コナンと哀ちゃんの話を聞きながら準備を進める。哀ちゃんは何処かの酒蔵に監禁されている模様。
哀ちゃんは諦めムードでコナンに薬の概要を話してるみたいだけど哀ちゃんを捕らえたピスコは暫く、その酒蔵に戻らないしコナンは哀ちゃんを助けるのを諦めてない。
ピスコを捕まえる為に工藤新一の声で目暮警部に足止めをお願いしたり、哀ちゃんの自力での脱出方法として暖炉からの這い出し方を指示してる。幸いにも酒蔵であるから白乾児がある。
そうなると哀ちゃんが志保さんに戻れるんだよね、一時的に。あれ……そうなると哀ちゃんのセクシーショットお披露目になっちゃう?新兄の初お披露目みたいに。
私も黒の組織相手に緊張してるのかな……現実逃避に無意味な方向に考え方が自然とシフトしちゃうんだけど。
そんな事を思っていたらピスコのパソコンのパスワードが解除されたり、ジン達が杯戸シティホテルに到着したりと事態は更に佳境へと進んでいた。志保さんに戻った哀ちゃんは煙突の中を登って屋上への脱出を急いでいるらしい。
その間にコナンはピスコの正体、そして暗殺事件の謎を解いて目暮警部に連絡を取り、犯人確保に向けて動いてくれている。
「俺は灰原を迎えに行ってくる。千紗と博士は此処で待って……」
「私も行くよ。想定外の事が起きるかもでしょ」
コナンは私と阿笠博士を車で待ってる様に言おうとしたけど待つわけないでしょ。
「危険なんだ……」
「それは新兄も同じでしょ。だったら少しでも皆が帰れる確率を上げる為に動くだけだよ」
私は人差し指をコナンの唇の前で立てて黙らせる。そしてジッと見つめる。するとコナンはハァーと深い溜息を吐いた。
「ったく……そう言う所が本当に蘭にそっくりだよな」
「このタイミングで惚気ないでよ」
こんなタイミングでお姉ちゃんと比較アンド惚気をしないで欲しい。それは助けを待ってる哀ちゃんにも失礼だからね?
「危ない真似すんなよ?」
「それは保証出来ないよ」
互いに短く返答をして車から飛び出す。後は出た所勝負!
◇◆
パシュ、パシュとサイレンサー付きの銃で志保さんが撃たれていた。屋上にいる事がわかってたから急いでコナンと駆け付けたけど思ったよりも展開が早かった!
コナンがジンに麻酔銃の照準を合わせて構えたから私は咄嗟に準備していた物を取り出す。
「兄貴……吐きませんぜ、この女……」
「仕方ない……逝かせてやるよ。なぁに、姉もすぐに行くだろうから心配するな。あの世で会えるだろうよ……ぐっ!?」
コナンが麻酔銃をジンに撃ち込んだ。私も準備しておいた仕込みを発動させている。バレない様にソーッとね。
そしてコナンはいつもの蝶ネクタイ型変声機で、私はボールペン型の変声機で声を変える。CV.諏訪◯順一氏で。
『ニャガニャガ……止めておきなさいジン。尤も……動きたくても動けないと思いますがねぇ』
「ん、だと……」
「ぐ……目が……テメェ!何者だ!」
私は扉の陰に身を隠しながら声を上げる。扉に銃弾が打ち込まれるの超怖い!
でも私の作戦はうまく行ったみたい。ジンもウォッカも動きが鈍くなってる。今のジンとウォッカは目と喉に痛みが起きてマトモに動けない筈。ジンに至ってはコナンの麻酔銃も加わってより一層動けない。
『煙突だ!煙突の中に入れ!』
「く……」
「このアマ、逃すか!」
『ジン、ウォッカ……シェリーを殺すのはお止めなさい。それは「あの方」のご意志にそぐわないのではないですか?唱えなさい、全てはあのお方の為に……』
コナンの叫びに志保さんは煙突の中に逃げ込もうとする。ウォッカは逃げようとする志保さんを撃とうとしたけど目が見えず呼吸も覚束ない状態じゃ狙いも定まらない筈。
更に私は爆竹に火をつけてジンとウォッカに投げ込む。ジンとウォッカはそれを爆弾かなにかと警戒してバッと身を伏せて私達から視線が外れた。
志保さんが逃げたのを確認し、ジンとウォッカが動けなくなったのを見た私とコナンはその場を後にした。
屋上から哀ちゃんが居るであろう部屋へ急ぐ私とコナン。
「千紗……さっきのなんだったんだ?」
「ああ、『あのお方の為に』って奴?適当にそれっぽい事を言っただけ。そうすれば勝手に深読みして動揺するかなって」
コナンの疑問に私はサラッと答える。実際、ジンは頭が良いし勘が鋭いから、撹乱するには頭を使わせないと。勝手に深読みしてくれれば運が良ければ黒の組織内部で争ってくれるかもだし。
「ハッタリだけで黒の組織を手玉にとったのかよ……末恐ろ……いや、現段階でも恐ろしいな」
どうにも私は身内の評価がおかしい気がする。ああ、いや今回は色々とやった自覚はあるんですけどね!
