ヘイロー持ち男子アリウス脱走生に憑依した男、ばにたすに中指を立てる   作:シャケナベイベー

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マジでお久しぶりです。


アビドス編
いざアビドスへ


「ええと、『観測者』? このレポートの束は一体……?」

 

「先生がこなす業務の一部だな。とりあえず今日一日でこれだけ終わらせよう。俺も手伝う」

 

 

 ドンと目の前に積まれた分厚い紙の束を見て顔を引き攣らせる一人の男性──つい数日前シャーレに赴任した『先生』に黒コートに仮面を着けた少年──口振りからして判断した。変声器を使っているので実際は分からないが──『観測者』こと神依ミライは淡々と告げた。

 

 

「これまで先生にはキヴォトスの常識やらなんやらを説明してきたが、今日から本格的にレポートを捌いてほしいんだと」

 

「それにしては量が多くないかなぁ!?」

 

 

 まったくその通りだと話を聞いたミライは頷いた。いくら連邦生徒会長が行方不明になり、その穴を埋める先生が来たとはいえいきなりこれだけの量を任せるのはどうかとリンに言ったが突っぱねられてしまい、止む無くミライも手伝うことにしたのだ。

 

 

「さぁ、さっさと片付けよう。内容を確認して判子を押すだけの作業だ」

 

「……分かったよ」

 

 

 渋々と言った様子ではあったが先生も頷き、二人で束を半分に分けて作業を始める。とはいえ、基本的にミライは資料に不備がないかの確認をするだけなので八割方は先生の作業になるが。

 

 そうして作業を続けてしばらく。ふと先生が手の動きを止めた。

 

 

「ん、どうした?」

 

「いや、これなんだけど……」

 

「……手紙だな。ご丁寧に“シャーレの先生へ”とも書かれてる」

 

「開けてもいいかな?」

 

「なんでそこで俺に聞くんだよ。先生宛なんだから先生の好きにすればいいだろ」

 

 

 「それじゃ遠慮無く」と先生が封を開いて手紙を取り出すと、その内容に目を通す。その間もミライは資料のチェックを続けていたが、やがて先生が立ち上がり背もたれに掛けていた上着を取って歩き出す。

 

 

「出掛けるのか?」

 

「うん。この手紙、私に助けてほしいって内容だったんだ。生徒からのお願いだし断る訳にいかないからね」

 

「手紙の差出人は?」

 

「アビドス高等学校の『奥空アヤネ』って子だったよ」

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、ミライの動きが固まる。それに驚いた先生が「『観測者』?」と声を掛けるとすぐにミライは立ち上がった。

 

 

「え? どうしたの突然?」

 

「アビドスに行くんだろ? なら俺もついてく」

 

「え!? い、いや。『観測者』には残ってもらおうと思ってたんだけど……」

 

「言っておくが、アビドスの地図は数年前から更新されてないぞ」

 

「え゛」

 

 

 今度は先生が固まる番だった。先生は恐る恐るといった様子でタブレット端末を起動させ、そこにいる存在に話しかける。

 

 

「ア、()()()……その話、本当……?」

 

 

 先生の問いかけから暫くして、先生が膝から崩れ落ちる。どんな内容だったのかはミライには()()()()()()()が大方ミライさんの言ってることは本当ですとかその辺だろうと当たりをつけた。

 

 

「まぁ安心しろって。二年前にアビドスに行った俺も一緒に行くから少しはマシになるはずだろ」

 

「うぅ……ありがとう『観測者』……!」

 

 

 膝を突く先生を見ていられなくなったミライが先生の肩に手を置くと先生は救いの神に会ったかのような目でミライを見る。そんな大人の姿にミライは笑顔で頷き、続けて言った。

 

 

「アビドスに行って滞在することになっても仕事はやってもらうからな。そのシッテ──タブレット端末にデータをコピーしてやれるところはやっちゃおうな?」

 

「あああぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

 先生が一転して絶望の叫びを上げる。手紙を送ってきたアビドスの子達の力になりたい気持ちは本当だが、あわよくば面倒な書類から逃げられると期待していた彼にとってあまりにも残酷な仕打ちだった。

 

 

「とりあえず今日の当番の生徒に連絡しとくのと、SNSの方でシャーレは急用でしばらく空けますって投稿しとくか」

 

「あ、今日の当番はユウカだよ」

 

「んじゃ俺がユウカに連絡しとくから、先生はSNSの方頼むわ」

 

「分かったよ」

 

 

