戦犯勇者の弟妹   作:アニッキーブラッザー

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第45話 運命の日

 魔王軍が地上へと大遠征して数日が経った。

 

「おりゃあああ!」

「きかーーーん!」

 

 俺は今日もオッサンや街の連中に殴られる。

 だけど、何だか最初の頃と少しずつ変化を感じる。

 

「よっしゃあ、おやっさんいけー!」

「今日こそ鼻血ぐらい出させてやれー!」

「おい、俺にもやらせろ! このために筋トレしまくった俺の腕力を見せてやる!」

「あ、でも、そろそろ時間……」

 

 魔界の朝の鐘がなる。

 その瞬間、今では俺を殴るための広場と化していた王都噴水前広場は残念そうな民たちのため息が漏れる。

 

「くっそ~、時間切れだぜ。今日もダメージ与えられなかった」

「うう、今日こそはって思ってたのによ。あ~、くそぉ、仕事に行かねーと」

「命拾いしたなぁ、小僧! また明日だぞ!」

「ちっくしょぉ、なんつー頑丈な身体してんだよ」

「つか、ほんとスゲーよ……」

 

 本当なら「時間切れ」ということなんてなかった・

 俺はこいつらには「好きなだけ殴らせてやる」と言っていたのだから、別に鐘がなろうがお構いなくやればいいんだ。

 だけど、なんか気づいたらこいつらの中で勝手にルールが決まったようだ。

 俺を殴るのは魔界の早朝だと。

 それ以降はその日の仕事に遅刻するとか、身体に影響があるとか何とかで、朝の鐘が鳴るまでの間というルールが勝手に設けられていた。

 

「エルセ~、お疲れ様です! 今日もいっぱい殴られましたね」

「親分、今日も見事な殴られっぷりでござる!」

 

 そして、俺が朝の日課を終えると、必ず毎回立ち合うクローナとプシィが駆け寄ってきて、タオルで俺の顔をふいてきた。

 別に怪我もしてないし疲れてもないんだけどな。

 ちなみに、ジェニはもう立ち合わなくなった。心配いらなくなったってことなんだろうけど、朝はザンディレと留守番だ。

 そして今では……

 

「さ、エルセ。今日は皆でピクニックです! すぐに行きましょう」

 

 クローナも何だかもう俺がこういうことするのを慣れたようで、立ち合うけども心配しなく、ノンキになってきた。

 人目もはばからず、俺の腕にくっついて甘えてくる。

 兄さんの弟で、人間でもある俺に恨みを持つ奴らが沢山いるのに……

 

「あ~、あの野郎、姫様にくっつかれて……なんて贅沢な奴だ!」

「くそぉ、姫様を泣かせやがったら、本当にどうにかして殺す手段も考えねーと」

「でも、姫様……なんだか……本当に可愛らしいわ」

「ね。以前までも確かに美しく可憐な御方だったけど……今はもう、ね?」

 

 しかし、今では俺に対するグチグチとした声は聞こえるも、何だか街の奴らももうコレに慣れた感じというのか、よく分かんないけどそういう空気になっていた。

 そして……

 

「おい、クソガキ。明日も忘れんじゃねえぞ」

「おお!」

 

 ホブゴブリンのオッサンは今日も変わらず俺を殴ったけど、殴って、そして時間が繰れば明日の約束をまたするような、そんな奇妙な雰囲気になっていた。

 

 何だか本当に、ヘンな感じだぜ。

 

 

 

 そして、もう一つ変わったことがある。

 それは……

 

「ジェニ殿ぉおおお~、蹴鞠では魔法で落ちないようにするのは反則でござる~~~!」

「ん~♪」

「もはやジェニ殿の魔力が尽きるか、我らの体力が先に尽くかの勝負になってしまっているな」

 

 王都の外に広がる大平原でのピクニック、プシィの村で伝わる遊びをしているジェニ、ザンディレ、プシィ。

 その三人が遊んでいる場所から少し離れた森の茂みの中……

 

「んちゅっ、ちゅる、ちゅ」

「ん~、エルセ、ちゅっ、ちゅちゅ」

 

 小さくか細い体。だけど、それを力強く抱きしめる。

 柔らかく甘い唇と舌で互いに感じ合いながら、抱きしめた手が短いスカートの下の柔らかい尻に触れてしまう。

 しかし、それを目の前の女は嫌がることなく、俺の首に両手を回して余計にキスを求めて絡めてきた。

 

「ぷはっ~、えへへへ、エルセ美味しいです♪」

「お、おお、そっか……」

「それよりエルセ~、お尻をいっぱい触ってますけど、何かに気づきません?」

「え? えっと……」

「んも~、仕方ないですねぇ、えへへ」

 

 初めて出会った頃は、魔族でありながら女神のように神々しくて、神聖さや清純さがあり、決して穢してはならないような存在だったのに……

 

