戦犯勇者の弟妹   作:アニッキーブラッザー

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第15話 もう遅い

 帝国が全ての黒幕だった。

 そのことにキハクすらも驚いたようだが、納得もした様子。

 そしてキハクは複雑そうな表情で俺に対し……

 

 

「エルセ……確かに魔王軍がそのような工作をしていないという証拠を提示することはできん……が、吾輩は――――」

 

「堂々と正面から兄さんと戦って勝つことに自信もあっただろうし、そのことを誇りに思っているあんたが、コソコソ小細工する必要はねえからな……」

 

「……まぁ……な。しかし、だからこそ残念だ。吾輩はどうやら、テラに完全に勝ったわけではなかったのだな……」

 

 

 複雑なものだ。正直俺はどうかしていると思う。

 兄さんを殺したこいつの言葉の方を信じてしまっている。

 

「そ、そうですわ、エルセ! 全ては帝国の……そして勇者テラを討ったキハクの所為! そして貴方は無念の内に死んだ勇者テラの意志を継し、王国最強戦士ですわ!」

 

 と、そのとき失禁して腰抜かしていたトワレットが急に笑みを浮かべて立ち上がり、何かベラベラと興奮したように喚きだした。

 何言ってんだ?

 

 

「幸い、今この場に居るのは魔族二人のみ! あなたを中心に皆が力を合わせれば、確実に討ち取れますわ! そして、あなたがテラの後を継いで新たなる八勇将になるのですわ!」

 

「……………」

 

「そうすれば、そ、そう! こんなビトレイのようなカスではなく、あなたを私の婿にしてあげるわ! あなたは八勇将にして次期国王! そ、そう、それに、あの双子姉妹のアルナとヴァジナも、そしてストレイアも全員あなたの側室にしてあげるわ! 安心なさい、3人ともまだヴァージンで――――」

 

「姉さんにしたこと忘れてんじゃねえよ、クソ王女」

 

「ッ!?」

 

「真実がどうであれ、俺がこんな国は滅んじまえって思っているのは未だに何も変わってねえんだからよ。それに……その三人とも自分からビトレイのクソ野郎の所に行ったんだから、もう俺の知ったこっちゃねぇ」

 

「「「ッッ!!??」」」

 

 

 何言ってんのかと思ったら、自分が助かるためのクソみたいな発想だった。

 

「ま、待ってくれ、エルセ! お、俺たちが間違っていた!」

「そうだ、もう俺たちは王族共に騙されねえ!」

「そして、あなたこそが私たちの真の英雄!」

「ああ、テラの無念を皆で晴らしてやろうぜ!」

「帰ってきてくれ、エルセくん!」

「そして、魔王軍にも、そして帝国にも、お前が頂点に立って報いを―――」

 

 そして、この民衆共も。

 

「「「「ビトレイにも、トワレット王女にも国王にも報いを―――」」」」

 

 そもそもキハクには今の俺じゃ手も足も出ねえし、こいつらと力を合わせたぐらいでどうにかなれば苦労しねえ。

 そしてそれ以上に……

 

 

「まずお前らが地獄に堕ちろよ……クソ野郎ども」

 

 

 こいつらを心底許せなかった。

 

「ま、待ってくれぇ、エルセ! た、助け……」

 

 まず、ビトレイ。

 既に俺とアルナに殴られて端正だった顔も無残になりながらも、泣いて俺に縋りつこうとするこの男を……更にこの拳で……

 

 

「壊れろ」

 

「ぱぎゅあばぱあぱああ、た、たしゅけえ、ぷぎゃああああ!!!??」

 

 

 殴る。

 折る。

 砕く。

 粉砕する。

 破裂させる。

 

「か、あ、あば……あびゃ……」

 

 意識を断たせるようなことはしない。

 意識が途切れそうになる瞬間に痛みで起こさせる。

 

「ま、待って、エルセ! それ以上は死んじゃう―――」

「エルセくん、そ、それ以上は、もう戻れないです!」

「エルセ殿、あ……も、もう……」

 

 死んじゃう? 簡単に殺さないから問題ねえ。

 戻れない? 戻りたいと俺が思う訳がねえだろうが。

 もう? ああ、もう戻らない。

 

「クローナ……ジェニの目を塞いでくれ」

「……はい」

 

 だから、こんな程度で許すはずがない。

 

 

「疾きこと風のごとく……風手刀」

 

「あ……」

 

 

 殴るだけじゃない。

 

 

「ばぎゃあああああああああああああ!!?? お、おは、お鼻がぁあああ!? うぎゃあああああ~~!!??」

 

――――ッッ!!!???

 

 

 スパッと切り取ってやった。

 こんなカスが口車に乗ったばかりに……兄さんと姉さんは……こいつが!

 

「ぐひ、が、あぺ……あ……た……たしゅけ……」

 

 文字通り、グチャグチャにしてやった。

 

 

「も、もう……もうやめて、エルセ! 私たちが……私たちが悪かったから! それ以上は死んじゃうよぉ!」

 

「エルセくん! たとえ彼が悪でも、公爵家である彼を殺してしまえば、その罪は……貴族殺しの罪で世界中から……だから……だから!」

 

「エルセ殿! その男が帝国に唆されたのであれば、公の場でそれを証言させねば帝国の罪は問えぬし、兄上の汚名は晴らせぬ!」

 

 

 それでも気分が晴れることはない。

 余計に不愉快になるばかり。

 多分これから先もずっとそうだろう。

 だけど、止まらない。

 

 

「俺に触るんじゃねえ! そして話すらすんじゃねえ! 何度も言わせるんじゃねえ!」

 

「「「ッッ……」」」

 

「世界中……? だから……それがどうしたってんだ!」

 

 

 ここでぶっ殺すのは楽だが、それでは気が済まねえ。

 死ぬまで苦しめ。後悔しろ。

 

 

「そしてお前らは……どこまでおめでたいんだよ」

 

「エルセ?」

 

「こいつに公の場で証言させる? それで何だ? 何の意味がある?」

 

 

 そして、これで終わるわけじゃねえ。

 

「帝国に罪を問うたところで何の意味がある……ふざけんな……帝国が全ての黒幕だっていうのなら……」

 

 兄さんと姉さんはどこまでも優しかったから、きっと二人が望むのは俺とジェニの幸せなんだろう。

 ひょっとしたら、二人ならばこの国の連中のことを許すかもしれない。

 だけど、俺がこいつらを許すなんてあるはずがない。

 

 

「今度は……帝国をこの手でぶっ潰してやるッ!!」

 

 

 だから、これは始まりなんだ。

 

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