かごのなかのとりは
いついつでやる
よあけのばんに
つるとかめとすべった
うしろのしょうめんだあれ
次にやって来たのは昭和ミュージアムだ。
「「「「「おーー!」」」」」
俺達は声を挙げた。
おばあちゃんに「1人800円ね」と言われて支払いを済ます。
中は冷房が効いていて涼しかった。
「でも狭いかもっ。綾華ちゃんそう思わないー?」
カオルがそう言った。
「稲妻も…いつかこんな風に発展するんでしょうか」
「綾華ちゃん?」
「え?!あ、すみません…」
「ううん、大丈夫だよ。狭いねって話だったからね」
「か、カオルさん…?その言い方は失礼に」
「えっへへ」
「うぅ羽が壁に当たりそうね」
「畳めよ羽」
「わかってるわよ…!龍太こそ壊すとかしないでよね。というか志郎は何してるのよ」
「見てよパトリシアめっちゃ懐かしいお菓子があるんだ」
「えぇ、そうね…?」
俺達は施設内を歩き
「パチンコだな」
「パチンコだね」
「パチンコだよ」
「パチンコ?…なにそれ?」
「パチンコ…ですか?」
三者三様の感想。
「こういうレトロでも当時はお金がいる時代だったんだよね」
「ここなら回すだけだから」
レバーを回し玉が飛び出す。
ギャンブルは全くだけどみんなでこういう風に遊ぶくらいなら悪くない。
俺達五人は回し始めた。
「この玉を三発ここに誰かが入れたら優勝だね」
カオルがそんなことを言うものだからみんなに火が点いた。
ーーーーー
「あああぁぁぁぁくそぅ!入らないぜ!!」
「チャンス玉!いやそもそもチャンス玉ってあるのかしら?」
特に俺とパトリシアが盛り上がっていた。
「…………!!」
「力の加減が難しいですね…カオルさん優勝する気はあります?さっきからフルパワーですよね?」
「ふふん…」
「カオルさん?」
カオルは俺を見ていた。
「これはコツがいる……ん?イッ…て」
俺は目を押さえた。
知らない星空が映り知らない7人の影。
刀を毎日に振る彼女の姿があった。ようやく相手にも勝てるようになってきて、その最後の一振りが終わると氷の華が咲き切っ先に神の目がぶら下がっていた。
景色が変わり
『綾華…これから商談に行かねばなりません。奉行を頼みます』
『はい、お兄様』
そうして発令された目狩令という名の神の目を剥奪する命令。
『私の永遠は不変です』
雷を纏った女の姿が映った。
家来と共に身を隠すことを選んだ彼女の姿。
神の目とは魔力を持つ外付け器官。
囚われた家来を助けるために動いた金髪の少年。
『あなたは例外』
金髪の少年に対する淡く熱い想い。
友達とはこういうものなのでしょうか。
景色が変わると面を付けて普通の少女のように金髪の少年とお祭りを楽しむ彼女の姿がそこにはあった。
痛みが引いた。
「今のは…」
俺がそう考えた時、パチンコの玉音が俺の思考を止まらせた。
「!!」
「やったわ!入ったわ!」
パトリシアのテンションの高い声が耳に届いた。
あれ?いつの間に。
「優勝はパトリシアさんですね…」
「パティちゃん頑張ってたね」
「もちろんよ。何か景品があったりするんじゃないの?」
「え?!いやーあはは…考えてなかった 」
「かおるぅ!?」
「ご、ごめん~」
ーーーーー
昭和ミュージアムから出て喫茶店へやって来た。
時計が多い場所だ。
店長さんの趣味らしい。
「記憶取り戻したのね」
「今回は何が見れたの?」
「…私気になりま」
「神里ちゃんそれはだめなやつ」
俺は見たものを話した。
「結構ドタバタしてる記憶だね」
「受けとる情報の量もかなり増えた。術式が上手く行ったおかげかもしれないな」
「神の目は魔法を使うために必要な物だったわけね。目狩令って言うのはもう終わってるのかしら」
「終わってると思います。目狩令は取り消しされて鎖国も終わってるはずです」
「……綾華?」
「え?あれ?…私今」
「頭の中に虫もいないからここでの環境がいい影響及ぼしてるのかもしれないわね。綾華、自信を持ちなさい」
「…はい、ありがとうございます」
「ところでこの結構な頻度で出てくる金髪の少年って誰なの。神里ちゃん」
