ゴブリンの作り方   作:靴下9153

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トロール・ストロール
処刑


 国王のお膝元、首都タゴマローボはとある噂で持ちきりだった。

 

 それは岩巨人トロールを捕まえたというお触れであった。

 

 本日正午から処刑が行われるとのことなので、早速家族と連れ立って処刑場へ向かう。

 

 処刑を毎回楽しみにしている息子は、牧場の隅に積み上げられた石を押しのけて、底の方にある手ごろで尖ったお気に入りの石まで用意していた。

 

 誰が止めを刺せるか、競っているのだろう。

 

 息子の石が水甕(みずがめ)に沈んでいたので、拳骨をくれた事もあった。

 

 

 ——殺傷力を高めるためだろうが、特に石の尖った部分に念入りに山羊の糞を塗りたくっていたので叱ってやった。汚物の入った小瓶を取り上げて拳骨をお見舞いする。

 

 間違ってトロールじゃない人に飛んで行ったら糞まみれになってしまう。

 

 まったくやんちゃ盛りで困る。

 

 というかこの小瓶……妻の白粉(おしろい)の……見なかったことにしよう。

 

 幸い妻は怪物に夢中だ。

 

 

 ——そう、怪物(トロール)が今まさに処刑台へと引き出されようとしている。

 

 処刑台より大きいトロールは、既にその場に現れた段階で肩から上までを(さら)していたのだ。

 

 

 そこで気が付く。

 

 張り付け用の何時もの棒が何処にも見当たらない。

 

 ——と、石を投げようとした息子を羽交い絞めにしていると。どうやら処刑台の方でも動きがあったようで、拘束されたトロールが台へゆっくりと登り始めていた。

 

 

 そういえば——投石用の石も用意されていない。

 

 恐らくは、デカすぎて張り付けられないせいで、何時もの手順と違う処刑とならざるを得なかったのだろう。

 

 

 やがて怪物はその(おぞ)ましい姿を現した。

 

 

 ——なんというバケモノなのか。

 

 

 そのモンスターの威圧感は遠くからでも分かる。

 

 まるで目の前の手の届く距離に入り込んでしまったかのような、身の置き所の頼りなさに自然と体が縮こまった。

 

 

 おそらくは、処刑人にとってはこちらの比では無いだろう。

 

 なにせ実際に手の届く距離にいるのだ。

 

 それだけで十分な勇気を示せている。

 

 

 ——トロールの隣に斧を持った処刑人が立った。

 

 ついに邪悪なトロールを討ち滅ぼすときがきたのだ。

 

 頭にへばりついて髪の毛を引っ張る息子すら気にならなくなっていた。

 

 

 ——斧が振り下ろされる。

 

 

 ?

 

 

 確かに切り裂いたはずだが、血は見られなかった——

 

 

——!

————!

————————!

 

 

 

 ——嘘だ!

 

 

 

 目の前の光景が信じられなかった!

 

 あの見るからに重たそうな凶悪な斧を受けて血を一滴も出さないなど、いったいどれほど恐ろしい怪物なのだろうか!

 

 

 今や処刑場は恐怖の坩堝(るつぼ)と化していた。

 

 

 

 場を混沌が支配し、トロールが呼び込んだ悪魔が人々を混乱へといざない。

 

 倒れ伏す者を踏み(にじ)り、命を刈り取ってゆく。

 

 

 邪悪なるトロールの呪詛(じゅそ)——恐るべし

 

 

 だが、その時だ——日の光に照らされカテスラ王国の国章が燦然(さんぜん)と輝き、広場を余すところ無く照らした。

 

 

 

「——沈まれェェェい!」

 

 

 

 —— 一喝

 

 

 一帯を静寂が支配し

 

 

 

 サッ——

 

 

 

 王は人差し指を天上へ向けて言霊を解き放つ

 

 

 

「——見よ。天の神の威光は今なお衰えず、益々にして絢爛なり!」

 

 するとどうだろうか、トロールの肌はみるみるひび割れて崩れてゆくではないか!

 

 

 王の言葉により力を取り戻し、再び斧を振り上げた処刑人はトロールを一閃した!

 

 

 トロールは血に濡れ処刑台に倒れ伏した

 

 

————————!

————!

——!

 

 

ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ

 

 今や処刑場は熱狂の渦の中にあった——

 

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