Blooming☆Yell!!   作:ルブク

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セントウルステークスをメインにその前後を。
いよいよスプリンターズステークス、というところで……。
クラシック級での話は都合上、2021年と2022年の内容をミックスさせてますのでその点ご容赦いただきたく…。
両親はもう少し後で登場させるつもりでしたが、中京レース場での話なので前倒しで登場させました。
人物紹介も更新済みです。

人物紹介はこちら↓
https://syosetu.org/novel/342309/1.html


クラシック級:後半
The 18th Yells 明滅のエール


偉大な背中を

 トレセン学園は新学期を迎え、にわかに慌ただしさを見せ始めた。合宿に励んだ娘、各地方のレース場で(しのぎ)を削ってきた娘。それぞれが思い描く夢を現実のものとするために。

 それはメイケイエールも同じこと。いよいよ間近に迫るスプリンターズステークスに向け、日々のトレーニングも仕上げの段階に入ろうとしていた。

「今日はね。併走トレーニングやるから」

 一周五百メートルの芝のトラック。メイケイエールと河削はその傍らに並んで立っていた。まだまだ残暑厳しく、鋭い日差しに額に汗がじんわり滲む。

「併走? どなたとでしょうか……もしかしてベネベネさんとか」

「それはそれで面白そうだけど、ハズレ。その内来ると思うから待ってようか」

 まだまだ九月上旬、しきりに降り注ぐ蝉時雨。五分か十分か、河削の言葉通りに並走相手を待った。

「――バクシーンッ!」

 遠くから聴こえてくる、非常に溌剌(はつらつ)とした(とき)の声。この声には聞き覚えがあった。というより、該当する人物はこの学園でただ一人しかいない。

「ああ来た来た。今日の併走相手だよ」

 ポニーテールをたなびかせ、走る姿は韋駄天そのもの。アシンメトリーに寄せた前髪に、瞳に覗くは花模様。

 ――スプリントのレジェンド、サクラバクシンオー。その彼女がトレーニングウエア姿で、けたたましくも駆け寄ってくるではないか。

「お待たせしました! サクラバクシンオーです!」

「バクシンオー先輩!?」

「はい! いいえ委員長とお呼びください! クラス委員ですので!」

「い、委員長、先輩……」

 まさかの併走相手に心の整理が追いつかない。サクラバクシンオーといえば、言動はいささか突飛ではあるものの、スプリンターとして別格の存在である。一度駆ければ誰も追いつくことも敵わぬスピードを誇る。

 レジェンドと呼ぶに相応しい人物なのだ。

「今日は併走引き受けてくれてありがとね」

「お安い御用です! このサクラバクシンオー、お望みでしたらいついかなる時でもバクシン超特急で参上しますので!」

「お、心強いね」

 二人の語らいの脇でメイケイエールは(おのの)いていた。もはや理由は言わずもがな、豪華すぎる併走相手に言葉も出てこない。

「か、河削さん!」

「なぁに?」

「ほ、本当に先輩と、ですか……?」

「そうだよ。そのために来てもらったんだもん。別に勝てって言ってる訳じゃなくて、合宿明けだし、どれくらいイケるか先輩の胸を借りようってことで」

 狙いは重々承知している。ただ衝撃が大きすぎたため、一つ二つと深呼吸を繰り返し、ゆっくり気持ちを落ち着かせる。

 考えるまでもなくこれは絶好の機会。サクラバクシンオーレベルの相手と併走できるまたとないチャンスである。

「――委員長先輩!」

 手を身体の横にまっすぐ沿わせ、深々と頭を下げた。

「一つご指導のほど、よろしくお願いいたします!」

「もちろんですとも! ご一緒にバクシンを究めましょう!」

 握り拳を作り、サクラバクシンオーは力強くそれに応える。

 もしかすると、もしかするかも――。

 (きわ)(きわ)まで身体を追い込んだ夏合宿で、メイケイエールは自身がどれほど成長できたか確かめたかった。全力をぶつけるのに相応しい相手を前に、挑戦してみたいと強く願うのだった。

 

 ザッザッザッザッ――。

「いい調子ですよエールさん! このまま着いてきてくださいっ!」

「はいっ!」

 短く刈り揃えられた芝はシューズの蹄鉄を難なく受け入れてくれる。足取りも軽やかに、メイケイエールとサクラバクシンオーがトラックコースを並んで走る。トラックを二周、計千メートルの一騎打ち。弾む心に脚が勇みそうになるのを抑える。

 併走相手は肘を直角に曲げ、指先までピンと伸ばした一分の隙もない綺麗なフォーム。さすがはトップクラスのアスリートだと、メイケイエールは横目で窺いながら感心した。

 そしてあっという間に五百メートル到達。ゴール板代わりに立つ河削の眼前を駆け抜けていく。

「好きな時にスパートを仕掛けて構いませんので!」

「分かりました!」

 勝ち負けが全てではない。しかしながら、レジェンドに勝ちたいという思いがあることも事実。

 第一、第二コーナーを回ってバックストレッチへ。メイケイエールは地面を強く蹴り出した。

(ここで――!)

