ヘイロー持ち男子アリウス脱走生に憑依した男、ばにたすに中指を立てる   作:シャケナベイベー

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観測者

「……なるほど。そのような経緯だったんですね」

 

「まぁな。だから俺は”神依ミライ“として生きていくことになったんだ」

 

 

 食後のコーヒーを飲みながら、俺は対面に座る少女に頷いてみせた。食事をありがたく頂き、腹も膨れたところで少女に何故あそこにいたのかと聞かれたのだ。

 

 俺は目の前の少女には隠し事は意味を為さないだろうと洗いざらい全てを話した。少女はしきりに頷いていたが、やがて話が終わるとその青い目を俺に向けてきた。

 

 

「それにしても、まさか“観測者”である貴方に会えるなんて思ってもいませんでした」

 

「……さっきから気になってたんだが、その観測者ってのは何なんだ?」

 

「キヴォトスを──私達を外側から視る者。方法はどうあれ、それは観測者と呼べる存在ですから」

 

「なるほどな……」

 

 

 つまり、俺がゲームという形でこの世界を見ていたことで彼女は俺を観測者と評したということか。

 

 

「あ、でも私がそう思ったのは貴方が私を連邦生徒会長と呼んだことです。この時の私はただの連邦生徒会役員ですから」

 

「つまり、今の時点で知り得るはずのない情報を口にしたことで確信した、と」

 

「はい!」

 

 

 笑顔で頷く少女──未来の連邦生徒会長に俺は降参とばかりに両手を上げた。

 

 

「生徒会長。アンタはこれまで何度も繰り返してるのか?」

 

「……そうですね。何度もというわけではありませんが、それでも行き着くのは捻れて歪んだ終着点でした。それを回避しようと模索していましたが上手く行かず……だから、今回は『先生』に選択肢を委ねようと思っています」

 

「先生……か。奇跡の担い手であり大人。その人に託すと?」

 

「はい。貴方が話してくれた通りに物語が進むのなら準備を進めなければなりませんから。恐らく後2年ほど猶予がありますし」

 

 

 彼女は手に持ったコーヒーカップに視線を落としながら決意を口にする。俺はといえば、それに口を挟むことなくじっと見つめていた。

 

 

「それで、その……もし良ければなんですが、貴方に先生のお手伝いをお願いできますか?」

 

「俺に?」

 

「はい。先生の選択によって確かに物語は良い方向に進むかもしれません。ですが、貴方という観測者がいるこの状況もまた特異な事象です。今までに無いヘイローを持つ男の人──貴方が起こすであろう奇跡もまた、選択に左右されます。そんな時、特異点である貴方と先生が作用し合うことでさらに良い結果へと導かれることになると思うんです」

 

 

 ふむ、と考え込む。彼女の提案はいわば俺に危険に飛び込めと言っているようなものだ。これから先に起こるであろう事件に晒されるリスクを考えれば断るべきだろう。

 だが、俺の脳裏には彼との──ミライとの会話が過った。

 

 

 

『どうかお願いだ……消えるオレの代わりにあいつ等を……アツコ達を護ってくれ……!』

 

(そう言われたら、関わらないなんて選択肢は無いか……なぁミライ)

 

 

 

「分かった、協力しよう。ミライとの約束もあるからな」

 

「! あ、ありがとうございます「ただし」」

 

 

 頭を下げる少女を遮り、人差し指をピンと立てる。

 

 

「ただし、俺が言う提案を受け入れてくれるなら、だ。構わないか?」

 

「え? ええっと、はい。構いませんが……」

 

「良し。なら提案するが──物語が始まるまでの二年間、俺の行動に目を瞑ってくれ。なにか怪しい事をしようって訳じゃない。今は住む場所も金もないからそこら辺を調達する為に色々と動くつもりでいるんだ。そんな時に連邦生徒会に目をつけられたら溜まったもんじゃない」

 

「お金や住宅ならなんとか用意出来ますが……」

 

「ありがたいけど、精神的に年下の子にそこまでしてもらうほどひどい人間じゃないつもりだよ」

 

「……分かりました。約束します」

 

 

 少女が頷き、俺は安堵の息を吐く。

 

 

「良し、なら契約成立だ。これから宜しくな会長さん」

 

「私はまだ会長では無いんですが──そうですね。これから宜しくお願いしますミライくん」

 

 

 そうして俺達は握手を交わす。これから二年間、何かと世話になるだろう少女に俺は笑顔を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから早いもので数ヶ月が経過した。あの後、ミライの記憶を頼りにブラックマーケットへと足を踏み入れた俺はそこで仮の住まいを購入し、そこで過ごした。

 

ブラックマーケットはいわば非合法な物がなんでも集う場所。怪しい店やらなんやらがわんさかあるため、目立たず働きたい俺としては、この場所は仕事探しにはもってこいだった。

 

 とはいえ俺がわざわざブラックマーケットを拠点にしたのも理由がある。

 

 一つ目は諸々の手続きに学生証やらなんやらが必要無かったこと。ミライはアリウスの脱走兵だ。わざわざ学生証を提示してアリウスだと知られるのはリスクが大きい。

 

