東春秋25歳。好きなタイプは元気な子。「打倒、東くん!」と息巻いて、こちらが目に入ると撃ってくる子。予期せぬ機動で局面を動かし、「やられた!」と驚かせてくれる子。新オプションを開発して既存の戦術を引っくり返し、猛烈に燃えさせてくれる子。こちらがそのオプションを攻略すると、「悔しい~!」と騒いで泣いてくれる子。
―――と、以前に訊かれたので東が答えたとき、ぐだぐだと雀卓を囲んでいた面々は、「「「へぇ…」」」と一斉に低い声で言ったものだ。「俺らムサいな~」という自虐から始まった雑談は、急に実体を持った話へと切り変わった。呆れたような諏訪とは違って、太刀川はニヤッとして前のめりになった。
「 それって、一人しかいないじゃん 」
東は飄々として言った。
「 そう。狙ってるから、手を出すなよ 」
「 狙わないよあんなの 」
「 やべー。いきなりの“牽制”ってか?行ったれよトラッパー! 」
「 あいつとはそんなんじゃないぞ 」
諏訪がニヤニヤと笑ったが、冬島は煽りに乗らなかった。こうして茶化す側にまわっているものの、諏訪は警戒対象だ―――と、かねてから東は見なしている。「心底理解できない」という顔つきをして、太刀川はそれ以上踏み込まなかった。
( …諏訪のほうが上手く誘っただろう。だが、運は俺にあった )
ステージのどこに転送されるかによって、実行できる作戦は変わってくるものだ。
東は、西と一緒に餃子の玉将に入り、カウンター席がすべて埋まっているのを見かけたとき、改めて自身の幸運を確信した。「6番席、2名様」「はーい」などの掛け声のなか、これにて陣形は狙い通りだ。かつて“速攻”で鳴らした西さんは、水とおしぼりを受け取るや否や、それを持ってきた店員に対して、無茶苦茶な量の注文をした。「奢るよ」と言ってしまったこちらのことを、容赦なく削り倒すつもりらしかった。
「 腹立つわ、平気そうな顔して。ご心配なく。自分で払いますから 」
西は東をじっと見据えて言った。
東は視線を合わせられなかった。
流れるように注文を言われて、店員はその記録に手間取ってしまった。焦りを見せるアルバイトに、西は穏やかな調子で言った。
「 以上、全部持ち帰りで。多少間違っちゃっても、あはは、構いません!長いから確認も要りませんよ。お箸鷲掴みしてつけといてください。ここでいただくぶんは、後でオーダーさせてもらいます 」
「 かしこまりましたぁ 」
「 …もうそんなに部下がいるのか? 」
東は怖々と尋ねかけた。大学院生の自分なんかよりも、就職した西は強い(財布が)ようだ。
西はけろっとして言った。
「 まさか。今はみんな忙しいから、フロアのみんなに陣中見舞。慎次さんにお礼もしたいけど―――あの人、何が好きなのかな。東くん、知ってる? 」
「 待て待て、『慎次さん』って 」
「 いま助っ人に来てくださってるの 」
西さんは嬉しそうに言った。東は殴られたような心地だった。
「どうよ?凄いでしょう?」という笑顔は、俺に挑むときだけに見せて欲しかったのに…。
不意の一撃に怯んだだけでなく、じりじりと焦る状況である。
東は自身の想定の通り、近接戦では苦戦を強いられた。ニコニコする西とは反対に、東は冬島の侮れなさにこぶしを固めた。
西さんはとてもご機嫌である。
「 あの人、すごく良い人よね。もう俺は現場だから、気を遣うな~って。A級2位だそうだけど、あんなにカッコよく現れたら、もう室長が絶対手放さないよ。実質、エンジニアと二足の草鞋。さりげない“援護”、すごいよね。いろいろ教えてもらってるんだ 」
「 …そうか。“援護”か、そうか 」
違うぞ、これは