ようこそ実力至上主義の世界へ   作:虚無の魔術師

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水泳授業

数日が経過して、前日に増して授業態度が悪くなる一方。苦言を言おうにもクラスの大半は自分の言葉など聞く余地も無いだろう。双羽に出来ることとすれば、クラスの中心である平田に相談することくらいだ。

 

 

(でも、お陰で少しずつ分かってきた────この学校のシステムに)

 

 

休みや放課後の間、空いてる時間を使って色々と調査した双羽だが、多くの情報を得ることが出来た。最も、殆どが双羽の直感による憶測に過ぎないのだが。

 

一つ、クラスに配布されるポイントは間違いなく増減───少なくとも一学年全クラスが減少する。10万ポイントから減点方式で支払われるのだろう。

 

 

────クラスメイト達は毎月10万ポイントが貰えると誤解しているようだが、それは大きな間違いだ。茶柱先生は毎月ポイントは配布されると言っただけで、その数に言及はしていなかった。…………当然だ、言えるわけがない。先生であっても、最終的なポイントがどうなるかは分からないのだから。

 

 

そして、ポイントがどうやって減少するか。恐らくそれは、自分達の授業、生活態度から判断されるのかもしれない。

 

 

双羽がそう結論付けたのは、教室に配置された監視カメラの存在だ。少なくとも、クラス全体を監視するように配置されたそれは、生徒達の動向を確認できるようになっていると、双羽は確信していた。

 

 

最初は、考えすぎではないかと心の奥底で思ってはいた。だが、上級生や教師と話してきたことで、その小さな可能性は完全に消え去った。

 

 

『ごめんねっ! そのことは詳しく言えないんだ! 嫌がらせって訳じゃないんだけど………』

 

『…………残念だが、ポイントの増減について言えることは一つ。答えることは出来ない、それだけだな』

 

『うーん、ごめんねー! その事には答えられないけど、生活態度はちゃんとした方がいいよ! 真面目な君への助言だからね!』

 

 

仲良くなった女子の先輩や、偶々会う機会があった生徒会長、そして同学年担任の女性教師。双羽が出会った殆ど上級生に教師が、黙秘を示した。ここまで徹底した情報統制には、流石に違和感どころではない。

 

何より、彼等の殆どが感心したようだった。恐らく、Sシステムとやらに自分から疑問を持つ生徒は多いわけではないらしい。それもそうだ、双羽ですらこの『直感』の働きがなければ、ここまで行き着くことはなかった。

 

 

 

(問題は、ポイントの配布だけど……………個人かクラス、どっちで決まるんだろ。………いや、でもなぁ)

 

「────『直感』的には、クラスだよなぁ」

 

 

────今も激しく反応しているのは、クラスの方。最悪の予想としては、クラス全員の行動で評価され、ポイントを大きく減らされること。多分、考え得る最悪の可能性としては、0ポイントになるかもしれない。

 

 

(いや…………流石に無いよね?)

 

 

不安になりながら考えてみた。

Dクラスの皆は個性的な面々とはいえど、現時点では立派な高校生だ。0ポイントに減らされるまで減点されていくような状態になるとは───────、

 

 

「………うーーーーん」

 

 

なる…………とは…………、

 

 

「…………なるんじゃないかなぁ」

 

 

頑張って信じてみようと思ったが、流石に厳しかった。双羽から言ってこのクラスの授業態度や生活態度は、良いものとは言えない。何なら他のクラスより酷いまである。CクラスですらAクラス程良いとは言えるわけではないが、少なくともDクラスほど酷くはない。

 

 

(…………これは偶然かな。なんかクラス分けがあまりにも綺麗というか、意図して振り分けられてる気がする)

 

 

ここで双羽は自分達のクラスや他のクラスを比較したことで、ある違和感に気付いた。AクラスやBクラスは問題すらなく、規則正しく生活しているのに対し、CクラスやDクラスの生徒には授業が悪かったりしている。

 

………無論、これは各々のクラスと交流してきた双羽だからこそ感じた違和感だ。同級生達と交流しようと思わなければ、きっと気付くことはなかっただろう。────最も、双羽本人はそんな打算で仲良くなろうとした訳ではないが。

 

 

────話を戻そう。ここで重要なのは、クラスの意識の改善である────のだが、正直無理かもしれない。

 

 

(いやー、オレの話はあんまり聞いてくれないよなー。皆)

 

 