「えへへ……ぺ、ぺろん、ど、どうです? 黒なのです!」

 

 モジモジしながら顔を真っ赤に、しかしそれでも笑みを浮かべながら、俺から少し離れて、自身の膝上ぐらいの短いヒラヒラのスカートを捲り、黒い紐の下着を見せるクローナ。

 驚いた。

 いつも、白が多かったのに……

 

「えへへ、ザンディレの提案で……た、たまには、かわいいのだけでなく、せくしーな魅力もエルセにと思いまして……」

「お、お、おお……」

「だから、エルセ……お尻を触るのは構いませんが、もっとじっくり見てください」

 

 そう言って、恥ずかしそうにしながらも実に大胆に股を開きながら地面に座り込むクローナ。

 下着丸見えで、というよりももはや俺に見せつけて来て、そして誘っている。

 

「じ、実は、ブラもなのです」

「そ、そう、なのか?」

「はい~。ですので……こっちの確認はエルセがボタンを外してどうぞ~」

 

 そう、これがもう一つの変化。

 

 

 

 なんか、クローナが俺に対してすごいエッチになってしまったのだ。

 

 

 

 もう、聖女が淫魔になってしまったというのか、ちょっと小悪魔な面というか、とにかくすごく大胆になって、そして俺のことを求めるようになってきた。

 

「ん~~~」

 

 まあ、俺も望むところというか、好きだからというか、とりあえず隙を見つけてはこういうことをしていた。たぶん、ザンディレは気づいているだろうけど。

 

 

「毎日、エルセとジェニとイチャイチャして、ザンディレとプシィも一緒に笑っていられる日々が続けばいいのに……」

 

「クローナ?」

 

 

 行為を終えて裸で俺と抱きしめ合うクローナは色っぽい吐息を漏らし、俺の頬をペロっと舐めながら、切なそうにそう呟いた。

 

「でも、そういうわけにはいきません。今は魔王様は何も命じて来ませんが、私は魔王軍の将でもあります。そして、エルセの望みもまた八勇将を討つこと。で、ある以上は……」

 

 そう、こうやって家族と一緒に幸せに。惚れた女と抱き合って、いつか子供でもとか、そういう妄想をすることはある。

 だけど、俺たちはいつまでもそれは許されない。

 

「ああ、時期と準備やら何やらが色々と整ったら……な」

 

 ケジメをつけるためにも、俺はまた戦う。それが戦争なのか、もっと別の形なのかは分からないけど。

 そしてクローナもまた、今回の大規模遠征に参戦はしなかったが、後々は当然出陣することになる。

 

「はぁ~……お姉さまたちが今回の戦で全部決着つけて下さったらいいのですが……」

「流石にそれはどうだろうな……まぁ、どっちにしろ大規模だから、後々の影響はデケーだろうけど」

 

 そう。だからこの平和で幸せで穏やかな時間も、近いうちに……

 

「ん~……エルセ……もう一回しましょう」

「わ、え、いや、少し休……ふぁっ!?」

「んふ~、エルセの反応かわいいです。待ちません、食べちゃいます、ぺろぺろ舐めちゃいます」

「あ、ちょ、ま、わ、わ」

「~~~~」

 

 だけど、それは近いうちなんかじゃなかった。

 

 

 

 

 今日だった。

 

 

「「ッッ!!??」」

 

 

 魔界の闇の雲が引き裂かれるほどの巨大な光が王都の中から発せられた。

 

「ッ、な、なんだ、あの光は!?」

「……な、なんです、この強烈な魔力の波動は……」

 

 絡み合っていた俺たちが一瞬で現実に引き戻され、思わず立ち上がる。

 

「これは……結界が……」

「一体何事でござる?」

「……なにかきた……」

 

 ザンディレ、プシィ、そしてジェニも当然ながらその光を見つめる。

 稲妻が走った。

 俺だけじゃない。全員が感じた。

 強烈な魔力の波動が、近場から。

 この王都を包み込み、外敵から守るはずの結界の内側に何かが侵入した。

 

 

 そしてその光が、今後の俺の、そして魔界と人類の命運を大きく左右させるきっかけとなる、歴史に刻まれる戦いの幕開けだった。

 

 

 だが、これから先、どんなことがあろうとも、もう二度と家族を目の前で死なせたりしない。

 

 

 何があろうと、誰が相手であろうと守り抜く。

 

 

 そして、兄さんに関するケジメを必ずいつか取ってみせる!

 

 

~完~




お世話になります。本作複数のサイトで投稿してましたが、だんだんメンド―になりましたので、ある程度話数がたまるまでまた改めます。


一応、直後の続きはこちらで今書いてますので、ご興味ありましたらどうぞ~


https://kakuyomu.jp/works/16818093073183198625

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