ようこそ実力至上主義の世界へ   作:虚無の魔術師

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またノリと勢いで書いてしまった………面白いから仕方ないよね!!(言い訳)


入学

始まりは、喪失と絶望からであった。

 

視界に広がる赤い景色、悲鳴と笑いが響き渡る世界。過ぎ去った後に残されたのは、大切だったものの残骸と炎に焼かれながら生き延びた憐れな死に損ないだった。

 

心身ともに炎に焼かれ、灰にすらなりきれなかったソレは成長していった。あの日から芽生えた炎を胸の奥に仕舞い、人間として振る舞い続けて過ごしてきた。

 

だが────焔を秘めたその身は、人とは違う歪みを持っていた。自分自身の歪みを理解しながら、ソレは人として生きることを止めなかった。止められなかった。

 

 

────お前は人間だ。せめて人間らしく、笑って生きてみせろ。

 

 

そう言ってくれる人が、いたからこそ。燃えカスは火を宿した灰でなく、ニンゲンに成ることが出来た。そしてこれからも───────ニンゲンとして生きようと、決められたのだ。

 

 

◇◆◇

 

 

「────あっ、ちょっと良いですか!」

 

 

人も多く満席になったバスの中で、そんな声が唐突に響いた。席に腰掛けていた学生の青年が立ち上がったのだ。彼が呼び止めたのは、通路の前で困っていた老婆に向けてのものだった。

 

 

「優先席じゃないですけど、座りますか?」

 

 

座席を譲られた老婆はキョトンとしていたが、戸惑っているようだった。と言うより、無理に譲らせたと思って躊躇しているのだろうか。青年はいやいや、と軽く笑って答えた。

 

 

「大丈夫ですって。もうそろそろ降りる予定ですし、入り口の方で待ってるんで」

 

 

それじゃ! と青年は老婆が席にゆっくりと座ったのを見届けてから、入り口の方へと移動する。感謝するように頭を下げようとするのを遠慮しながら、満足そうな笑みのまま入り口の扉付近に向かっていく。

 

時間が経ち、目的地の学校前に辿り着いたバスからいち早く降りる青年。自分と同年代らしき少年少女たちもバスから降り始める。僅かに気にしていた青年も、そのまま前を歩こうとしていた所、

 

 

「ねぇ!ちょっといいかな!」

 

 

後ろから女子に声をかけられた。ふと振り返ると、さっきのバスで見た顔であった。────百人中百人が可愛いと断言できる程の顔立ちの少女。美少女と読んでも過言ではない彼女に、青年はほんの一瞬だけ眉を動かした。

 

 

「うん、良いけど………どうしたの?」

 

「さっきバスでお婆さんに席を譲ってたでしょ? 私、どうしようかなって思ってたけど、君がすぐに譲ってくれたからびっくりしちゃった」

 

「まぁね。ただ、やりたいことをしただけだから」

 

 

ヘーキヘーキ、と笑顔で応える青年に、少女は微笑みを深める。一瞬だけ、青年は何かに思っていたが、すぐに何時ものように戻る。

 

そうしていると、少女の方から自己紹介をしてくれた。

 

 

「私は櫛田桔梗(くしだききょう)、よろしくね」

 

「ああ────オレは如月双羽(きさらぎふたば)。よろしく、櫛田さん」

 

 

少年───如月双羽は軽く挨拶した。そして櫛田桔梗という少女と学校の玄関で別れる。彼女の姿が見えなくなった後、双羽は本当に不思議そうに呟く。

 

 

「…………変なヒト。無理しなくてもいいのに」

 

 

悪意もなく、ただ純粋な独り言。それは誰の耳に残ることなく、学生たちのざわめきによってかき消された。

 

 

◇◆◇

 

 

廊下を歩いていく双羽は、教員から渡されたクラス表を確認する。自分が配属するであろうクラスを、教室の前まで来てから知った。

 

 

「────Dクラス、ね。中々面白そうだ」

 

 

クラス表に従い、1-Dクラスの教室へと入っていく。既に多くのクラスメイトとなる学生がたむろしており、先程出会った櫛田さんと目が合い、互いに手を振って笑顔で応える。

 

ネームプレートが書かれた席を探していると、案外早く見つかった。荷物を持って歩いていると、自分の座席の真後ろに二人が座っていることに気付く。

 

 

「やぁ、おはよう。前、失礼するよ」

 

「…………ああ、おはよう」

 

「………………」

 

 

二人の生徒の反応は各々だった。すぐ真後ろの男子生徒………眠そうな眼、というより覇気のない印象の目立つ普通の少年だ。彼は一瞬驚いたような反応を見せたが、答えてくれた。

 

