転生したら第六王子だったので、一つの魔術を極めます   作:苦闘点

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感想、大変励みになっております!たまに見返してニマニマしております!
また誤字報告もありがとうございます!私の目が節穴なので大変助かってます!

今回は、人気投票二連覇のあのキャラが遂に登場です!


【第8話】知らないメイドがいました

 ロイドの光武も引っ込め、4人は天界を去ろうとしていた。

 

 

「それじゃ帰るか!」

「座標はバビロンか?」

「そだなー……よし捕捉した」

「お二人は何を言っているんだ……?」

「テメェもすぐに慣れるよ」

 

 

 ロイドが指をパチンと鳴らし、また『次元の壁』を突き破って転移する。

 転移した先は、教会の中庭だった。

 

 

「ん?」

 

 

 その場にいたのは、バビロンにレン、とても怯えた様子のシロ。

 そして、背を向けた長身白髪の神父。

 

 

「何でお前たち外にいるんだ?演奏会は?」

「ロイドこそ!今まで何処に……」

「…………」

 

 

 バビロン達の元へ行く際に、神父とすれ違った。

 特には何も無く、ロイドとシィズは二人の元へ合流する。

 ロイドが来るや否や、シロがガバッと飛びつく。

 

 

「おおっ!なんだなんだシロ!寂しかったのか?」

(シロ羨ましい……)

 

「……バビロン」

「っ……はい」

「一応、聞かせてくれよ?」

「……勘違いかもしれませんよ」

「いい。お前の勘は信用してるからな。ロイドもそう言うさ」

「会ってそんなに日も経ってないでしょうに」

 

 

 シィズとバビロンはロイド達に聞こえないよう話す。

 そして一向は、薔薇の匂い……に隠された死臭漂う中庭を後にした。

 

 そしてその後、ロイドとレンは教会を辞めた。一日の入信だった。

 

 

 

 

□■□■□■□■□■

 

 

 

 

 演奏会から数日、ロイドはロードスト組へ神聖魔術を会得させに行き、シィズはロイドの部屋でゴロゴロしていた。

 

 

「ヒマだな〜」

(似てんな……)「一緒に行けばよかったじゃねえですか、ロードスト」

「午前にアルベルト兄さんに呼ばれてな。それもすぐ終わったし。グリモこそ何でココにいるんだ?」

「アンタが言ったんだろ『一人だとつまんないから貸して』って……」

「ああ、そうだったな。すまん」

「もうアンタの扱い雑にしてもいい気がしてきたぜ……!」

 

 

 気まますぎるシィズにロイドの面影を感じつつ、グリモは額に青筋を浮かばせる。

 

 

「つか、自分の部屋行きゃあいいじゃねえですか。何でわざわざロイド様の部屋に?」

「五年間一度も誰も入らせてない部屋だぞ?無事に入れると思うか?」

「そんなに引きこもり設定貫けるのもスゲェよ」

「口利きしてくれたロイドに感謝だな」

 

 

 『門』を開いて行ってもいいが、いつアルベルトが探しに来るか分からない。午前は一緒にいたのだから、午後に急にいなくなるのも不自然だ。

 よって、シィズはロイドの部屋でダラダラしていた。グリモも木形代の掃除を終えてダラダラしていた。

 そこでふと、グリモが何かを思い出したように顔を上げた。

 

 

「あっ、ヤッベ……」

「? どうした?」

「今日はあのメイドが……」

 

 

 グリモが冷や汗をかいていたところ、ドアがコンコンとノックされた。

 特に断る理由もないので、シィズは中に入るよう促そうとする。その口をグリモが慌てて塞いだ。

 

 

「む!?」

「(やめてくだせえ!今は静かに!)」

むごご(なんだ)むむむごむごむご(断る理由ないだろ)

「(あるんスよ俺には!ゼッテー開けたくねえ理由が!)」

 

『───ロイド様?どうかされましたか?』

 

「? むご(おい)むごごむむむごご(木形代に入った方がいいんじゃないか?)