 先生がシャーレの公式アカウントに投稿するのを横目にミライは自身の携帯で今日の当番である早瀬ユウカへと連絡する。

 

 

『もしもし『観測者』? どうしたのよ』

 

「悪いユウカ。今日の当番なんだが先生が急用でシャーレを離れる事になってな。悪いんだが書類とか諸々の整理を任せても良いか?」

 

『良いけど……急用って何があったの?』

 

「アビドスの生徒から手紙があったらしくてな。先生のお人好しの結果そっちに行くことになった」

 

『アビドスに? ……分かったわ。とにかくそっちに行って書類とか片付けておけば良いのね?』

 

「おう、頼む」

 

 

 そしてしばらく短い会話を終えると、ミライは電話を切って先生に向き直る。

 

 

「さて……行くとするか。アビドスに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───と、意気込んだは良いものの……」

 

 

 まさかガス欠になるとは。バイクを押しながら、俺は仮面の下でため息をこぼした。

 

 D.Uにある駅から電車で向かうより、バイクで突っ走る方が早いだろうと先生を乗せてアビドス自治区に向かったまでは良かったが、アビドスに入った辺りでバイクがガス欠を起こし、結果として歩く羽目になった。

 

 

「先生、大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫だよ〜……」

 

「大丈夫じゃないな……本当に悪かった先生。バイクの燃料確認をしっかりしてなかった俺の責任だ……」

 

「いや、『観測者』が責任を感じる必要なんて無いよ! むしろ私のためを思ってしてくれたんでしょ? なら感謝はしても怒ることなんてしないよ」

 

 

 先生の気遣いに涙が出そうになる。しかし先生は疲労困憊、あいにくと水も先程の先生の分で底をついてしまった。バイクに燃料補充さえ出来れば一気にアビドスの市街の方まで行って水を変えるのだが肝心のスタンドも見当たらない。

 

 

 さてどうしたものかと横にいる先生を気にしつつバイクを押している俺達の横を一台の自転車に乗った少女が真横を通り過ぎた。

 

 すぐさま前方へと躍り出た自転車の人影は砂漠地帯のアビドスでは珍しく青いマフラーをしていて───

 

 

「あ、ちょ、ちょっと待った!」

 

「ん?」

 

 

 思わずその背を呼び止めた。そういえば原作では倒れた先生を見つけるのがキッカケだったなと思い出し、そしてその鍵とも言える少女に出会えたのも幸運であった。

 

 自転車に乗っていた少女───青いマフラーを身に着け、銀髪に狼の耳を生やしたブルーアーカイブの顔の一人とも言える存在『砂狼シロコ』は自転車を止めて振り返り、不思議そうな顔で俺達に近付いてきた。

 

 

「なに?」

 

「突然すまない。その制服、アビドス高校の子だろ? 俺達、実はアビドス高校に用があって来たんだがバイクが燃料切れで走れなくなってな……もし良ければなんだがこの人をアビドス高校まで連れて行ってくれないか?」

 

 

 隣りにいる今にも倒れそうな先生を見る。少女──砂狼シロコも状況を察してくれたのか「ん、そういうことなら任せて」と快諾してくれた。

 

 

「本当か? ありがとう、俺はともかく先生が倒れそうだったからな」

 

「アビドス自治区は広いから、こうなるのも仕方ない」

 

「そう言ってもらえると助かるよ……おーい、先生? 聞こえてるか?」

 

 

 暑さで朦朧としかけている先生の肩を揺さぶる。しばらくして「はっ!」と目を開けた先生は俺の肩を掴むと心配そうな表情を浮かべて口を開いた。

 

 

「私もそうだけど『観測者』だって大変だったでしょ! 私は歩いてるだけだったけど『観測者』はバイク押しながらだし……」

 

「俺はキヴォトス人だから外の世界出身の先生より体力は多いんだ。こっから市街地までなら俺一人でも余裕で行けるし、何より疲労困憊の先生を連れて行くほうがリスクが高い。それなら先生を先にアビドス高校に行かせた方が良いだろ?」

 

「それはそうかもだけど……」

 

 

 そんな感じで暫く唸っていた先生だったが、やがて納得したのか俺から離れて「でも何かあったら連絡すること」とだけ言ってきた。とはいえ先生の心配も理解できるので素直に頷き、今まで待たせてしまっていた砂狼シロコに改めて近付いた。

 

 

「という訳で、改めてこの人をアビドス高校まで頼めるか?」

 

「ん、任せて。久しぶりのお客さんだ」

 

 