「旅人さん…です」
その時の綾華は恋する乙女みたいな表情と声だった。
店を出た後、俺の身体を影が刺した。
背後を振り返るが誰もいない。
カオルが俺に声を掛ける。
「龍太くんどうしたの?」
「誰かいた気がした…多分」
「もしかしたら神の目を狙ってきた連中がいるかもしれないね。或いは綾華ちゃんを」
「…そうかもしれないな」
俺の目に入ってる神の目は完成ではないとは言え、大きな魔力を有していた。
変なのも寄りつきたくはなるな
。
「完成すれば分かるかな」
「うん」
俺達は宿へ戻ることにした。
ーーーーー
飲み物を買いに自販機に行くと
「お前の部屋、女匿ってないか?」
突然男に話しかけられた。
俺よりも背丈があり筋肉質だ。
「…匿ってる人なんていやしないが」
「いいや…お前からあの雌の匂いがするんだ」
「警察を呼ぶぞ?」
「構わない」
「じゃあ…」
俺はカオルとのリンクを繋ぐ。
光と風が俺の周りを踊り出す。
リンクは魔法使いが同士が連係や技を生む為の身体強化に近い現象だ。
他者の魔法の力を借りられるとえば分かりやすいだろうか。
男は恐れるように後退した。
「……忌々しい匂いだ。その匂いじゃない」
男は自販機コーナーから出ていった。
あれは多分…人ではなかったな。
……多分妖。そして俺の夢に出てきた声と同じだった。
ーーーーーーーーーー
「最近増えたわよね妖怪」
「隠れてた妖が魔力の影響で力を付けたんだ。普通の人にすら認知されるくらいにな」
「龍太くんが言ってたのって」
「多分そいつだと思うし綾華にムカデを入れるようにしたのもあの妖だと思う」
「そいつがこの近くまでやってきたわけね」
「綾華がいたあの家には他にも誰かいたのか?」
「…はい、見た目は人間でしたよ」
「それ全員人じゃないかもな…」
人間に対して強い執着のある妖は陰湿で尚且つ力も強力だ。
「明日にはもしかしたら神の目が揃うかもしれない。その時気をつけてくれ」
みんなは頷いた。
俺はスマホを取り出し
「あ、もしもし陣屋の方ですか。こないだ蔵整理を手伝った巫凪です。実は―――」
ーーーーーーーーーー
朝になると包みが届いた。
朝ご飯を終えて部屋で開封会だ。
「もしかして昨日陣屋に電話してたのって」
「あぁ、これを頼んでたんだ」
カオルの言葉に俺は頷いた。
「それで中身は?」
綾華は中身が気になるようだった。
包みを開くと一本の黒い刀だった。
「…まさかここであいつの作った刀が来るとは」
「あ、その刀!黒百合ちゃんの刀だよね?刀も作ってたんだね」
いろいろやってるんだなあいつも。
「つまりこの刀はお知り合いの人が作った刀ということでしょうか」
「そういうことになる。綾華はこの世界の刀は初めて見るか」
「はい、…?もしかしてこの刀を私に…?」
「うん、多分必要になるはずだから」
刀を受け取り「いい刀です」と呟いた。
綾華は上段の構えを取り素振りした。
空気を切り裂くいい音が響く。
俺達4人は拍手をした。
「そんな、大げさです…」
照れくさそうに笑った。
刀はバットケースに入れて綾華はそれを背負うように持った。
「どうでしょうか」
刀を背負ってるようには見えない格好だがそれでも似合っていた。
「今日はどこに行くの?」
「三ノ町を見たいわ」
カオルの言葉にパトリシアがそう言った。
「最後になるかもって言うなら伝統的な物が見たいのよ」
「じゃあそうしよっか、みんなも良い?」
俺達はもちろんと返事を返した。
古い街並みを堪能しつつ俺達は歩いていると綾華が顔を上げた。
毬のような物が吊るされていた。
「…あれは杉玉ですか」
「杉玉?」
「はい。酒蔵に関係がある物なんです。あれが枯れて茶色くなるとお酒が熟成した証明になるんですよ」
「へえ…俺達は未成年だから少し先だけどね」
俺は吊るされている杉玉を見る。
「しかしいずれは知りたくなるものかもしれませんよ」
今は縁がない物でもいずれはということか。
「そうかもしれないな」
俺は笑った。
「龍太くん!」
「ん?んぐ!」
串を口に突っ込まれた。危ない。でも美味い。