 広いストライドで一歩一歩跳ぶように踏み出し、サクラバクシンオーを引き離してゆく。距離にして残りおよそ三百メートル、夏の名残を漂わせる空気を切り裂いて、ひたすら前にと猛進する。

 後ろとの差は一、二バ身ほど開いていた。安心できる差ではないが、それでもレジェンドに対して優位に展開できている。確かな手応えを感じながら、最終コーナーを抜けてホームストレッチへ。

「まだまだっ! いきます!」

 スタミナはまだ十分。メイケイエールをなおも加速した。

 ゴールまで残り僅か。まさか、本当に先頭のままで――。

 

『バックシーーンッ!』

 

 後ろからサクラバクシンオーの喚声(かんせい)が聞こえた。

 その直後である。隣をするりと、いとも容易く彼女が追い抜いた。驚いている暇はない。

(くぅっ――!)

 歯を食い縛って後を追う。しかし差は縮まることなく、サクラバクシンオーがゴールに先着となった。

 千メートルを走り切っても、彼女は息も切らさぬ余裕の佇まい。これがレジェンドなのだと、肩で息をしながらメイケイエールは感服した。

「エールさんお疲れ様でした! 胸がすく素晴らしいバクシン振り、お見事です!」

「あ、ありがとうございます……」

 勝てはしなかったものの、一時は先頭に立っていたのだ。その上で自らの走りを評価してもらえた。

 まだ走り足りない。もっともっと走りたい。一回きりで終わらせることがどうしてできようか。

「あの、もう一本! いえもう二本ほどお願いできますか!?」

「もちろんです! では早速――」

 メイケイエールからの提案を二つ返事で了承するサクラバクシンオー。意気揚々とスタート地点へ向かおうとしたが、途中で不意に脚を止めた。

「千メートルを三本……すなわち三千メートル……」

 ぶつくさと呟く彼女の背中を怪訝(けげん)に眺める。何か変なことでも言ってしまったかと気が気でない。

「――なるほど! エールさんも長距離走者をお目指しなのですねっ!」

「……え?」

 メイケイエールは自分の耳を疑った。どこから長距離走者を導き出したのか、まるで見当もつかない。

「かくいう私も千二百メートルを三本、三千六百メートルを走り抜いたことがありまして! 短距離から長距離までこなすオール・レンジ・委員長とはなにを隠そう、このサクラバクシンオーなのです! ハッハッハッハッハッ!」

「は、はぁ……」

 千二百を何本走っても、結局は千二百に変わらないのでは――。

 指摘したいのは山々だが、胸を張って高らかに笑う姿にそれをしてしまって良いのかどうか。言ってはいけないことのような気がしてならず、とりあえず触れないように、話を合わせるのを最優先に心がけるのだった。

 

 そして二人から少し離れて。

「――うん。エールも良い感じに仕上がってきてるね」

 スタートからゴールまでメイケイエールの走りっぷりを一部始終観察し、河削は満足げに頷いた。確かに惜しくも勝利には届かなかったものの、要所要所で見せるスピードや加速はレジェンドのそれに勝るとも劣らない。

(このまま直行してもいいけど……どうせなら一つ叩いておきたいな)

 身体面はなんの心配もなし。懸念点があるとしたら、前走から少し間隔が開きレース勘がどうかというところ。どうせなら短距離レースを一つ走り、心身共に最高の状態で本番を迎えたい。

 直近で最適なレースといえば。

(やっぱセントウルかな――)

 スプリンターズステークスと同じ芝千二百。過密日程気味とはなってしまうものの、短距離レースならさほど負担はかかるまい。

 そして何より、セントウルステークスで結果を残すことの効果がある。スプリンターズステークスを目指すウマ娘にとって、間違いなく考慮せざるを得なくなる。そして圧倒的な勝利を見せられれば、相手の心理的な負担は更に――。

 瞳に妖しく光る輝きを灯し、河削は鋭い牙を覗かせながら静かに笑った。

 

輝く綺羅星

 九月上旬、セントウルステークス当日。

 パドック開始を控え、メイケイエールは中京レース場の自身の控室にいた。制服をハンガーに掛け、タンクトップと下着のみの非常にラフな姿だった。すらりと伸びる背筋に引き締まった腹筋、そして見事に鍛え上げられた両脚が彼女が普通の学生ではないことを誇示していた。。

