ヘイロー持ち男子アリウス脱走生に憑依した男、ばにたすに中指を立てる   作:シャケナベイベー

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柴関ラーメンって一度は食べてみたいと思う。

後アツコは可愛い、これは真理。


仕事帰りに食べるラーメンほど美味いものはない

 どんよりとした灰色に曇る空。あちこちで銃声が響き、どんよりとした空も相まって暗い雰囲気を醸し出していた。

 

 

『ねぇミライ。これ食べて良いの?』

 

『ん? あぁ良いよ。オレよりアツコが食べなよ』

 

『でも、サっちゃんとミライ、私達に分けてばかりで全然食べてない……』

 

 

 薄暗い廃墟。そこで桃色の髪に白い仮面を付けた少女と少し土に汚れた少年が会話している。

 少女の手にはパンが握られ、先程の会話から少年が手渡したものだと分かる。

 

 

『良いから良いから。少しでも食べておけよ。お前に何かあったらオレもサオリも、他の皆も悲しいんだ』

 

『……うん、分かった。でも今度はちゃんと食べてね』

 

『勿論! さ、そろそろサオリとミサキが帰ってくる頃だろうし見張りをしてるヒヨリとアズサにも伝えてくるよ』

 

『分かった』

 

 

 そして少年は他の仲間の元に向かうため少女の下を離れる。彼にとってはいつものことで、何とかして皆にも暖かな日々を送らせてやりたいと小さく胸の内で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で。皆してどうしたんだよ」

 

「いや〜、それが先生ってばセリカちゃんの様子を見るために色々してたみたいなんだけど、その方法がなんともストーカー紛いでね〜」

 

「それで、セリカちゃんがバイトに行っているということが分かったんです☆」

 

「ん、だから皆で行こうって話してたところ。『観測者』も一緒にどう?」

 

「もし他に用事があるのであれば全然断ってくれても良いのですが……」

 

「そのバイト先がラーメン屋なんだ! どう、『観測者』も行かない?」

 

 

 アビドス組と先生から齎される情報を処理しつつ、彼女たちの期待に満ちた視線を受け止める『観測者』。

 

 話したいことがあるとモモトークで先生から連絡を貰ったのが数十分前。準備やら何やらを済ませてホテルを飛び出しアビドスにやってきたらそんな事を言われたのだ。

 

 

「ラーメン屋……となると『柴関ラーメン』か。へぇ、彼女そこでバイトしてたんだな」

 

「あれ、『観測者』は知ってたの?」

 

「いや、セリカ嬢がバイトしてるってのは知らなかったけど柴関ラーメンには行ったことがあるんだ。そもそもあそこ、キヴォトスの食べログにも載るほど有名なところだしな」

 

 

 あそこ安くて美味いんだよと、仮面で分からないまでも笑みを浮かべているだろう『観測者』を見て、先生は尚更に行きたくなった。

 

 

「よ〜し、そうと決まれば柴関ラーメンにしゅっぱ〜つ!」

 

『おー!』

 

 

 

 

 

「……という理由だ」

 

「だからってこんな一斉に押し掛けなくても良いでしょ!?」

 

 

 柴関ラーメンの店内でセリカがシャー!と猫の如く吠える。確かに押し掛けのように見えなくもないが、こうして注文もしているのだから許してほしいと『観測者』は心中で呟いた。

 

 

「はい、先生はこちらへ!私の隣空いてます!」

 

「……ん、私の隣も空いてる」

 

「え、ええっと……」

 

 

 ふと、テーブル席に座るノノミとシロコがそれぞれ自分の隣に先生を勧誘する。先生はどちらの隣でもなんだか気まずくなりそうだなぁと決めあぐねていたのだが、そんな先生の肩を『観測者』がトントンと叩いた。

 

 

「先生、なら俺の隣はどうだ? 同性だし角は立たないだろ」

 

「そ、そうだね。ごめんね二人とも、私は『観測者』の所に行くよ」

 

「分かりました。なんだか気を遣わせてしまってごめんなさい『観測者』さん☆」

 

「ん、ごめん」

 

「良いよ。俺の方こそ割り込む形になってごめん。今度なんか奢るよ」

 

 

 困り眉で謝罪を述べるシロコとノノミに手を振り、先生を別のテーブル席に案内する。

 

 

「うへぇ〜。『観測者』君も二人の横に座れば良かったのに。わざわざ新しいテーブルを取ることも無いんだよ?」

 

「沢山の女子の中に男子が紛れ込むのは勇気がいるんだ。察してくれ」

 

「あっ……! も、もしかして私達に気を遣って付いてきてくれたのでしょうか? だとしたらすみません……」

 

「いやいや。俺も純粋に柴関ラーメンに行きたかったし丁度いい機会だったからな。申し訳無く思う必要なんてないよ」

 

 

 ホシノとアヤネとの短い会話を終え、『観測者』もテーブルに付く。そしてしばらくすると、セリカがラーメンを持ってやって来た。

 