「牛串…いつの間に」
「杉玉の話してる時!」
「まったく食べ歩きなんて。ほら綾華の分よ」
「ありがとうございます」
パトリシアが綾華の分も買っていたようで渡していた。
「これは美味しいですね」
「綾華は苦手な食べ物はあるのか?」
「うーん…お肉がなんとなく苦手…な覚えがありますけどどこの部位かまでは」
牛肉食べながら言うセリフではない。
カオルが手を挙げた。
「じゃあ好きな食べ物!」
「ふふ、お茶漬けが好きなんです。…あ、図々しいお願いがあるんですが」
「お茶漬けが食べたい?」
「すみません…その、そうなんです。そのようなお店はあるでしょうか」
「調べよう!綾華ちゃんに沢山思い出を持って帰ってもらうために」
見つけたので俺達は三茶というお店にやってきた。
「どこから来たのー」と店主から話しかけれた。
「俺達、森宮から来たんです」
「都会だなぁ~魔法で有名だろ。って、え!あ!異世界人?!ホンモノ!羽ほんとあるんだ!」
パトリシアを差して興奮した店主がいた。
「全員が全員羽や尻尾に角があるわけじゃないけど」とパトリシアは困った顔をしていた。
森宮の外に異世界人が出るのは少し珍しいことらしい。
ちなみに綾華のことは触れなかった。
彼女も思いっきり異世界人のはずなんだが。
馴染んでいるのかな?
そんな綾華はお茶漬けを注文して食べていた。
そりゃもう無心で。
そんな綾華を見て俺も食べたくなった。
「すみません俺にも、このお茶漬けをお願いします」
「はーい、お茶漬け入りまーす」
「龍太くんまだ食べるのー?」
「見てると食べたくなったんだ」
俺の言葉にカオルも頷いた。
「すみません!わたしも!」
ここでカオルが乗ると。
「じゃあ」
「じゃあ」
パトリシアと余語も全員でお茶漬けを食べることに。
ちなみに綾華はおかわりを頼んでいた。
「この出汁が旨いな」
そう言うと綾華は頷いた。
……俺の目、今めっちゃ痛いけどね。
砕け飛びそうなくらい痛い。
でも美味しい。
「龍太くん泣きながら食べてる…!!」
なんてカオルに言われた。
店を出て三ノ町の外れまで来たところで俺は言った。
「ついに揃った」
俺の言葉でみんなが「おぉー」と拍手した。
「綾華、もう色々と思い出せているんじゃないか?」
俺が聞くと彼女はゆっくりと頷いた。
瞳には生気と覚悟の表れのような力強さがあった。
彼女は分かってる俺に聞いた。
「…龍太さんは何を見たんですか?」
「……そうだな…場所を変えて説明しよう。ここは人が多いから」
俺の言葉の意味にみんなが理解した。
公園までやってきた。
人いなくて良かった。
「俺が見えたのはーーーーー」
いつもの知らない星空、影しか映らない七人。
綾華と金髪の少年が過ごし舞を見せる姿。
その姿はまさに白鷺の姫君だった。
神の目と刀で氷の華が舞踊る。
剣術大会で二人の姿が目立って見えた。
奉行で責務をこなす姿、そして船に乗り西洋の国へ行き映画のようなものを撮っていた。
その場所でも金髪の少年の姿があった。
撮影が無事に終わりしばらく普通に暮らしていたが世界が崩壊した。
怪しげな家に連れてこられ視界がぐらぐらしていた。
この時点で神の目を失くしているのが分かった。
みんなが…金髪の少年がきっと助けに来てくれるはず。
そんな希望を持っていたが壊れる瞬間。
希望が絶望に変わる瞬間を視た。
普通でいたかったのに普通でいられない気持ちは何故だか良くわかった。
長虫を頭に流され記憶が壊される間際に彼女が最後に願ったこと、それは………
「…旅人さんに…会いたいです」
俺が最後に言おうとした言葉を綾華が遮って言った。
「綾華…」
「私の記憶の欠片はここまで…ですよね…?」
「うん…ここがゴールで最後の欠片で…大事な想いだ」
「ありがとうございます…」
「これは綾華ちゃんだけが聞くべきだったかもしれないね。ごめん綾華ちゃん」
カオルは綾華に謝った。
「いいんです…。ここまでたどり着けたのはみなさんのおかげです」
「それなら良かった」
「でもこれはあれだね。恋路を聞いてる気分になったかな」
