◆◇side毛利小五郎◇◆
「ぷはっ……十和子さん、もう一杯お願いします」
「あらあら、毛利さん。飲み過ぎですよ」
行きつけのバーで酒を呷るが酔えた気がしない。バーのママの十和子さんから、やんわりと止められるがまだ飲みたい気分だった。
「もう一杯だけ飲んだら止めますよ」
「千紗ちゃんからも飲ませ過ぎない様に言われてるんですから」
苦笑いしながらも最後の一杯を出してくれる十和子さんに感謝しながら今の悩みに再度思考を巡らせた。
白馬探
警視総監の息子にして高校生探偵の一人として有名な若造。
どうして俺の周りはガキの探偵ばかりなんだ。新一の奴もそうだし、大阪の服部平次もそうだ。
高校生のガキが事件現場に嬉々として捜査をしているのを見てゲームやドラマを見てるみたいに謎を暴いていく。
推理力や洞察力は一目を置くところがあるのは間違いないが……犠牲者が出ちまった現場で推理小僧共が良い気になってる姿を見るのは嫌な気分になる。
コナンも従兄弟の新一の影響からか事件に首を突っ込む傾向がある。最近では千紗でさえそうなってる節があり、事件解決には助かっちゃいるが…‥ゾッとしねぇな。
大人の犯罪者がした事を大人が解決するのではなく、子供達の手を借りなきゃならないなんてよ……
俺は新一のそんな推理小僧の様な事が気に入らず、蘭との仲も認めちゃいなかったが……千紗は逆だった。
コナンが来る前だったかな……「今の新兄はお父さんの言うとおり、未熟な推理小僧なのかもだけど……本当に名探偵になると思うよ」なんて蘭同様に新一の事を信じ切ってる様子だった。
最近では、それでも俺が認めようとしないしない事に「じゃあ、お父さん想像してみて。お姉ちゃんが新兄以外の……例えばチャラい男にナンパされて、そのまま恋人になる所とか」と最悪の想像をさせてきた。
「んなもん認めるか!」と反論すれば「言い方はアレだけど新兄以上の人って早々いないと思うよ。頭が良くて顔も良し。お姉ちゃんと幼馴染で実質的に相思相愛。探偵って事でお父さんの仕事や交友関係も良好。これ以上の物件って存在する?」と言われりゃ返す言葉もない。
だが、簡単に認めてたまるか。親ってのはそう言うもんだ。
それ以上に新一や白馬や服部平次にも言える事だがアイツ等は見通しが甘いって気がする。
後先考えずに事件に首を突っ込めば恨みを買う事もある。
俺と英理の別居のきっかけとなった事件もそうだったが、刑事や探偵って職業は周囲の……身近な人間をも巻き込んじまう。
沢木さんの事件の時もそうだったが無関係な人間をも巻き込んで、最悪の結果を招きかねない。
そんな新一と付き合っていては蘭も巻き込まれかねないし、更には新一を狙わずとも蘭を消せば新一への復讐になると気づかれればどれほどの悪意が蘭に襲いかかるか判った物ではない。森谷教授がそうだったみてーに。
そう考えりゃ白馬が千紗に惚れてるのを見ると不安の方が勝る。白馬は千紗の事を気にかけて守ろうとしてはいるが千紗は気付いて……いないって事はなさそうだが何故か必死に否定してる様にも見える。思春期って事以外にも理由はありそうだが。
そんな千紗だが最近じゃ益々英理に似てきやがった。なんらかの事件に関わった時に犯人の心を根本からへし折りにいく。その姿は法廷でビシッと決めてる英理そのものだった。
※英理は千紗の行動力は小五郎に似ていると思っているし、犯人を許そうとしない姿勢も同じだと思っている。
そう言う意味じゃ千紗の方が犯人を追い詰めたり、罪を自覚させる事は新一達よりも上だと思う。
推理小僧共は頭はキレるが詰めの甘さが見え隠れしてるしな……
白馬の奴は特にその傾向……と言うよりも警察のキャリア組のエリート主義の奴がそうだったが高学歴を鼻にかけてノンキャリアの奴を自然と下に見る奴がいたが……それに近い考え方をしてる。本人は自覚はねーのかもだがキザったらしい奴だ。
年下の千紗やコナンにも敬語で接してる辺り、根は素直で紳士なのかもしれねーが……
「蘭も千紗も……簡単に嫁には出させねーからな」
そう言って俺は残ってた酒を飲み干し、店を後にした。
手の掛かるガキ共の相手をしなきゃならねーから大人の男はツラいってもんよ。
そう思いながら俺はタバコに火を灯して夜の街を後にした。
この数日後に俺は千紗と共に十和子さんのバーに行ってツケの支払いを纏めてする事になった。本当に娘に頭が上がらなくなってんな、俺……
『毛利小五郎は推理力が新一達に劣るが犯人が如何なる理由があろうと毅然とした態度で接し、罪を償わせようとする』
『新一含めた高校生探偵は推理力は小五郎以上だが犯人達に同情的な思いを持ちがち』
と言った違いがあると思ってます。
勿論、全てのストーリーがそうではないと思いますが基本的なスタンスの違いですね。
元刑事である小五郎と高校生の子供である新一達では犯罪を犯した者への考え方や配慮の差はこう言う所だと思っています。