 そして二つ目。俺は男のヘイロー持ちだが、ブラックマーケットならばそれを引き合いにする奴らは少ない。居ることには居るが、たとえブラックマーケットで騒ぎを起こしたとしてもアリウスに情報が届くことは無いし、なにより表でこんな事をすれば目立つ可能性が高いからだ。

 

 

「まぁ、どうせアリウスの奴らとは顔を合わせるだろうけど」

 

 

 先生に協力する以上、エデン条約編でアリウスとはかち合う羽目になるのだ。そしてベアトリーチェとも。

 

 だが、現時点でアリウスは外の状況を知らない。ベアトリーチェが情報規制を行っているのかは知らないがそれは好都合だった。そして、警戒すべきベアトリーチェも今はアリウスに釘付けであるためこちらの騒ぎには見向きもしないだろう。

 

 

「ま、実際この数ヶ月は平穏だけどな」

 

 

 そう言って簡素なベッドに倒れ込む。ブラックマーケットで傭兵紛いの仕事をして金を稼ぎ、住まいを購入するという段階はクリアした。傭兵の仕事についてもミライの身体が覚えているのか難なくこなす事が出来ていた。

 

 そして何より、活動する上で()()()()()()()()()()()()()()()()()()、この『ヘイローステルスシステム』は大いに有り難かった。これのお陰でヘイローを隠しながら行動することが出来るため、万が一アリウスと遭遇してもよほどのことがない限り神依ミライだと気付く事は出来ないだろう。

 

 その時、俺の仕事用の携帯が着信音を鳴らす。手に取り、見知らぬ番号である事を確認すると通話を開始した。

 

 

「こちら観測者(ゲイザー)。用件は?」

 

『あの、護衛の依頼をお願いしたいのですが……』

 

 

 さぁ、仕事の始まりだ。

 

 

 

 

 

「自宅まで護衛してほしい……内容はこれで良いか?」

 

「は、はい……! 大丈夫です……!」

 

 

 依頼主はゲヘナの生徒だった。彼女は風紀委員なのだが、先日スケバンを取り締まった際、どうにも目の敵にされたようで安全の為に護衛を依頼したらしい。

 

 そんな少女はオドオドしたように俺の質問に答えている。無理もないか、今の俺は黒コートに仮面で顔を隠し、変声器で声も変えている。端から見れば不審者確実だろう。

 

 

「しかし依頼を受けた身で言うのもなんだが、良くこんな得体の知れない奴を雇おうなんて思ったな?」

 

「い、いえ……その、『観測者』さんのことは噂で知ってたんです。ヘイローが無いけどとても強い何でも屋さんがいるって」

 

「俺、別に何でも屋じゃないんだけどな……しかし、スケバンね。そんなにヤバいのか?」

 

「あ、えっと……私が特別力が無いだけで、他の皆さんならこんな事にはならないと思います……私は落ちこぼれだから、銃を向けられるのが怖くて、それでもそんな自分を変えたくて風紀委員会に入ったんですけど……全然ダメダメで……」

 

 

 何とも切実な理由だ。そんな訳でいつも皆の背に隠れていた彼女だったのだが、先日取り締まったスケバンがそんな彼女の態度に舐められていると勘違いし、去り際に脅したのだとか。

 

 他の風紀委員の子達も彼女を心配したのだが、皆が忙しいことを知っていた彼女は自宅まで護衛してほしいとも言い出せず、こうして俺を頼ったと。

 

 

「なるほど、経緯は分かった。その依頼受けよう」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「もう夜も遅い。早く行ったほうが───」

 

「そうはいかねぇぞ」

 

 

 出発しようとした俺達に声が掛かる。振り返ると、如何にもな格好のスケバン達が数人は立っていた。

 

 

「アタシのこと舐め腐っといてタダで済むとか思ってんじゃねぇぞ!!」

 

「べ、別に馬鹿にしてるわけじゃ……!」

 

「うるせぇ!! テメェみてぇな後ろで震えてるだけの奴が抜かしてんじゃねぇぞ!!」

 

「ひっ……!」

 

 

 相当お冠のようだ。後ろの連中も同調するように声を張り上げている。面倒なことになりそうだと悟った俺はすぐさま少女を庇うように前に立った。

 

 

「そこまでにしてやれよ。この子が何かした訳じゃないだろ」

「あ? んだテメェ」

 

「護衛だよ。お前らみたいなのが来るかもってことで雇われたんだが……案の定だったな」

 

 

 するとスケバン連中は声を上げて笑い出した。大方、俺にヘイローが無いから護衛に適していないとでも考えているんだろう。

 

 

「おいおい、冗談よせって。怪我する前にソイツ渡してくれりゃあ見逃してやっからよ?」

 

 

 涙が出るほど笑ったらしいスケバンがそう言って後ろの少女を指差す。少女はビクッ!と体を震わせた後、不安げに俺を見上げる。

 

 その顔が見てられなくて、少女に力強く頷いてから再度スケバンに向き直った。

 

 