 

「お待たせしました、柴関ラーメン並です!」

 

 

 ドンッと勢い良く先生の前にラーメンが置かれる。どうやら、セリカの中で先生の評価は下に位置しているらしい。

 

 そして『観測者』の下にも柴関ラーメン大が運ばれ、箸を割ってさぁ食べようとした『観測者』はそこで動きを止めて周りを見る。

 

 

「……なんで皆俺の方見てるんだ?」

 

「いや、『観測者』って食べるときもその仮面してるの?」

 

「そんなわけ無いだろ。ちゃんと取るよ」

 

「ええっ!?」

 

「そんな驚く?」

 

「だって『観測者』、普段から仮面なんて取らなかったよね!?」

 

「仮面付けたまんま食事できるわけ無いだろ」

 

 

 訝しげに先生達の方を向いた『観測者』に先生が驚愕の声を上げる。それに煩わしそうに手を払いながら仮面に手をかけるとゆっくりと外していく。

 

 そして顕になった彼の目元には視界を覆うバイザーが取り付けられていた。

 

 

「……え。仮面の下にバイザー??」

 

「そうだが」

 

「……仮面の上からそれってアンタ、蒸れたりしないわけ?」

 

「問題無い。ミレニアム謹製の特殊なバイザーだからな」

 

 

 それだけ言うと『観測者』は早速ラーメンを食べ始める。それを見て他の皆も食べ始め、少しだけ静かな時間が流れる。

 

 

「にしても久し振りだなぁ『観測者』君」

 

「はは、柴大将も元気そうで良かったよ」

 

「あったりめぇよ! オレは皆にラーメンを食べてもらうためにこの店をやってるんだからな、休んでられないぜ!」

 

 

 ズルズルと麺をすすり終え、ひと息ついた『観測者』に二足歩行で立つ柴犬──柴関ラーメンの店主『柴大将』が懐かしそうに話し掛けると『観測者』もそれに応える。

 

 二年前に『観測者』がアビドスを訪れたとき、色々お世話になったのが目の前の柴大将だったのだ。三日ほどの滞在だったとはいえ『観測者』にとっても恩のある人だった。

 

 そして全員がラーメンを食べ終わり、会計のためにレジへ向かう。

 

「さて、会計だが誰が払うんだ?」

 

「じゃあ私が──」

 

「まぁまぁ、待ちなってノノミちゃん。ここは先生に奢ってもらおうよ」

 

「えっ!?」

 

 

 自分が払おうとノノミは懐からゴールドカードを取り出すが、横にいたホシノがそれを遮り先生に奢ってもらおうと提案する。

 突然の指名に先生は目を丸くしてホシノを見るが、当の彼女はにへらと笑みを浮かべるばかり。

 

 

「どうするんだ先生? 懐が素寒貧って訳でもないんだろ?」

 

「ま、まぁね……」

 

「うへ〜、大人のカードあるじゃん。これで払ってもらおうよ〜」

 

「わざわざ大人のカードを使うような場所でもなさそうですが……先輩、もしかして初めからこれが狙いで先生を誘ったんですか?」

 

「先生としては、可愛い生徒たちの空腹を満たしてやれるチャンスじゃーん?」

 

 

 『観測者』の言葉に頬を掻く先生の懐からホシノが一枚のクレジットカードを取り出すと、それを見たアヤネはホシノの思惑を察知した。

 そしてそんな先生にノノミが近寄り、ボソッと耳打ちする。

 

 

「……先生。良かったらこれで払ってください」

 

「ううん。大丈夫、気遣ってくれてありがとうノノミ。ここは私が奢るよ」

 

 

 生徒に払わせるわけにはいかないと先生は大人のカードを使って会計を済ませる。そうして店を出るとホシノが先生に感謝を告げた。

 

 

「いやー! ゴチでしたー、先生!」

 

「ご馳走様でした」

 

「うん、お陰様でお腹いっぱい」

 

「俺の分まで悪いな先生」

 

「全然大丈夫だよ」

 

 

 ホシノ、ノノミ、シロコ、『観測者』からそれぞれお礼を言われた先生は笑顔で応対する。そしてそんな彼らに店から出てきたセリカが怒鳴った。

 

 

「早く出てって! 二度と来ないで! 仕事の邪魔だから!」

 

「あ、あはは…またねセリカちゃん」

 

 

 セリカの剣幕に苦笑いを溢したアヤネが別れを告げると他の面々も柴関ラーメンから立ち去っていった。

 

 

 

 

 

 

 夜も更けてきたアビドスの市街地を『観測者』は当てもなく一人歩く。何か忘れていることがあるような気がして、宿泊しているホテルからここまで歩いてきたのだ。

 

 

「何だったかな……本編の記憶も重要そうな場面以外は朧げになってきてるし凄くモヤモヤするなぁ……」

 

 

