転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます   作:苦闘点

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───毎日投稿、完!!───

短い頑張りでしたね。でも!その分今回はいつもよりボリュームあります!色々説明してたら長くなったとか、そういうのありませんから!

では、お楽しみください!
あ、あとアニメ良かったですね。シルファが可愛い。


【第7話】神聖魔術を手に入れます

 

 それは、ロイド達とシィズとの邂逅の晩の事。

 

 

『ロイド様、一体何なんですかい?あの兄貴』

『シズ兄さんか?凄いだろ!あんな結界俺にも作れないからな!』

『それスゲェってもんじゃねえですよ……。マジで、六と七の王子だけ魔力量がアホ過ぎますって……』

 

『あ〜、魔力量ならシズ兄さんのは俺よりはるかに少ないぞ』

『…………ハァ?』

 

 

 寝ぼけた事を言うロイドに、グリモは半目を向ける。

 

 

『またまたまた、何言ってんですか。 今日のドンパチでも、あの兄貴の結界が割れてたの片手で数えられるくらいでしょ? んなとんでも結界をバカスカ出してたんだから、ヤベェ魔力量に決まってんでしょ。 ロイド様が基準だと何でもバグるんだからもぅ……』

 

『いいや、魔力量ならグリモとほぼ同じくらいだ。 普段は纏ってる結界のせいで分かりづらいけどな』

 

『………………マジですかい?』

『マジマジ』

 

 

 

 

□■□■□■□■□■ 

 

 

 

 

 

二重界(にじゅうかい)───

 

───界白(かいびゃく)

 

 

 

 ───シィズの結界魔術。その魔術的な最大の利点は、コストパフォーマンスの良さだ。

 

 通常、一人分の『魔力障壁』を展開するのに必要な魔力量は『火球』約三発分。維持の為には、一分毎に展開と同じだけの魔力量を要する。

 無論、それは最低限の話であり、魔力を込めただけその強度や大きさは向上する。 

 

 

 対して、結界魔術『界』

 

 この魔術は込めた魔力に関わらず、大きさが同じであれば強度は全て変わらない。サイズの調整や操作に必要な魔力も微々たるもの。

 

 ただ強度に関しては、『魔力障壁』とは根本的に外部からの干渉を防ぐ仕組みが違うため、比べようがないかもしれない。

 ロイドの(周囲が大変な事にならない程度に)放った全力の魔術を数発は耐えるというだけで、その凄まじさが分かるだろう。恐らくギザルムの『魔槍』でもほとんど傷つかないだろう。

 

 

 その魔力消費量は……『魔力障壁』の()()()()

 

 詰まるところ、『火球』一発分。

 

 魔術師にとって、初歩の初歩の魔術。それと同じリソースで殆ど最強に近い結界を生み出す事ができる。

 

 『イカレてる』、グリモが聞けばそう言うだろう。

 燃費が良いなんてレベルではない。一から百万を生み出すような、二重詠唱が可愛く見える程の暴挙。それを息をするようにやってのけるシィズは、間違いなくイカレている。

 

 

 さて、これは結界を『守る手段』として使ったときの話。

 一から生み出した百万を、『攻撃の手段』として使ったならどうなるか。

 

 『火球』一発分の魔力量で生み出された『界』は、その内に最上位魔術を優に超える膨大なエネルギーを秘める。

 利便性はないが、エネルギー増殖炉のような効果もあるのだ。

 

 

 二重界──界白(かいびゃく)は、そのエネルギーを掛け合わせる事で偶発的に発生した魔術だ。

 

 擬似二重詠唱の練習中に起こり、その後「全ての要素が全く同じ『界』を全く同じ場所に存在した時」発生するものだと判明した。

 

 同座標に存在する二つの『界』は、互いの存在を主張しあい、遂には自己崩壊を起こす。

 そこで『虚空(こくう)』のように対消滅はせず、純粋なエネルギーに変換される。

 また、崩壊した『界』の術式はかけ合わさったエネルギーにより重なり、擬似的な二重詠唱となる。

 

 

 そうして生まれた魔術門から放たれる力の奔流。正しく世界開闢に等しいエネルギーをその身に向けられたジリエルは…………

 

 

 

「ぴやぁああああああああああああああっっ!!!!」

 

 