無論、双羽は嫌われてる訳でも孤立しているわけでもない。何なら大半とは仲良く交流できてる自信はある。かと言って、話は聞いてくれるだろうが本気にしないだろう。

 

10万ポイントと何の文句も言われない学校生活に、皆が浮わついている。多分ここで双羽が自分の考えを口にしても、実際に理解してくれるのは数人だけだろう。大半がきっと「考えすぎだ」、と楽観視するはずだ。

 

 

(他の誰かに頼むしかないけど…………この考えに気付いてそうなのは────堀北さんか高円寺、………多分綾小路だよなぁ)

 

 

上記の二人が分かってるかは定かではない。聡明な堀北と高い実力を持つ高円寺、クラスメイトの二人の実力を信じてのことだ。最後の一人として綾小路を選んだのは、双羽の勘だ。

 

恐らくだが、綾小路は大方気付いているのかもしれない。言えないのは他人と会話したくないのか、或いは自分の実力を隠したいから、なのかもしれない。綾小路が何かを隠していることは既に気付いていた。

 

 

だが、友人が隠したいのなら、それを無闇に暴くわけにはいかない。他の二人、堀北と高円寺も話したところで積極的に動いてくれるとは思わない。それどころか、自業自得と切り捨てかねない。

 

ここはクラスの中心である平田に話そうと、決意する。平田ならばこの話を無下にはしないし、きっと皆の為に動いてくれる。そう判断した双羽はすぐに動き出した。

 

 

 

「おっす! おはよう、平田!」

 

「おはよう、如月くん。…………何か用かい?」

 

 

呼び掛けてくれると笑顔で応えてくれる平田。しかし、双羽から何か真剣な空気を感じ取ったらしく、笑顔を引っ込めて聞いてきた。

 

 

「相談があるんだ─────多分、クラスの事で重要な話にる」

 

「…………分かった。僕で良ければ相手になるよ」

 

「うん、聞かれると不味いから………人気の無い場所に行こう」

 

 

そう言って、平田と共にクラスから離れる。途中女子達に声をかけられる双羽。「また遊ぼうねー! 如月くーん!」 という声に笑顔で応えた双羽は教室から出た。一部の男子からの睨むような視線を無視して─────生徒が特段通ることのない階段の方で平田と話を始めた。

 

 

 

「………それで、話って?」

 

「────多分、来月のポイントは10万にはならない。確実に、それより少なくなる」

 

「っ! 何だって!?」

 

 

驚きを隠せずに声をあげる平田に、双羽は慌ててシーッ! と口に指を押し当てる。彼の意図に気付き、慌てて声の大きさを下げた平田。幸い、周りには────クラスには届いていないらしい。

 

 

「………どうしてそう思うか、教えてくれるかな?」

 

「────まず、1ポイント=1円ってのは分かるでしょ? じゃあ10万ポイント×40人(一クラス)×4クラス分………どれくらいのポイントになると思う?」

 

「…………1600万ポイントだね」

 

「じゃあそれが毎月ってことは一年で十二回、つまり1600万ポイントを十二回も配ることになる。二年生も三年生の分もある。……………明らかにおかしいでしょ?」

 

「確かに、そうだ。………これだけの数は流石に有り得ないね。いくら国の支援する学校でも、ここまで使うとは思えない」

 

 

軽く億を越える資金を、学生全員に振り分けるのは非効率が過ぎる。これには流石の平田も納得し、不安や疑念を露にした。

 

そこで双羽は、自身の推測を続けて語る。

 

 

「多分、オレは減点方式だと思う」

 

「………減点方式?」

 

「10万ポイントから減らしていって…………一ヶ月後に配布するポイントを決める。………そうじゃないと割に合わない。多分というか、恐らくだけど、減点対象は自分達の授業態度とかで決まるんじゃないかな」

 

「……………」

 

 

沈黙して考え込む平田。本当にそうか、という困惑が見えていたが、時間が経つにつれて違和感を思い出し始めたらしい。

 

 

「確かに、先生方が注意するのを見たことはない………進学校と聞いていたから、可笑しいとは思っていたけど………」

 

「生徒達が自分たちで気付けるのか、省みれるかを試してるのかも。上の先輩やBクラスの星之宮先生、生徒会長さんも全員答えてくれなかった─────多分、オレ達一年生には教えちゃダメって制度なんだと思う」

 

「…………確かに、クラスとしてはただ事じゃないね。けど、どうしてこの話を僕に?」

 

 

