ヘイロー持ち男子アリウス脱走生に憑依した男、ばにたすに中指を立てる 作:シャケナベイベー
「それでは、改めまして自己紹介をさせていただきます。私達はアビドス廃校対策委員会。私は一年生の奥空アヤネ、隣のこの子は同じ一年の黒見セリカちゃん」
「……どうも」
あの後、ヘルメット団を撃退した一同は校舎にある廃校対策委員会の部室に戻り、新しくやって来た先生と『観測者』に自己紹介を始めた。
まず最初に挨拶したのは一年生のアヤネ。そしてアヤネが隣に立つ少女、セリカを紹介すると彼女は厳しい顔をしながらも軽く片手を上げた。
「そして二年生の十六夜ノノミ先輩と砂狼シロコ先輩」
「よろしくお願いします先生〜。それに『観測者』さんもよろしくお願いしますね〜」
「ん、よろしく。ちなみに道端で最初に会ったのが私……あ、別にマウントを取ってる訳じゃない」
続いてノノミとシロコがそれぞれ先生と『観測者』に挨拶する。そしてアヤネの視線が机に突っ伏しているホシノに向かった。
「最後に三年生の小鳥遊ホシノ先輩。以上がアビドス廃校対策委員会のメンバーで全生徒になります」
「いやぁ~よろしく先生。『観測者』君もよろしくね〜」
名前を呼ばれたホシノは顔を上げてポヤポヤとした表情のまま手を振る。そして彼女たちの自己紹介が終わったところで先生と『観測者』も顔を見合わせてそれぞれ挨拶することにした。
「改めて、私はシャーレの先生だ。アヤネの要請を受け取ってアビドスにやって来たよ」
「同じく『観測者』だ。元は傭兵──という名の何でも屋をやってた。アビドスには二年前にも来たことがあって、その頃はホシノに色々と世話になった」
「……うへ?」
名前を呼ばれたホシノが顔を上げる。他の面々も『観測者』が親しげにホシノの名前を呼んだことに目を丸くした。
「えっと……『観測者』さんはホシノ先輩とお知り合いだったんですか?」
「さっきも言った通り二年前に少しな。まぁ危うく戦闘になりかけたけど」
「『観測者』。私はその話聞いてないんだけど……」
「言ってなかったしな」
愕然とする先生に『観測者』は面白がるように呟いた。しかし『観測者』はもうこれ以上話す気が無いのか腕を組んで壁にもたれ掛かると、アヤネに話を続けるよう促した。
その視線に気付いたアヤネも一つ頷いてから口を開く。
「何はともあれ、お二人の手助けのお陰でヘルメット団から学校を守る事が出来ました……改めてお礼を言わせてください」
「私はただ皆の指揮をしただけで実際に戦ったのは君達だ。『観測者』はともかく、私にお礼はいらないよ」
頭を下げるアヤネに先生が声を掛ける。その表情には嫌味の一つもなく、先生が本気でそう思っているのだと委員会のメンバーに思わせた。
「それで一つ聞きたいんだけど、君達が所属してる廃校対策委員会って一体?」
「そうですね。まずそこからお話しします……アビドス廃校対策委員会は、このアビドス高等学校を蘇らせるために集った有志達によって結成された部活なんです」
「うんうん! 全校生徒が集まる校内唯一の部活なのです!……と言っても全生徒はここにいる私達だけですけど……」
アヤネの説明に補足する形でノノミがあまりにも悲しい現実を口にし、苦笑いを零す。
「他の生徒は転校したり、学校を退学したりして町を出て行った。学校がこのありさまだから、学園都市の住民もほとんどいなくなってさっきのカタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校が襲われてる」
「あんな奴らに負けるつもりはないけど……現状だと、私たちだけじゃいつまで学校を守り切れるかわからない。在校生としては恥ずかしい限りだけど……」
「はい、最近はヘルメット団の襲撃頻度も上昇しており……もし『シャーレ』からの支援がなかったら、今度こそ万事休すっていうところでした」
「そうだね~。補給品も底をついてたし……いやぁ~、流石に今回はもう素手でやるしかないかなって覚悟したよ~。なかなかいいタイミングに現れてくれたね、二人とも」
シロコ、セリカ、アヤネ、ホシノがそれぞれの思いを口にする。アビドスは砂漠地帯であり、定期的に発生する砂嵐によって環境も悪い。それによって自治区を去る者が出てくるのも仕方の無いことではあった。
「にしてもヘルメット団の連中も懲りないよねぇ〜。毎回撃退されてるのにさ……あ、そうだ」
思わずと言ったようにボヤいたホシノの顔がみるみる内に悪い物に変わっていく。その顔を見た先生が「ホシノ? どうしたの?」と訊くがこの後の展開を察した『観測者』はこれから起被害に遭う者達に向けて心の中で合掌を送った。