 河削が狂気に悶絶しかねない、非の打ち所のない肉体美。幸か不幸か、彼女は挨拶回りで控室にいなかった。

「あー、そういえば……」

 レース用ウエアから、幼児サイズのインナーを引っ張り出して苦笑いを浮かべた。すっかり忘れていたが、レースの時には加圧インナーを着用することになっていた。

 肺から息を可能な限り吐き出し、意を決してインナーに頭を通す。

「ンんっ……くッ……」

 上半身を締め付ける強烈な感覚に静かに悶える。以前よりも締め付けられ方が強いような――。

「……サイズを見直してもらわないとっ……いけないですね……っ」

 久方振りに感じる前後左右からの圧迫感。ぴったり張り付くインナーが、彼女の無駄のないプロポーションを浮き彫りにしている。

 それにしても息苦しい。制動を(うなが)すための措置というのは重々承知している。それでもいつか着ずに済む日が来ることを願いつつ、ウエアとゼッケンに袖を通していった。

 

「えー、レース場の運営と、他に出る娘のトレーナーと……えっとこんなもんかな」

 挨拶回りのリストを記したメモを片手に、河削はレース場内を駆け回っていた。単純な挨拶もあり、当日の連絡事項の共有もありと、パドックが始まる前にそれらをこなさなければならない。

 ましてや今日は、特に大切な日。一通り予定を終えて控室に戻った時だった。

「あ、ちょっ……」

 メイケイエールの控室の前に、パリッとしたスーツ姿の中年男性が立っていた。掲げた右手の甲を扉に向け、ノックせんと窺っている。

(困るなぁ……)

 河削は溜息をこぼした。

 恐らくはメイケイエールのファンだろう。しかしここは関係者以外立ち入り禁止エリアである。ましてや、これからレースの準備が目白押しで非常に繊細な時――。

 分別を弁えないファンほど厄介なものはない。

「――すみません。エールのファンの方ですね?」

「え? あ、私は……」

 笑顔を作り、やんわりとした雰囲気を出して近づいてゆく。本当なら膝に蹴りをかまし、関節技をキメながら警備員に突き出してやりたいところだった。

 しかしながらファンの一人というのも考慮しなければ。乱雑に扱い、その結果メイケイエールに影響が及んでは本末転倒にもほどがある。

「ここは関係者以外立ち入り禁止なんですよ。会いに来てくださったのは嬉しいんですが、もうすぐパドックも始まりますから。パドックの時に、エールを応援していただけると彼女も喜ぶと思います」

 警備員は何をしているのか。腹立たしい感情を隠しつつ男性と扉の間に割って入る。ただのファンならまだしも、世の中は善意ばかりではない。万が一が起こってからでは遅いのである。

「さ、一般エリアまでご案内しますから……行きましょうね」

「待ってください。ちょっと話を――」

 見てくれは人の良さそうな中年男性である。ひとまず話を聞いてくれそうではあった。

「河削さん? どうしたんですか?」

 背後の扉が開き、中からメイケイエールが顔を覗かせる。

 ――これはマズい。

 できれば穏便に、そして静かに事を済ませたかった。推しのウマ娘がすぐ目の前にいる、それはファンの感情に火を点ける大きな要因。

「何でもないよ大丈夫。ちょっとファンの人が迷い込んじゃったみたいだから送り届けてくるね。エールは部屋で待っててちょうだい」

 一見温厚そうなこの男性も興奮した時は果たして。一刻も早く退散願うべく、河削は強引に腕を引いて連れて行こうとする。

「あぁ、エール良かった! 元気そうだね!」

「――えっ!? おと……」

 ファンの男にメイケイエールが見つかってしまった。一般客が来るとは思っていなかったであろう彼女は目を白黒。手荒な真似はしたくないが、これ以上の狼藉はレースに差し障りかねない。河削は男の耳元に顔を寄せる。

「――ちょっとオッサン! これ以上うちのエール(・・・・・・)に近寄ると警備員に突き出すよ!」

 メイケイエールに聞かれないよう小声で、しかしドスを効かせながら男に釘を刺す。そして多少痛がられようが無視して腕ごと引っ張る。

 ところが――。

「河削さん! 待ってください!」

 呼び止めたのは彼女だった。控室から飛び出し、河削と男の元へ大慌てで駆け寄ってくるではないか。

「エール駄目だよ! あなたは部屋に――トラブルとかじゃないから、ね?」

「違うんです、その人は――」

 妙に庇い立てする姿に違和感があった。一般のファンにそこまで拘るのは何故なのだろう。

 しかし河削ははたと気がつく。

 通年、セントウルステークスは阪神レース場の開催である。ただし本年はフレッシュ工事のため、代替としてここ中京レース場での開催となった。

 中京レース場といえば中央で唯一URA直轄でなく、一般の株式会社が運営するレース場である。

 そして、メイケイエールはその運営会社の社長令嬢。

 であれば、つまり。

「――父です、私の」

「ぇ」

 河削は腕を引っ掴んだまま、男の顔をまじまじと見つめた。

 「いや、どうも……娘がいつもお世話になっております」

 はにかむ彼の顔は雰囲気がどことなくメイケイエールに似ていた。

 