「(死んでも御免だわ!あんな思い二度と……)」

 

『何か御座いましたか?開けますよ!』

 

「!? 〜〜な、南無三!!」

「うおっ!?グリモどうした?」

 

「───失礼致しますロイド様!お体になに、か……」

 

 

 グリモはシィズの手のひらに飛び込み、部屋はシィズだけになっていた。

 そこに入ってきた、一人のメイド。

 

 煌めく銀髪を長いポニーテールにし、その格好に似つかわしくない二本の長剣を腰に携えたメイド、シルファ。

 

 部屋に突入したシルファはロイドを心配した様子だったが、部屋の中にいたシィズを発見し、その顔の温度を急降下させる。

 絶対零度の真顔となったシルファは、目にも止まらぬ速さで抜刀する。

 

 

「っ!!」

 

 

 『流動結界』により身体能力を上げているシィズは、その動きにギリギリ反応し、首に向けられた刃を届く寸前で指先で止めた。

 

 

(っんでコイツは俺がいる方の手で止めてんだあああっ!!?)

 

「……穏やかじゃないな、いきなり首いくか?」

「侵入者には手緩いくらいでしょう。誰ですか貴方は」

「それはこっちのセリフなんだがな。ロイドと特別仲の良いメイドなんてオレは知らんぞ」

「私を知らないなど……ますます怪しいですね」

 

(ぎゃあああああ!!押し込まれてるぅ!おいコラ早く剣弾けやクソ兄貴イィィ!!)

 

 

 弾きたくとも弾けないのだ。力が強すぎる。

 シルファの細腕から振るわれる膂力に冷や汗を垂らし、シィズはこれからどうするか思案する。

 

 

(オレが引きこもった後に来たメイドか? それにしても物騒過ぎ……)

 

 

 そこで思考が止まった。

 一瞬にして、視界に青空が映っていたからだ。

 コンマ数秒の思考放棄からなんとか脱し、シィズは状況を再確認した。

 

 

(吹き飛ばされた!?『流動結界』で強化されたオレを!?)

「魔術ですか……厄介ですね」

 

 

 シィズは換気のために開けていた窓から放り出されていた。結界のおかげでダメージはないが、恐らく腹に蹴りでも食らったのだろう。シィズが反応出来ない速度で。

 シルファは二本目の剣を抜き、窓から飛び降りる。

 

 

「───ラングリス流双剣術……」

(防いでくだせえ!)

「言われずともだ」

 

───(くだ)飛鳥(ひちょう)───

 

 

 双剣から放たれた強烈な斬り下しを、『界』により防ぐ。空中の二人はそのまま睨み合い、噴水のある中庭に降り立った。

 

 

(手応えが無かった……まるで不動の壁を叩いているような感触)

(一つ一つの斬撃が重いな。『界』で防ぐことはできるが、さてどうするか……)

 

(シィズの兄貴……早くロイド様の兄貴って事言ってくだせえよ……)

(ハハハ、いいじゃないか。大方、オレが引きこもった後に就任したロイドの世話係か何かだろう?)

(その通りッスよ!だから早く説明を……!)

「───けどそれは、つまらないだろう?」

 

 

 このメイドは恐らく、純粋な肉弾戦なら超軟体を駆使するバビロンより強いだろう。もしかしたら、身体強化を使ったロイドにも食らいつけるかもしれない。

 

 シィズはその力に興味が湧いた。

 ちょうど、試してみたい魔術もあるし。

 

 

具現化系神聖魔術

───『 光武』 ───

 

 

 シィズの手に、鮮やかな色彩の直刀が現れる。

 先日手に入れた神聖魔術による武器の具現化。

 

 更に身体能力を底上げするため、とある細工を施す。

 

 

結界魔術

──『流動結界・迅』──

 

 

 常時体内を巡る『流動結界』。その循環速度の上限を上げ加速させる、『流動結界・迅』。

 

 

(弾き出されるなよグリモ!)

(あぁばばばばばば)

 

「……それで、自分が何者か言う気になりましたか?」

「そうだな〜……オレを倒せたら教えてやろうか」

「……それが答えですか」

「その通、り!」

 

 

 居合の構えから解き放たれる、突進の一撃。庭の床石が抉れる程の脚力を以て放たれたそれは、シルファにより難なく受け流される。

 

 

(速い……!それにあの剣、一体何処から……)

(今のを弾くか!一発狙うのは諦めた方がいいな!)