だが、もう一人の方が問題だった。可愛いというより綺麗、美人な女子生徒は本を読んでいるらしい。重要なのは、明らかに聞こえているはずなのに無視されたことだ。泣かば困ったように笑った双羽は、まずは答えてくれた男子生徒と言葉を交わす。

 

 

「オレは如月双羽。よろしくな」

 

「………俺は綾小路清隆だ………如月でいいか?」

 

「ん、いいよ。こっちこそ宜しく、綾小路」

 

 

座席を後ろに向けながら、そうやって挨拶をし合う二人。綾小路は少し考えながら、話したりしてくれた。見た感じ、人付き合いがあまり得意ではない普通の学生だ。

 

 

(普通、だね─────でも、何か違う)

 

 

だが、自分の視覚が感じ取った答えを双羽は心中で否定した。感覚的に、綾小路から感じられる違和感に気付いたのだ。自分自身が、何よりも信じる第六感────直感によって。

 

 

如月双羽は、ある日から一つの感覚が鋭敏と化した。それこそが、直感である。第六感という部分が常人より優れ、ことあるごとに何かを強く感じ取ることが出来た。

 

───違和感、疑問、謎。あらゆるものを敏感に認識する直感に、双羽自身は救われてきた。双羽の優れたところと言うのならばコミュニケーション能力ではなく、この直感と言うべきであろう。

 

 

─────だからこそ、普通にしか見えない綾小路に直感が強く反応した。それは違和感の証明、疑問の提示、そこに謎があると感じ取ったに違いない。断言しよう、彼には何かの秘密がある。

 

 

(…………いや、止めよう。悪い癖だ)

 

 

直感を頼りにするのは良いが、他人のプライベートにまで踏み込むべきではない。自分自身のやろうとしたことを反省しながら、双羽は話を続ける。

 

 

「そういや、ずっと気になってたんだけど………」

 

「………なんだ?」

 

「隣の子とは話せたのか?」

 

「……………俺にはまだ早かった」

 

 

明かに肩を落とす綾小路。案の条彼もスルーされたらしい。他人と話すのがあまり得意ではない彼には中々に厳しい、いやキツかったことだろう。

 

だが、双羽は諦めが悪い。再度少女へと話し掛けてみる。

 

 

「ハーイ、おはよー」

 

「……………」

 

「えっーと、ハーロー、アニュハセヨー」

 

「………………」

 

「…………何語なら答えてくれると思う?」

 

「何語でも駄目じゃないか……?」

 

 

見向きもしない女子生徒に、流石にお手上げのようだった。突然聞かれて戸惑う綾小路だったが、突如少女が動いた。静かに読んでいた本を閉じ、露骨に溜め息を吐く。

 

 

「…………話しかけて欲しくないのが分からないのかしら」

 

 

面倒だ、と言わんばかりに少女は告げる。だが、ようやく話が出来る状況になったと綾小路と双羽が声をかける。

 

 

「俺は綾小路清隆…………まあ、席が隣同士になったんだし、名前くらいは教えてくれないか? 何かと不便だし」

 

「オレ、如月双羽。斜めの席って事で、オレにも教えてくれない? そこの人、って言うのも失礼だし」

 

「………堀北鈴音よ。言っておくけど、私はよろしくしようとは思わないから挨拶は不要よ。………あと、名前は呼ばないで。不快だから」

 

 

バッサリと断言して、読書に戻る堀北。どうやら気難しい性格らしい、互いに見合った綾小路と双羽は「これ以上無理に絡むのは止めよう」と無言で決意を表明した。

 

 

そうしていると、教室の扉を開けて一人の女性が入ってきた。学生ではない、引き締まったスーツ姿と厳格そうな顔立ちからして、恐らく───いや、間違いなく教師であろう。

 

 

「…………新入生諸君。私はDクラスを担当することになった、担任の茶柱佐枝だ。普段は日本史を担当している。この学校には学年ごとのクラス替えは存在しない。卒業までの3年間、私が担任としてお前たち全員と学ぶことになると思う。よろしく。

 

 

今から1時間後に入学式が体育館で行われるが、その前にこの学校の特殊なルールについて書かれた資料を配らせてもらう。以前、入学案内と一緒に配布はしてあるがな」

 

 

そう話した教師の茶柱先生は配布物を出し、全員に配り始めた。それと同時に、茶柱先生はあることの説明を始めた。

 

一つ、学生は学校の敷地から出ることは許されず、外部と接触することや連絡すらも禁止されている。当然、あくまでも自分から接触することを禁止しているのであって、外部から干渉されることは想定していない。

 

何故ならこの学校が国によって管理された特別な学校であるのだから。

 

 

そして、二つ目 Sシステムなるもの。難しい話だったが、要約するに────この学校では金の代わりに、ポイントというものを使うらしい。生徒はこのポイントを使い、買い物をしたりすることが出来る。そして、新入生全員に配られた学生証端末、スマホには事前に10万ポイントを入れてあるとのこと。

 

興奮に包まれるクラス。恐らく、他のクラスも同じなのだろう。響き渡る生徒たちの盛り上りの中で、双羽はあることを疑問に思った。

 

 

(10万ポイント………新入生全員に?)

