【完結】西千夏は東春秋を倒したい   作:Tohka.A

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【ROUND2】ラウンジ・ロッカールーム
VS太刀川慶・弓場隊・鬼怒田本吉


 

もう夜だから帰らないといけないけど、基地は楽しいからまだ帰りたくない。そんな気分の帯島ユカリは、ラウンジの一郭でピクッとした。彼女は、先ほど孤月の稽古をつけてくださった、太刀川隊長に挨拶をしにあがったところだった。お話を遮ってはいけないので、太刀川隊長の後ろに控えていたら―――非戦闘員の人を相手に、太刀川さんは凄いことをおっしゃった!

躾けられた行儀を忘れて、帯島は女子中学生らしくジタバタした。

 

 

「 うっひゃー、東さんにも恋愛とかあるッスか!?西さんっていう人、気になるッス! 」

 

 

帯島ユカリは声がでかい。

斬られたうえに、追撃だ―――西千夏はぐらっとよろめいた。わらわらと集まってきた中学生たちに、西は無邪気に退路を断たれてしまった。噓でしょ東くん、ちょっと知名度高すぎよ…と、恨むけれども彼は悪くない。

 

 

( 悪いのはコイツだ… )

 

 

コイツだコイツ、太刀川慶。

西は瞳をかっぴらいて、まるで荒野のガンマンかのように仁王立ちした。自販機で平然とジュースを買っている太刀川を、今すぐぶっとばしてやりたかった。

引き金をひく指で―――バキィ!と西が缶コーヒーを開けたとき、太刀川は殺気に反応した。「ぶちのめすぞ」という意志を宿した西の瞳に、太刀川はゾクゾクして笑った。今の我々がぶつかったら、どんなに面白いか…。太刀川は楽しくてならなかった。

 

帯島はつい浮ついて騒いだが、猛者たちの気迫に圧倒されて固まった。西は極力穏やかに言った。

 

 

「 ねえ、銃は怖くないでしょ? 」

 

 

とある決断を下したのだ。

よし、本日実験台としてキューブ化される奴は、お前で決まりだ太刀川ァ!シミュ室で砕いて記録とってやるから、蜂の巣にされに来いや!!!―――と、西さんは思うけど怒鳴ったりしない子です。もう新卒というわけではありませんので、ちゃんと我慢ができるんです。

太刀川は不敵に微笑んで言った。

 

 

「 怖いわけないだろ? 」

 

「 上等。ちょっとあんた開発フロアに来なさい。玉狛の小南ちゃんにするようなこと、わたしにまでしてくるんじゃない 」

 

 

西は穏やかに言ったつもりだ。

そこへ弓場が走りこんできて、固まっている帯島の頭を鷲掴みにした。

 

 

「 すみません、姐さァん!! 」

 

 

弓場拓磨もまた声がでかい。

しかも速い。速い。遮る暇なんてない速さだ。

西は彼にリボルバー式銃を与えている。

 

 

「 帯島ァ!こちらの姐さんが西千夏さんだ!!! 」

 

 

西は社会的に死んだ。

無数の追尾弾(ハウンド)のように、深く頭を下げた弓場・帯島の後ろから、好奇の目がぐさぐさと突き刺さってきた。

現場を離れて長いので、西からすればそれは「知らない子たち」ばかりだが…弓場隊狙撃手の外岡は、「おおお…!」と興奮の息を漏らしていた。知ってる、あの人、こないだ射撃場で見た!たしかに東さんと仲良さそうだった!―――という個人の囁きはどよめきへと変わる。

 

爆発的ラウンジから緊急脱出したとき、西は恥ずかしいやら悔しいやらで涙目だった。思い思いに騒ぐ中高生たちなど、ただのエンジニアに止められるわけがない。

西は開発室に駆け込むなり、「うぇぇ虐められたぁ!」と叫んだ。「雷蔵!あいつぶっとばそう!」と言って、西はスコーピオン開発者に絡んだ。大騒ぎするやんちゃな子たち(姉のほう)に、鬼怒田は腕を組みながら訊いた。

 

 

「 どうした 」

 

「 うっうっ太刀川がぁ…!まあまあアホのくせに、わたしのこと高校生と同じ扱いしてきて、ラウンジで嘘を広めたんです! 」

 

 

弓場くんたちは悪くない。

と、西は涙目だがちゃんとわかっている。

襟首を掴まれたまま寺島は、「やっちゃってください室長!」と騒いだ。

鬼怒田は真剣な態度で言った。

 

 

「 対処が必要か?どういった内容だ? 」

 

「 それは… 」

 

 

西はしゅんとして後悔した。

ああこんなくだらないことで、室長のお手を止めさせるんじゃなかった。「舐めてる後輩」というつながりで、あとで響子ちゃんにそっと愚痴っておけばよかった。「迅がお尻触ってくるって?太刀川も最悪だよ」と…―――こんなのはロッカーの前でする話だ。

「さっさと言え」と鬼怒田に叱られて、西は正直に述べるしかなかった。

 

 

「 …東くんが、わたしのこと好きっていう嘘です 」

 

 

物凄く恥ずかしかった。

そっと寺島を離してやって、西は項垂れた。

鬼怒田は不快そうに顔を歪めて、浮ついている若手をどやした―――(トラップ)、発動である。

 

 

「 それは嘘じゃないだろう。何を言っとるんだおまえは 」

 

 

鬼怒田は仕事に戻った。

 

 

「 えええ!? 」

 

 

西は素っ頓狂な声で詳しく訊いたものの、二度と鬼怒田に相手をしてもらえなかった。

さながらネズミ返しからの転落だ。もう取り付く島なんてないのだ。

自由になった寺島は、自席でケタケタと笑うばかりだった。ゆるやかにそしてしたたかに、彼もまた牙を研いでいるのだ―――このほど敵の懐柔を任されて、心理技術書で勉強をしていた。

 

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