「あ、生きてやすぜ」

「直線でしかも一本しか撃ってないからな。まったく、避けたら光武の強度を見れないじゃないか」

 

 

 腐っても『天の御使い』と言うべきか、驚異的な山勘を当てたジリエルは髪を少し掠らせながらも、なんとか避ける事が出来た。

 

 

「んふふー、やっぱりシズ兄さんの魔術は綺麗だな〜」

(これで俺と同じ魔力量とか、やっぱ冗談だろ……)

 

「ハァ゛ーーー!ハァ゛ーーー!な、何なんだ今のは……!」

「おい、無敵なんだろ?避けるまでもないんだろ?ちゃんと受けてくれよ」

 

「フ、フハハ!な、何を言っている!あんな当たる訳がないノーコン魔術など、当たってやるのは私のプライドに反したのだ!当たって欲しくば、せいぜい当たるような魔術を撃つんだな! だから威力はそこそこでいいぞ!分かったか!?」

 

 

 実際、『界白』は扱いが非常に難しい。暴発させるか、今のように真正面にビームを打つかの使い道しかない。

 ほぼ光速に近い速度で放たれるため、それで十分だとも言える。

 

 

「うーんロイド、微妙な結果になった。すまん」

「いやいやぁ?二重界も見れたし俺は満足だぞ?」

「そ、そうか満足か!ならばもういいだろう!大人しく下界に帰るがいい!」

 

「よし!じゃあオレも試してみたい魔術があるんだ!見ててくれ兄さん!」

「お、じゃあお願いしようか」

「よーし、今度は避けられないように………いや

 

 

 ────『避ける』……そんな選択肢は、ない

 

 

 

 

 

 

影狼(かげろう)──

 

 

──『(げき)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ロイドの口から唱えられた呪文束。形成される魔術門は、影狼の転移門の中に重なる。

 いくつもの魔術門は、瞬間転移によりジリエルの周囲へ。

 

 『()()』の瞬間転移、影狼……『撃』。

 対象の内部に物質を無理やりねじ込む、ロイドすら追い詰めた凶悪無比な技。

 

 ギザルムが『魔槍』にて行ったそれは、ロイドが使用することで威力、手数、あらゆる要素で化ける。

 ロイドが持つ膨大な魔術の中から選択し、『術式ごと飛ばす』。最強最悪の初見殺しとして確立した。

 

 

 

「わきゃああああああああああああああっっ!!!!」

 

 

 

 飛ばした数発の『炎烈火球』は大爆発を起こし、巨大なキノコ雲を形作る。

 

 術式を飛ばす位置が遠すぎたのか、またもやジリエルの驚異的な運のおかげか、ジリエルは少し羽を焦がしながらも避けることに成功した。

 

 

「なっ…はぁっ!?何が起き……ハァっ!!??」

 

「あ〜、ちょっと術式を転移させる場所が遠かったか。下手だな〜、結局避けられてるじゃないか」

「ふむ……術式の『転送』と『発動』の間隔が大きいんじゃないか? 」

「なるほど!ありがとうシズ兄さん!今度は転送と発動をほぼ同じタイミングで……」

 

「その……ロイド様?シィズの兄貴?そこまでしたら、流石にアイツも可哀想っつ〜か、死んじゃうっつ〜か……」

 

 

 血も涙もなく魔術の練習をし始めている兄弟に、流石に気の毒になってきたグリモが進言する。

 

 

「いやいや、アイツの『光武』は無敵なんだろ?なら大丈夫だろ」

「そうそう!無敵なんだから!あの程度で壊れるもんか!」

「いやそれ多分アイツがイキってるだけ……」

「……ま、安心しろグリモ。お前の思ってるような使い方はしないよ。

 

 

 ───ジェイドの力を、悪用なんてするものか」

 

 

 ロイドの言葉に、グリモは杞憂だったと安心する。

 

 

「…………」

 

 

 もう一度影狼を構えるロイドを見ながら、シィズは思う。

 

 シィズがジェイドと共にした時間は、決して長くは無い。戦っている所も見た事はない。

 それでも何故か………二人の姿を重ねてしまう。

 

 二人が出逢っていたら、きっと………

 

 

(……いや、無いものねだりは仕方ないな)

 

 

 ジェイドの意思はロイドが継いだ。それでいい。

 

 

「どうかしましたかい?シィズの兄貴」

「……いいや、何でも」

 