余語がそんなことを言う。
「そうね。今ごろその旅人さんって人はあなたを探しているはずよ」
「旅人はきっと強いだろう。あんな奴らきっと倒せるはず。綾華をあの世界に帰しても大丈夫だとは思う。でもこの世界の妖ならこっちで倒したい」
「そうだね龍太くん。
ねぇ!…出てきてよ」
俺とカオルは一点を見る。
そこから大きな大男が現れた。
四人もか。多いな…。
「お前はやっぱり昨日の」
「気付いていたか…」
「あぁついでにお前の正体もだ」
「…言ってみろ巫凪龍太」
名前を言われたことに一瞬身が怯んだ。こいつは強いかもしれない。
「罪人の気持ちを歌う者達。
夜明けの晩に。鶴と亀。いついつ出やる。籠の中の…鳥。ここまで言えばわかるだろう」
「言わせるつもりか巫凪龍太。そこのお前の仲間はまったく分かってないようだ」
俺はマジ?と思い後ろを振り返え―――
「龍太くん!前見て!」
俺の顔は後ろを見なかった。
「まさかあの忌々しい女、正体に」
「わかんない!!」
カオルはそう答えた。大男達は唖然。じゃあなぜ?みたいな表情をした。
「いつものか!」と俺。
「いつもの!」
「振り返ってたら何か取られてたな。助かったカオル」
「忌々しい女め…」
大男達は毒づいた。
「お前達は目隠し鬼の一つ、
その名は"怪談かごめ"。綾華をお前達の貼った力で誘い込み記憶を手繰りよせて腹へと誘ったんだ」
大男達、もとい怪談かごめは笑った。
笑った後、口を開く。
「よくわかったな、俺達は神里綾華でいい思いをしていたんだがな」
そう言われた綾華は怒った顔をした。
「我らはかごめ、蔓の如く獲物を手繰り寄せては囲い喰らうが我ら真の性だ」
「!!」
俺達は身構えた。
「だが偶然というのは面倒だ」
「偶然?」
「地震が起きたんだ。おかげで家に穴が空いた」
「…あの家は迷い家だった。それを拠点として使って家その物を強化していたわけだな」
俺がそう答えると
「巫凪龍太、お前は生かしておくと危険だな…絶対に殺す」
物騒なことを言われた。
カオルが俺の前に立ってくれた。
怪談かごめは小さく舌打ちした。
「迷い家ならまず絶対に見つからない。あらゆる所に出没できるその力を使えば見知らぬ世界にも触れられる。そうしてお前達は綾華の知り合いの人間を脅した」
「な、なるほど…」
綾華が一人で何か納得していた。
怪談かごめはため息を付いた。
「穴が空いたところに神里綾華は飛び込んでいったんだ。惜しいものを失くしたなと俺は考えた。綾華としてはこれで死ねると思ったのだろう」
俺は綾華を見た。
綾華は無言を貫いた。
「家の修復が終わった後、俺は綾華の遺体を探したよ。でも無いんだどこにも」
「…そりゃ生きてたからな…」
「お前が拾ったからだ!!!」
突然怪談かごめに怒られた。
「拾ったって…」
「神里綾華は俺達のモノだった。だがルールを無視した空間で姿を消した。生死に問わず持ち主が不明となった。俺達は探したよ。だが見つけたと思ったら手が出せなくなった」
「…拾ったってあの時か」
初めて彼女を抱き抱えた時。
そこで所有権が移ったことになったというわけか。
かごめかごめ。お遊びから生まれた黒い怪談。
「綾華ちゃん今龍太くんのものなんだ…へぇ…?」
ポソッとカオルが俺を見て綾華を見て呟いた。
「え?あ、いやその…えぇ…」
綾華も困惑だった。
でもここで俺が違うと言えば所有権がどうのこうので揉める可能性があるせいで言えない。
あいつらもそれを待ってるはずだからそれを言わない。
言葉遊びは気をつけなきゃならない。
「じゃあかごめを倒せば…まあるく収まるよね?」
そんなことを言うカオル。
綾華も俺が否定しないので少し困っているようだった。
「まあるく収まるのはお前達だ。ここからは腕ずくでいかせてもらう」
「うわぁ…結局バトルになるんだね」
大男の不機嫌な言葉に余語が唸った。
「来るぞ」
大男の影が蔓のように伸びてきて俺達を絡め取ろうとする。
カオルは光を駆使して影を切った。
大男の人数は全員4人だ。
一人ずつ撃破していくか?それともあれは4人で一人とか?