「今日はロイド様も帰ってきますし、手早く済ませましょう」

 

 

ラングリス流双剣術

──二虎双牙──

 

 

 お返しとばかりに放たれる突進技。標的を抉り飛ばすための剣技がシィズに向けられるが、それを何とか紙一重で捌き切る。多少薄皮は切れたが、やはり大したダメージは無い。

 

 

(捌いた!?私の技を……!)

(ズルありとは言え、シルファの技を受け切るなんて……!剣術までヤベェのかこの人は……)

 

「うーん、やっぱり剣を握るのは久しぶりだからな。少し(なま)ったか」

 

 

 斬れた腕を修復しながらシィズは笑う。

 シルファは警戒心を強め、シィズは久々のチャンバラを楽しみ始めていた。

 

 シィズは速攻をきめれば流される、シルファは技を放てば捌かれる。

 ならば───

 

 

「我慢比べといこうか / いきましょうか」

 

 

 二人は距離を最大限詰め、超接近戦に持ち込んだ。

 双剣のシルファに優位をとるため、シィズも光武でもう一本剣を作成。これで手数では並んだ。

 次にリーチの差。身長は『浮遊』で確保。刀身の長さは光武でどうとでもなる。

 身体能力では『流動結界・迅』により、シィズがかなりの優位に立っていた。

 

 あとは………技術の差。

 

 

(ちっ……!)

(ひええええ!スレスレェ!!)

 

 

 目にも止まらぬ攻防の中、シルファの剣がシィズの喉元を掠った。

 前世よりその剣の才は健在だと言っても、シィズはシィズとして生まれてからの13年間、一度も剣を握っていない。あくまで本業は魔術師だ。 

 対してシルファ。物心つく前から剣を握っている、正真正銘の剣士。小手先の技術では到底通用しない。身体能力の劣位など物ともせず、シィズを追い詰めていた。

 

 

(どうするんですかい!このままじゃ、ジリ貧のジリエルになって負けちまいますぜ!)

(そうだな……一旦離れる!)

 

 

 仕切り直しを図り、シィズは後ろに跳んだ。

 だがそれは、シルファにとっては大き過ぎる隙だった。

 

 

「ラングリス流双剣術───」

「あっ、マズ───」

 

   ──獅子咆………

 

 

「ストオオォォォップ!!!」

「「「!!??」」」

 

 

 シルファが放った技がシィズに直撃する寸前、何者かがその間に入って止めた。

 低身長で褐色のメイド……レンだ。

 

 

「二人とも何してるんですか……!庭も大変なことになってるし!」

「庭?ああ、技受けた時に弾いたのが当たったのかぁ。すまん!」

「貴方こそ何をしているのですか。賊を庇うなどと……」

 

 

 シルファのその言葉に、レンが頭に疑問符を浮かべる。

 

 

「賊?……シルファさん、賊ってもしかして……」

「えぇ、そこにいるロイド様のお部屋に不法侵入した賊です」

「どうも賊です」

(アンタは黙っとけ)

 

「ええっと……シルファさん、シィズさんは第六王子様で……ロイドのお兄ちゃんで……」

「そういうわけだ、すまんなシルファ」

「…………??」

 

 

 今度はシルファが頭に疑問符を浮かべ、ゆっくりとシィズを見る。

 ニッコリとこちらを見返す顔を見て……ふと、昨日アルベルトが話した事を思い出した。

 

 

『実はなぁ!最近引きこもってた弟がやっと部屋から出てきてくれてなぁ!』

『はぁ……』

『僕の弟だしぃ!ロイドの兄だしぃ!とっても優秀で良い子だから、シルファも仲良くしてやってくれ!』

『はぁ……』

 

 

 アルベルトがやけにテンションが高くて気持ち悪かったのと、ロイドがいなくてやる気が著しく落ちていたので、すっかり忘れてしまっていた。

 思い出すと同時に、自分が色々とマズイ事を口走っていたのも思い出した。

 戦闘とは違う意味での冷や汗をかき、申し訳なさそうに頭を下げた。

 

 

