ようこそ実力至上主義の世界へ   作:虚無の魔術師

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ノリに乗ったからまた出しましたわ。


学生生活

朝6時。

目覚めたばかりで瞑った眼を擦り、冷や水を浴びて眠気を醒ます。欠伸を噛み殺しながら、コンビニで買ったパンとスープを平らげ、如月双羽は制服に着替える。

 

 

「────うーん、相変わらず良い天気!」

 

 

パン! と両頬を叩いて切り替える。笑顔を浮かべながら、彼は静かに決意した。今日は授業の合間を使って、疑問を解消しようと思う。

 

何日か掛かると思うが─────ま、気楽にやれば良いか、と双羽は呑気に考えるのだった。淹れたばかりのココアを飲んだ時には、そんな考えが頭から消え去っていた。

 

 

◇◆◇

 

 

そして二日目の授業も難なく過ごせた。………と言うには少し語弊があるかもしれない。強いて言うなら、クラスの授業態度がそんなによろしくなかった。

 

特に赤髪の不良男子が最初から眠りこけていたのは流石に困惑した。一人がそんな態度をしている訳だから、二、三時限目にはクラスの生徒大半が授業に集中することは無くなった。

 

────そんなクラスメイト達を、教師陣が注意しようとしないのは明らかな違和感だった。直感どころの話ではない、流石に可笑しいと疑問を持つのは普通だろう。

 

 

朝の授業も終わり、昼休みになった頃。席を立とうとした如月に真後ろから綾小路が声をかけた。

 

 

「なあ、如月。一緒に食堂に行かないか?」

 

「オレはいいよ!…………堀北さんも一緒に来る?」

 

 

快諾した双羽の視線が隣で黙々と片付けをしている堀北に向けられる。彼女は一瞬驚いたように此方を見て、すぐにいつもの調子に戻った。

 

 

「結構よ。私は一人の方が好きだもの」

 

「そっかー、残念。オレ、堀北さんと仲良くなりたかったんだけどなぁ」

 

「…………仲良くするつもりは微塵もないから。勝手に二人で食べたらどう?」

 

 

ふん、と顔を反らし、彼女は立ち去っていった。相変わらず手厳しい、と双羽は苦笑いするしかない。だが、そんなに気にしてないようだった。

 

 

「んー、相変わらずの辛辣。俗に言うツンツンだなぁ…………ね、綾小路」

 

「…………俺に振られても困るんだが」

 

 

そんなことを言いながら、二人は食堂に向かっていくのだった。その背中を見つめる者がいた事に気付いたのか、誰にも分からない。

 

 

◇◆◇

 

 

(────つまらん。実に退屈だ)

 

 

男の名は、不動駆三(ふどうくざん)。Cクラスの男子生徒であった。口数は多い方ではないが、話せないタイプという訳ではない。寡黙な雰囲気が漂うその男は、数日を経た結果、退屈という感想を漏らした。

 

 

男は常人より優れているが、一つの欠陥があった。それこそが、『退屈』である。

 

どんな事をしても、彼は心から楽しむことが出来ない。昔から、いやある日からだ。とある事故を経てから、彼はある一つの才能を経てから────どんなスポーツや勉強、喧嘩で負け知らずとなった。

 

 

そのせいか、彼はあらゆる全てが『退屈』になった。この学校に来れば少しは楽しめるかと思ったが、歯応えがない。『彼』との接触がなければ、今すぐにでも退学してやろうか、と何度思ったことか。

 

 

 

「────不動、ちょっといい?」

 

 

放課後になった直後、突然声をかけられた不動は見向きもしない。ただ淡々と、声をかけてきた男勝りな少女に問い掛ける。

 

 

「龍園の使いか。難儀な立場になったな、伊吹」

 

「………いいから早く来いっての」

 

 

明らかに不機嫌になった少女が強引に引っ張ろうとする。可愛げのないヤツだ、と不動は呆れたように言いながら立ち上がる。何処に連れていかれるか、想像しなくても分かる。

 

 

「連れてきたよ、龍園」

 

「ご苦労」

 

 

招かれたのは校舎の裏、特別棟の真下。明らかに人気というものが皆無と化したその場所に居座っているのは、三人組であった。三人とも見覚えがある、Cクラスでも不良として名高い石崎、屈強な体格のアルベルト。

 

────そして、そんな二人を従えるように座った男。Cクラスでも相当の問題児がそこにいた。

 

 

「よぉ、不動。挨拶は必要か?」

 

「不要だ────Cクラスの暴君 龍園翔。そして、無駄な話も必要はない」

 

 

