転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます 作:苦闘点
誤字報告もたいっへん助かります。ほぼ推敲無しで投稿してる故に当然起こることですね。無いようにはします!
今夜は第七王子のアニメ4話!
アニメのロイド、ちゃんと狂気が感じられて良いですよね。私は早く動くジェイドが見たいです。
「ははは!凄いな!」
「少し寒いな」
「もしかして、俺達死んじまったんですかい?」
魔人のグリモが死んで天国に行くというのもアレだが、そういうのも無理はない。
普段いる地上とは、雰囲気が違う。明らかに別の世界だというのがありありと感じ取れる。
それでここが天国かどうかだが、そこの判別は
「いや〜前に死んだ時はこんな場所来なかったぞ」
「見たら忘れんしな、こんな光景」
「それよりここ、シズ兄さんの『無間界廊』と似てないか?」
「あ、ロイドもそう思う?」
「……はぁ……はぁ?」
あまりに自然な流れだったので、グリモもツッコミはしなかった。
三人は寒さ対策としてフードを被る。グリモは頭巾姿だ。禁書の魔人としての威厳はもはや天に召された。
「『視線』の主はいないようだな」
「みたいだな。転移が成功したかも分からないし。……でもこんなに面白そうな場所に来た訳だし……」
「あぁ、無論……」
そんなこんなで、未知の天国もどきの探検が始まった。
フワフワした雲の上を散策する。
……そして、色々あって十数分後。
辺り一面がとぐろを巻いた雲になったところで、飽きてしまった。
「触れる雲ですぜ」
「そうだな。この形にする必要あったか?」
「あの入道雲の先見たら帰るか……」
「なあロイド、この形にする必要あったか?なあ」
聞いてないのか聞こえてない振りをしているのか、シィズを無視してロイドは入道雲へと歩いていく。
その入道雲の先には、大理石で出来たシンプルな神殿のような建物があった。
その上に足を組んで座る者が一人。
純白の衣に、背から伸びる純白の翼、頭上で燦然と輝く光輪。
それらを併せ持つ、黄金色の長髪を靡かせる青年。
信心深い者ならば、思わず拝んでしまうような光景であった。
「転移は成功してたみたいだな、ロイド」
「あぁ……視線の主だ!」
その主は、手に浮かべた鏡のような物に見入っていた。
何やら小刻みに震えており、その震えは次第に強くなっていく。
その震えはやがて最高潮となり、爆発する。
「……い……」
「い?」
「イーシャたぁん!サリアたあぁん!」
「やはりイーシャたんの歌声こそ至高!サリアたんの演奏も相まって正に神曲!あとイーシャたんのスカートからチラ見する絶対領域!!あぁもう耐えられない!降臨しちゃおうか!?舞い降りちゃおうか!?舞い降りちゃって……!舞い上がっちゃって……!!イーシャたんとサリアたんを……!!!」
ベチャッ
「ふぬあぁ!?」
変態の絶叫はその顔に投げつけられた巻き雲により阻止された。
公共の良俗のため、変態へ巻きぐs巻き雲を投げつけるロイドにシィズにグリモ。
「やめろォ誰だぁ!この私に汚物が如き造形の雲を投げつけるアホはぁ!」
「「「…………」」」
「…………」
少しの沈黙の後、天使は白目を向いて驚愕する。
本来なら有り得ないことなのだ。ここに天使以外がいるのも、加えて人間がいるなど。
「ににに人間だと!?馬鹿な、なぜ生身の人間がこの『天界』に!?」
「おー、やっぱりかぁ」
「だから無間界廊に居る時と同じ感じがしたのか」
「二人とも反応薄いっすね」
「オレは何となく予想ついてたからな」
「グリモ、その天界ってなんだ?」
「天界てのは、神聖魔術を授ける神の御使いが住まう世界って話ですぜ。んで多分あのアホが……」
「アホ?誰に向かって言っている……」
「頭が高いぞ人間共!我が名は天使ジリエル!天界64神の忠実なる使徒にして神の御使いである!!ほら、分かったら早く平伏すがいい!」
「急に威厳出してきたなコイツ」
「もはや何もかも手遅れだがな」
特に何も知らなければ、確かに神々しい威厳のあるポーズをキメた。しかし先程の衝撃映像を見せられた後では、文字通り後の祭りであった。