「いや〜、ヘルメット団には攻められてばっかりだったからさ。先生と『観測者』君がいる今の内にこっちから攻めちゃわない?」
「……で、ここが奴らのアジトか」
アビドスを出発した『観測者』達はヘルメット団のアジトと目される廃墟の前に勢揃いしていた。
『中には大量のヘルメット団がいると予想されます……皆さん、気を付けてください!』
「うへ〜、おじさんには大変な仕事だぁ〜。まぁでも、これで襲撃も無くなるならいいのかな〜」
ドローンの中継を介して語りかけるアヤネにホシノが気怠げに返す。しかしそんなホシノの瞳が鋭くなったのを『観測者』は目撃した。
(何も知らなきゃあまりの変わりように腰を抜かしてただろうけど……やっぱ根っこが“暁のホルス”まんまなんだよな……)
そんな事を考えていた『観測者』だが、気を取り直して自身の背にあったアサルトライフルを右手に握り、横にいる先生に頷きを見せた。
「……じゃあ、行こう」
静かな声と共に『観測者』が勢い良く扉を蹴破って中に突入する。それに続く形でシロコ、セリカ、ノノミ、ホシノ、先生が中に入り、目についたヘルメット団に向けて容赦無く弾丸をぶち込んでいく。
「な、なんだぁ!?」
「こいつ等アビドスの……!?」
「俺は部外者だけどな」
『観測者』は動揺する二人組を狙撃し、さらに後方で固まっていたヘルメット団に手榴弾を二つほど投擲する。連続して爆発が発生し、ヘルメット団達の間でさらに動揺が広がっていく。
そしてそんな風に狼狽えている彼女達をホシノ達は冷静に沈めていった。
「え、えげつない……」
それを見ていた先生は口元を引き攣らせ、一切の遠慮ナシに暴れる『観測者』にブルリと震えた。
「クソッ、嘗めるなぁ!!」
「おっと……別に嘗めてないさ」
ある程度動揺も収まり、反撃してきたヘルメット団の銃弾を後方に飛ぶことで躱しすぐさま銃を構え直す───と、そんな『観測者』の周囲をどこに隠れていたのか四人のヘルメット団が囲う。
「ありゃ」
「ハッハッハ! 掛かったな馬鹿め!」
四方から銃口を向けられた『観測者』は両手を上にして、そんな彼を見たヘルメット団が勝ち誇ったように笑う。
「さっきは良くもやってくれたな仮面ヤロー。私達を敵に回すとどうなるか思い知らせて──」
「思い知らせるのは良いんだけど、俺に気を取られてばかりで良いのか?」
は?と呆けた声が聞こえた瞬間、その頭部を弾丸が撃ち抜いた。
「ん、油断大敵」
「私達もいるってこと忘れないでよね!」
「行きますよ〜☆」
シロコ、セリカ、ノノミの三人がそれぞれ一人ずつヘルメット団を倒し、一気に形成が逆転する。では彼女たちが相手していたヘルメット団はどうなったのかと言えば既に倒されていた後だった。
「だから言ったろ? 俺に気を取られてばかりで良いのかってさ」
「ぐ、クソ……! お、お前ら! 逃げるぞ、急げ!!」
悔しげに唇を噛んだヘルメット団のリーダーが他の無事な仲間と共に慌てて去っていくのを『観測者』達は黙って見送った。
「あ、あっさり終わったね……」
「総合的な力で彼女達に勝ち目なんて無いし、こうなるのも当然っちゃ当然だけどな」
「うへ〜、ともかくこれでヘルメット団の脅威は去ったってことで良いのかな〜」
そんな気の抜けるようなホシノの声と共に、長い事アビドスの悩みのタネだったヘルメット団の撃退に成功した。
「ただいま〜」
「お帰りなさい皆さん。カタカタヘルメット団の撃退、お疲れさまでした」
廃墟を離れ、アビドスへと戻ってきた皆をアヤネが出迎える。ヘイローを持つ生徒達や『観測者』に疲れはあまり見られないが、キヴォトス外からやって来た先生の表情には疲れが見え隠れしていた。
「火急の事案だったカタカタヘルメット団の件が片付きましたね。これで一息つけそうです」
「そうだね。これでやっと、重要な問題に集中できる」
「うん! 二人のお陰だね、これで心置きなく全力で借金返済に取り掛かれるわ!」
セリカが放ったその一言に反応したのは先生だ。しかし『観測者』はアビドスの問題を認知しているため、驚きは無い。
「ありがとう! この恩は一生忘れないから!!」
「借金返済って?」
「……あ」
しまったとばかりにセリカが手で口を塞ぐが既に言ってしまった手前、誤魔化しようがない。
「……あわわ!」
「そ、それは……」
「ま、待ってアヤネちゃん! それ以上は!!」