無表情のまま不動は目の前の男、龍園を見据える。入学前から多くの問題を起こしてきた、生粋の不良だ。横の二人は昨日まで龍園に強く反発していた────恐らく、徹底的に叩き潰され、従属させられたか。

 

だからこそ、不動は龍園の目的も理解している。故に示したのだ、『余計なことは良いから、本題を言え』と。

 

 

「話が早ぇな─────不動、オマエも俺の軍門に下れ」

 

「…………断る」

 

 

沈黙を経て、不動は宣言した。考えた訳ではない、僅かな無言の中に、露骨な無関心があったことに龍園だけが気付いていた。

 

 

「へぇ、理由は?」

 

「………オマエが獅子だとして、鼠に従うと思うか?」

 

「テメェ!」

 

「黙れ、石崎…………クク、俺が鼠ってか。随分と舐めてくれるじゃねぇか、不動」

 

「────真実を言って何が悪い」

 

 

殺気立つ側近二人、昨日とは見違えて狗になったらしい。露骨に鼻で笑う不動への苛立ちを滲ませる二人を制し、龍園は笑みを深めていた。笑いながら、言葉を続ける。

 

 

「…………そうか。最後のチャンスだ、俺に従え」

 

「───貴様が頭を下げるのなら、考えてやらんこともない」

 

 

腕を組んだまま、不動は見下ろすように告げる。自身が上の立場であると信じて疑わないその態度に龍園は口を歪めて笑い出し─────一瞬にして変わった冷酷な顔のまま、命じる。

 

 

「───やれ、石崎」

 

 

その命令に頷くことなく、側にいた石崎が歩み出る。拳を握り締めて殴りかかる石崎の一撃を────不動は避けること無く受け止めた。無論、顔に直撃するように。

 

頬を撃ち抜かれた不動だが、彼の顔には変わりはない。それどころか拳を受けたまま、石崎を見下ろしていた。

 

 

「…………この程度か」

 

「っ!なんだと───っ!?」

 

「邪魔だ、雑魚」

 

 

顔を真っ赤にした石崎の顔をガッシリと掴む。顔を掴まれ、引き剥がそうとする石崎の脚を蹴り、そのまま転びそうになって何とか踏み込む。

 

そんな石崎を押し込むように、不動は腕に力を込める。バランスを崩した石崎には抵抗する余地もなく、そのまま地面に叩きつけられ─────意識を失った。

 

 

「────Bad boy」

 

 

見かねたように、山田アルベルトが乗り出してきた。一際大きな体格から繰り出す拳を胸に受けるが、不動はものともせずアルベルトの靴を踏み、苦痛に顔を歪めたアルベルトの腹を蹴り飛ばした。

 

 

「ッ!─────!」

 

 

腹部を抑えながら仰け反ったアルベルトに、不動は退屈そうに欠伸を噛み殺す。その余裕に流石に腹が立ったのか、悪態をつく間も無く動き出す。

 

両腕を組んで突進────いや、タックルしてくるアルベルト。常人に勝る体格、100キロに近しい重量から放たれる突撃。生身で受ければ重傷は免れないだろう。

 

─────だが、不動はやはり動こうとしなかった。

 

 

「────来いよ」

 

 

両腕を伸ばし、掌を広げる。直後、突撃したアルベルトを両手で受け止めた。─────押し返されること無く、助走までしてタックルしてきたアルベルトを、意図も簡単に静止させたのだ。

 

 

「な───っ」

 

「嘘でしょ………!?」

 

「────Whatっ!?」

 

 

愕然とする龍園と伊吹。体当たりをしたはずのアルベルト本人ですら、驚愕を隠しきれない。不動はそんなアルベルトを両手で押さえたかと思えば、交差させていたアルベルトの右腕を掴む。

 

そして──────引っ張られたアルベルトの身体が宙に舞った。片腕に持ち上げられた巨体が勢いよく振り回され、特別棟の壁へと叩きつけられる。

 

地面に転がったアルベルトは、完全に失神していた。自分よりも何倍も大きな相手を投げ飛ばした不動は、退屈そうな感じを隠しきれない様子だった。

 

押し殺すような笑い声に、不動が振り向く。立ち上がった龍園は、それはそれは面白いと言わんばかりに笑いを噛み砕く。

 

 

「おいおい、何だよ不動。オマエ、中々強ぇじゃねぇか。アルベルトを投げたのは流石にビビったが………一体どういう身体してやがる?」

 

「…………『特異体質』、とだけ言っておこうか。少なくとも、俺はそこいらの雑魚とは違う─────文武両道を兼ね備えた強者という訳だ」

 

