーシャの演奏会が。聴いた者を癒すとかなんとかで、3年先まで予約が埋まってるそうですよ」
「も、も〜、バビロンさんったら〜!褒めても何も出ませんよ〜?」
「なるほどな、それで教会にこんなに人がいるのか」
何も出ないと言いつつ、頬を赤くしてロイドを抱えて左右にブンブンするイーシャ。ロイドに押し当てられる胸部を忌々しげにレンが見つめていたが、概ねいつもの事だ。
「そうだ!せっかくお兄さんも来てくれたんだし、今日の演奏会、ロイド君も一緒に歌いませんか?」
「駄目、イーシャ……。ロイドはまだ未熟。一緒に歌うのは私がみっちり鍛えた後。ロイド、お姉ちゃん達の演奏……しっかり見ておきなさい」
そう言うとサリアはロイドを撫でるのをやめ、舞台袖に行こうとする。
その途中で。思い出したようにこちらへ戻り、シィズの頭をポンと撫でた。
「シスも聞くこと。……引きこもり脱却のご褒美」
「シズです、サリア姉さん」
「む、惜しかった」
今度こそ舞台袖に引っ込むサリアを見送ったあと、シィズはロイド達と合流した。
グリモがレンに『儀式』について説明している一方、ロイドとバビロンは神聖魔術について話していた。
「どうするロイド。大人しく演奏聞くか?」
「そうだな。演奏と歌が儀式となって発動するタイプの可能性も捨てきれないし」
「それなら、神父様に言ってシィズさんの席も……」
──────ピクッ
バビロンが神父のもとに行こうとしたその時、三人の警戒線に何かが触れた。
各々違う方向を確認するが、見える範囲には何もない。
(中庭の方……それに……上か?視線を感じた気がしたが)
「三人とも、どうしたの?」
「……いや、なんでもない」
何かあればその時対処すればいいと、シィズはそこで思考を打ち切った。
そして、演奏会開演間近。
ステージのド正面の最奥。特等席に設置されたテーブルで、シィズ含む4人とシロは座っていた。
「すみません神父さん、予約制なのに飛び入りで参加しちゃって」
「いえいえ、ロイド=ディ=サルームならともかく、第六王子様なら何も問題ありますまい。……悪魔の子を見張ってくれるでしょうし」
「……多分もう滅多な事はしませんよ、多分」
(シィズさん、ロイドと似てるには似てるんだけど……)
(魔術が絡まなきゃ、割と常識人なんだよなぁ……)
(頭はイカれてないだけロイド様よりマシだぜ)
グリモはそう言いつつも、シィズとロイドの先日の『戯れ』を思い出し、顔を青くしていた。
神父が小言を言ってから去っていくと、レンはガヤガヤとし始めた教会内を見て呟いた。
「……何で教会なんかにこんな人が集まるんだろ。……神とか歌とか、ボクには分かんないよ」
「タリアやクロウもそうだったが、神は嫌いか?レン」
「……嫌いだよ、大っ嫌い。本当に神がスゴイなら、何でボクたちの事を救ってくれなかったのさ……」
確かレンは、自分の毒で親を殺し、ジェイドに拾われる前は山で暮らしていたんだったか。
他のギルドのメンバーも、大方似たような事情。ギルドに入ってからも、救いなど縁遠い存在だったのだろう。
何より、本当に何でも救う神がいれば、ジェイドの事も……。
「……人は弱い。何かに寄りかからなきゃ、簡単に壊れる。その寄り所も壊れれば本当にお終いだ」
いつかの青年が、家族という寄り所を失ったように。
「だからそれを持ってない人間は、壊れない寄り所。つまるところ神に縋る」
「ま、ここには単純に音楽鑑賞しに来てる奴も多いだろうがな……」
「グリモの言う通りでもあるが、そうじゃない人も確かにいる。……そういう意味じゃ、お前はきっと恵まれてたよ」
シィズの言っている事には、レンも納得するものがある。確かに、レンには仲間という確かな寄り所があった。
それでも神を認めるのは、なんかムカついた。
「だからって、音楽で救われるなんて、そんな事……!」
───ポォォォォン…………
……一音。
たったそれだけで、辺りを包んでいた喧騒が霧散した。
その場にいる全員の意識が、強制的にステージへと吸い込まれた。
そしてその意識の集中を途切らせぬよう、最高のタイミングで演奏は始まった。
──────────……
サリアの怒涛の弾奏に始まり、それと完璧に調和し、かつ存在感を溢れん程に主張するイーシャの歌声。
万華鏡の模様が花開くように、一瞬にしてステージを中心とした世界が形成される。