「考えてるな?」
かごめが俺の目の前に立っていた。
右手には大きな斧を携えてそれが振り下ろされる。
「油断しないで龍太!」
パトリシアが俺のそばに来てくれていた。斧を右手の素手で受け止めて地面が重みで沈んだ。
「パトリシア!ありがとう!」
「異世界の魔女か…!」
「今さら気付いた?周りは見ておくことね!」
不敵に笑うパトリシアは左拳に青い炎が灯り叩きこんだ。
転がりながら吹っ飛んでいく怪談かごめ。
「パトリシア…お前武器いらなくない?」
「嫌よ。こんなの魔女っぽくないもの」
パトリシアは改めて杖を取り出し追撃と言わんばかりに火球を放っていく。大鎌をパトリシアは使うのだがまだ使う程の相手ではないということか。
向こうの方を見ると綾華が剣術だけでかごめと戦っていた。
余語が魔導銃を構えて的確に射撃を行い綾華の援護をしている。
綾華の剣術を俺は初めて見た。
手数の多い流派なのだろう。
振りの速度が速く次の踏み込みが踊るように繋がっている。
こっちの怪談かごめは盾を持っていた。
盾を鈍器のように使われそうになった時は余語が弾丸を放ち綾華が攻撃しやすい様に立ち回っていた。
その間、カオルは2人の怪談かごめを吹っ飛ばしていた。
カオルは杖に光と風を編み込ませて作った細剣で応戦中だった。
カオルの一振りで空気が揺れたような感覚になる。
それがもの凄い速度で振るわれるのだから相手からしたらたまったものではないだろう。
「今のところ私達が優勢ね。このまま行けば押しきれそうじゃない」
パトリシアはそう言った。
「俺の出番無さそうだしな…」
「結局龍太はいつもの他力本願ね」
「あのな…」
まぁ実際バトルフィールドを指揮してる方が俺は立ち回れる。
「冗談。綾華の為に頑張ってたし…あとは私達が活躍するだけよ」
そう言ってくれた。
「魔法使い共め…!」
悔しげにぼろぼろになった怪談かごめが叫んだ。
「こうなれば…!かくなるうえは…!」
怪談かごめがわら半紙を取り出した。
まだ何かするのか?
「こうするしかない…こうするしかないのだ」
わら半紙に血で字を書いていく。
よあけのばんに
つるとかめとすべった
うしろのしょうめんだーれ
六芒かごめ
そう書かれた時、俺達全員殴り倒されたように地面に叩き付けられた。
4人いた怪談かごめは1つになり腕は赤く液体化した腕と変わっていて6本腕に増えていた。
人だった顔は鬼面のような顔になり身体の右上は骨と血管が突き破りそこから文字のような物がぐるぐる回っている。
身体もでかくなっていた。
雄叫びをあげる怪談かごめ。
「おいおい…お前…化け物みたいになっちまってるぞ…」
怪談かごめは街の方を向いた。
俺は魔法弾を叩き込んだ。
コイツ今街に向かおうとしたぞ。
ようやく俺を視界に捉えて液体の拳を振り回し
「「龍太!!」」
金属の壁と炎の塊が拳を受け止めた。
余語とパトリシアが二人で俺の防衛に回ってくれた。
「いくよ!!」
「いきます!!」
そこにカオルと綾華が飛び込み剣を振った。振るわれた腕を真上に飛ばしたがそのまま拳を叩き下ろしに来る。
俺は魔法を使いみんなを後退させた。
俺達は間一髪、攻撃をかわすことができた。
「みんなすまん!」
「大丈夫!でも、いやー…これは重いや…!」
カオルがそんなことを言った。
「どうにか攻略方はないのかい?龍太!」
「考えてるよ志郎。あのわら半紙にあいつかごめの歌を書いていた。歌を書く前に水彩のような絵もあった。書き終わって六芒かごめって書いた途端」
「あの姿にってことですか…」
綾華が見据える。
「怪談ではなくただのかごめでもなくあの姿で六芒かごめになったんだ」
「六芒って陰陽師にも関連があるよね」
「あんなのを陰陽師に入れたくはないけどな……全身が術で覆われたような姿か?……みんな頼みがある」
「何でも言って」
カオルがそう言うとみんな頷いた。
