戦犯勇者の弟妹   作:アニッキーブラッザー

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第14話 踏ん切りがついた

 兄さんが死に、姉さんが死に、故郷の奴ら全員に殺意を向けられた悪夢から、俺はまだ目が覚めてていないのか?

 全部が夢ならどれだけ……

 

「何を……言ってやがるんだ……お前は……」

 

 アルナとヴァジナの親父の話だけで充分衝撃だったのに、これはそれ以上だった。

 

「兄さんを消すために……帝国が……加担した……だと?」

 

 恐怖に怯えながらビトレイが話す全ての真実。

 

「そうだ! 俺たちは唆され……あ、いや、そう、逆らえなかったんだ! 俺だって本当はこんなことしたくなかったのさ! だけど、帝国がいきなりそんなこと言いだすものだから……」

 

 キハクとの戦争で、兄さんが大敗するように帝国が工作した。

 

 

「そう、加担なんてものではない。帝国こそが全ての黒幕だったんだよ、エルセ!」

 

 

 将校たちをドサクサに紛れて暗殺し、軍の機能を殺した。

 兄さんが仮にキハクに討たれなかったとしても、大敗した責任を取らせ……どっちにしろ処刑することになっていた? 

 ナンダソレハ?

 

「ま、待ってください、ビトレイ様! で、では……では私の父上は戦死したのではなく……」

 

 そのとき声を上げたのはストレイア。

 そう、あの戦でストレイアの父親も死んでいる。

 すると、ビトレイは……

 

「そ、そうだ……全て帝国がやったのだ!」

「ッ!? そ、そんな……」

 

 そのショックはストレイアだけではない。

 民衆も、そして俺がぶちのめした騎士団連中も身体を起こして呆然としている。

 

「ちょ、ちょっと……そ、それって……それじゃあ、テラさんが大敗したのって……」

「そうだ、アルナよ! 全ては帝国の仕業だ! 俺は何も悪くな――――」

 

 アルナたちもまた更なるショックを受けている。

 だってそうだろ?

 仮に、兄さんが大敗したことで、多くの戦死者が出てとかで、その恨みを俺やジェニに……そこからまた話が変わってくる。

 そもそも兄さんが大敗するように、本来味方であるはずの帝国が……人間が……

 

 

「あなた……それなら、そんなことを帝国に提案されて、それを受け入れて、全てテラさんの所為にして、それをエルセとジェニにまで押し付けようとしたってこと!?」

 

「あ……え……あ、そ、それは……」

 

 

 アルナの言う通りだ……つまり、兄さんはそんな内側からの策謀で?

 さらにその上で、オッサンや民たちを使って世論を煽って俺たちを?

 しどろもどろになって慌てるビトレイの様子から、全て本当のことだってことか?

 

 

「だ、だって、いや、あ、う……ち、違う! も、元々テラなんて下級国民の分際で……あ、いや、違う、そう、俺は逆らえなくて―――」

 

「ふ……ふっざけんぁ!」

 

「ぽぎゃっ!?」

 

 

 そして、アルナはビトレイを殴った。

 力いっぱい拳が腫れるほど。

 ただでさえ俺に殴られたことで無残な顔面だったビトレイが余計に潰れる。

 そして……

 

 

「ば、あ、アルナ! お、お前は、ビ、ビトレイ様に何を……じ、次期国王様に―――」

 

「もう、黙って……『あなた』は……黙ってください」

 

「え、ヴァジナ……何を! 親であるワシに向かって、そんな他人のような――――ばぎゃっ!?」

 

 

 慌てるおっさんを娘のヴァジナが思いっきりビンタした。

 そして二人は涙目に、そして顔を青くして絶望しているストレイアも前に出て俺に向かって……

 

「私は……なんてことを……そんなことがあったなんて知らずに……え、エルセ……ご、ごめ―――」

「エルセくん……あ、謝っても許されないのは分かっていますが―――」

「エルセ殿、わ、私は――――」

 

 そして、そんな真実があったのに、俺たちに対してしてしまったことを改めて後悔したのかアルナもヴァジナもストレイアも……

 

 

「うるせえよ、クソ女共。もう二度と話しかけるなって言っただろうが」

 

「「「ッ!!??」」」

 

「どんな真実があろうとゴメンじゃ済ませられねえから、俺は今ここに居るんだろうが」

 