 徐々に薄れていく原作知識。何かが起こるという予感はあってもそれが何だったのか思い出せずにいる。

 とその時、少し離れたところで銃声と爆発音が『観測者』の耳に届く。そしてそれを聞いたことで彼は何が起きるのかを思い出すことができた。

 

 

「爆発音に銃声……夜の市街地に柴関ラーメン……セリカ誘拐か!」

 

 

 慌てて音のした方へ走っていく。全力で走れば数十秒で着ける距離だ、足に力を込めて地を蹴る。

 

 

「ッ! セリカ!!」

 

「ゲッ、見つかった!」

 

「急げ、ズラかるぞ」

 

 

 『観測者』がその場にたどり着くと、丁度カタカタヘルメット団が意識を失っているセリカを荷台に運び込んでいるところだった。

 

 そして現場を見られたことに焦ったヘルメット団は慌ててセリカを運ぶと急いで車を走らせる。逃走するつもりだ。

 

 

「待て馬鹿!」

 

 

 走り去るトラックに手持ちのハンドガンでタイヤを狙い狙撃するが、地面に当たって外れる。ならばと緊急時用に携帯していた発信機をトラックに向かって投げる。

 

 投げられた発信機は無事にトラックに引っ付き、トラックはそのまま走り去っていった。

 

 スマホでしっかり位置情報が追えていることを確認し、先生に事態を伝えようと電話を掛けようとした『観測者』の耳に複数の足音が聞こえた。

 

 

「……オートマタだと?」

 

 

 物陰から姿を見せたのはキヴォトスでよく見る戦闘用のオートマタだ。以前カイザーコーポレーションの子会社の一つを潰した際に戦闘したことがあった。

 現れた八体程のオートマタは全員が一様に『観測者』にその銃口を向けていた。それに小さく舌打ちをこぼし、『観測者』はハンドガンを強く握る。

 

 

「手持ちはハンドガン一つに手榴弾四つ……やるしかないか」

 

 

 こんなことになるならアサルトライフルも持ってきておくんだったと軽く後悔しながら『観測者』は重心を前のめりにしつつ一気にオートマタとの距離を詰める。

 

 まず一番先頭に立っていたオートマタの銃口を蹴り上げ、僅かに体幹がブレたところをハンドガンで狙撃する。それを見た他のオートマタ達が銃撃してくるが先程のオートマタを盾にして防ぐと、突き飛ばして他のオートマタとぶつけ合わせて倒れさせ手持ちの手榴弾を投擲して爆発させた。

 

 

(これで二体制圧。あと六体)

 

 

 考えを巡らせ、あたりに視線を回す。遮蔽物となるようなものは無く、互いに互いの位置が丸わかりとなっている。電柱などあるにはあるが遮蔽物としては機能不全もいいところだ。

 ならばと気絶したオートマタの銃を拾い、それを使って狙撃する。放たれた数発の弾丸は一体のオートマタを沈め、一体のオートマタから銃を取り落とすことに成功した。

 

 それによってガラ空きになった胴体に狙撃することで新たに二体のオートマタを鎮圧した。残る四体も銃を乱射するが、『観測者』はそれを躱しながらオートマタに接近し残っていた手榴弾を叩き込んで爆発させる。

 

 

「終わった……楽な相手で助かった──こいつ等も気になるが、今はとにかく先生に連絡しないとな」

 

 

 火花を散らして倒れるオートマタ軍団を一瞥し、『観測者』は先生の番号へと電話を掛ける。

 

 

『もしもし『観測者』? どうしたの?』

 

「緊急事態だ先生。セリカが攫われた」

 

『えっ!? 本当に!?』

 

「あぁ。下手人はカタカタヘルメット団でトラックを使って逃走した。一応トラックに寸前で発信機を付けたからその座標を先生の端末に送る。他の皆にもこの事を伝えておいて欲しい──俺はホテルに戻ってアサルトライフルとバイクを取ったら奴らのトラックを追う」

 

 

 電話に出た先生に手短に用件を伝えると『分かった。無理はしないでね』とだけ返ってきて少し笑みが浮かぶ。

 

 

「じゃ、後で合流しよう」

 

『うん、気を付けて』

 

 

 そして通話が終わると『観測者』は急いでホテルへ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「……やはり、この程度では足止めにもなりませんか……」

 

 

 オートマタの残骸が残された場所に一人の影──男が現れ『観測者』が走り去った方向に目を向けていた。男は黒スーツに身を包み、顔は黒くヒビが入ったかのようで大凡普通の人間とは言い難い容姿をしていた。

 

 

「クックックッ……『マダム』が目を掛けていただけはあるということでしょうか? やはり貴方とは直接お会いしたいものです。そうでしょう───」

 

 

 

 

 

 

 

「……神依ミライさん?」

 

 

 夜の闇に不気味な笑い声だけが響いていた。




最後に登場した人物……いやぁ一体誰なんだろうなぁ()
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