「ふはははははっ! どうした攻撃してこないな!ようやく恐れを成したか!その首貰ったぞ、悪魔の子よぉ!」

 

 

 攻撃が止んだ事で調子に乗ったジリエルが迫り来るが、ロイドはまだ撃たない。

 

 『転送』=『発動』を為すために術式の発動、爆弾の導火線ギリギリまで対象を引き付けて……

 

 

飛ばす(ココだ)

 

「ちょっ、早っ……」

 

 

 限りなくタイミングがイコールになった『撃』は、ジリエルに避けるという選択肢を取り払った。

 咄嗟に『光武』で身を守ったものの、その『光武』はバキャッと音をたてて割れていた。

 

 

「ぐわあああつ!!」

 

(( バキャ……?? ))

「ジリエル〜!ロイド様もシィズの兄貴も、命まで取る気はねえんだ!イキってねえで、とっとと神聖魔術を教えろ〜!」

 

「くっ……なんのっ……これ、しき!!」

 

 

 吹っ飛ばされたジリエルは空中で旋回し、翼までも含む全身を『光武』で覆う。

 

 

「たとえ何度砕けようと光武は無限!!何度でも甦るのだ!」

「「無限!?」」

「バッカ!お前はまたそうやってイキる!」

 

「凄いな光武!どれくらい無限に修復できるのかな〜……」

「無限か……それはオレも気になるな……!」

 

「え!?いや、あの……ふ、フゥン!それ程でもないぞ、いやホント! そ、そうだ!今日は私は気分がいいのだ!特別に見逃してやろうではないか!あと特別にサインも書いて足も舐めさせて……」

 

 

 

 

影狼(かげろう)──『(げき)

 

 

滝烈水球(ろうれつすいきゅう) × 斬烈風球(ざんれつふうきゅう)

擬似二重詠唱 ──『旋嵐牙球(せんらんがきゅう)

 

 

 

 

 

 

 

 今度こそ逃げ場がないよう、術式を飛ばした転移門と、術式を封じた『界』がジリエルの周囲に出現する。

 

 

「わあああ嘘嘘ホントは有g

 

ぎゃあああああああああああああああああっっ!!!!」

 

 

 その轟音は、瞬く間にジリエルの悲鳴をかき消した。

 

 

 

 

□■□■□■□■□■

 

 

 

 

()う…… )

 

「ジリエル薄くなっちゃったな」

「コイツも魔人みたいに魔力体なのか?」

「その通り。本来肉体を持たない俺やコイツは、魔力を使い過ぎると存在が希薄になっちまうんスよ」

 

 

 ロイドとシィズの魔術を、光武をバキバキ砕きながら耐えたジリエルだったがそのせいで薄くなってしまっていた。

 『光武』は無敵でも無限でもなく、ただ魔力消費で鋼の武装を具現化させるものだ。そうなるのも当然であった。

 

 

「良い勝負だったな……だがこれでお前らが神聖魔術を得ることは無くなったのだ……神聖魔術って何だったんだろうとモヤモヤしながらこの先生きていくがいい……バーカバーカ

 

 バァあばばばばばばばば」

 

 

 捨て台詞を吐いて死に逃げしようとしたジリエルだったが、ロイドから分けられた魔力により存在の透明度が下がった。

 ロイドから魔力を渡し終え、気持ちも落ち着いたらしいジリエルは言った。

 

 

「少年ら……ロイドにシィズと言ったな(デブーン)」

「太ったなコイツ」

「あげ過ぎですぜ魔力」

「グリモも太るのかな?」

 

「……フッ……よかろう。お前たちに、神聖魔術を授けよう!」

 

 

 ロイドがグリモをデブらせていると、ジリエルがさっきまでの対応が嘘のように神聖魔術を教えるのを快諾した。

 ロイドとシィズが顔を輝かせながら、ジリエルは説明を始めた。

 

 

「神聖魔術を授けるには、まず私と契約を結ぶ必要がある。どちらでもいいから手を出してみろ」

「どっちがやろうか」

「ジャンケンで決めよっか!」

「よし、ジャーンケーン……ポン!」

「あ〜!負けた〜」

「じゃあオレからだな」

 

「では……」

 

 

 微笑ましい兄弟のやりとりだったが、ジリエルの思惑は別。神の御使いらしく契約をしようとしているが、その心中は信者にはとても聞かせられない内容だった。

 

 

(フゥゥゥゥン!! この愚者共めがぁ!まだ勝負は終わっていないのだよぉ!!