「まずは全員であいつを徹底的に攻撃する」
俺達は六芒かごめに向かって一斉に攻撃を仕掛けた。
カオルと綾華にアタッカーに回しパトリシアと余語にサポートを頼み俺はアタッカーとサポートの穴を埋めて攻めていく。
液状になった腕を切り飛ばしても再生され足を飛ばしても生えてきて俺達は返り討ちに合う。
どうすればいい?どうすればあの怪物を倒せる?。
みんなが信じてくれるのに俺は何も攻略を思い付かない。
今は攻めていられるが限界はこっちが先に来る。
何か手はないのか。
その時、俺の頭の中に見えない七人の人影が映った。
その中の1人が俺を見たのだ。
氷の女皇と呼ばれる七偽神。
「手を見なさい」と言われた気がした。
俺はその姿をすぐに忘れてしまったが手を見た。
「…神の目?」
元々これは綾華の大事な物だ。
もうこれは俺の目に戻ることはなく俺の手に収まっている。
そうしろというのなら…俺は駆け出した。
みんなはその行動に驚いた。
六芒かごめは俺へとターゲットを定めた。
全ての攻撃が俺に襲い掛かる。
「みんなで龍太くんを守って!!」
カオルの叫びにみんなは動いた。
ほとんどの攻撃を仲間に守られながら俺は綾華の元にたどり着いた。
「龍太さん!いったい…」
「返す時が来た。綾華!」
時間がないので俺は綾華の言葉を遮り押し付けるように神の目を綾華に渡した。
それを受け取った綾華は頷いた。
「っっ!!」
この世界の影響で大量の魔力を吸っていた神の目は綾華の元へ帰れたことを喜ぶように輝いた。その力を綾華は躊躇いなく解放した。
突如辺りが猛吹雪に包まれ空気が冷え込んだ。
六芒かごめは耐えきれない冷気に凍り付いて動かなくなり腕がボロボロと崩れていった。
唯一凍っていない部分があった。
顔の面となった部分。
そこから目玉のような物が剥き出しになった。
「あれだ…!!」
カオル、余語、パトリシアも綾華も派手に立ち回り俺を守る為に全力を尽くしてくれて疲弊していた。
俺がやるしかない。
大量の光を一つに束ねた。
俺の魔法は星座を司る魔法だ。
八十八種類の星座の大技と星達の魔法を使うことが出来る知識を持ってこそ使える魔法だ。
その中でも最強の貫通力と爆発力を持つ技を選んだ。
星の力を束ねて使う。
それが俺の力。
「射手座の弓」
一撃で終わらせる。
弓を引き絞り放たれた矢は目玉のような物を貫いた。
六芒かごめから悲鳴のような叫び声が上がり身体は霧散していく。
徐々に元の姿から更に小さくなる。
「ぁぁ…俺の力…姿が」
「あぁ…お前の怪談はもう終わりだ」
「…はは…終わりか…これからも長く…長ク語ラレルといいなァ…」
「??」
「怪談はもう…ハジマッテル」
怪談かごめはその言葉を最後に完全に霧散していった。
最後の言葉はどういう意味だったのだろうか。
ともかく…
「………終わった」
俺はその場に座り込んだ。
みんなが俺のところにやってきた。
「勝ったね!」
俺とカオルはハイタッチ。
それを見ていた余語とパトリシアは笑い同じようにやった。
綾華はそれを嬉しそうに見ていた。
「綾華も」
「え…?」
「綾華の力のおかげで勝てた。まさか凍らせることが弱点だったとは」
俺は夏なのに降っている雪を見上げる。
「ナイスな活躍だった」
「これは…みなさんのおかげです」
綾華も両手をあげてハイタッチを交わしてくれた。
「龍太さんの技も見事でした」
「ありがとう」
その後、俺達は一度着替える為に宿に戻り陣屋から連絡があったと宿の人から連絡を受けた。
「陣屋に来てほしい」と。
やってきたらちょっと騒がしかった。
「何かあったのでしょうか…」
綾華はそう言ったが俺達には察しが付いていた。
「そろそろなんだね」
余語がそう口にした。
「来てくれてありがとうございます。あら綾華ちゃん前よりなんだか元気に見えるわ。良かったわね!」
陣屋の人は綾華の手を取り喜んでいた。