そこが気になるのも無理もない。だが双羽としては誤魔化す理由も隠す理由もない。素直に真意を、自分の考えを明かした。

 

 

「─────この事をクラスの皆に伝えて欲しいんだ 平田くんが言ってくれたら、クラスの皆は聞いてくれるかもしれないから」

 

「………君が見つけてくれたってことを、黙ってかい?」

 

「まぁね。オレが言うより、平田くんの発言の方が皆に響く。悲しいことに、オレはまだクラスの皆から信頼されてないしね。………気の良い同級生よりリーダーの方が信じやすい、誰が言うか、も意外と大事だし」

 

 

平田としては納得出来ないのだろう。穏やかな雰囲気が目立つその顔は、複雑そうであった。双羽として、彼が性根の悪い人間とは思っていない。───彼自身が暗い過去を背負っていたとしても、信用できる人だということは直感を抜きにしても言えることだった。

 

 

「…………分かった。でも、君の協力があったことを伝えても良いよね?」

 

「そりゃね。こっちだって頼む立場だし………無理ない感じで任せるよ」

 

「本当にありがとう、如月くん。君が相談してくれなかったら、大変なことになってたかもしれない」

 

「気が早いんじゃない? まずは様子を見ないと………考えすぎって可能性も、無くはないしね」

 

 

軽い調子で言う双羽だが、彼も平田もそんな甘い可能性を思ってはいられなかった。それじゃあ、と平田と別れる。彼の事だ、恐らく今日の放課後には皆にこの事を話すことだろう。

 

それでどうなるか。改善されるなら良し、されないなら────諦めるしかない。残念だが。

 

 

フーッと、深呼吸する双羽。ゆっくりとクラスに戻ろうとて、その歩みを止める。さっきから人気の感じない階段に向かって、問い掛けた。

 

 

「────平田くんはもういないけど、ずっと隠れてるの? お二人さん」

 

 

返答は来ない。代わりに、足音が聞こえてくるだけだった。それも二つ。いや、音からして一人は杖をついていると、双羽は予想した。

 

階段から降りてきたのは、二人の学生だった。見覚えがある、二人ともAクラスの生徒であり、中心として慕われてる人物たちだった。

 

 

「ふふ、面白い話が聞けましたね。葛城くん」

 

「…………」

 

 

微笑みを崩さない小柄な少女。薄紫セミロングヘア、見た目も白っぽく、杖をついて歩いている姿から病弱そうに見える。─────だが『直感』が強く反応している。見た目で侮ってはいけない相手だと、警鐘が鳴り響く。

 

もう一人は少女とは対照的に、比較的大柄な男子生徒だった。頭髪のない頭はよく目立つが、その要素すらも大人びた風貌を強めているのだろう。険しい顔を隠すことなく、此方を見据えていた。

 

 

「Aクラスの人達だね。初めまして、如月双羽」

 

「ふふふ、どうも。坂柳有栖と申します」

 

「…………葛城康平だ。よろしく頼む」

 

 

階段の上に立つ二人の視線を受ける双羽。笑みを浮かべながら、彼も同じように見返していた。重い口を開いたのは、険しい顔の葛城であった。

 

 

「お前は────どうやってSシステムの裏に気付いた?」

 

「────直感。動物以上に鋭いタイプなんでね」

 

 

葛城は半信半疑、隣の坂柳はクスリと笑う。二人がどう感じたかは明確ではないが、少なくともただ者ではないと認識したことだろう。

 

双羽も同じだ。この二人は厄介な相手となる、そう確信していた。特に、坂柳という少女に関しては。

 

 

「多分、坂柳さんも葛城くんもAクラスだから進んで相手を潰すようなことはしないと思うけど」

 

 

葛城の表情が険しくなる。そこまで分かっているのか、と言わんばかりに。坂柳が顔色を変える。やはり期待した通りだと言わんばかりに、笑みに深める。

 

 

そんな二人を見上げて────、

 

 

 

「オレ達を相手にするなら気を付けてね────その時は全力で叩き潰すから。よろしくね」

 

 

満面の笑顔で、無邪気に答える。悪意なんてものはない。だが、本気だということは葛城も坂柳も理解していた。呑気にクラスへと戻っていく少年の姿を見つめながら、葛城と坂柳は心の中で呟く。

 

 

(─────強敵だな)

 

(─────強敵、ですね)

 

 

格下であるはずのDクラスに居座る、怪物の存在に。片方は警戒を露にし、片方は喜びを隠しきれない様子だった。

 