ジリエルはロイドとシィズの冷めた反応にグヌヌと唸っていた。
「それより、貴様ら一体どうやって天界に来た!天界は人間界とは別の次元!たとえ来ようとしても、『次元の壁』が阻むはず!」
「割ったな、オレたち」
「あ〜、アレが『次元の壁』なのか。無間界廊に行く時はシズ兄さんが開けてくれてたけど、なるほどな。アレって割と簡単に突き破れるんだな」
「それはロイド様だけですよ」
「頼むからオレが無間界廊に居る時に影狼で来ないでくれよ?ちゃんとベル使えよ?」
「え〜、こっちの方が楽なのに〜」
「毎度毎度壁をぶち壊してちゃ、シィズの兄貴もたまったもんじゃねぇでしょうよ」
「オイコラァ!私を差し置いて会話に花を咲かせるなぁ!」
「めんどくせぇなコイツ」
これまで終始やかましいジリエルだったが、途端にため息をついて空中に寝転んだ。
「は〜、何が突き破っただ。有り得ん。偶にいるんだ、次元の歪みから迷い込んでくる生者が」
「急にやる気無くしやがったな」
「お前らに威厳を示しても私にな〜んのメリットも無いことに気付いた。可愛い女の子もおらんし」
ジリエルが軽く手を振ると、ロイド達の足元に水溜まりのようなものが浮かび上がる。
シィズが開く『門』のような物だ。
「ほれゲートを開いてやった。そこに入れば地上に帰れる。まあ何処に出るかは神のみぞ知るがなふははは」
「いや〜……俺達、神聖魔術を教えて欲しいんだけど」
「はぁ?」
変態には一歩引くのか、普段より遠慮がちにロイドがジリエルに今回の旨を伝えた。
ジリエルはそれに困惑の声をあげたが、直ぐに馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「ハッ、どうした少年。このジリエル様の神々しさを間近で見て信仰心で頭がやられたかふはは。くるぶしくらいなら舐めさせてやらん事もないぞふはは」
どこまでもつけ上がるこの天使()に、ロイドとシィズは虚無顔で、グリモはキレで対応した。
「いいから教えろや変態天使ぃ!天の御使いは天上で女の子にハァハァ言ってる変質者だって地上で言いふらすぞぉ!?」
「バーカバーカ!貴様らのような者の言葉を信者たちが信じる訳ないだろバーカ!でもゼッテー言いふらすなよ!?」
「じゃあ教えろや糞バカ天使ぃ!」
魔人と天使の争いと考えると割とシリアスにも思えるのだが、言い争いのレベルがいかんせんガキ過ぎた。
言い争いに全く興味のないシィズは九割九分聞き流していたが、グリモが魔人バレしたところで意識を少し会話に向けた。
「成程。確かに私は神聖魔術を授ける事が出来る存在だが、それは私が認めた者だけだ。使役されているとはいえ、魔人を天界に連れ込み、神聖なる領域を汚物塗れにするような者たちに授けるわけ……おい待てなんだコレ。よく見たらどうなっているんだ、いい加減にしろよお前ら」
巻きグソ塗れになっていた天界を見てジリエルが苦言をこぼす。それに関してはシィズも同意するが、コイツもコイツで脳死で巻きグソを作っていたので同罪である。
「は〜……今帰るなら魔人の事は不問にしてやる。三度は言わんぞ。今私はイーシャたん達のライブ鑑賞で忙しいんだ」
「そこをなんとか……」
引き下がらないロイドに面倒くさくなったのか、ジリエルは早速実力行使に出る。
「三度は言わんと言ったはずだぞ」
寝転んだジリエルの背後に3本の極彩色の長剣が現れ、ロイド達目掛けて降り注ぐ。
「兄さん」
「相分かった」
長剣が触れる直前、シィズが魔術を起動する。
三人を囲うように発動した立方体状の結界『界』により、長剣はパリンと音をたてて割れた。
「……成程、只の羊ではないようだな」
「シズ兄さん、俺がやっていいか?神聖魔術は身をもって味わっときたい」
「OK、無理はするなよ」
「戯けた事を……。もはや貴様らにかける慈悲はないぞ、悪魔の子らよ」
「あぁ……それでいい」
途端に真面目な雰囲気となったジリエルは、零度の瞳でロイド達を見つめる。
対してロイドは熱を帯びた視線を向け、戦闘が始まった。