その光景にレンも、グリモも、目から涙が零れ落ちる。
ロイドですら、鳥肌をたてて見入っていた。
(……これが、人々を癒し神さえ魅了するサリア姉さんとイーシャの演奏。噂には聞いていたが……これ程とはな)
シィズも音楽にそこまで知見がある訳ではないが、それでも分かる“上手さ”。人の心に直接語り掛けてくるような錯覚すら覚える。
同時に、教会内に小さな光の粒子が降り注いでいた。
「グリモ、シズ兄さん……見えてるか?」
「やっぱりこれがそうか」
「発動してますぜ『神聖魔術』……!」
「『儀式』で発動するというのはビンゴだったな」
「これがそうなのか?グリモ」
「えぇ、この光の粒子一つ一つが全てそうですぜ!」
光の粒子に触れたグリモの体が少しゴワゴワしているのを見ると、間違いは無いらしい。
ロイドはグリモの口から吐き出された柄の無い短剣……『吸魔の剣』でその粒子の一つを斬った。
『吸魔』という魔術を魔剣に織り込む事で、振って魔術に当てるだけでその魔術を吸収できる。ロイドはそれを専ら解析用に使っており、神聖魔術もそれで解析しようとしていた。
ジェイドの瞬間転移術式───『
「どうだロイド、術式は」
「?? 何だこの術式。 幾何学模様の魔術言語なんて見た事も聞いたこともないぞ」
「効果は治癒系統魔術に近いな。粒子に触れると微弱な治癒効果がある。グリモはこれ平気なのか?」
「びりびりしますぜ」
「びりびりしてるのかそれ」
グリモが言うには、術者のイーシャが大した魔力を持っていない為、びりびりする程度で済んでいるそうな。それも、どっちかと言うと演奏に感動してびりびりしているようだが。
「読めない言語で構築された未知の術式か……未知度で言えばシズ兄さんの結界魔術と同じだな。……ふふっ、面白くなってきたな!」
「結界魔術もなのかよ……。でも、シィズの兄貴のと違ってこっちはノーヒントですぜ。どうするんですかい」
「シズ兄さんも気付いてると思うけど……さっきからびみょ~に視線を感じてな」
「しかもただの視線じゃないな。魔力を帯びてるが、微妙に気持ち悪いなこの感じ」
「視線……しせん……うわっ!本当だなんだこの視線!一体どこから!?」
「ざっくり"上"からだな」
「上?天井には何も……」
「いや、もっと上だな。もしかしたら『神の御使い』かもな」
「ハハハ!それならウケるな!」
ロイドはそう言って笑うと、グリモから貰ったマントを羽織る。
「どうだ?シズ兄さんも一緒に行かないか?」
「そうだなぁ……せっかくだしそうしようかな」
「よし!それじゃあレン、バビロン。そういう訳だから……ちょっと行ってくる」
─────ヴン…
黒い斑点と、驚愕した様子の二人と一匹を置いて、三人は転移する。
ロイドと共に転移したシィズは、その始めての感覚に興奮を隠せなかった。
(すごいな!これがジェイドの瞬間転移術式、『影狼』!!)
ロイドはこの時、"上"からの『魔力を帯びた視線』にロックオンして転移した。
本来の転移ならば、文字通り一瞬で転移できるが、今回は例外中の例外として数秒間のラグがあった。
初めて瞬間転移を体験するシィズは、その異変に気付くのが遅れた。
(!? まずい!!)
結界魔術をかれこれ十数年研究しているシィズだからこそ分かった、肌で感じた違和感。
即ち───『次元の壁』の存在。
ロイドが
しかし、アリーゼのところに行った時、動物たちを警戒させないようにそれを切っていた。
シィズの魔力量ならば身体がバラバラになることはないだろうが、それでも多少のダメージは避けられない。
シィズは即座に『絶界』を発動する。効果範囲を絞るヒマはないので、ロイドとグリモごと覆う。
─────パリン!─────
何かガラスのようなものが割れる音とともに、三人は勢いよく転移門から吐き出された。
幸い下がフワフワした素材だったため、ダメージはそれほどでもなかった。
「ロイドー、グリモー、大丈夫かー?」
「あぁ、俺は問題ないよ」
「うーん……」
「あれ、グリモはどこだ?」
「踏んでますぜロイド様……」
「あ、悪い悪い」
ロイドの下敷きになっていたグリモを引っ張り出すと、改めて状況を確認した。
「で、何処に飛んだんですかい?」
「何処って……」
「そりゃあ……」
辺りを見回せば、透き通るような青空、幾筋かの虹、そして地平線(?)の彼方まで続く
………………