でも、さっきの作戦はうまくいって良かったぁ……失敗したらどうしようかと思ってたから。
あ、使った防犯スプレー置きっぱなしにしちゃった。まあ、買った時の指紋は拭いたし使った時は手袋してたから大丈夫かな。
後は上手い事ジンとウォッカが警察に捕まってくれると祈りたい。
そうすればストーリーは破綻するかもだけど新兄と志保さんが元に戻れて、尚且つ黒の組織が警察周知となり壊滅してくれれば御の字である。
捕まらないにしても警察内部での警戒心は高まる筈。
取り敢えず哀ちゃんを迎えに行って、この場を脱出が最優先だけどね。
◆◇sideジン◇◆
俺とウォッカは警察の目を掻い潜り杯戸シティホテルから抜け出した。
ベルモットとも合流し、運転を任せている。俺は右腕を負傷した上に、目と喉が痛む。ウォッカも同様だ。マトモに運転なんざ出来やしないからベルモットに頼らざるを得なかった。
「畜生……まだ目と喉が痛みますぜ」
「ああ……やってくれたもんだ」
「二人して情けないわね。それとも相手がやり手だったのかしら?」
裏切り者のシェリーの始末とピスコとの合流を予定していた俺とウォッカだが予想外の事が起きた。
シェリーを追い詰め、始末しようとした俺とウォッカだったがシェリーが抱き込んだ二人の男の邪魔が入り逃げられた。
片方の男は俺に麻酔銃を後ろから撃ち、もう片方の妙な喋り方をする男。
麻酔銃の男よりも、もう片方の男の方が過激な事をしやがった。
俺とウォッカは目と喉がやられた。俺に至っては麻酔銃を撃たれたが銃で針を撃ち抜いて体外に出したから動けたが、あのまま目と喉がやられたままじゃ捕まってたかもしれない。
俺は屋上に残されてた防犯スプレーを手に取り、思案していた。
「何それ?防犯スプレーじゃない。まさか、それで返り討ちにあったの?」
「ああ、市販で売ってる様な粗末なスプレーだ。射程距離も2メートルって所だな。だが、コイツを使った奴は俺とウォッカから距離を取り、風に乗せてガスを流した。出入り口の扉から吹く風が追い風で俺達の居る位置に流れる。スプレーのガスは立っている俺達に直撃し、伏せていたシェリーにはガスが当たらなかった。しかも扉から直線上に俺達。直線上から少し離れた煙突の側にいたシェリーに影響は少ない」
「そこまで計算して使ったんですかい!?まさか凄腕の傭兵か何かを囲いやがったのか……」
ベルモットが呆れた様にスプレーを見るがコレを使った奴の使い方がヤバい。スプレー本来の射程距離を風に乗せて伸ばして俺達に当てた上にシェリーへの影響が少ない様に使用。更に身動きが取れなくなった俺とウォッカに対して爆竹を投げつけ警戒した隙に逃亡……こっちの動きや思考を読まなきゃ出来ない事だ。
俺とウォッカは降り積もった雪で目を洗い、シェリーが逃げた煙突に中に入って追ったがシェリーには既に逃げられた後だった。おいぼれのピスコは『あの方』の命で始末したがシェリーや協力していた奴等にはしてやられた。
「そういや片方の奴は妙な事を口走ってやしたね。あの方の事やまるで俺達の内部状況を知ってるみてーに喋ってましたぜ」
「あら、内部に裏切り者がいるって事かしら」
ウォッカとベルモットが組織の裏切り者の可能性を考えているが……
「そう決めるのは早計かもしれんな。こんだけ頭がキレる奴の事だ、内部崩壊を目論んでの発言かもしれねーが……しっくりこない。俺の勘だがな」
そう……奴は俺とウォッカの行動を読み切ってシェリーを救い出した。俺達の油断があった事や、奴の行動が一枚上手だったのはわかる。だが、それだけじゃない。
ただの偶然が重なったにしては妙だ、何かが引っ掛かる。わからないってのは不気味だ。警戒するに越した事はない。
扉の陰に潜んでいた奴等の姿は確認出来なかったが、この落とし前はいつかつけるぞ……