 ふんす、と鼻を鳴らして意気込む彼女にほんわかとした気持ちになりながらバイクを押す。そして途中の道で二人と別れ、俺は市街地に向けて燃料切れの相棒と共に歩き出した。

 

 

 

 そして市街地でバイクの燃料補充も終えてアビドス高校に向けてバイクをかっ飛ばしていた。……ちなみにかっ飛ばすと言ってもちゃんと法定速度は守ってるぞ。

 

 

「今頃、先生はアビドスに着いた頃か……もしかしたら自己紹介くらいは終えてるかも……」

 

 

 最近は思い出すのも難しくなってきたブルアカのストーリーを思い浮かべながらバイクを走らせる。確かこの後はガタガタヘルメット団……いやカタカタヘルメット団だったか?とりあえずそんな奴らがアビドス高校を乗っ取るために襲撃を掛けてくるはずだ。

 

 

「と……見えてきたな。んで銃声のBGM付きと……もう始まってたか」

 

 

 少し急いだ方が良さそうだと、バイクの速度を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「シロコとセリカは前方の子達を! ノノミとホシノは援護をお願い!」

 

『了解!』

 

 

 先生の指揮の下、四人の少女───アビドス高等学校『廃校対策委員会』の部員達が襲い来るヘルメット団相手に突っ込んでいく。数で言えばアビドス側が圧倒的に不利。しかも彼女たちは弾薬が尽き掛けており、どう見ても勝ち目は薄かった。

 

 だが、そこにシャーレの先生の指揮が合わさることでいつもの何倍もの効率さでヘルメット団を撃退することが出来るようになっていた。

 

 

「ク、クソッ! 何なんだアイツら! この前まで弾薬が尽き掛けだったってのに……!」

 

 

 ヘルメット団の一人がボヤく。そもそもそんな弾薬が尽き掛けていたアビドスを占拠できず、あまつさえ撃退されていることから実力に置いてはアビドス側に軍配が上がる。だが長期戦ともなれば補給先を得ていないアビドス相手に勝ち目はない……筈だった。

 

 だがアビドスの救援要請に応じたシャーレによって弾薬の補充が受けられることが決まった今、アビドスにとってカタカタヘルメット団は然程大きな脅威では失くなっていた。

 

 それに加えてもう一人、アビドス側に味方する人物がここに到着した。

 

 

「ん? 何だ、バイクの音……?」

 

 

 ふとヘルメット団の一人が声を上げた次の瞬間、猛スピードで一台のバイクがヘルメット団とアビドスの間に割って入り、そのバイクに乗った人影がヘルメット団に向けて銃を乱射した。

 

 

「ぎゃっ!」

 

「わぁっ!?」

 

「え、何々?」

 

 

 呻き声を上げて倒れるヘルメット団達を見て、黒髪に獣耳を生やした少女──黒見セリカが声を上げる。一方でそのバイクに乗った人物を見た先生は肩の力を抜き、他の子達に銃を下ろすよう言った。

 

 

「先生、あの人を知ってるんですか?」

 

「一応ヘルメット団を攻撃してくれてるみたいですけど……」

 

「うん。さっき話した遅れてやってくる子だよ」

 

「先生と一緒にいた人。悪い人じゃない」

 

「うへ〜、シロコちゃんにまで言われたら、おじさん信じるしかないな〜……まさか彼がやって来るなんて……

 

 

 ベージュのロングヘアの少女──十六夜ノノミと黒髪に眼鏡を掛けた少女──奥空アヤネが人影について先生に訊ねると先生と共にシロコも答え、それを聞いた桃髪に水と金の特徴的なオッドアイの少女──小鳥遊ホシノが穏やかな声で締め括った。

 

 そしてあっと言う間にヘルメット団を片付け、逃げ帰っていくのを見送った人影というか、『観測者』こと神依ミライはアビドス組と先生が待つ方へと歩き出した。

 

 

「お帰り『観測者』。随分早かったね」

 

「ただいま先生。近くまで来たらアビドス高校の方向から銃声が聞こえたから慌ててやって来たんだ。まぁ、俺が居なくても片付いただろうが」

 

 

 最後の言葉の部分だけ、ミライの目がアビドス高校の少女たちに向いた。

 

 

「さて、と……こんにちはアビドス高校の生徒さん。銀髪の君とはさっきぶりか、先生を送り届けてくれてありがとう。俺は『観測者』。本名は訳合って明かせないからこっちで呼んでくれ。先生から聞いてると思うが、俺も皆の力になるためにここに来た」

 

 

 そんなミライの声と共に一陣の風が彼らの間で吹き抜けた。

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