非常にむなくそ展開からのスタートとなります。
神里綾華メインとしての物語にはなりますがこういう展開はまず苦手という人。神里綾華が大好きだと言う人。展開上お辛いシーンがあるかもしれませんということを了承して読んでください。
いつもの日常、朝に目覚め身支度をする。
私は鏡を見て頷く。
「今日もがんばっていけそうです」
屋敷での公務をこなし城下町を訪れ茶屋に入りこれからの仕事の打ち合わせを話す。
お茶を出してもらいそれを飲んだ。
身体が痺れ動けなくなった。
口も思うように動かせず私は微かに動く瞳を動かせるだけだった。
身体の平衡感覚がわからなくなり椅子から落ち倒れてしまう。
お茶を淹れてくれたであろう女の主人が私を見ていた。
いったいどうして…
その答えはすぐに理解した。
女主人のそばに黒い雨合羽を被った誰かが子供に刃物を首へ向けていた。
あの人の子供だと分かった。
子供を人質に取られていた?
そしていったい、いつから隠れていたのか?
思考を巡らそうとしたが意識は薄れていき闇に飲まれていく。
気付くと自分は南京袋の中にいるようで衣服は全て脱がされて下着姿にされ両手両足は後ろ手に枷を嵌められ神の目も無くなってしまっていた。
取り上げられてしまったのだろう。
痺れのせいで意識が朦朧としているが自分は誘拐されどこかに連れて行かれることは分かっていた。
これから自分は何をされるのか。
これからどうなるのか不安でいっぱいだった。
袋から出された場所は見慣れない場所で日は既に落ちていた。
篝火だけが唯一の灯りだった。
家の作りは稲妻と酷似していてお金持ちの家柄であるようだった。
ようやく声が少し出るようになった私は口をゆっくり開く。
「ここは…どこ…です…か?わた…しは…どう…なるのです…か……?」
声に反応し家主であろう男が近づく。
とても大きな体格の男だ。
私を舐めるように全身を見る。
その視線に羞恥し身体を隠したかったがそれが出来ず泣きそうになる。
全身を囲われたように360度見られている心地になり抜け出せない。
神の目を失っているせいか心が保てない気がする自分を感じた。
「名前は?」
男は私の身体に手を伸ばし触りながら聞く。
「…ッ!。神里…綾華です」
身体を触られビクリと反応して思わず自分の名前を口にする。
男の口元が薄く笑った気がした。
この時、私は自分の名前を名乗ってはいけなかったと勘ですがそう思いました。
何となくこの男は見た目こそ人なのに人ではないように感じたのです。
「…帰して…ください」
私はどうにかそう言いました。
「お前を飼ったんだ白鷺の姫君。帰す?返す?そんなことするものか鳥は籠の中にいるべきだろう?」
"買った"?私を…?私は奴隷になった?ここは奴隷商に関わりがある場所…?
少しでも情報を引き出し助けを呼べる手段を取らないと…だんだんと頭が回ってきた時――
「始めに言っておくが」
「??」
「ここは"誰にも見つからない"その儚い夢は諦めろ」
まるで思考が読まれたような答えだった。
「ど…どうして…」
自分の思考が読めたのかそんな疑問を許してはくれなかった。
「まずは綾華、花は折ってやらねばならないとな」
ガチャリと首輪を取り付けられた。
私は言葉の意味を理解し首を左右に振るが首輪が音を鳴らすだけだった。
私は男に部屋の奥の奥へ連れていかれ……
自分の全ての何もかも奪われてしまいました。
何回も何回も。
尊厳を奪われもう何も残ってない自分に私は泣きました。
いつかは覚えてませんが私の頭を弄る話が出ました。
私はもう恐怖で子供のように泣くことしかできませんでした。
男はそんな私を見ると楽しそうで嬉しそうでした。
"蟲"と呼ばれた物を私の耳から入れ記憶を壊し別の記憶を"蟲"によって書き変えられました。
蟲は細く長い形をしていて私は悲鳴を上げました。
拘束され抵抗も出来ず耳から頭に入り記憶を壊し別の記憶に成り代わる。
成り代わった記憶はこれまでここで逆らってきた人が恐怖する記憶がまるで自分が体験したように思い出させるそんな記憶でした。
もう私は逃げれない。
ここしか安全な場所はない。
今の私は自分がどこで生まれてどこで暮らしてたのかわかりません…。
ただ金髪の髪の冒険者の後ろ姿が最後に記憶を霞めていったのが私が覚えていた最後の記憶でした。
もうあの世界には帰れないのでしょう…。
何日何年か…どのくらい時間が経ったのか忘れてしまいました。
私はいつ解放されるのでしょうか…。
もうそれもないのでしょうか。
心はとっくに折れてました。
殺してほしいと思うくらいに。
懇願したこともありました。
「何でもします。もう殺してください」と。
それを言うと男は嬉しそうに私を辱しめるのでした。
何日何年経ったのかもうわからない時でした。
大地が揺れ家が崩れたのです。
家内は大騒ぎです。
この家での私の暮らしはあの男の奴隷として仕事もいくつか与えられていました。
逃げたところで死ぬことも出来ず帰る場所すら私には無いのですから。
私が逃げないことが分かると拘束も首輪も解いてくれました。
その家が崩れた。地面は大きく割けており深淵が見えます。
…今なら死ぬことが出来るでしょうか…?。
死へ向かう者は何者かと言葉がありますが今の私はまさにそうなのかもしれません。
恐怖の記憶が私を脅かす。
男がやって来る前にここへ飛べば…。
私は死のうと決めました。
崩壊した家を見ると屋根がみるみる直っていきます。
家が生きている…?。
私はそんな疑問を最後に深淵へ落ちていきました。
落ちる瞬間男がやって来て口を開きましたが何を言ってたかわかりません。
私の意識は遠退いていきます。
これでやっと終われる。
…やっと。
次回に続きます