「エールさんのお父様とまったく気づかず……本当に申し訳ありませんっ!」

 メイケイエールの父親を控室に招き入れ、河削は再三の土下座ラッシュだった。けんもほろろに扱っただけでなく、オッサン呼ばわりという無礼千万の極み。

 パドック前で気が立っていたことを差し引いても迂闊な真似だった。

「いえいえ、急に押しかけてしまった私が悪いんですから。むしろしっかりされているトレーナーの方で安心しました」

 救いなのは彼が至って温厚であったこと。人によっては叱責、あるいは協会へのクレームか。

「もう。河削さん忙しいんだから。わざわざこんな時に来なくたって……」

「いやぁ、エールがいよいよウチで走るってなると、居ても立ってもいられなくってねぇ。仕事なんてそっちのけだよ」

「お父様仕事して」

 しかし良かったことが一つ。友人にも丁寧な言葉遣いであるメイケイエールが、家族には年相応の反応をするといつこと。ありのままの彼女の姿が垣間見え、この点については父親に賛辞を惜しみなく送るべきだろう。

「――で、いつまで河削さんを床に座らせておくつもりなの?」

「……え? あぁ! いや申し訳ない! 決してそんなつもりでは……どうかお顔を上げてください」

 レース中はさておき、普段は品行方正で通っていても実家ではこういう感じなのか。何というか非常に彼女らしくあり、河削は破顔しそうになるのを必死に噛み殺しながら立ち上がる。

「いえ、トレーナーとしてエールさんを預かる身ですから。本来ならまずご挨拶に伺うべきところを……」

「いいんですよ河削さん。お父様は一番最後で」

 彼女はああ言うが、そうもいかないのが間に立つ者の辛いところ。なかなかぞんざいな扱いの家長だが、考えてもみればメイケイエールは思春期真っ只中。繊細なお年頃の女子がいる家庭はこんなものかもしれない。

「――あ、待って。お父様がいるということは、もしかして……」

「うん。母さんも来てるよ。アリサは部活で来れなかったけど……もうパドックにいるんじゃないかな。最前列を取るんだって息巻いていたよ」

 メイケイエールの母親と妹。書類上だけの認識しかないが、少なくとも母親は同じウマ娘のはず。

「エールのお母さんってどんな人?」

「えっと、まぁ」

 口元をもごもごさせて歯切れの悪い彼女。

「……白毛なので分かりやすいかなと。見えなくても……凄いので」

 それ以上は答えてくれなかった。

 ――彼女の言葉が何を意味しているのか、河削は数十分後に思い知ることとなる。

 

『只今より、第十一レース、セントウルステークスの出走前パドックを開始いたします』

 

 メイケイエールをパドックの待機室に送り出し、いつも通りの最後列に河削が座る。今日のメインレースだけあって観覧席は満席状態。

 さてこの状態から母親が見つかるだろうか。本人が言うには見れば分かる、とのことだったが。

「あれ、かな」

 探し出すのに時間はさしてかからなかった。

 すり鉢状のステージ席最前列。ランウェイから伸びるお立ち台の真正面に位置する席に、雪のような白毛をショートに切り揃えたウマ娘がいた。

 確かに目立つ髪色のウマ娘だが、それが決定打ではない。脚元に置いたトートバッグをガサゴソ探り、取り出したのは幾つもの手製と思しき推し団扇。黒地のベースに、カラフルなメイケイエールの文字がよく映える。離れていても分かるほどの凄まじい熱意であり、河削の本能が鋭く察知した。

 ――あの人は多分、私と同類(オトモダチ)

 

『一枠一番、ボンヴィアージョ――』

 

 一番目、二番目と出走ウマ娘のパドックが進んでゆく。チェックすべき娘はいないか確認しつつ、件の女性にもそこはかとなく目を向ける。

 今の所は様々なアピールに対し、変わらぬ暖かい拍手を送るのみ。そしていよいよメイケイエールの番へ。

 

『四枠五番――』

 

 彼女が動いた。傍らに置いていた推し団扇を手に取り、指の隙間で挟み込むように握る。片手で三本ずつ合計六本。その姿はさながら、アメコミヒーローを彷彿とさせるような。

 

『メイケ「きゃ〜っ! エールちゃ〜んっ!」』

 

 パドックのアナウンスをかき消すほどに力強く、伸びのある声は声楽経験者のような圧倒的な迫力。これはちょっとやそっとの雑音では太刀打ちできまい。

 そして何より、両手に携えた無数の団扇。動かす範囲は自身の身体の前に限り、両隣と後ろの人の迷惑とならないようにする心がけ。

 これは間違いなく熟練者の動きである。

 

『前走の京王杯では見事一位を掴みました。本日一番人気です。前回より四ヶ月ほど開いていますが、しっかり鍛え上げてきたようで好走が期待できますね』

 

