コナンの見舞いを終えた、その日の夜中。メールが届いた。
『from:コナン お願いしたい事があるから明日、お見舞いに来て欲しーなー』
こんなメールが来るって事は哀ちゃんがコナンの体を元に戻す薬の試作品を渡すとかの話し合いが済んだのかな。
本来ならコナンと哀ちゃんだけのやり取りだったけど協力者として私にも声を掛けたって所かな。
そして直接的な内容だと万が一、他の人にメール見られたり、盗聴される危険性を考慮してメールしたって所かな。
『いいよ。学校が終わったら行くね。着替えとミステリー小説とか持っていくから』
こんなもんかな。これで見舞いで何かを渡すって口実が出来るし、直接のやり取りも出来るし、メモとか挟んでおけば今後のやり取りもしやすく……
ああ、そう言えば作中後半で江戸川コナン用と工藤新一用でスマホ二台持ちしてたっけ。この頃はまだそこまでの着想に至ってないんだろうけど。
そんな事を思いながら翌日の学校帰りに私はコナンが入院している病院に顔を出していた。因みにコナンの病室は個人部屋だったので部屋に入れば後は会話しやすいものとなっている。
病院の受付を済ませ、コナンの病室に入るとベッドで横になっているコナンと神妙な顔つきの阿笠博士と哀ちゃんが立っていた。
「昨日のメールから何かあったとは思いましたけど……」
「流石千紗だな、話が早くて助かるよ」
「貴女も工藤君の幼馴染だから察しが良いのね。あの子もそうなのでしょうけど」
私が話しかけるとコナンは『味方が来て助かったよ』と安堵の表情になり、哀ちゃんは複雑そうな顔になっていた。
多分だけど哀ちゃんの中ではコナンの役に立っている自信はあるけど過ごした時間は負けている……って想いなのかな。
でも、哀ちゃんの助けが無いと詰んじゃう話が多いんですよ。今回のも含めて。
「私じゃ今回の事を乗り切れる考えは思い付かなかったよ。あるとすれば怪盗キッドを捕まえて変装させるとかくらいしか」
「そっちの方が難しそうじゃが……」
ニコリと笑みを浮かべながら私なりの解決策を提示すると何故かドン引かれた。阿笠博士だけはツッコミを入れてくれたけど。
もしかして私がキッドを捕まえるとか言い出したら拷問するとか考えてませんか?捕まえたとしても、するのはお説教くらいですヨ?
「もっと建設的な考え方よ……私が開発した薬なら一時的に江戸川君を工藤新一の姿に戻す事が出来るわ。ただし……」
「工藤新一が生きていると知られれば組織が黙っていない。だからお姉ちゃんにだけ会う。そうすればお姉ちゃんは江戸川コナン=工藤新一とは思わなくなるって事ですね」
哀ちゃんの説明に私は補足を入れながらも納得した顔をする。うん、それしかないもんね。
「そうする為に日曜日の帝丹高校の文化祭の時に劇に紛れ込んで蘭に会おうと思ってな。そん時には灰原にコナンの変装をしてもらうつもりなんだけどな」
「成る程。お姉ちゃんからしてみればコナンと新兄が同時に居るなんて起こり得ない状況になるから信じざるを得ないし、今後疑われるリスクが下がる、と」
「その為にも貴女にも協力して欲しいの。文化祭の時に劇に潜り込みやすくなるように手配したり、探偵事務所で入れ替わりをフォローしたりね」
コナンの説明と哀ちゃんのお願いに私は頷く以外の答えを持ち合わせる気はない。勿論、喜んで協力しますとも。
そして迎えた帝丹高校文化祭の当日。
「平次さん、その変装は無駄になりますよ」
「なんやてっ!?」
朝早くから帝丹高校付近のビジネスホテルに泊まってコナンの為に工藤新一の変装をしようとしていた平次さんに声を掛ける。平次さんが来るのは私は事前にメールで知らされていたので居場所もバッチリと把握していた。
と言うか、そんな話を前日に知らせないで下さい。私も忘れてましたけど。
工藤新一に扮するも口調でアッサリと正体が露見し、冷めた視線の中に立たされる平次さんを見たかった気もするけど新兄の為に頑張ろうとした平次さんに感謝しているので今日は勘弁してあげましょう。罰ゲームは後日やりますけどね。
さて、私は白馬さんと帝丹高校に一緒に行くとしましょう。