 

 

◇◆◇

 

 

数日後の昼休みが終わり。

いつもの教室での授業ではなく、今回は外での体育。正確には水泳の授業であった。

 

因みに一番はしゃでいるのはクラスメイトの池と山内の二人だ。無論、水泳が楽しみという訳ではない。女子の水着が見たい、という下心丸出しな様子だった。

 

 

────だが現実は非情。そんなエロガキ二人の意図を察していた女子たちの大半は見学することになり、彼等は絶望して叫んでいた。女子たちからのゴミを見るような眼を向けられていることに気付いていない。憐れな、と双羽は密かに思う。

 

 

「────まぁオレが女子に密告したんだけどね」

 

「………お前だったのか」

 

 

彼等から離れた場所で見ていた双羽のカミングアウトに綾小路は驚くことなく納得する。今日の朝、呑気にそんな事を口にしていたのを聞いた以上、無視はできないと双羽が女子グループに伝えておいたのだ。

 

女子たちはエロガッパ二人への罵倒(主にキモ)を口にしていたが、忠告してくれた双羽には感謝していた。この事は流石に黙っておく。知られたらあのエロガキ二人から逆恨みを受けかねない。

 

 

「聞いたからには見逃しないね。先生にチクらなかっただけ、温情だと思うけど」

 

「………まぁ確かに。アレは池達が悪いな。自業自得だ」

 

「────それもそうね」

 

 

そんなことを言っていると、同感と言わんばかりに頷いた堀北が此方へと来た。他の女子たちとは違い、ちゃんと水着を着ている。双羽は彼女の姿を見て、ニッコリと笑う。

 

 

「やぁ、堀北ちゃん。今日も変わらず素敵だね」

 

「…………それが何を見ての発言かで対応が変わるけど?」

 

「え? どっちもだけど」

 

 

ドスッ! と、手刀が脇腹を抉った。直後に崩れ落ちる双羽に綾小路は大丈夫か、と心配してくれる。当の手刀を打ち込んだ堀北は呆れたように一息つくと、綾小路と双羽を見た。

 

 

「…………貴方達、何か運動してた?」

 

「特に。自慢じゃないが、中学は帰宅部だったぞ」

 

「まぁ、色々とね。身体は鍛えないと、健康にも悪いし」

 

 

二人の回答に堀北は不服そうに「………そう」と答える。理由を聞いてみると、アスリートのような体つきに思えたから、だとのこと。

 

その際、綾小路と双羽は思わず「筋肉フェチ?」 と聞いて制裁を受けた。仲良くなれたのは良いが、手が出るのが早すぎではないかと思う。

 

 

「よーし! お前ら集まれー!」

 

 

マッチョな体格の男性教師が水泳を受ける生徒達全員を呼ぶ。集まった生徒達を見渡しながら、教師は見学となる女子たちを確認する。

 

 

「見学者は16人か。随分と多いが、まぁいいだろう。準備体操を終えたら、早速泳いでもらう」

 

「………あの、俺あんまり泳げないんですけど……」

 

「俺が担当するからには必ず夏まで泳げるようにしてやる。安心しろ」

 

「どうせ海なんて行かないし、無理して泳げるようにならなくてもいいんですけど………」

 

「そうはいかん。今は苦手でも構わんが、克服はさせる。泳げるようになれば必ず役に立つからな────必ず、な」

 

 

ヤケに断言する男性教師の言葉に、違和感を持ったのは何人いるだろうか。双羽も疑問はあったが、そもそも泳げるので気にはしない。

 

そうして説明や指示が進んだ後、教師による個人タイムレースが開催された。一位は5000ポイントの特別ボーナスに、殆どの生徒がやる気を出した。

 

そして、ほぼ全員が泳ぎきる。一緒に泳いだ綾小路は36秒、相変わらず全力を出していないらしい。因みに双羽はタイムは24秒、一位ではないが後少しで届き得るタイムである。

 

上位五人に選ばれ、深呼吸する双羽。濡れた髪をかきあげていると、唐突に声をかけられた。

 

 

「────中々やるじゃないか、白黒ボーイ」

 

「………高円寺か。ていうか、その呼び方なに?」

 

 

クラスメイトではあるが、クラスの中でも色んな意味で浮いていた男────高円寺に、双羽は困ったように問い掛ける。唯我独尊という言葉を体現するような人物であり、自己紹介の際も別の意味で心に残ったこともある。