 担当しているウマ娘というのもあるが、贔屓目に見ても過去一の仕上がりと言っても過言ではない。スプリンターズステークスに向けて、またとない試金石となるだろう。

「Y・E・L・L! Y・E・L・L! エールちゃん笑って〜っ!」

 それはそれとして、メイケイエールの母親と思しき女性の弾けっぷりも凄まじい。当の本人はパドックのお立ち台でアピールを続けているが、にこやかな表情の片隅、ほんの僅かに困惑の色が浮かんでいた。

 これならば、見れば分かるという表現も頷ける。ひとまず、このタイミングでメイケイエールの両親に挨拶をしなければ。他のウマ娘のチェックを続けながらパドックが終わるのを待った。

 

 出走者全員のパドックが終わり、さていよいよレース本番とスタンドに人が流れてゆく。人混みに紛れてしまう前に、河削は接触を試みた。

「すみません。メイケイエールさんのお母様でいらっしゃいますか?」

 団扇をトートバッグに納め、席から立ち上がった所だった。生成りのブラウスにニットのベストを合わせ、下は踝丈のプリーツスカート。

 近づいてみると案外背丈があり、一六〇センチ中盤はある河削よりも一回りほど。恐らくは一七〇センチは超えていよう。

「はい、そうですけど……?」

「良かった。私、エールさんの――」

「分かったあの子のトレーナーさんね!?」

「――はい。河削と申します」

 間近だと殊更に声量に圧倒される。なかなか、娘のメイケイエールとは対照的な人物である。

「お話はあの子からいっつも聞いてますよっ。とても優秀なトレーナーさんと契約できたって……変なトコ頑固でごめんなさいねっ。大変だったでしょ?」

「いえ、むしろエールさんの優れた才能に助けられてるばかりでして」

 担当ウマ娘の親御である。既に手遅れかもしれないが、せめて母親には失礼がないよう丁寧に言葉を選ぶ。パドックの時の行動も鑑み、所見としてはとても押しが強い人物のような。それは物理的な大きさも含めて。

「まぁ謙遜しちゃってっ! まだお若いのに実績も豊富で――」

 母親が河削の両手を取り、包み込むように両手を重ねる。がっしりとしていながらしなやかさを併せ持ち、そして優しい温かさに心落ち着く。

「――それで、今度のレース。ウチの子は絶対に勝てるかしらっ?」

 

 ――絶対。

 

 その言葉は使い方が非常に難しい。勝負事に絶対がないのは周知の事実、しかし親の立場からすれば、我が子が勝つ姿を熱望するのもまた道理。

「確約はできません。ですが――」

 最善を尽くしますと。そう口にしかけた瞬間、河削の手を握るメイケイエールの母の手が硬化した。ふんわりとした肌触りの和毛から、両手をコンクリートで固められたかのような強烈な圧。

「――絶対に、勝てるかしらっ?」

 母親の手に力が籠もる。そのまま握り潰されるのではないかと思い、無意識に手を引こうとした。

 しかしピクリとも、一ミリすらも動かせない。引こうが押そうがびくともせず、それでいて彼女はにこやかな笑顔のまま。

 河削の額に脂汗が噴き出す。下手に何かを言おうものなら、自身の両手がプレスされるのではないかと。現にじわりじわりと締め付けが強くなる中、躊躇している時間はなかった。

「……絶対に、勝てます! 勝たせます!」

 やけくそ気味の豪語もやむなし。

 握り潰されかけていた両手の拘束が解かれ、血が通う感覚にむず痒さを感じる。

「まあっ! 素敵っ!」

 しかしそれも束の間、メイケイエールの母は両腕を大きく広げた。迫力満点、その姿はハイイログマの如し。河削はこのまま(くび)り殺されることを覚悟した。

「なんて頼もしいトレーナーさんなのかしらっ!」

 両手の次は全身の抱擁。

「ぉ゙っ……!」

 全身の骨が軋むほどにパワフルで、肺の中の空気が強制的に押し出される。

「これからもエールのこと、よろしくお願いしますっ!」

「゙ゥ゙ぇ……ぃ゙……」

 呼吸すらままならない全身圧迫状態。何とか返事ができるだけの息を絞り出した。しかしながら、母親の肩越しに感じる花のような芳香。視界が白くぼやけつつある中、河削はある種の快感で陶然(とうぜん)と顔を(とろ)かせるのだった。

 