「悪いな。こっちは仕事なんだ。はいそうですかって頷く訳にはいかない」

 

「そうかよ……だったら痛い目見やがれ! お前ら、やっちまえ!!」

 

 

 スケバン連中が一斉に銃を構える。俺は懐から手榴弾を取り出し、スケバンに向けて放り投げた。一瞬の閃光の後に轟音が響く。そして思わぬ不意打ちにスケバン達が悲鳴を上げると、俺は足に力を込めて一気に踏み込んだ。

 

 

「お、お前ら怯むな! 相手はヘイローがねぇんだ。やっちま──ガハッ」

 

「まず一人」

 

 

 混乱するスケバンの一人の頭に直接弾丸を撃ち込む。キヴォトス人はこれ喰らって気絶で済むのだから恐れ入る──まぁ今は俺もキヴォトス人な訳だが。

 

 そして狼狽えている近くのスケバン二人にサブマシンガンから銃弾を容赦無く叩き込んだ。

 

 バタバタと倒れていくスケバン。そして爆発の煙が消える頃には既にスケバンは一人だけとなっていた。

 

 

「さて。まだやるか?」

 

「こ、この……!」

 

 

 一人残った少女は尚も俺に銃口を向ける。しかし足は震え、銃を握る手もブレていた。これ以上やっても意味無いだろうと俺は銃を仕舞う。そして震えるスケバンに声を掛けた。

 

 

「これ以上あの子に突っかからないってんなら見逃す。早く友達連れて帰れ」

 

「く……くそっ!」

 

 

 言い終わるやいなや、スケバンはさっさと退散していった。仕事上、こういう荒事には慣れてきたので今回は手早く終わったなーと体を伸ばした。

 

 

「あ、あの! 大丈夫でしたか……!?」

 

「問題無し。あの程度の数は問題にもならん」

 

「す、凄いですね……」

 

 

 少女から尊敬の眼差しで見つめられ、少し気恥ずかしくなる。さて護衛再開と行こうと促そうとした時───

 

 

 

「手伝おうかと思ったけど、その必要は無かったみたいね」

 

 

 

 鈴のような声が耳に届く。振り向くと、そこに一人の小柄な少女が立っていた。

 

 ゲヘナ特有の羽根と角を持ち、雪のように白い髪と鋭い紫の眼が特徴的な女子生徒。その人物を俺は知っている。

 

 

(マジか。ここで出てくるか……空崎ヒナ!)

 

 

 近い将来に風紀委員長として、キヴォトス最強の一角としてその名を轟かせるだろう空崎ヒナの登場に俺は内心驚愕した。

 

 先程の言葉から察するに俺の戦闘を見たのだろう。ほんの僅かだが、こちらを警戒しているようだ。

 

 

「戦闘音が聞こえたから駆け付けたのだけど……もう片付いてたのね『観測者』」

 

「うわバレた」

 

 

 嘘だろ?まさかこんなに早くバレるとは思ってなかった。

 

 

「情報部として貴方のことは知っていたから。ヘイローを持たず平然とキヴォトスの人間と渡り合う力……警戒しておくのは当然」

 

「なるほど。そりゃそうだ」

 

 

 情報部として俺の情報を知り、そこから警戒していたと。実に正しい判断だ、というかそんなに俺の情報が出回ってるのか。

 

 

「見たところ、ウチの生徒が関わっているようだけど……」

 

「この子の護衛として雇われたんだ。そしたらスケバンがやって来たから撃退したって訳」

 

「そう。なら問題は無さそうね」

 

「……自分から言うのも何だが、俺をそんな簡単に信用していいのか?」

 

「見たところ、貴方は女の子に何かしようとする輩じゃないでしょう。情報部としても貴方は要注意ではあるけど悪意ある存在じゃないと結論が出たのだし」

 

 

 随分と高く評価されているようだ。もう話すことはないのか空崎ヒナは踵を返す。

 

 

「それじゃあ帰るわ。気を付けてね」

 

「おう。じゃあな」

 

 

 去っていく少女を見送り、今度こそ護衛任務を再開した。とはいえ悩みの種であったスケバンは撃退したからか、自宅まで実に平和な道のりだった。

 

 

「よし。これで任務完了だな」

 

「はい……あの、ありがとうございました。それとご迷惑をお掛けしてすみません……!」

 

「気にするなよ。いい運動になった」

 

 

 少女の自宅に到着し、玄関前で言葉を交わす。しきりに頭を下げてくる少女を宥めて俺も自宅に戻ろうと歩き出す。

 

 

「あ、あの! もしまた何かあったらその時は……!」

 

「あぁ、依頼してくれれば駆け付けるよ。じゃあな」

 

 

 

 

 

 

 後日、俺の口座に予定額の倍以上の金額が振り込まれていた事に驚愕したが、事態を知った風紀委員長が御礼金として振り込んだらしく最初は断ろうとしたのだが、どうしてもと言うことで礼を言って受け取っておいた。




連邦生徒会長周りのアレコレは自分の解釈です……運営は連邦生徒会長は設定を早く開示せよー!
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