躊躇いながらも口を開こうとするアヤネをセリカが慌てて止める。そんな二人を見て、静観していた『観測者』が口を挟んだ。
「話し難い事なら無理にとは言わない。けど、俺の事は信じられなくても先生は純粋に力になりたいと思ってる。良ければ話してあげてくれないか?」
「そうそう〜。『観測者』君の言う通り、話しちゃっても良いと思うな〜」
「ホ、ホシノ先輩まで……」
自分と同じ気持ちであるはずのホシノの言葉にショックを受けたような顔をするセリカに先生が声を掛ける。
「私は君達の力になりたい。先生として、一人の大人として───」
「やめてよ! 今まで大人達が、この学校がどうなるかなんて気に留めたことなんてなかった! この学校の問題はずっと私達でどうにかしてきたの! なのに、今更……大人が首を突っ込んでくるなんてっ!」
声を荒げたセリカが涙を滲ませながら教室を走り去っていく。そんなセリカの後を追ってノノミが出ていくと、その場に重苦しい雰囲気が流れる。
「ごめん……私のせいで……」
「い、いえっ! 先生は悪くありません!」
「アヤネの言う通り。でもセリカの気持ちも分かるよ。今まで大人はこのアビドスの問題に見向きもしなかったから──こんなことは先生が初めて」
落ち込む先生をアヤネとシロコが慰める。その様子を見ていた『観測者』は隣に立つホシノに顔を向けた。
「借金、今はいくら位だ?」
「9億6235万円。昔よりほんの少しだけ減ってるよ」
「それでも道のりは険しい……か」
前途多難だなと、気付かれないように小さく息を吐いた。たとえ今の借金を全て返せたとしてもアビドスは砂漠地帯で、いつまた巨大な砂嵐に見舞われるか分かったものではない。まだまだ考えるべきことはたくさんあるのだと『観測者』はそう思わざるを得なかった。
「こんなところで寝てると風邪引くぞ」
次の日、セリカに話しかけてみると言ってホテルを出ていった先生を見送った『観測者』は、一人アビドス高校の屋上にやって来た。
しかしそこには先客───床にマットを敷いて寝ているホシノの姿があり、それに苦笑しながらもホシノに声を掛けた。
「ん……んぅ……あれ……? 『観測者』? なんでここにいるんですか……?」
「寝惚けてるのか? 俺は昨日からアビドスにいるだろうが。後口調が戻ってるぞ」
「……はぇ……ッ!? い、いや、これはその、違っ!」
寝惚け眼のまま『観測者』と会話していたホシノは状況を思い出し、ワタワタと手を振りながら顔を赤くした。
「疲れが取れてないのか? 随分とぐっすりだったな?」
「うっ……か、からかわないでってばぁ……!」
仮面の下でニヤニヤと笑う『観測者』といよいよ両手で顔を覆ったホシノ。端から見れば事案待ったなしである。
「まったく。初めて会った時は容赦無く撃ってきたお前が俺に反撃されるなんて思っても見なかったろ?」
「い、いやいや。あの時は君があまりに怪しかったから……!」
「あーあー、聞こえない聞こえなーい」
詰め寄ってくるホシノを躱し、『観測者』はクツクツと愉快げに笑う。そしてくるりと体をホシノの方に向けると真面目な口調で話し掛けた。
「……先生のことが信用できないか?」
「───いきなりどうしたの?」
「お前の大人に対する気持ちはほんの僅かに分かってるつもりだ。それに、時々先生を見る目が見定めるような目になってるのも気付いてる。その上で言うぞ───先生を頼ってやってくれ」
真剣な口調で話す『観測者』にホシノは何も言わない。いつもなら適当にはぐらかして切り上げていただろうが、こと『観測者』に関してはそれが通用しないのだ。
「昨日の黒見セリカの態度を見ていてもイマイチ先生の存在が受け入れられてるとはあまり思えない。奥空アヤネや砂狼シロコ、十六夜ノノミは信頼してるだろうが、お前と黒見セリカはまだ信じるに至ってないんだろ?」
「……そこまで分かってるなら、おじさんが何か言う必要も無いよね〜?」
「……そうか。あー、悪い。変なこと言った。忘れてくれ」
暗にお前に話す気は無いと告げられたからか、『観測者』は踏み込みすぎたなと反省しつつ、屋上を後にし、その場にはホシノ一人が残された。
「……分かってるよ。でもね『観測者』、私はアビドスの先輩として後輩を守らなきゃいけないんだよ」
そういえば観測者のプロフィールとかないよなってなったので置いときますね
名前:『観測者』、神依ミライ
年齢:18歳
身長:172cm
所属:■■■■分校、連邦捜査部『シャーレ』
専用武器:何でも(強いて上げればアサルトライフル)
趣味:読書、特訓
こんな感じかな?