「お母様……どうでした?」

 パドックを終えていよいよ本バ場入りが迫る。河削は危うく逝きかけながらも、どうにかメイケイエールと合流を果たした。

 地下バ道の中程、最後の検査エリアでシューズやウェアの状態をチェックする。ここ以降は原則調整禁止となるため、誰しもが神経質になる場所だった。

「いやぁ……強烈だったねぇ」

 河削は天井を見上げながら、メイケイエールの母親の顔を思い出した。今も全身を締め付けられる感覚――何だか新しい世界が拓いたような――が残っている。

「すみません。お母様、実はトレセン学園に在籍していたことがあったんです」

 蹄鉄の調整に余念がないメイケイエールの口から、思わぬ情報が飛び出す。平然とした語り口だったが、一時でも在籍していればデータ等残っていたかもしれない。

「えっ? そうなの?」

「はい。結局未勝利クラスから抜けられなくて、途中で一般校に転校しちゃいましたけど。昔からレースのことになるととても熱が入ってて……」

「ふーむ、なるほど」

 自分が果たせなかった夢を娘に重ねて、ということだろうか。それならばなおのこと、このセントウルステークスを勝利で飾ってあげたい気持ちが色濃くなる。

 そしていよいよ準備が整う段となり、メイケイエールがゆっくり腰を上げた。

「エールさん、トレーナーさん! ご無沙汰しています!」

 眼鏡をかけた小柄な女性記者が、この機を逃さんとボイスレコーダー片手に声をかけてきた。

「あぁ高木ちゃん、久し振りぃ」

「高木さん! ご無沙汰しております」

 デビュー当初から担当を続けている高木記者。今ではもうすっかり顔馴染みである。

「夏合宿、かなりの成果があったみたいじゃないですか……同行して密着取材、させてくださいよぅ」

「一応は学園の行事だから。学園関係者でないと」

「そこはほら、通りすがりを装いまして」

 高木はカメラのシャッターを切るジェスチャーを見せた。

「それじゃあほぼほぼパパラッチじゃない」

 今は秋のスプリント戦線真っ只中であるので、取材に時間を割くのはいささか難しい。レース関係が落ち着く冬頃でなら、と河削はおぼろげに考えた。

「あ、お時間使わせてしまってすみません――やはり本命はスプリンターズステークスだと思われますが……今日のレースの意気込みをお聞かせください!」

「エール、いい?」

「はいっ」

 タイミングが良いことに、メイケイエールは蹄鉄の調整を終えたところだった。道具を傍らに置き、一歩前に出て高木のマイクを受ける。

「レースは京王杯以来ですけれど、良いイメージはバッチリできています。いつも通り、力いっぱい走って……勝って応援してくれる方々に元気を送れたらと思います!」

「――気合十分なコメントありがとうございます! 私もスタンドから応援させてもらいます!」

 ――皆にエールを。

 自らの名に恥じない活躍ができるよう、決意を新たにしたメイケイエール。河削と高木の両名に見送られ、颯爽と本バ場へ向かっていった。

 

 昂る心を隠しておくにはゲートの中は狭すぎる。

 本バ場入りを済ませ、ストレッチと試走を終えたメイケイエールはゲートに収まっていた。ふう、と頬を上気させながら息を衝く。その顔は緊張というより、どこか安堵の色をしていた。

 振り返るは本バ場入りの時。彼女が姿を見せた瞬間、付近の観客が大いに沸き立ったのである。

『エールちゃん! 本物のエールちゃんだっ!』

『やっば、脚長くてすっごい美人! 推せる……!』

『レース頑張って〜! 応援してるよ〜!』

 まさかここまでの声援が送られるとは思ってもみなかった。応援してくれる人がいるというのはとても力になる。

 しかしその一方で……。

『メイケイエール! 今日は暴走しないでよ!』

『活きのいい獅子舞期待してるから!』

 こういった声もあった。

 京王杯スプリングカップの道中、加圧インナーを気にして首を振る仕草が獅子舞そっくりだとネットで話題になったのだ。

 年頃の女子に対してその表現はいかがなものかと。しかし、自身のレース映像を見返すとぐうの音も出ないほどの獅子舞っぷり。これはそう言われても仕方がないと苦笑する他なかった。

 

『今週から始まった秋レースも、まだまだ堪える暑い日差しの中京レース場です。本日のメインレースはGⅡ、産経賞セントウルステークス。サマースプリントシリーズの最終戦も兼ねています』

 

 いよいよレース開始。満員のスタンドからファンファーレに合わせて打たれた手拍子が、熱気を伴ってスタート位置にまで流れてくる。

 

『秋のスプリント王を目指しての十三名の出走となりました。芝千二百メートル、全てのウマ娘がゲートに収まり――態勢整いました』

 

 しっかり走れるかどうか、自信と不安が半分半分。徐々に高鳴る鼓動はむしろ懐かしさがあった。身体の中で血がぐらぐらと煮え返り、両脚は早く早くと急き立てる。

 ――大丈夫、もうすぐだから。

 足元の芝を(なら)し、スタートの態勢を取る。(はや)る気持ちは驚くほど少なかった。

 視線は真っすぐ、閉じるゲートの向こう側へ。小刻みな呼吸が自ずとリズムを奏で、耳はピンと反り立つ。

 

 ゲートが開き、緑のターフが眼前に広がる。

 そして、メイケイエールは飛び出した。

 

『――スタートが切られました! 揃ったスタートを見せた十三名、大きな拍手が起こる中京レース場!』

 

 出遅れることなく、まずは上々。

 轟く足音がターフの上を一団となって進む。まだ安心はできない。全神経を以て前後左右に気を飛ばす。

 

