戦犯勇者の弟妹   作:アニッキーブラッザー

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第27話 思わせぶり

「こほん……あ~、とりあえずおぬしらの力は認めよう。そして、その力を帝国打倒に使うというのであれば、儂らの手札として今後検討しようぞ」

 

 軽く咳払いしてトワイライトが俺とジェニにそう告げた。

 

「そりゃどうも……で、その……クローナの姉さんの……ガウルさんは……」

「ガウルは……しばらく引きこもりじゃな。まぁ、しばらく出陣の予定は無いので構わんが……」

 

 ジェニのやらかしで、既にこの場にガウルは居なかった。

 身に着けていたものはブーツだけ。それ以外のものは上も下も全部俺とジェニの手によって(9割ジェニ)剝かれてしまい、そしてどうやら『そういう経験』は全然ないようで、爽やかな王子様がか弱い乙女のように涙して城の中へ駆け込んでいってしまった。

 とはいえ、それでも俺たちの力は示せたようで、認めてくれたみたいだ。

 

「ではトワお姉さま! エルセとジェニが居ることを認めて下さるのですね!」

「まぁ、大魔王様も好きにせよと言っておるし……のう」

 

 クローナが後ろから俺とジェニを両腕で抱き寄せてそう尋ねると、トワイライトも少し複雑そうな表情をしながら頷いた。

 その瞬間、クローナは花が咲いたように微笑んで、俺とジェニに交互に何度も頬ずりしてきた。

 

「やりました、ジェニ! エルセ! ん~~~、これで私たちは一緒です! 家族です! 大魔王様にお姉さまからの言質も取りました!」

「ん」

「はは、あんたにも世話懸けたな……」

「ジェニ、これからは本当に私があなたのお姉ちゃんですから、い~~~~っぱい甘えてくださいね! エルセは早速……んふふふ~♥」

「甘える……ふみゅ……」

「ふぁっ!? ちょ、おま、いや、え、そんないきなりなんて!」

 

 興奮してとても嬉しそうなクローナに、何だか思わずこっちも苦笑してしまった。

 俺たちの魔界での生存権を勝ち取ることができたことで、こんなに喜んでくれるなんて……それこそ、故郷のクンターレ王国とはえらい違いだった……

 

「ぬぅ、し、しかし……ぐぅ、クローナがわらわとガウルより先に……ぬぅ、う、うらやま……」

「ひはははは、トワの姐さんも相手さえ選ばなければいくらでも――――」

「だまれ、外道参謀!」

「ひはは、さーせーん」

 

 とはいえ、完全に大歓迎というわけでは絶対ないので、あまり調子に乗ったり、ましてや迷惑をかけず、その上で今後の生活のためにも周囲の信頼は勝ち取るようにしていかないとな。

 つまり結局は気が抜けないってことだ。

 そして力はあってもまだまだ子供のジェニは俺が―――

 

「まっ、とりあえーず、これから同じ国で暮らすんだから、そ~んな怖い顔しなさんな」

 

 と、そこで俺が色々と考えているのを見透かしたかのように、参謀と呼ばれた男がヘラヘラしながら近づいてきた。

 こいつも六煉獄将。

 そして、キハク、トワイライト、ガウル、そのどれとも違う、なんか不気味さを感じる……

 

「ほら、これはささやかながら俺からのプレゼント」

「?」

 

 そう言って、俺に何かの液体が入った小瓶を二つ……?

 そこには文字が……

 

「あ、参謀さん、それは確か……」

「お、おおお……おぬし、そ、それはまた……」

 

 クローナとトワイライトが驚いたように身を乗り出す。

 すると、参謀はニタリと笑みを浮かべて……

 

「変身魔法薬……昔開発されたもので、なりたい魔族や獣人の特徴に変異させる……猫人族だったら猫耳に猫の尻尾とか、鬼族だったら角とかね。ほら、何かと人間丸出しの格好だったら暮らしづらいでしょう?」

「えええ!? そ、そんなのあるのか……え、も、貰っていいんすか?」

「ああ。これはお近づきの記にね♪ まぁ、魔王軍の一部は知っちゃってるし、完全じゃないかもだけど……ね♪」

 

 笑顔は不気味だけど、かなり良い人みたいだぞ、この参謀さん。

 俺とジェニのことを気遣って―――

 

「あぁ……だけど、これだけは覚えておいてね♪」

 

 だが、参謀さんは更に悪そうな笑みを浮かべて……

 

 

「たとえどれだけ姿形を偽っても、君たちは人間で、テラの弟妹。そしてここは魔界でこの地に住む者たちは魔族……ってことをね♪」

 

「……?」

 

「そして……君はたまたまクローナ姫と出会えただけ……クローナ姫が特別だっただけ……人間にだって……シス姫だっけ? そういう特別な存在が居たのと同じこと」

 

「あの……何を?」

 

「掌返しの醜い人類共に嫌気がさしたようだけど……人間と魔族……性根にそこまで違いがあるのかねぇ?」

 

 

 更に思わせぶりな、だけどそのまま気にせず流すことのできない重たい言葉が俺に突き刺さったような気がした。

 そして俺たちにそう言い残して背を向ける参謀は、

 

「あと、その薬は副作用が原因で一般で実用化できなかったものだから気を付けてね」

「……え?」

「メスは平気だけど、オスが飲むと……初日の夜は一睡もできないぐらい……ま、そこはクローナ姫とあの変態メイドちゃんとお楽しみで解決してね♪」

 

 最期にサラリとすごい言葉を残して、そのまま立ち去った。

 しばらくポカーンとその背を眺めていた俺。

 振り返ると……

 

 

「んもう、参謀さんったら……んもう、私、初めてですのにいきなりだなんて……ぽっ♥」

 

 

 クローナが蕩けた顔でクネクネして浮かれていた。 

 

「あ~、コホン。いずれにせよ、すぐにおぬしらを戦力に加えてどうこうというのは難しいので、少し待つことじゃ」

 

 そんなクローナに呆れながら、トワイライトが俺にそう言った。

 

 

「近々地上でかなり大規模な戦が展開される。現在かなりの戦力ダウンしている人類の領土を奪ってくる。儂と参謀も今宵からそれに向けて軍を引き連れて地上に出陣する。留守はガウルとクローナに任せるので、おぬしらも今回は残っておれ」

 

「え、だ、大規模なって……それって、帝国の連中も―――」

 

「まぁ、おるだろうが、今回は我慢せよ。それぐらい分かるじゃろう?」

 

 

 戦がまた始まる……そりゃそうか。

 現在、人類は八勇将の兄さんを失い、クンターレ王国も滅亡して軍力は低下中。

 ここで一気に攻め込むってのは当たり前のことか。

 正直、相手が帝国なら俺も行きたかったが……流石にいきなり参戦なんて、そりゃ無理だよな。

 

「というわけで、その……なんだ、留守中に、その……ハ、ハメを外してその……お、アレしすぎるでないぞ?」

「ッッ!? ちょ、し、しないっすよ! そんないきなりなんて――――」

 

 

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