 あれ程の魔術を使うなど、この少年達は人間とは思えない程の魔力を有している!そして何よりこのあどけない容姿!兄の方というのもちょうどいい!兄が一度見せたあの砲撃!アレが使えるなら誰も逆らえまい……!体感こっちの方が魔力量が少ないのが気がかりだが、些細なことだ!これは私が地上に降りる絶好の機会!天使である私は天界から出られないが、契約と見せかけて体を乗っ取ってしまえば……フハハ!あと魔人が一緒というのもいい!何をしても魔人のせいにすればいいのだからなぁ!天界での生活も飽き飽きしていたし、これ程都合の良い事もあるまいよ!地上に行けばイーシャたん然りサリアたん然り、沢山の地上の推しに生!で会えるしなぁ!ぬっふふふふふ……天界では遠くから見ることしか出来なかったが、これからはすぐ近くで吐き出した二酸化炭素を間接摂取し、体温まで感じ……あわよくばt……手とか、握れちゃったりして……ふへ ふふふふへへへへ……)

 

 

(……コイツ……)

(光栄に思え少年( 兄 )!その体、私が使ってやろう!)

 

 

 ブヒー!という謎の掛け声と共に、ジリエルはシィズの中に入り込もうとする。

 

 

 ……………………

 

 

「フハハ!手に入れたぞ最高の肉体!来たぞ私の時だ……

 

 ってなんじゃこりゃあああぁぁ!!」

 

 

 声が発せられたのは、ジリエルが乗っ取ったシィズの口からではなく、シィズがかざした右手からだった。

 

 

「なんだこれはァ!?一歩も中に入り込め……」

「中?何しようとしてたんだお前」

「えっ!?い、いやぁそのぉ……」

 

「あ〜兄さんの『流動結界』に阻まれたんだな」

「『流動結界』?何ですかいそれ?」

 

「兄さんは『界』の形を意図的に崩した『流動結界』ってのを常に体内で循環させてるんだ。一見生身のように見えても実際は薄皮一枚しか切れないし、身体能力も気術ありの俺と同じくらいに向上する」

「バケモンの兄もバケモンかよ……。つかやっぱ魔力量もスゲエでしょこれ……」

 

 

 普段シィズの体表を覆う結界とは別に、体内を循環する『流動結界』。防御力や隔絶性は多少落ちるが、それでもジリエルを弾くのには十分であった。

 

 

(くっ……深部に入ろうとしても何か川の様なものに受け流される……!どうなっているのだコイツは……!)

「で、契約はもう済んだのか?」

「えっ、あ、あぁ……」

 

「神聖魔術の使用条件は、天使の手で魂に術式を刻むこと。そして歌や舞などで天使とパスを通すことだ」

「やっぱり一々歌ったりとかしないとダメなのか?」

「でもジリエルは普通に使っていたな」

 

「いや、私が手にいるからパスは常に通っている状態だ。魂に直接問いかけてみたまえ、自然に使い方が分かるだろう」

「魂に……」

 

 

 目を閉じ、自分の内側を強く意識する。

 すると、ステンドグラスのような幾何学模様が頭……いや魂を駆け抜ける。

 

 

「どうだ?兄さん」

「……あぁ、これがロイドが言っていた幾何学模様の魔術言語か。凄いな、意味は分からないが理解は出来た。少し気持ち悪いがな」

「いいなー!俺も体験してみたいな〜」

「そう急かすな。ジリエル、ロイドの手にも移ってやってくれないか?」

「えっ!?い、いいのか……!?」

(しめた!兄の方には入れなかったが弟の方には……!)