『まずは前に前に! 二番シンデレラシューが先頭に立ちます!』

 

(前には誰も……横も……後ろも? これは……)

 

『インコースから一番ボンヴィアージョ、その外から三番ヘキギョクノキミ! 更に外の方から十二番プライムアームも敢然と行きました!』

 

 秋色薫る清風が吹き抜ける。

 

『二バ身離れて五番メイケイエールは五番手を追走。その二バ身後ろは――』

 

 メイケイエールの周りがぽっかりと空いていた。彼女より前は先頭のウマ娘に取り付こうと追いかけ、後ろは最後の直線で一気に追い込もうとして控えている。

 これは偶然か必然か。誰もいない空間の中、他者に気を揉む必要もなく自分の走りに集中できた。インナーの締め付けも気にならず、意識は明瞭そして叡明(えいめい)に。今なら蹄鉄越しにターフの芝をも感じ取れてしまいそうだった。

 

『さあ、先頭は早くも四コーナーのカーブを立ち上がって最後の直線、残り四百メートルの追い比べ!』

 

 縦長の隊列、メイケイエールは先頭集団に目を向けた。皆内寄りの進路。コーナーを曲がる遠心力に身を任せ、一歩二歩程外に出た。

 

 満員のスタンド、視界は良好。彼女は頭をグッと下げる。

 

『先頭は身体半分リードでシンデレラシュー! その次は外からプライムアーム、それからボンヴィアージョ!』

 

 身体が熱を帯び、踏み込む脚は強くしなやかに。

 中京レース場の特徴、それはゴール前に聳える急勾配の登り坂。スタートから最後の直線までなだらかな下りが続いてのソレである。

 登り坂を終えても残りはなお二百メートル。きつい坂を登ってからのスパートが定石とされているが……。

 

(――いいえ!)

 

 それでは勝てない。本能が叫びを上げた。天に向かって伸びる坂の麓、メイケイエールは大地を蹴って躍り出す。

 

『一気に上がってきたのはメイケイエールだ! 一番人気メイケイエールが一気に上がってきた!』

 

(違う――)

 

 メイケイエールは困惑した。

 一蹴り一蹴り踏み出す度に、見えない誰かが力強く背中を押してくれるような。

 

(これが、私の――?)

 

 凄まじい推進力に、坂から空へ翔び上がってしまうのではないかと錯覚する。合宿前はここまでの感覚はなかった。自分が自分でないような。いや、確かに――頬に当たる空気、耳に届く万雷の歓声、これは間違いなく自分自身。

 確信と共に、その脚は緩めない。

 

『坂を登りきった! 残り二百を切る――メイケイエールが先頭に変わったっ!』

 

 空を切り、風に乗るこの身は渾然一体。どこまでも駆ける想いを携え、真っしぐらにゴールを目指す。

 

『二番手プライムアームが頑張っている! その内からデイブレイクオナーが続くが――!』

 

 全ての娘はその色を失い、眩く輝くは唯一人。前には既に誰もいない。ゴール板にもうすぐ手が届く。

 

『メイケイエールが先頭で抜け出した! 先頭はメイケイエール! 後ろを突き放しメイケイエールが一着でゴールイン!』

 

 まさに会心の走り。先頭でゴールを駆け抜け、メイケイエールは肩で息をしながら速度を緩める。

 

『秋のスプリント王者に大きな一歩です! 素晴らしい仕上がりで圧勝のメイケイエール! 勝ちタイムは――』

 

 皆の注目は大型ビジョン隣の電光掲示板へ。光が点った瞬間、レース場の観客スタンドが激震に包まれた。

 

【挿絵表示】

 

『一分六秒二のレコードタイムッ!!!』

 

 これまでの中京レース場、芝千二百メートルのコースレコードは一分六秒七。それをコンマ五も上回る驚異的なタイムを叩き出したのである。

 ある者は圧倒的な勝利に絶句し、ある者はメイケイエールの名を叫ぶ。レース場は一色に染まり、実力に疑問を呈する余地はなくなった。

「エールちゃん! 一着おめでとう!」

「凄いぞメイケイエール! 次もその走りを見せてくれよーっ!」

 スタンドから送られる称賛の雨霰(あめあられ)。耳元がこそばゆくなりつつも、その声に応えて両手を振り返した。

 どこかで見てくれているであろう両親と河削に向け、とびきりの弾ける笑顔で。

 

「……マシロ、見てたか?」

 寮の自室で、スマホでレース中継を見ていたベネベネ。スリープモードにして画面を落とし、机に伏せて置く。興奮冷めやらぬ熱い吐息を漏らしつつ、同じく部屋にいるマシロに声をかけた。