 

拳を握り締め、告げる不動。そんな彼を前にしても、龍園は揺るがない。それどころか、心の奥底から面白いと言わんばかりに笑い、向き合う。

 

 

「へッ、面白い。やっぱオマエは使える────勝負だ。俺が勝てば、オマエは俺の右腕になれ。負けたらオマエの事は諦める…………シンプルで良いだろ?」

 

「ふん、単純な話は嫌いではない…………臆病風吹かすのも今のうちだぞ?」

 

「言ってやがれッ!!」

 

 

 

直後、龍園は不動へと殴りかかった。二人の衝突は繰り返されることになる─────龍園が何度も、不動へと飛び掛かる光景を、続けるように。

 

 

 

「────グッ、クソ………ォ!」

 

「………中々にタフだな。十発は叩き込んでやった訳だが、まだ起き上がるか」

 

 

足元で転がる龍園に、不動は少々感心していた。最初は退屈だったが、何度も起き上がる龍園に興味を示したようだった。血反吐を吐き捨てる龍園の眼から戦意が消えてはいない。

 

 

「ククク………ッ! まだ、俺は倒れねぇぞ………! オマエが俺に負けるまで、何度だって襲ってやる! オマエの心が折れるまで、ずっとな!」

 

「…………ならばお前の心をへし折ってやる。それなら話が早い」

 

「無理だな、俺に恐怖なんてねぇ。そんなもの一度も感じたことねぇんだよ。敗北を恐れる気持ちなんて、一つもないのさ!!」

 

「……………………ほう?」

 

 

拳を振り上げた不動は、龍園の言葉に思わず反応した。握った拳の力を緩め、龍園の眼を見つめる。此方へ食らい付く、と言わんばかりの決意に─────不動は目の色を買えた。

 

 

「恐怖なんて、ない………か。…………クク、クククッ」

 

 

途端、不動の顔に笑みが刻まれる。そして、爆発したように大声で笑い始めた。

 

 

「ククククククッ、ハーッハッハッハッハッハッ!! 恐怖を感じないだと!? 面白いことを言うなぁ貴様は! その虚勢! 気に入ったぞ!─────妥協点だ!」

 

 

言うや否や、不動は龍園の胸ぐらを掴み、強引に立ち上がらせる。今にも喧嘩腰になりそうな龍園に人差し指を突きつけながら、不動は宣言した。

 

 

「────貴様の部下になるつもりはないが、ある程度は認めてやろう。貴様の邪魔はせんし、必要ならば手を貸してやる」

 

「………いきなり、どういう風の吹き回しだ?」

 

「その威勢を買ってやるというのだ。………だが勘違いするなよ? 認めたのは貴様の度胸と威勢であり、貴様の下である気はない。この俺を認めさせれば、右腕にでもなってやるが……………貴様に出来るかな?」

 

「………クククッ、上等だ。いずれテメェを認めさせて、俺に従わせてやる! 楽しみにしとけよ!」

 

「期待しておこう。そこそこな」

 

 

手を離し、その場から立ち去る不動。自身を連れてきた伊吹にすら見向きもせず、校舎から出ていった。恐怖をなんてない、そう言った龍園の言葉を口の中で転がしながら。

 

 

「龍園、お前のそれは恐怖を持たないのではない。恐怖を知らないだけだ──────それでは『俺達』には勝てんな」

 

 

夕暮れ時の道を歩き、柵に身体を預ける。その視線は同級生達と別れ、寮へと帰っていく一人の学生へと向けられていた。

 

────赤の他人に向けるにしては、あまりにも興味関心が深い眼で見つめながら、不動はその学生向けて呟く。

 

 

 

「………なぁ、お前もそう思うだろう?

 

 

 

 

 

 

 

────如月双羽」

 

 




オリキャラ


高度育成高等学校学生データベース

氏名 不動駆三

学籍番号 S01T004652

部活 無所属

誕生日 8月9日

評価

学力 B

知性 B

判断力 B

身体能力 A+

協調性 C-

面接官コメント

文武両道を自負する通り、学力も身体能力も平均以上と極めて優秀。別途資料の内容から把握するに、前例のない『特異体質』であると明言されている。

実力からAクラスやBクラスでも問題はないが、物事に対する消極さが問題視されている。同時にコミュニケーション能力も悪くはないが、プライドが高く、他人を見下す言動が見られる為Cクラスへの配属を決定。学校生活の中で以上の問題点が改善されることを期待する。


別途資料


【─────機関からの権限により現在ロック中。正式な権限の発行まで公開不可能─────】
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