ロイドは当初、ジリエルの神聖魔術を解析するため吸魔の剣を使っていたが、具現化した剣は実体として認識されるため『吸魔』の対象範囲外。
故に、その身を以って確かめることにした。
「もうロイド様……毎度毎度結界ぐらい張れって言ってるのに……」
「結界張ったら魔術を受けれないだろ」
「こんのイカれ兄弟は……!」
「にしてもトレースか、誰の動きだ?」
「ロイド様に『気』の呼吸を教えた、武術家のタオってやつですぜ」
「『気』……あぁ、異国の呼吸術か」
「知ってんですかい?」
「昔、友達に使ってる奴がいてな」
(ジェイドと会った時、魔力とは別にとんでもないエネルギーを纏っているのを感じた。恐らくアレが『気』……ジェイドは無自覚ぽかったけど)
シィズはロイドの魔術をこの前受けたが、3年前と質が少し変化していた。『気』による影響ならば、結界魔術にも応用が効くかもしれない。
「今度ロイドに教えて貰わないとな」
「あぁぁ腕が痛そうなことに……」
「相変わらずだなぁ、ロイド」
「少しは心配しろよ兄貴ぃ!」
「無理はしてないし大丈夫だろ。それより、面白い性質だな。あの『光武』という魔術は」
ジリエルがロイドに飛ばす剣『光武』。先程のロイドとのチャンバラを見る限り、硬度は鋼と同等かそれ以上。
魔力消費のみで生み出せる、使い減りしない鋼の剣。攻撃手段としてはシィズに必要ないが、上手くいけば結界にも転用可能だろう。
「……次は受けを見るのか。さて、どれ程かな」
「あの変態天使、終わった後生きてっかな……」
赤青の巨大な魔力球が、その大きさに見合わない速度で射出される。
着弾した魔術は水蒸気爆発を引き起こし、天界の雲を吹き飛ばす。
舞い起こる水蒸気の中、ジリエルは盾状の『光武』を展開し冷や汗をかいていた。
「この私に、盾まで出させるか!」
「ほぉ……ロイドの魔術を耐えるか」
「アイツも粘んなぁ」
「だが無駄だ!我が『光武』は無敵!! 貴様のような汚れた魔術など……」
ジリエルがイキった台詞を言い終わる前に、ロイドがジリエル目掛けて飛んで行った。
「ハハハ!無敵か!凄いな光武! 兄さんの結界と近いのか!?どれ程無敵か見せてくれ!!」
「えっ、いや〜HAHAHA、それ程でも〜……」
ロイドがギアを上げ、四系統上位魔術を並べる。
さしものジリエルも当たったらヤバいと思ったのか、紙一重で魔術を避ける。
四つの豪速球は地平の彼方まで飛んでいき、何かがひび割れたような音が天界中に響いた。
(じ、『次元の壁』に、ヒビだと!? まさかコイツらが割ったとか言ってたのマジ……いやいや、バカな。これは何かの間違い……)
「おい……」
「!!??」
「なんで避けるんだよ……無敵なんだろ……?」
いつの間にやら背後に転移していたロイドが圧をかける。顔だけは良いジリエルも冷や汗で脂ぎり始めていた。
「フゥン!む、無論光武は無敵!しかし汚れた魔術に触れるのは我慢ならんから避けたまでのこと!それだけだ!」
「無敵……オレの『界』で割れてなかったか……?」
「割れてやしたね、パリーンて」
「そこは兄さんだからな〜。あ、兄さんも撃つぅ?」
「そだな〜、オレも気になるし、一発だけ撃っとくか」
「フッ! そこのちんまい少年は兎も角、ちょっと成長した少年の魔術など、避けるまでもないな!フハハハハ!」
「まーた余計なことを……」
「ハハハッ、いいな。オレも気になっていたんだ。オレの結界が、その無敵に何処まで通用するのか」
「フハハァッ! 結界で攻撃など、何をバカな事を……」
シィズが広げた両掌の上に、こぶし大の『界』が現れる。それから腕を交差し、二つの結界が引き会う。
普通それだけなら、一つの結界がもう一つの内側に入るだけで、何も起こらない。
しかしそれは、二つが違う形、違う位相、違う魔力量であるから発生する現象である。
───二つの結界が全く同じ形、位相、魔力量であった時のみ、特異的な現象が引き起こされる。
淡く光っていた『界』が
不規則に回転する結界はやがて、キューブで構成された魔術門となる。
────刹那、ジリエルの視界は白一色で埋め尽くされた。