 

 

一クラスに生徒は40人、クラスはA~Dの四つ。つまり、新入生は160人前後ということになる。計算すれば、大金なんて話ではない、一つの事業レベルの資金になる。明らかに、可笑しいとしか言えない。

 

そして、懸念点は他にある。

 

 

(先生はポイントは1ヶ月ごとに配布されるって言ってた。けど、多分10万ポイントになるかは怪しい。だって先生自身が明言してないんだから)

 

 

そして、周囲から感じる違和感。此方を観察するような、眼の存在。明らかに不気味過ぎる。嫌な予感しか感じないが、双羽はこの事を共有しよう────とは考えられなかった。

 

 

(まだ、ダメだ。証拠が足りない、これじゃあまだオレの直感だけのものだ。もう少し様子を見る、或いは調べてみないと………)

 

 

説明を終えた茶柱先生が教室を後にした今、既に自由となった生徒たちが楽しそうに世間話をする。貰ったポイントで何を買うか、何をして遊ぶかと盛り上がっていた。そんな最中、一人の男子生徒が手を上げた。

 

 

「皆、少し話を聞いて貰ってもいいかな?」

 

 

爽やかで優しそうな少年に全員の視線が集まる。好青年、というべき彼は物怖じせずに話し始めた。

 

 

「僕らは、今日から同じクラスで過ごすことになる。だから今から自発的に自己紹介を行って、一日も早く皆が友達になれたらと思うんだ。入学式まで時間もあるし、どうかな?」

 

 

クラスの大半が賛同したように答え、一部が興味ないと言わんばかりに退出した。明らかに粗暴な雰囲気の男子生徒や、さっき話した堀北も同じらしい。彼等がクラスを出ていった後、気まずい空気が漂ったが、自己紹介は問題なく続いた。

 

 

そして、自己紹介の番は双羽へと近付いてくる。だがその直前に、綾小路が自己紹介をすることになった。

 

 

「えー………えっと、綾小路清隆です。その、えー……得意なことは特にありませんが、皆と仲良くなれるよう頑張りますので…………えー、よろしくお願いします」

 

 

中々に微妙な空気が流れた。だが、自己紹介を提案した好青年 平田洋介(ひらたようすけ)が上手くフォローして立て直してくれた。

 

そして、座席に座った綾小路に続いて、双羽が立ち上がり自己紹介を始める。

 

 

「よし………どうも、皆。オレは如月双羽。双子の双に羽って漢字だよ。皆と友達になれると嬉しいし、なりたい。これからも三年間一緒にやっていきたいと思ってる──────うん! 堅苦しいのは抜きにして! よろしく!!」

 

 

ビシッ! と最後は笑顔を浮かべて挨拶を示した。上手くやれたらしく、クラスメイト達には好評だったらしい。盛大な拍手に笑顔で返し、双羽は着席した。

 

ふと、真後ろの綾小路が感心したように見ていた。さっきの自己紹介の事だろうか。もし気になるのなら、教えてあげようかな、と思いながら双羽はクラスメイト達の自己紹介を聞き届けるのだった。

 

 

────入学式を終え、放課後になった後。そのまま寮にある自分の部屋に着いた双羽。ベッドに寝転がっていた彼は、ふと時間を見る。……………まだ五時過ぎくらいだった。

 

 

「………丁度良いし、食材でも買っておこうかな」

 

 

気になることは山程あったが、今は後回しにする。取り敢えず腹拵えでもしようと、近くのコンビニに寄ることにした。

 




気軽にですが、書いていきたいです。因みに主人公のデータは此方。


高度育成高等学校学生データベース

氏名 如月双羽
学籍番号 S01T004650

部活 無所属

誕生日 6月6日

評価

学力 B

知性 B-

判断力 A+

身体能力 B

協調性 A+

面接官コメント
学力、身体能力共に優秀。何より対人関係、判断力が極めて優れている。彼本人の持つ直感は常時離れしたものであり、学生時代もクラスと団結して様々な活躍を見せており、中学の担任や校長からも高い評価と推薦を受けている。Aクラス及び、Bクラスへの配属が良好と判断。

追記
面接終了前から何度か問題行動に関与したとされている。終了後に暴行事件に第三者として介入し、加害者を十数名を重傷にしたという情報の提供を確認。

事件の内容として、被害者という立場もあるが、不確定要素も多く判断が難しくなった為、Dクラスへの配属へ変更するものとする。



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