「聞いてたわ」

「はは……見なっせ。さっきから震えが止まらんよ」

 凄まじいものを見た。それは強大な相手に対する畏れか、はたまた悦びか。武者震いする右手を左手で抑える。

「凄かもん見たなぁ……坂で加速して、坂終わってからも加速すっとか。次元が違うよ」

 メイケイエールはスプリンターズステークスにおける、間違いなく最大のライバル。ある程度は予測していたが、それにしても圧倒的なパフォーマンスを見せつけられた。

「あら? 怖気づいた?」

 意地悪な笑みを浮かべてマシロが振り返る。

「――まさか。今から楽しみで仕方なかよ」

 歯を見せて、にいっとベネベネが笑う。相手が強ければ強いほど、その心も強く燃え上がる。身体が血湧き肉躍り期待に胸を膨らますのだった。

 

消える綺羅星

 世の中は好事魔多し。そして運命は時として残酷に牙を剥く。スプリンターズステークスまで残り十日に控えたある日のこと、急報がメイケイエール達に衝撃をもたらした。

 ――トレーニング中にベネベネが負傷。病院に緊急搬送された、と。

 メイケイエール初めミロワダーレ、リコンスタが学園近くの総合病院に駆けつけた。取る物も取らず、トレーニングウエア姿のままで。

「ベネベネさん……!」

 玄関前に集まり、ベネベネをひたすらに待つ。彼女のことだ、きっとけろりとした顔で出てくるだろうと。ただの軽い捻挫だろうと。ほんの僅かな期待に心を寄せた。

 そしてベネベネがその姿を見せた。

「――やぁ」

 彼女は歯を覗かせながら片手を上げる。 

 

 ――マシロが押す車椅子に腰掛けながら。

 

 絶望のあまり三人は言葉を失う。左脚に巻かれたギプスがその深刻さを物語っていた。身体に力が入らず、その場に立ち尽くすことしかできなかった。

「なんね皆して。こんな――大袈裟に処置されただけだよ。ただん捻挫やけん。またすぐに走るるよ」

 握り拳でコンコンとギプスを叩く。おどけてみせるベネベネであったが、その後ろでマシロは首を横に振る。

「――ベネ、やめて」

 彼女らしからぬ、上ずった声の悲痛な懇願。ピタリとベネベネの動きが止まった。

「エール達に、そんなことはやめて」

 ほんの一瞬、目を見開くベネベネ。そして糸が切れた操り人形の様に頭を垂れる。その態勢のまま低く、か細く、震える声で彼女が言葉を絞り出す。

「……左の、脚首の……骨折やと」

 後頭部をハンマーで打ち付けられた衝撃。息が止まり、心臓が針金で締め付けられる。

「でも、でも……すぐに治るよな? ほら、骨折っつったって軽かったりするし……なっ」

「そ、そうですよっ。早ければ一ヶ月くらいで……」

 暗鬱な空気を打開しようと、ミロワダーレが明るく振る舞いながら他の二人に同意を求める。せめてもと、硬い笑顔を浮かべてメイケイエールは返事と共に頷く。

 しかし、ベネベネは首を振って否定した。

「――全治、半年」

 重い。ただひたすらに重い絶望感。それは嘘だと、きっと嘘だと叫びたかった。

「……半年ならまだ……まだきっと……」

「医者にね、言われたんよ」

 その先の言葉は、誰も聞きたくなかった。

「骨折が治るんは半年。でもそこから元んよう走るるまで更に半年――レース復帰には最低一年は必要やと」

 ウマ娘として、一人のアスリートとして致命的な一年。スプリントのGⅠは春の高松宮記念と、秋のスプリンターズステークスの年二回しかない。ワンシーズン、あるいはそれ以上を棒に振ってしまうことになるのだ。

 しかも、前の状態に戻れるとも限らない。どれほど厳しいリハビリを積もうが、時の流れはささやかな希望すらも打ち砕いてしまう。

「――ごめん、エールさん」

 闊達(かったつ)なベネベネの姿はもうそこになく、後に残されたのは抜け殻の彼女。

「ウチはもう――走れんようになって――」

「そんな、ベネベネさんは何も悪くありません! きっと走れます! また一緒に……一緒に走りましょう!」

 メイケイエールが車椅子に縋りつき、ベネベネの魂を引き戻そうと必死に心を込める。しかし、ごめん、ごめんと繰り返すばかりのベネベネの瞳はがらんどうとなっていた。

 

 ――そして、当日の内にベネベネの骨折と、当面の静養が発表された。レース復帰は未定――その報道は学園内外に大きな波紋を生じさせたのだった。




次話はスプリンターズステークス。
なお、着順掲示板の画像はまめ氏作成の着順掲示板シミュレータ
ーを使用させていただきました。
https://mamema.ldblog.jp/TurfVisionSim/turfvisionsim.html

※セントウルステークスのウマ娘読替え一覧
シャンデリアムーン→シンデレラシュー
ボンボヤージ→ボンヴィアージョ
ファストフォース→プライムアーム
ジャスパープリンス→ヘキギョクノキミ
サンライズオネスト→デイブレイクオナー
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