 

 だが、もうそれはどうでもいいことだった。

 

「で、では、ワシらは……」

「あ……」

「そ、それなら、主人が死んだのも……」

「テラの……いや、テラくんの所為じゃなくて、全部帝国と、こいつらの所為じゃねえか!」

「い、いや、で、でもそんなこと……ほ、本当なのか? だって……いくら帝国でもそんなこと……」

「ああ……ひょっとして魔王軍の罠なんじゃねえか?!」

 

 そして、民衆や騎士団連中にも動揺が走る。

 それは誰もが考えたことのなかった、人間同士の陰謀で、むしろ魔王軍の策略だったのではという声まで聞こえる。

 

「そうだ、その方が納得だ! つまり、全ては魔王軍の――――」

 

 しかし、その時だった。

 

 

「大変失礼です! 私たちはそのようなことはしません! 戦争が綺麗ごとでは通じないのは承知しておりますが、それでも誇りを損なうようなことはしません!」

 

「もちろんです、姫様」

 

―――――――ッッ!!!???

 

 

 あら? 俺も驚いた。

 

「だ、誰だ!?」

「こ、こいつら、ま、魔族!?」

「バカな、何で魔族がここに!?」

 

 高みの見物してもらうはずだったこいつらが、気づいたら俺の合図も待たずにこの場まで降りて来てやがった。

 

「エルお兄ちゃん!」

「ジェニ……ったく……何のつもりだ、クローナ。キハク」

「ごめんなさい、エルセ。ただ、と~~~っても気になるお話でしたので。ね? キハク」

「ええ。そして、今の話を聞いて、ずっと引っかかっていたあの大戦……テラの軍の動きの違和感……その辻褄が合いました」

 

 そういえば、キハクは言っていたな。

 兄さんとの戦争で疑問があったことを。

 確かに、魔王軍がやったのではと疑いたくなる気持ちもあるが……

 

「キ、キハク!? それって、六煉獄将の、あのキハク!? う、嘘だろ!?」

「それに、クローナって……お、おい!? ま、まさか、え? そ、そんな……」

「何でエルセとジェニがそんな奴らと一緒に……」

「二人とも……ま、まさか人類を裏切って、魔族に!?」

「バカな! 勇者の弟妹でありながら、何という恥知らず!」

 

 今の俺はもう、こいつらの方が信用ならねえ。

 

「エルセ、ど、どういうことだ! お前……魔族と手を組んだのか!」

 

 そして、改めて俺たちを非難するような声を上げる民衆共、そしてビトレイに対し、俺が何かを言う前にクローナが前に出て……

 

 

「何を言っているのです! エルセとジェニをいらないからと酷いことをしたのは、あなたたち人類ではないですか! だから、手を組んだのではなく、私が二人をもらっただけです!」

 

「「「「「ッッ!!!???」」」」」

 

「そして、私は二人をあなたたちに返してあげる気はありません!」

 

 

 と、まさかの宣言に誰もが唖然としてやがる。まぁ、俺も驚いてるけどな。

 

「そんな……うそでしょ……え、エルセ……な、なんで魔族なんかと……」

「エルセくん、う、うそです、よね……わ、私たちに対する当てつけかもしれませんが、そ、それは……」

「エルセ殿……エルセ殿、いかに我らへの恨みとはいえ、そ、それは、その道は――――!」

 

 あいつらもショック受けたようだが、逆に俺はそれで踏ん切り付いたような気がした。

 そして、クローナは俺の腕を引っ張って引き寄せて、天然なのかどうか分からねえが、堂々と……

 

 

「エルセは私が一生大切にします!」

 

「「「ッッ!!??」」」

 

 

 そして、ジェニに対してもクローナは一緒に抱き寄せて……

 

「もちろん、ジェニもです! ジェニも今日から私の妹なのです!」

「わぶっ」

 

 もう、俺たちは自分のものだと言わんばかりに主張し、その上でクローナは俺たちに向けるニコニコ笑う優しい笑顔ではなく、鋭く厳しい瞳で王国の連中を睨みつけ……

 

 

「絶対に返してあげません。あなたたちには絶対に」

 

 

 そう宣言した。

 その言葉に誰も抗うことも、口答えも出来ずに言葉を失っているようだ。

 

 

 そして俺も……もうそれでよかった。

 

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