「……申し訳ございませんでした……。度重なる非礼を……」

「いやいや、オレだって黙ってたしな。お互い様だよ」

「そう言って頂けると嬉しいのですが……」

 

「それに……楽しかったろ?」

「っ…………」

「え? え?どういう事?」

「シルファも剣士って事だよ」

 

 

 最後の接近戦の際、一瞬だけ見えたシルファの顔。

 

 

「良い笑顔だったぞ。オレも楽しかったから、今度気が向いたらまたやろうか」

「笑ってなどいません!」

「え、シルファさん笑ってたの?」

「ですから笑ってなどいません!貴方は早く持ち場に戻りなさい!」

 

 

 ロイドに仕えるようになってから、その牙を見せる事はなかったが……自分の全力をぶつけてみたくなったのは、シルファの偽らざる本心だった。

 

 

「あ、シルファ暇か?」

「え、ええ。特に用はありませんが」

「だったら、お前が見てきたロイドの事を教えてくれないか?ちょうど入れ違いだったっぽいからな」

「……ふふ。では、私が知らないロイド様の事も教えて頂いても宜しいでしょうか」

「あ〜〜〜まあ言える範囲でならな」

 

(…………もうシィズの兄貴に敬語使うのやめよっかな……)

 

 

 

 

□■□■□■□■□■

 

 

 

 

「(ほああああああなななな何というロイド様の好感度!そして超絶麗しき白銀のメイド!何よりおp…おっ……おpおpお「せいやっ」ぷべらぁ!!)」

「? 今なにか声が……」

「「気のせいじゃないか?」」

 

「にしてもそっか〜、そんな事があったのか〜」

「お恥ずかしい限りです……」

「いや〜、ロイドがいなくても面白いことはあるんだな〜」

 

 

 日は暮れ、ロードストから戻ってきたロイドは部屋にいたシィズとシルファの二人と話していた。

 そこでベッドでシロをモフっていたロイドは、思い出したように二人に言った。

 

 

「そうだ二人とも、明後日辺り暇だったら、一緒にグール退治に行かないか?」

「……」

「あれ?シルファ?」

 

 

 シルファは返事もせず部屋から出ていき、何やらガタゴトという音が聞こえる。

 そしてこちらに走ってくる足音が聞こえたかと思うと、シルファが扉を勢いよく開け放った。

 

 

「暇です!!!(フンス!)」

 

 

 今の一瞬で準備してきたのか、鞄まで持って今すぐ行ける態勢に整えたシルファに、シィズは面白いなぁと改めて思った。

 

 

「そ、そうか。シズ兄さんはどうだ?」

「悪いが、オレはパス」

「え〜、練習に付き合って欲しかったのに〜」

 

「(何かあるんですかい?)」

「(……ロイドの尻拭いを手伝いに行こっかなって)」

「(あ〜……)」

 

 

 

 ───その次の日の朝。

 

 

「──ということで、ロイドと入れ替わりで入信する事になったシィズだ。よろしく頼む」

「……頼むから何も起こさないでくれ……」

「その尻拭いの意味も兼ねてるから、神父はそんな縋るような目で見なくても安心しろ」

 

 

 歓迎するシスター達に挨拶しながら、シィズは奥の方で顔を引き攣らせているバビロンの元へと向かった。

 

 

「……別にシィズさんまで来ずとも、私一人で問題はありませんよ」

「気にするな。オレも気になったからな、お前の言うデカ神父。ま、お前の胃がやられてないかの心配もあるがな」

「……アンタは非常識なのか常識人なのか、全然分からないな……。胃がやられる事については同意しますが」

 

「あ!バビロンさんもうシィズ君と仲良くなってるんですね!あ、でもロイド君のお付きならもう知り合いですか?よろしくお願いしますね、シィズ君!」

「……コレとか」

「心中察するよ」

「え?どうしましたか?」

 

 

 根明のイーシャは、長年影に生きてきたバビロンには些か眩し過ぎたのであった。




次回予告


「……グリモでさぁ。最初っからやべえ奴だとは思ってたけど、見境が無い分第六の方が手に負えねえんじゃねえかって思ってきたぜ……。いやロイド様も大概だけど」

次回 【第9話】パンケーキを食べに行きます?

君は魔術の深淵を目撃する



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