「ありがとうございます、今は…もう大丈夫です」
「良かったわ。みんなもこっちに来て」
俺達が案内されたところは立ち入り禁止となっていた場所。
綾華が倒れていた場所に扉があった。
「これは…」
「す、すげぇ」
「これが綾華の世界に繋がる扉」
綾華と余語、パトリシアがそんな声を漏らす。
「この先へ行けば綾華は帰れる。綾華が望んだ先に」
俺はそう言った。
綾華は扉を見つめて俺達に振り返る。
「名残惜しいと考えてしまうのは悪いことでしょうか…?」
「そんなことないわ。それが自然で普通よ。楽しかったって思えたなら良かったわ」
綾華の言葉にパトリシアが答えた。
「もう少し色んな四季や街を見たかったと思うのは変ですか?」
「変じゃないよ。俺も神里ちゃんに…この街や季節に興味とか知ってもらえて嬉しかった」
余語は綾華の言葉にそう答えた。
「カオルさんの話す森宮や学校という場所にも行ってみたかったです。あなたの戦い方はとても素晴らしかったです。初めて会った私にここに敵はいないと言ってくれてありがとうございました」
「どういたしまして。安心してくれて良かった。いつかまたもし迷い込んじゃったら今度は森宮を案内したいな」
カオルはそう言った。
そして綾華は俺を見た。
「この世界でも私は私でいられました。それは一重に皆さんのおかげで楽しくて。でも…帰らないといけません」
「綾華には綾華の物語があるからな」
「物語ですか。そうかもしれませんね。では…龍太さんの物語はどうでした?」
「楽しかったよとても。会えて良かった」
「私もあなたに会えて良かったです。…この恩は忘れません」
綾華は神の目を握り、そう言った。
綾華は再び扉に向き直る。
扉に手をかけようとした時、綾華はもう一度振り返り俺に抱き付く様に飛び込んだ。
「!?」
「本当にありがとうございました。龍太さん…
この世界の…魔法使いさん」
その声は俺にだけ聞こえるような声で。
俺もそれに対して抱きしめ返す。
「綾華…またいつか。お元気で」
綾華は俺から離れて丁寧に頭を下げて今度こそ扉を開けて元の世界へと帰っていった。
扉はゆっくりと淡い光を放ちながら消えていった。
「無事に帰ったな」
俺が呟くとカオルが俺に抱きついた。
「カオル?」
「あーあ、最後に綾華ちゃんにいいとこ取られちゃった」
「そうか…?」
「そうだよ、恋人はヤキモチを焼くめんどくさい生き物なのです」
俺は苦笑した。
「何かしたいことがあるのか?カオル」
俺はカオルを抱きしめ返す。
「うん、このままデートがしたいなーって。だめ?」
「あー、あー、じゃあ私達おじゃまするわね」
「俺達は俺達で出かけるからさ」
「…え!?私達もデート?!」
「うん」
パトリシアと余語は空気を読んでそそくさとこの場を去った。
「じゃあ、行こうかカオル」
「うん!」
そうして俺達は暑い夏を歩く。
END
ここまで読んでくれてありがとうございました。
言ってみれば神里綾華の異世界探訪、或いは現代入りに近いお話でした。
物語の題材は読んでもらった人はわかると思いますが怪談です。
かごめかごめの歌を怪談化したものとなります。
森宮の世界では現代怪談が多く跋扈しています。
中でもかごめかごめはかなり力のある話ですね。
神里綾華が好きな人はこの物語をどう捉えたかわかりませんがハッピーエンドを迎えることができたのはミスブルーとしても幸いでした。
ここでの神里綾華は金髪の少年、空を大切な友人として見ていますが心には大きな恋心を抱いています。
彼女のそういう描写がわかることが出来たなら良かったですけどね。
今回の物語の舞台は、岐阜県の飛騨高山を舞台として話を展開させていただきました。
物語に出てくる陣屋こそ神里屋敷のイメージとして神里綾華のスタート地点に使わせてもらいました。
今回はここまでということで。
ここまで読んでくれてありがとうございました。