 

だが、その性格を自負するが如く実力も優れているらしい。タイムは双羽の上の23秒。その気になればもう少しタイムを縮められるということは、双羽ですら理解していた。

 

というより、双羽としてはその呼び方の方が気になる。何なんだ、白黒ボーイって。

 

 

「君の髪は特徴的だからね。…………何、恥じることはない。この私が決めた呼び名なのだから」

 

「そっか。じゃあ問題ないね─────それより、次は全力出せる?」

 

 

呼び方の事はそれでいいのか、軽く笑った双羽は高円寺へと問う。その言葉に高円寺は笑みを以て返す。純粋な興味と感心を向けて。

 

 

「ふっ、この私に挑む気かい? 本気の私には誰も勝てないが、良いのかな?」

 

「やるなら本気、取るなら勝利────負けるつもりで勝負やるほど、腑抜けてないんでね!」

 

「────はははは! 成る程、良い覚悟だ! その覚悟を無下にしては、この私の誇りに関わる! 望み通り、全力を出そうか!」

 

 

満足そうに笑った高円寺が双羽を見据え笑う。二人の眼には強い決意と戦意が確固として存在していた。互いの勝ちを見据え、二人はスタート台に並ぶ。

 

 

「………チッ! 何勝手に息巻いてやがる! お前らには負けねぇぞ!」

 

 

苛立たしそうに吐き捨てる同級生の不良男児。自分を無視して勝負を挑み合う二人が気に入らないのか、絶対に勝つと言わんばかりに息巻いていた。

 

そして、上位五人が並んだを確認した体育教師が合図を鳴らす。ピーッ! という音とほぼ同時に、誰よりも速く高円寺と双羽の二人がプールへと飛び込んだ。

 

 

数十秒の間、泳ぎきった双羽の手がゴールに届く。勢いよくプールから飛び出した双羽は深く息を吐き出すと、唖然としている男性教師の声を聞いた。

 

 

「────一位は高円寺、21秒75。二位は双羽、21秒84……………信じられん」

 

 

その発表を聞いた瞬間、双羽は全身の力が抜けると同時に転がった。新記録を更新したにも関わらず、双羽は負けたことを純粋に悔しがる。

 

 

「だはーっ! 負けたー!クッソー!!」

 

「……………落ち込む必要はないさ。流石の私も驚かされたよ。まさかここまで追い詰められるとはね、白黒ボーイ」

 

 

水に濡れた前髪を整えながら、高円寺は双羽の健闘を讃える。本当にここまで追いすがるとは思わなかったらしい。ある程度は寝転がっていた双羽は起き上がり、満足そうに笑って答えた。

 

 

「でも、楽しかったよ。ありがと、高円寺。次はオレが勝つから! また勝負しようぜ!」

 

「…………ふっ、君相手なら本気で退屈しないな。次の勝負も期待させて貰うよ。白黒ボーイ」

 

 

同じように満足そうに笑い高円寺は歩いていった。順位的にも届かなかったであろう不良男児は不機嫌に舌打ちをして、その場から離れていく。双羽は濡れた髪を振り回して、水気を取り、見守っていた堀北や綾小路の所へと向かった。

 

 

「やっ、負けちゃった」

 

「…………それでも良い勝負だったぞ? なぁ、堀北」

 

「そうね…………二位には変わりないけど」

 

 

うーん、正論だね! と笑う双羽に堀北は呆れた様子だった。そんな中、表情の変わらない綾小路は少し考えた後に、双羽にある疑問を投げ掛けた。

 

 

「なぁ、如月」

 

「? どしたん?」

 

「─────もしもう一回、高円寺と勝負をしたとして。お前は勝てるのか?」

 

「───そりゃ当然」

 

 

間違いないね、と言わんばかりの断言。端から見れば威勢を張ってるだけに見えなくもない。だが質問を掛けた綾小路はそうは思わなかった。「………そりゃそうか」と納得したように頷き、質問の意図が掴めない堀北を置いて去っていくのだった。

 

 

 

────余談だが、授業の終了後、体育教師から呼び出され10万プライベートポイントを出すから水泳部に入らないかと誘われた。悪くない話だったが、考えますね、と言っておいた。

 

 




お気に入り登録、評価、感想、等々誠にありがとうございます! 気に入っていただけましたら、評価、感想の程よろしくお願いいたします。

因みに双羽の髪は全体的に白髪なんですが、前髪の方が黒くなってるという髪型です。
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