 

 

 シィズがダメでもロイドなら、そう浅はかな考えでジリエルは再び手に入る。

 結果は、同じくだった。

 

 

「なああああ!!やっぱり入れんんん!!」

「ブハハハハ!当てが外れたなぁ糞天使ぃ!ロイド様の魔力密度は尋常じゃねえんだよぉ!お前なんぞ薄皮一枚が関の山だなぁ!」

「何をぉこの豚ぁ!」

 

「おぉぉ!ホントだ!読めないのに分かる!理屈じゃなくて心で理解したのか……素晴らしいな神聖魔術」

「この感じなら、発動も速そうだな。結界にも応用出来そうだ」

 

 

 魔人と天使が口汚く罵り会う中、ふとロイドが少し寂しそうな顔をした。

 

 

「でも……少し残念だ。こんなに簡単に会得してしまって」

「残念?何を言うか少年、簡単に得られて良かったことではないか!」

 

「……気持ちは分からないでもないな。会得の過程もまた、魔術の醍醐味だからな」

「あぁ……現象を表面だけでなく一つ一つの論理を追求して……魔術書を穴が空くほど読み返して……。何でこうなったんだ、だからそうなのか!って、謎々を解いてるみたいな感じで……」

 

 

 ロイドと違い、シィズは結界に特化した魔術師だ。けれど、極める過程で様々な魔術書を読み漁った。

 何より、前世では読める全ての魔術書を読んだと言っても差し支えない。

 シィズはロイドの言っていることを理解できる、数少ない者だ。

 

 

「そうしてるとたまに、術式の先にそれを開発した人の顔が見えたり……な?」

「そうそう!だから……その、そういうのも嫌いじゃないんだ……俺は。……さ!早速やってみよう!」

 

 

 少し恥ずかしそうにそう言うロイドに、ジリエルは己の勘違いに気がついた。

 ロイドは純粋なのだ。急に天界に現れた時は何を企んでいるのかと思ったが、その心に嘘偽りなどなかった。

 

 ロイドが『光武』を発動させ、一本の剣を具現化させ、そのまま魔力を込め続ける。

 その様子を見ながら、シィズは思う。

 

 神聖魔術を得た事で、ロイドは更に手に負えなくなった。恐らく、『界』を破る手段もまた編み出してくるだろう。

 物心つく前から魔術が大好きだった弟。兄として、分野違いと言え同じ魔術の探求者として、そのゆく道は間近で見てきた。

 

 

(……だからかな。少し、対抗心というか……大人気ないのは分かってるんだけどな)

 

 

 あの日、三年ぶりに会った時、ロイドの成長を見た。

 その中で、シィズに芽生えた対抗心。弟にかっこ悪いとこは見せられないという気持ち。

 

 

 ロイドの───剣としての原型を留めず肥大し、脊椎のような触手まで出て、空を覆う程の大きさとなった光武を眺め、シィズは改めて決意した。

 

 

「───オレも負けてられないな!」

 

「なあぁぁに言ってんだああぁこんの能天気アニキイイイィィィィ!!!!」

「わ゛ああああああ!!ナニコレ怖いぃ!コレが光武うぅ!!??んな訳無いだろおおお!!??」

 

 

 天界を埋め尽くす程に巨大化した『光武』は、未だ重重しい生物音をたてながらその全長を伸ばしていく。

 

 

「ろろろロイド様ぁ!これやめてぇ!コレの何処が剣なんすかァ!!」

「え〜まだ途中なのに〜」

「これ途中!?まだ途中!?」

「お、あそこで人型みたいなの見えたぞ。子どもっぽいのもいたな」

「アンタもアンタなんだよぉ!早くテメェのイカれた弟止めやがれやイカレアニキぃ!!」

 

 

 『光武』は使用者の魔力量や性質によって形を変える。ロイドの深淵よりも深い魔力量で際限なく魔力を送り続けると、こんな深淵(アビス)の化身になるのも無理はなかった。

 

 

「は!よく見れば大天使の八翼が如き神々しさ!」

「どう見ても八枚以上あんだろうがぁ!何が大天使じゃいい加減にしろよ糞アホ天使いぃ!!」

 

「これは天命!少年!いやロイド様!是非ともこのジリエルめを御同行させて頂きたい!」

「いいよ」

「うっせぇ来んじゃねええ!テメェはそれよりこのバケモンをなんとかしろおお!!」

「バケモンてロイドの事か?それともこの光武か?」

「テメェ全部分かってんじゃねえかイイ性格してんなぁ!!!??」

 

 

 こうして、ロイド達の天界探訪は終わりを迎えた。

 




【次回予告】


「神聖魔術を手に入れたオレとロイド。これでまた新しい可能性が開けたし、ロイドも嬉しそうで何よりだな!」

次回 【第8話】知らないメイドがいました

君は魔術の深淵を目撃する



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